COVID-19危機:奇妙で新たな日常におけるコミュニケーション

新型コロナウイルスの感染拡大で、我々の日常は一変しました。ビジネス界では、在宅勤務が当たり前になり、職場の同僚がいない中で、孤独と戦いながら仕事をしているのが現状です。従業員コミュニケーションの専門家であるエリザベス・ウィリアムズ氏は、IABCのWeb会員誌『Catalyst』の中で、この非常時の現状を「奇妙で新たな日常」と呼び、企業や組織のコミュニケーション担当者(経営陣や経営企画、広報、人事、IT、マーケティング、現場のマネージャーなど)に以下のようにアドバイスしています。

数週間前までは、ほとんどのコミュニケーションチームは、第1四半期の全体会議や、投資家向けの展示会、新製品の発売などに取り組んでいました。
最近では、COVID-19が世界中で猛威をふるい、我々はほとんど十分な睡眠をとっていません。電話会議や、ベストプラクティスのウェビナーに日々費やされ、私たちがこの状況を先取りする手助けとなるデザイナーや、Webプログラマー、翻訳者、フリーランスのライターなど誰にでも最大限協力してもらえるよう頼みこんでいます。

ほとんどの職場では、必須でない労働者は在宅となり、その数はGoogleだけで10万人以上です。幸運な人は給料をもらっていますが、皆が常にノンストップでニュースの見出し、政府の発表、ソーシャルメディアのコンテンツに晒されており、そのせいで誤った情報が横行する新たな問題を生み出しています。
消費者や規制当局が手をこまねいている間にも、雇用主は従業員のエンゲージメントを維持し、増大する不安を管理し、この先数週間あるいは数ヶ月間に渡って物事を持続していく方法を探しています。奇妙な、新しい日常へようこそ。コミュニケーションの専門家は、非常に流動的な状況に対応しながら、信頼を築き、仕組みを作り、ブランドを保護するための戦略とツールを必要としています。

信頼から始める

内部および外部のステークホルダーは、権威ある情報を求めています。エーデルマンの調査によると、従業員の63%が、COVID-19に関する情報源について、政府やニュースよりも雇用主を信頼していることがわかりました。これは、経営陣チームにテコ入れする絶好の機会です。

世界保健機関(WHO)や自治体の保健当局など信頼できる情報源からの情報を武器に、経営幹部はいくつかの方法で信頼を築くことができます。
まず、従業員、顧客、その他のステークホルダーに対して、組織が強力であり、包括的な対応計画に取り組んでいるから大丈夫だと安心してもらう必要があります。マッキンゼーはこれを「有限楽観主義」と呼んでいます。企業の内部から見ると対応計画があまり組織立ってきちんとしているようには見えないかもしれません。しかし、外部のステークホルダーからは、不確実さの中で何をすべきか見極めるのに役立つ情報が企業から提供されていると感じてもらう必要があります。
経営幹部にとってもう一つの重要な役割は、COVID-19に対処するために動員されている人たちの並外れた努力とリソースを称賛することです。最前線の従業員や、忠実な顧客、人命を救うために再編成している業界全体まで、称賛すべき人はいくらでもいます。称賛は、士気を高める以上のものがあります。寛大さを示すことで信頼を築くのです。

経営幹部はまた、定期的にアップデート情報を提供していることを確認する必要があります。組織の戦略を理解することに関しては、従業員のほぼ4分の3 (73%)が、CEOや他の幹部リーダーから直接組織のメッセージを聞きたいと答えています。
しかし、経営幹部に事実と統計数字を渡して、ビデオ会議に出席させるだけでは十分ではありません。我々は、経営幹部と協力して情報の意味づけを手伝う作業も必要です。疑わしい情報源があふれているので、経営幹部は正確な情報を引き出して物語にまとめて、ステークホルダー・グループ全体にコンテキストと意味付けを与えて共有することが重要です。ストーリーテリングは、経営幹部が複雑な情報を意味づけるのに役立つ優れたツールです。

そして経営幹部にとって最も重要な役割は、耳を傾けることです。危機の時には、多くの組織がビジネスの新しいやり方を概説するメッセージを一方向に次々と集中砲火で放ちます。方向性を提供する必要があることは明らかですが、MITSloanの調査によると、従業員や顧客の信頼を築くことができるのは、対話と行動を通じて自分たちの声を聞いてもらっていると彼らが感じる場合にのみ可能であることが分かりました。

信頼を構築するのにカギとなるツールには、イントラネット、ブログ、ビデオなどの内部向けリソースと、Web サイトやソーシャルメディア・チャネルなどの顧客向けプラットフォームが含まれます。重要なのは、ステークホルダーが自分たちの声を聞いてもらい、応えてもらえる方法を見つけることです。可能なのはオープンフォーラム形式で、例えばSlack チャンネルあるいはメール登録アカウント (1日に数回確認してください)です。そして、古き良き、昔ながらの電子メールを無視しないでください。従業員のほぼ半数がCOVID-19のアップデート情報を電子メールで受け取ることを好みます。

仕組みを構築する

あなたの従業員が自宅で働いているか、現場で働いているか、一時解雇中であるかに関係なく、正常であることはまったくありません。いつものルーチンはなくなり、同僚は不在で、孤独の時間です。
この奇妙な、新しい日常では、私たちがエンゲージメントを制定して測定する方法は根本的に異なるでしょうが、同じくらい重要です。実際、従業員を仕事の目的や意味と結び付けておくことは、感情的な回復力と精神的な健康のために不可欠です。
私たちの秘密兵器は、現場のマネージャーが仕組みを構築して、従業員が切望する個人に関わる情報を伝えるのを助けることです。従業員は、組織に関する情報を経営陣に求めていますが、同じ調査では、変化が個人に及ぼす影響を理解する際には、直属の上司に圧倒的に依存しているという結果が出ています。
現場のマネージャーが仕組みを構築し、エンゲージメントをサポートする方法の1つは、新しい習慣を作るか、既存の職場の習慣を新しい環境に置き換えることです。彼らは電子メールで誕生日を祝ったり、WebExで仮想ピザパーティーを開いたり、従業員がストーリーを交換して面白いコンテンツを共有できるWhatsAppグループまたはSlackチャネルを設定することができます。

重要な習慣は、毎日の情報アップデートです。エーデルマンの調査によると、従業員の63%が少なくとも毎日雇用主からの情報アップデートを望んでおり、20%はそれよりも頻繁なアップデートを望んでいます。毎日オンライン会議室や業務用のチャットツール、社内SNS、組織のポータルサイトなどにチェックインする習慣は、不安を軽減し、アイデンティティの共有を築くことができる追加の仕組みを構築します。
覚えておくべきことは、あなたの現場のマネージャーは、彼ら自身のサポートを必要としていることです。彼らがこの状況を効果的にリードできるように、イントラネット上に管理職向けの情報リソースを配置することを検討してください。例えば、アルバータ大学には、マネージャーやスーパーバイザーがニュースや情報にアクセスするのを支援する専用ウェブサイトがあります。

ブランドを守る

広報・PRやIR、宣伝、マーケティングといったさまざまなコミュニケーション活動を通じて自社のお客様向けブランドと雇用主としてのブランドを保護することは、危機の大混乱の中で見落とされがちなことです。しかし、いくつかの簡単なアクションが自社のブランドを保護し、強化するのに役立ちます。
まず始めに手を付けるのに最適なことは、ストーリーを語ることです。幹部や従業員を招待して、Instagram、LinkedIn、Facebookに投稿してもらい、組織が一緒になってどのようにスタッフ、顧客、コミュニティをサポートしているかを共有してもらいます。
例えば、従業員の安全を守るためにどのように取り組んでいるか、また会社が作業の中断中に従業員をどのようにサポートしているかを示すことができます。スターバックスは、従業員とコミュニティのためのCOVID-19への対応を紹介するWebページを開設しました。
ストーリーが本物で人に優しければ、これらのストーリーはすべて、危機の過程を通してあなたのブランドを穏やかに構築します。

パンデミックが誰も予測しなかったように展開している一方で、コミュニケーターは、信頼、エンゲージメント、ブランディングに投資する機会と捉え、余裕ある時間に私たちの生産性を維持しつつ、COVID-19が終息したときには立ち直る準備をしておくことが重要です。

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株式会社ソフィア

ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント

池田 勝彦

主にビデオ制作で撮影から編集までを担当しています。記事原稿も書いていますが、英語による取材・編集もやりますし、翻訳もできます。

株式会社ソフィア

ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント

池田 勝彦

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