守備範囲を超えていけ! 遊撃手人材インタビュー 第2回 Supership株式会社・吉田毅さん 出会いと挑戦が人生を変えた

#イノベーション#コミュニケーション#ビジネススキル#働き方#組織開発

12.Jun.2018

急速に変化する社会の中で組織が生き残っていくためには、型にはまらない自由な発想と行動力をもつ人材が不可欠です。このコーナーでは、大企業の社員でありながら、自分の仕事の範囲を超えた取り組みで社会に影響を与えてきた方々(遊撃手型人材)に、どのようにして困難を乗り越え、取り組みを進めてきたのかを伺い、こうした人材が育つ組織のあり方を探ります。
第2回は前職での人事異動をきっかけに人事・組織開発の分野に足を踏み入れて多くの先進的な取り組みにかかわり、現在では第一人者として活躍するSupership株式会社・吉田毅さんに、ご自身を変えるきっかけとなった体験と、挑戦を続けることへの思いを聞きました。

インタビュー実施日:2018年4月11日

【今回の遊撃手】
Supership株式会社
人財開発本部長
吉田毅さん
(インタビュアー:平井豊康)

〈略歴〉
1971年生まれ。明治大学大学院グローバル・ビジネス科修了。流通業、商社を経て2003年ヤフー株式会社(以下ヤフー)に入社。法人営業、営業企画などを担当したのち、2012年から人事部で組織開発推進に携わる。2015年6月にSyn.ホールディングス株式会社、同年11月よりインターネットを基盤とした広告・メディア・プラットフォーム等の事業を展開するSupership株式会社(以下Supership)にて現職。

決めたのは、二つ返事で「はい」と言うこと

平井
初めてお会いしたのは2013年頃、南山大学での組織開発ラボラトリー(組織開発に関する公開講座)でしたね。
吉田さん
当時勤めていたヤフーで2012年に人事に異動になり、同じ年の7月に新設された組織開発室を担当することになりました。当時は組織開発のことをほとんど知らず、何をやったらいいかもわからない状況でした。手探りで勉強する中で南山大学の組織開発ラボラトリーの存在を知り、藁にもすがる思いで参加しました。
平井
人事部で行動指針の策定、経験学習モデルの導入などの先進的な取り組みに参加し、今では組織開発のプロフェッショナルとして活躍されていますが、突然人事に異動になったときはどう思いましたか。
吉田さん
驚きました。当時はある事業部門の営業企画を任されていて、裁量も与えられ、楽しくやりがいを持って仕事をしていたので、道半ばで残念だという気持ちがありました。一方で、同時に経営トップの執行体制に大きな変更があり、新経営陣が目指す新しいヤフーを彼らとともに創っていきたいという思いも強かったです。
平井
人事部に配属される以前にも、人を育てることには力を入れていたんでしょうか。
吉田さん
関心はありました。学びに関してはポジティブな印象を持っていましたし、マネジメントにも興味がありました。人事部に異動する前に通った大学院では、リーダーシップをテーマに論文を書きました。
平井
大学院に通おうと思ったきっかけはどんなことだったんですか。
吉田さん
大学院に通い始める前年の年末に、自分自身のマネジメントについての悩みをメンターである先輩に相談する機会がありました。今まで感性で行ってきたマネジメントを体系立てて整理し直し、もっと使いこなせるようになりたい、という話をしたときに、「それなら大学院に行くのもいいよね」と言われたんです。そこからすぐに大学院を調べて1月中旬には願書を出しました。
平井
1カ月も経たずに……すごいスピードと行動力ですね!
吉田さん
元々はそういうタイプの人間ではなかったのですが、人との出会いの中で少しずつ変わっていったのだと思います。大学院へ通う半年前、全社の経営課題であったオープン化[1]を推進するために新設された部門に異動になりました。その部門には僕とはまったくタイプの違う、個性豊かで魅力的なリーダーが何人もいました。現在Supershipの代表を務める森岡もその一人でした。そうした刺激的な人との出会いを通して、自分も良いリーダーになりたいという思いが生まれたんです。

自分を変えるにはどうしたらいいのだろうかと真面目に考えた結果、到達したのが「二つ返事で『はい』と応える」という行動習慣でした。例えば、以前は誰かから誘っていただいても、「予定を確認してお返事します」と応えてきました。その方が丁寧だし、失礼がないと思っていたんです。ただ、そのように一旦返答を保留すると、あらためて返事をする機会を逃したり、お互いに失念してしまったり、結果として参加できないまま終わることが少なくありませんでした。でも実際のところ、予定が重なっていることは数回に一回しかありませんでしたし、その重なってしまった予定のうち調整することができないものは、数十回に一回しかありませんでした。そしてその一回を丁寧にお詫びして信頼を失ったことは一度もないですし、次の機会も誘っていただけることがほとんどでした。結局、僕は百回に数回程度しかないどうしようもないリスクを恐れ、毎回「予定を確認します」と応え、多くの機会を失っていたわけです。

そのときからどんな誘いやアドバイスも、四の五の言わず二つ返事で「はい」と答えるようにしました。その結果、今まで会えなかった人と会えるようになりました。今まで手にすることのなかった本を読み、映画を観るようになりました。今まで訪れることがなかった土地に訪れるようになりました。始めてから10年ほど経ちましたが、このことで僕の人生は大きく変わったと思います。

出会いを通して人は変われる

平井
仕事でもないことを、10年間も続けることができたのはどうしてですか。
吉田さん
たぶん、純粋に楽しかったからですね。二つ返事で「はい」と言う人生のほうが、そうでなかったそれまでの人生よりも、自分にとってハッピーだったからだと思います。知らなかった人に出会えて、出会った人にまた新しいことを教えてもらって、どんどん自分の世界が広がっていきました。
平井
そうした出会いの中で、大きな影響を受けた人はいますか。
吉田さん
たくさんいますよ。例えば、大学院修了後しばらくして、僕はある社会起業家と出会い、休日を利用しプロボノとして事業を応援していました。そのときに一緒に応援していたプロボノ仲間の大学生から紹介されて、慶応義塾大学が主催する文明塾という学生と社会人が未来貢献について学び議論するプログラムに参加することになりました。この文明塾で出会った多くの仲間に影響を受けました。

文明塾で出会った学生たちと共に学び、共に遊ぶ中で、彼らが本当に素晴らしかったので、自分の子供もこんな若者に育ってほしいと思うようになりまして(笑)、そこで彼らの共通点を探るべく観察をしてみたんです。観察を繰り返した結果、僕は一つの共通点を見つけました。それは大人との出会いでした。人生の転機となった出来事や心に残るエピソードを彼らに聞くと、必ず大人との出会いがあったんです。「子どもがいい若者になるかどうかは子どもの問題ではない、大人の問題だ」と気づき、それからはより積極的に若者と交流するようになりました。

人事に異動になって最初に担当した仕事は、全マネージャーを対象にしたリーダーシップ研修でした。何年かぶりに大学院で学んだテキストを取り出して、研修に取り入れるエッセンスをまとめ、作った内容を恩師に見てもらうために大学院のキャンパスを訪れました。また、ヤフーで担当した最後の仕事はヤフーアカデミアという社内大学の立ち上げでした。その際には文明塾の運営事務局を訪ね、どういった想いで塾を立ち上げたのか、どのようなリーダーを世に送り出そうとしていたのか、教えを請いました。大学院も文明塾も、参加していた当時は人事部に異動になるとは思ってもみなかったのですが、数年後にこうして機会が巡ってくるのだなあと思うと、その時々の人との出会いがとても感慨深かったですね。出会った様々な人の「ここはすごい」と思う面を見習って、少しでも吸収できるように日々精進したいと思っています。

平井
「二つ返事で『はい』と言う」といった行動の変化で自分を変えた一方で、そうした魅力的な人々との出会いによって今の吉田さんが作られたという面もあるんですね。
吉田さん
そうですね、その両面があるのかもしれないですね。こうした自身の経験があるので、僕は基本的に「人は変われる」と信じているんです。僕が二つ返事で「はい」と言う習慣を決め、それを取り入れたのは34~35歳の頃でした。このことは僕の人事観にも影響を及ぼしています。変わりたい、成長したいと思える限り、人はいつでも変われると信じます。そしてそうした人が変わろうとする力を解き放つ環境を整えることが、僕たち人事の仕事なのだと思います。「変わらなければいけない」「成長しなければいけない」と思ってしまう人が多いですが、成長は本来楽しいもの。「しなければならない」と押し付けるではなくて、その楽しさを伝えたいですね。
平井
最後に、いまSupershipで吉田さんがチャレンジしていることは何ですか。
吉田さん
チャレンジしかないですね。Supershipは複数のベンチャーが集まってひとつになった会社です。国内のM&Aの件数は伸びていますが、統合がうまくいったケースは少ないです。Supershipがその成功のケースを作れたら、ネット業界はもちろん、他の業界や組織体にとっても必ず役に立てると思いますし、結果的に日本を元気にすることにも貢献できると思っています。その挑戦をするために僕はSupershipに来ました。
Supershipに来てから今年で3年目を迎えますが、ようやく組織一体としての文化を打ち出すタイミングになってきたと思っています。まだまだ課題はありますが、とにかくこの会社をもっともっといい会社にしたいです。僕にとっての「いい会社」は業績を力強く出せることだけでなく、従業員がハッピーな会社。大半の社員が、日曜の夜に「ああ、早く月曜にならないかな」と思える、そんな会社を実現したいです。

【取材後記】

吉田さんの語り口は(相変わらず)謙虚で控えめなのですが、そこにはこれまでのチャレンジを通じて積み上げてきた自信や、今後に対する強い思いも詰まっていると感じました。
出会いをきっかけにキャリアを振ってみる。社内の異動であろうと転職であろうと、積極的にその機会をtake(取る)できるとすれば、その人は自分自身の可能性を大きく広げる「能力」を持っているのだと思います。
吉田さんのお話を伺っていると、きっかけとは身近にある本当に「ちょっとした」ことなんだと思います。「いい大人になったんだから、そう簡単には変わらないよ」というのは、確かにそうかもしれません。ただ、ここは「はい」と応えることから大きく変わった吉田さんのように、自分を信じて、今から、何か具体的に行動を変えてみませんか? ほんのちょっとしたことでいいのです。ひたすらそれを継続した先には、今までとは違う風景が広がっているかもしれません。
(インタビュアー:平井豊康

[1]IDの外部解放などを通じて他サイトと積極的につながり、収益性・ユーザーの利便性を向上させる取り組み。

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この記事に関連するメンバー

平井 豊康

お客さまの人材育成面での課題解決に取り組んでいます。おもに集合研修の企画、開発、実施およびフォローアップを行っています。