「組織における、これからのデータ×リアルについて考えてみる」(後編)

#ラーニングデザイン#研修・ワークショップ

30.May.2016

マーケティング活動において顧客や市場のデータを利用することは今や当たり前で、ビッグデータの活用に力を入れる企業も増えている。 

今後、そういった動きを受けて、組織内のコミュニケーションにおける「データ」と「リアル」はどのように形を変えていくのだろうか。研修プログラムの開発や研修・ワークショップの講師・ファシリテーションを担当し、ソフィアのCHO(Chief Human Officer)でもある平井豊康と、インナーブランディングの現場でデータを用いたプロセスマネジメントにあたっている、シニアコミュニケーションコンサルタントの築地健、この2人はどのように考えているのだろうか。 

前編はこちら: 人と組織が「元気」な状態って? 〜キーワードは「選択」と「没入」〜 
中編はこちら: 「データフィードバック」で、研修や教育の場が変わる! かもしれない

後編:対話とデータって実は補完関係。「合意形成」でダイナミックな変化を生み出す

―中編では「データ」とは何か、組織の今後においてどう活用されていくのかというお話を伺いました。そこで、「合意形成」のためにリアルの場やデータを活用するというお話が出てきました。 

築地:データはあくまでも現実をとらえるための道具であって、組織にとって最終的に必要なものは合意であり、判断なんです。

平井:あくまで何らかの合意形成や判断といった目的があって、そのために現実を相対化したものがデータです。もし、データなしに合意形成や判断ができるならデータは必要ないともいえますね。

築地:限りなく時間を使うことができるならば、古代ギリシャのように関係者を集めて結論が出るまで議論すればいいんです。それが不可能だから、議論をショートカットするためのツールとしてデータを活用します。

平井:エモーショナル・エクスペリエンス・デザイン*の考え方にも通じるものがあるよね。相手の意識の裏側にある感情をいかに引き出すか。全員が納得して「だよね」と言わせることができるか。

―視点を変えて、組織における「リアルの場」についてはどうですか。今後どう変わっていくのでしょうか 

平井:旧来の研修やワークショップでは、その場では受講者のやる気が盛り上がっても、職場に戻ると冷めてしまうのが課題でした。これはアメリカでもパフォーマンスマネジメントとの兼ね合いで、かなり課題意識が高まっています。受講者は、頭では得るものがあっても、体を使ってそれを職場に広げることができない。

築地:そもそも研修を受ける時間を作るのも大変で、職場に戻れば不在の間に仕事がたまっていて、あっという間にいつもの現実に…というパターンですよね。

平井:リアルの場を通じて何かを変えられるか、というのは、その場だけでなく周辺にある日常業務のオペレーションや、ルール、マニュアル、文化、規範といったすべてのことが関係してくるんですね。だから、なかなか変えることができない。 
もし受講者の上長が研修の目的やメリットを理解していなくて、「仕事を抜けられるのは困るから来年から研修を減らせ」と言ってきたらどうするのか。そういった現実を見据えて、受講者周辺のさまざまな問題をつなぎ、データとして研修の成果を伝えることによって経営側の納得感を形成していくことが必要だと考えています。学習機会をイベントとして捉えるのではなく、あくまでもプロセスとして捉えることが重要です。

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―リアルの場におけるコミュニケーションをサポートするものとして、データを生かしていくということですね。たとえばの話ですが、元気な職場の条件をデータとして分析することなどはできるのでしょうか。最適な職場の温度や湿度だったり、元気になる匂いとか、オフィスデザインとか… 

築地:それがわかるのであれば、「元気になることを妨げる要素」をオフィスから取り除くことには興味が有りますね。反対に、「なぜ会話が盛り上がっているのか」などを分析されるのは、分析される側の気持ちとしてどうかなあ。

平井:そういった分析を可能にするような仕組みはすでに出てきていますね。ただ、自分が知らないうちに余計なデータをとられているというのは誰でも嫌なもの。これは倫理の問題です。データは、データを取られる側と、データを活用する側がwin-winにならなければいけない。「相手に気づかれずに相手をコントロールしたい」と考えると、結局はlose-loseの関係になってしまうでしょう。

築地:データの活用には信頼関係が大切ですね。もっとコミュニケーションにデータを生かしてほしい。

平井:人の行動を変え、組織の行動を変えていくためにデータが活用できます。たとえば、データを会話のきっかけにしてほしいですね。 
お客さまと話をしていて感じるのは、こちらが思う以上に職場で会話がされていないことです。とくにスタッフ部門では、すぐ隣にある部署の人ともメールでやりとりしていたりする。そんなことでは部門間連携など夢のまた夢といった感じです。ところが、そういった組織の壁をひょいひょいと超えて、どこにでも話をしに行っちゃう人がたまにいるんですよね。そういう人のことをソフィアでは「遊撃手」と呼んでいるのですが、組織を変えていく際には、「遊撃手」のような人が起点になると思います。

築地:私は以前金融機関に勤めていたんですが、そこは本当に組織の壁がタテもヨコも厚くて。当時の上司も先輩達も組織をまたいだコミュニケーションをする際はそのための準備にかなりの労力を費やしていました。でも、いざ実際に他の部署に相談や質問に行ってみると意外と気さくに応対してくれて。一度そういうやりとりがあると、「相談のハードル」がぐっと低くなったりするんですよね。

平井:みんな、必要以上に組織の軋轢みたいなものを恐れちゃって、コミュニケーションを避けているんじゃないかなあ。今後どんなに組織におけるITの活用が進んでも、リアルのコミュニケーションはなくならないでしょう。データを活用してリアルのコミュニケーションを充実させ、スムーズな合意形成や組織の変革を実現する。そんな良いスパイラルを起こしていけたらいいですね。

*エモーショナル・エクスペリエンス・デザイン : 
企業が顧客のニーズを深く理解し、商品・サービスなどの「体験」において顧客に対して特定の感情を引き出すようなデザイン・設計を行うことで、顧客満足を高めるという考え方。

Startup Stock Photos

さまざまなデータを取得・分析するテクノロジーは進化し続けているが、データを集めることはそれ自体が目的ではなく、合意形成や判断、人や組織の変革といった目的のための一手段だ。そして、データを活用するためには信頼関係の構築が欠かせない。二人の話からそんな事実を再確認できたように思う。今後もソフィアでは、人が主体的にいられる元気な組織を作るために、データを活用してどんなコミュニケーションができるのか、データ×リアルでどんな価値を生み出していけるのか、引き続き考えていきたい。

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