「上司は部下より多くの知識・経験を持っている」という前提が崩れる日|Furukawa

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29.Jun.2017

なぜ上司は部下に指示を出し、部下はわからないことを上司に訊くのか

「仕事の答えを上司は持っていない」
これは、とある企業で新人育成を担当している先輩社員にインタビューした際に聞いた言葉です。

「新入社員には、逐一詳しい説明をしないことがある。それは、仕事をしている中では、状況に対する答えを上司が持っていないことも多いため、部下にはその都度自分で考えられるようになってほしいから」
この言葉に、共感する人も多いと思います。私自身も、その通りだなと感じていました。

仕事の現場では、指示を出す本人が具体的な方法や答えを持っていない中で、後輩や部下に指示や依頼をすることがあります。その際、指示したことに対する具体的な方法や進め方をその都度確認されて、「ちょっとは自分で考えてみて」と感じたことのある人もいるのではないでしょうか。

そこで立ち止まって考えてみたいのは、先輩や上司が指示・命令を出し、部下や後輩が指示を受け、確認を取るという関係が成り立つ理由です。

もちろん、組織の指揮命令系統に組み込まれているといってしまえばそれまでです。しかし、それ以外の理由があるとするならば、それは、後輩や部下にとって先輩・上司とは、「自分よりも仕事に関する知識や経験を持っている」「会社・職場において重要な情報源との距離が近く、重要な情報を持っている」存在、すなわち「仕事において求められる答えに近い」存在であるという前提があるからではないでしょうか。

しかし、この前提が通用しない時代がすぐそこまできています。
そう感じたのは、先月アメリカのアトランタで行われたATD(Association for Talent Development)の国際カンファレンスに参加したことがきっかけでした。

学び合う対象が「周囲の人」から「世界中の人」へ

「その答えは誰かが知っている」「だから、みんなで教え合う、教わり合う」
そんなことを考える人が最近、増えてきています。
このコラムを読んでくださっている方の中にも、わからないことをインターネットを通して質問したり、誰かがまとめた情報サイトを調べたりすることがごく当たり前になっている方も多いのではないでしょうか。

この考えを組織内の情報・知識の共有や学習機会として活用していく考え方があります。ソーシャルラーニングと呼ばれ、ATDのカンファレンスでも数年前から取り上げられています。

ソーシャルラーニングとは周囲の人との関係性の中から学習するという考え方で、理論自体は1950年代に提唱されています。ただ、インターネットが日常的に使用できるインフラとなる以前のソーシャルラーニングは「周囲の人の行動を観察する」ことが中心で、目の前にいる人の行動から学び、真似ることにより適切な行動をとれるようになる、というものでした。

それが、インターネットがインフラ化しFacebookのようなソーシャルメディアが生まれることにより、情報の検索や受信はもとより、編集や発信も多くの人々にとって特別なものではなくなりました。受け取ることのできる情報、つながることのできるコミュニティが爆発的に増加したのです。学ぶことのできる対象が「目の前の人」だけであった状況から、今ではインターネットを介してつながることで日本中、世界中から学ぶことができる社会へと変化しています。

その結果、ソーシャルラーニングは数年前から再注目され始め、今回のカンファレンスでも、より効果的に活用していくための仕組みや事例がいくつかのセッションで発表されていました。

学ぶ仕組みが変わることで、組織マネジメントのあり方が変わる!?

カンファレンスで他の参加者とソーシャルラーニングに関する情報交換をしていると、ソーシャルラーニングにおいて教え合う仕組み自体は、ほぼ完成されてきているように感じます。

例えば、私たちソフィアでも提供を行っている「UMU」は、スマートフォンやタブレットのアプリケーションを使用することで、学習用の動画やアンケートなどのコンテンツを 誰でも短時間で作成でき、組織内で共有、相互にコメントし合うことができます(5分の動画を作るのに10分かかりません)。さらにコンテンツはサーバーに保管されるため、共有用のサイトにアクセスすれば、いつでも、誰でも見ることができ、そこにある情報を利用できる ようになっています。以前から社員が編集・投稿できるWikiや社内SNSなどは存在しており、GoogleやIntelでの取り組みが有名ですが、近年このようなツールが数多く開発され始めています。

コンテンツを作成したり共有することがこれまで以上に簡単にできるようになったことで、企業の教育・研修の場での活用も進んできています。

例えば、ある事務機リースの会社ではシステムや機器が更新される際、以前は営業担当者を一堂に集めて研修を行っていました。しかし、ソーシャルラーニングの仕組みを取り入れることで、変更点をシステム担当者がすぐにコンテンツ化することができるようになり、営業担当者は自分が持っているタブレットで変更点を確認したり、操作方法を動画で学ぶことができるようになりました。さらには不明点を写真や動画と一緒にコミュニティに挙げることで、他の営業社員やシステムの担当者から回答を得るというコミュニケーションも生まれました。

また、ビルの管理を請け負うある企業では社員向けにSNSのコミュニティを運営しています。各地域のビルに少人数で常駐している社員同士がSNSを通じてつながり、情報交換をするようになった結果、都内に大雪が降った際に、雪がよく降る地域の社員が都内の社員に除雪方法を教えるといった助け合い・教え合いの関係ができました。

さらに、コンテンツをLMS(ラーニング・マネジメント・システム)などと連動させることで、人事部が「誰がどんな知識を持ち、どんなコンテンツを発信しているのか」「誰が何をどう学んでいるのか?」を把握できるようになる仕組みも作られてきています。

社員同士が知識や経験を共有し合い、教え合う方法が一般的になっていけば、部下が上司よりも高い専門性や知識、さらには人脈を持ち、業務を進めていくということが当たり前になる日がやがてやってきます。その時、組織やプロジェクトをマネジメントする上司は何をもとに部下をまとめていくのか。

それが、過去培った業務上のスキルや経験、社内の人間関係による情報ではないということをソーシャルラーニングは暗に提示しているのだと、カンファレンスを通して感じることができました。

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この記事を書いた人

古川 貴啓

人と組織が元気になるための仕組み作りをコンセプトに、人材育成や組織開発の研修やワークショップを企画設計しています。