美味しい文章、いただきます【あの人の本棚 Vol.6 廣井和幸】

03.Jul.2017

料理本の隠れた魅力

「あの人の本棚」では今までメンバーの仕事における愛読書を多く紹介してきたが、彼らの個性は仕事だけにとどまらない。社内報をはじめとしたメディアの制作を担当し、日々文章と向き合う一方で、ソフィアきってのグルメとしても知られている廣井和幸。週末は自身でも料理本を片手に料理を楽しんでいるという彼に、今回は料理と料理本の魅力を語ってもらった。

《今回の本棚》
『西川治のパスタ・ノート イタリア式調理術』西川治著(雄鶏社)
『ジェイミー・オリヴァーの親子で作ろう わくわくごはん』ジェイミー・オリヴァー著・野間けい子訳・杉山直子監修(アーティストハウス)
『dancyu いいレシピって、なんだ?』2016年4月号(プレジデント社)
『檀流クッキング』檀一雄著(中央公論新社)

―今日はなんと料理の本を持ってきていただきました。もともとお若い頃から料理がお好きだったんですか?

実家がおにぎりや餅菓子、和菓子を売る店だったんです。そんな両親の姿を見て育ったので、料理をすることには抵抗がなかったですね。でも、自分で本格的に料理を始めたきっかけはこの本(『西川治のパスタ・ノート』)じゃないかなあ。
大学生の頃にアルバイトをしていたんですけど、そこに料理や食にすごく詳しい方がいたんですよ。美味しいお店や料理のことを、いろいろと教えてもらっていました。そんなときに買ったのが、この『西川治のパスタ・ノート』。読んだらすごくパスタが作りたくなって、レシピを見ながらよく作りましたね。当時のものは使い古してなくしてしまったんですが、先日この本を古書店で見つけて、思わず再購入しました。

―単なるレシピ本とは、少し内容が違いますね

作者の本業は写真家なんですが、彼がイタリアに住んでいた頃に教わった料理や、家族で作った料理を紹介しているんです。ちょっと旅行記に近いですね。
当時はまだパスタの種類もよく知らなかったので、この本に載っている本格的なパスタにわくわくしました。ほら、このページに載っている「娼婦のスパゲティ」とか「桃のサルサ和えスパゲティ」なんて気になるでしょ? この本で覚えたレシピは、その後一人暮らしをする中で定番になりましたね。

―こちらの『ジェイミー・オリヴァーの親子で作ろう わくわくごはん』はどのように見つけたのでしょうか

大学3年生のときに、初めて友人との海外旅行でイギリスに行ったんですが、当時ジェイミー・オリヴァーの初著「NAKED CHEF」がイギリスで爆発的に売れていて、どこの本屋でも平積みされていました。シェフがそんなに人気になるなんて当時は珍しかったし、しかも結構イケメン。いわゆるアイドルシェフの走りのような人だったんですね。帰国後も気になって、この本を買いました。ちなみに、今でもずっと彼のTV番組をチェックしています。
彼はフランス料理やイタリア料理を学んでいるんですが、実家は昔ながらのイギリスパブ。だからこの本にも、パブで出されるようなイギリスの伝統料理が多く載っていて、私もいくつか作って楽しみました。

―こちらの『dancyu』は雑誌ですね

学生時代、先ほど話したバイト先の人に教えてもらったものです。今でも面白そうな特集があると買っています。「男子厨房に入る」がテーマの料理雑誌なんですが、お店や食材、お酒の特集もあってグルメ雑誌でもあるかな。
この号に載っている料理は、かなり実際に作りましたよ。エッセイストの玉村豊男さんが旅行先で作ってもらったというラム肉シチューが再現されているので挑戦してみたんですが、手順どおりに作っていくと「よく熟した真っ赤なトマトを三つ四つ取り出し、そのまま鍋の上で握り潰した」って書いてある。その通り真似してみたら、見事に破裂して汁が服につきました(笑)
他にも連鍋湯(レンコウタン)は我が家の定番ですし、もやしたっぷりの春巻きは娘も大好きです。

―ご自宅では週末に料理をされていると聞きました

土日の昼食・夕食はほぼ毎週作ります。キッチンの上に棚があって、そこにレシピ本をずらっと並べてあるんです。作るときはそこから「今日はこの本」と選んでいます。世界のローカル料理がすごく好きで、イタリアン、フレンチ、トルコ料理、モロッコ料理、東南アジア料理、アメリカのオーブン料理などレシピ本をたくさん持っているんです。特に実際に行った国の料理を再現するのが好きですね。

―かなりたくさんのローカル料理の本をお持ちですが、海外に行かれる機会が多かったんですか

2年間くらい世界を放浪していた時期があったんですよ。東南アジアから始まって、トルコ、ギリシャ、イタリア、フランス、スペイン、モロッコ、イギリス……。その後はイギリスやタイで仕事もしていました。
この『檀流クッキング』にも、世界の料理がたくさん紹介されています。これは『火宅の人』で有名な作家の檀一雄が新聞に連載していたもの。彼は放浪家でもあって、外国で見て覚えてきた料理を家で試すんです。文庫版では挿絵や写真は一切ないんですが、とにかく読んでいるだけで美味しそうなんですよ。実際に作って食べるより、本の中のほうが美味しそうなくらい。私は作家の人が書く「食べるシーン」が大好きで、デビュー作からのファンである村上春樹もそれがすごく上手いんですよね。村上作品の中で料理をする主人公に憧れたことが、料理を始めるきっかけのひとつでもありました。

―確かに、ご紹介いただいた本を見てみると、どれも単なるレシピ本ではなくて、著者の経験やストーリーが織り込まれていますね

そうですね。私はいろんな料理を作ることで、世界を旅した日々を思い出したり、著者の経験を追体験したりしている気がします。だから単なるレシピ本以上に、こちらの想像力を刺激してくる料理本に惹かれるんですね。文字の羅列を通して、ないはずの味覚や嗅覚を感じさせるってすごいことです。仕事柄いろいろな文章を書くけれど、自分の仕事でも、そこに書かれた感覚や経験を、読者がまるで自分のことのように感じられるような、心に響く記事をつくりたいなと常に思っています。

《今回のメンバー》
コミュニケーションコンサルタント
廣井和幸
担当分野:メディア・コンテンツ企画制作

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この記事に関連するメンバー

廣井 和幸

グループ報、社内報など、企業のインナーコミュニケーションを活性化するメディアの編集・制作、企業広報物やメディアコンテンツの企画・制作全般を担当しています。