うちの会社は大丈夫?~コミュニケーション不全が組織を蝕む~

#インナーブランディング#コミュニケーション#ビジョン浸透#働き方#多様性#組織開発#調査

24.Aug.2018

企業不祥事の根底にはコミュニケーションの問題がある

企業不祥事インデックスという書籍をご存じだろうか。(竹内朗、上谷佳宏、笹本雄司郎著、商事法務:2015)この書籍は、表面化した企業不祥事の、裁判の判決や第三者委員会の調査報告など、客観的内容を集めたものである。

よくもまぁ、こんなことが、と思う内容が並んでいるのだが、その発生要因に目を向けると、体制やワークフローに関する指摘以外にも、「意識の欠如」「知識不足」「誤った理解」「上司と部下のコミュニケーションに関して機能不全」「部門間のコミュニケーション不足」といった文字が並ぶ。言い回しは異なるが、「組織内のコミュニケーション」に係る問題ばかりなのだ。コミュニケーション不足が、人を死に追いやったり、後遺症を残すほどのケガ・病気にしたり、会社に大きな損失をもたらしてしまう。そして、その問題を起こした会社も、事業継続できなくなるほどの代償を払い、働く社員が行き場をなくしてしまうこともある。

いきなり重いテーマからスタートしてしまったが、以前とある企業トップの方がこぼしていた。
「うちは大丈夫なんだろうか―――」

「うそはいけません」「人さまに迷惑をかけてはいけません」、義務教育以前に習ったようなことだと思うのだが、何が“いい大人”を誤った行動に導くのだろうか。「会社を貶めてやる!」と、わざとドラマのようなことをする社員は、ほとんどいないはずだが、日々ニュースで企業不祥事が取り上げられていく。そう思うと、「うちは大丈夫だろうか」とこぼしたトップの気持ちもわからなくもない。(発生要因については、後日、別途コラムで取り上げたい)

防止策は打っているし、社員は善悪の区別くらいわかっている

そうした事故・不祥事が起きないように、本社機能は、現場に対して細かく依頼・指示を出す。担当者は、事故・事件を防ぎたいという思いから、eラーニングや研修、チェックテストなどを展開している。一方で、受け手の現場社員からすると、「早く帰れと言われるのに、仕事量は増えて、ただでさえ忙しいのに、まだほかにもやることあるんですか!」というのが本音だろう。発信する部署からすると、とにかく「正しく」「やるべきことをやらねば」という使命感があり、あの部署のテストが終わったから次はうちが!と矢継ぎ早に施策を行う。そのため、受け手となる社員のメールボックスには、さまざまな部門からのアンケートやeラーニングの案内などが並ぶ。そして、現場では、締め切り間際に「ちゃちゃっとやって、終わり!」という状況になりがちだ。

事故防止策は確かに行っている。そして、事故・不祥事防止に向けた取り組みは、機能しているのだと思う。なぜなら、居酒屋トークになれば、「締め付けが厳しい」だの「あのくらいでパワハラになるの?」「あれはやばいよね」などという声が聞こえてくる。それは、確かに受け手となる社員の知識になっているからなのだ。ぼんやりとした境界線を社員はわかっているのだ。倫理観という観点からも、やってよいことと悪いことの区別くらい、とっくについている。

問題は、「わかっていたけど、言えなかった」「指摘したけど、なかったことにされた」「違う対応をするべきだとわかっていたが、指示に逆らえなかった」といった類のことだ。倫理観、学んだ知識から、違和感を覚え、火種を見つけた社員が、然るべき対処をすることができるか。それが、不祥事につながるかどうかの一つの大きな分かれ目になるはずだ。

風通しの悪い組織は市場で生き残っていけない

一方で、企業が策定している中期計画や経営戦略に目を通すと、「イノベーション創出」「新規事業創出」「挑戦」という言葉が並ぶ。スタートアップやベンチャー企業は、それをもって生まれてきたばかりの状態だが、30年50年と続く企業では、創業時にイノベ―ティブだったビジネスモデルも時代とともに古くなり、少しずつ改善や用途開発を繰り返しているケースが多い。そして市場では、企業の生い立ちや規模、国籍も関係なく、生き残りをかけて戦い続けていかなければならない。

成功しているスタートアップやベンチャー企業の多くは、風通しがよい。役割に関係なく、対等に意見をぶつけ合い、高めていくことに注力している。だからこそ、新たな価値や新しい枠組みを生み出すことができるのだろう。突拍子もないアイデアであっても、それを尊重し、受け止めるからこそ、価値を抽出することができるのだ

ところが、成熟した企業では、溢れんばかりの熱量が疎まれることがある。言いたいことはわかるけど、空気を読め、と出る杭が 打たれてしまうケースが散見される。不祥事の火種を発見したときにも、「今は言うな」と口を封じるのだろうか。あるいは、顧客や社会の信頼失墜よりも、自分が疎まれ、村八分になることを恐れて、口を噤むのだろうか。そんな内向きな風土をもつ会社が、顧客にとってよりよい提案ができるとは思いにくい。

冒頭に記したように、多くの場合、コミュニケーションが不健全になることが、問題発生の要因といえる。逆手にとると、コミュニケーションの問題を解決すれば、顧客志向組織にも生まれ変わることができる。(ここで言うコミュニケーションとは、組織における情報の流れであり、飲みニケーションやランチ会ではないことはだけは記載しておきたい)組織が目指す状態に対して、必要な情報が、必要なタイミングで正しく流通することこそが、組織運営の要諦である。レポートのルール、育成・評価の仕組み、部門横断の会議、社内における情報共有基盤や、生まれたアイデアの共有方法、改善アイデアや意見を発信する場など、組織として価値を創出していくための人と人の情報のやり取りを綿密に設計し、受け手に違和感がなくスムースに受け入れられるよう導入していくことが必要なのだ。

もし、「新規事業がうまくいかない」「社員に覇気がない」「部門間連携がうまくいかない」などの課題を抱えているのであれば、以下の項目をチェックしてもらいたい。もし、当てはまることがあるのであれば、一度組織内のコミュニケーション可視化をお勧めしたいと思う。どこでどんな目詰まりが起きているのかを明らかにすることが、課題解決の一手となるはずだ。

<Check List>

  • 会社は、働き方や価値観が異なったり、堂々と意を唱える従業員の意見に、公平・公正に向き合う雰囲気がある
  • 私は、自分が見聞きした事実やデータ、それに基づく問題意識を、公の場であったとしてもためらいなく発言できる
  • 私は、上司からの過度な指示・命令に対して、冷静に意を唱えることができる
  • 会社では、事案毎に意思決定をすべき人物が明確になっており、過剰な根回しを行う必要はない
  • 私は、経営層にはネガティブな意見も含めて、現場の情報が正確に伝わっていると思う
  • 会社では、新規事業や新しい取り組みに対して、積極的に応援しようという雰囲気がある
  • 会社では、新たなチャレンジが失敗に終わったとしても、当該従業員を攻めたてることなく、次の挑戦に仕向ける雰囲気がある
  • 会社では、社内都合よりも、顧客やエンドユーザーを優先した意思決定がされている

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この記事に関連するメンバー

森口 静香

組織変革やインナーブランディングのプロジェクトにおいて、プロジェクトの企画や進行・品質管理などを行うプロジェクトマネジメントを多く担当しています。

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