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コミュニケーション専門職のための 「新しい羅針盤」  世界のインターナルコミュニケーション最前線⑳

最終更新日:2026.07.23

生成AIの急速な進化によって、コミュニケーション専門職を取り巻く環境は大きく変わっています。文章作成や情報整理、翻訳など、これまで人が担ってきた業務の多くをAIが支援できるようになりました。

いま問われているのは、AIを使うかどうかではなく、AIに任せられる業務が増える中で、人間が何を引き受けるのか です。人と人をつなぎ、信頼を築き、組織文化を育み、変革を支える。こうした役割は、むしろこれまで以上に重要になっています。発信物を増やすだけでは、社員の納得や行動にはつながりません。

IABC(国際ビジネスコミュニケーター協会)のWeb誌『Catalyst』で、5月と6月の2カ月にわたって連載されたポッドキャスト、IABCフェローによる座談会「Circle of Fellows」第127回 Part 1・第128回 Part 2では、この問いに真正面から向き合いました。

テーマとなったのは、Dianne Chase氏を編集代表として7人のIABCフェローが執筆した『The 7 Cs of the New Communication Compass 』です。同書は、Amazon.comの「Leadership Training(リーダーシップ研修)」部門で第1位を記録しています。
座談会に参加したのは、Dianne Chase氏、Brad Whitworth氏、Shel Holtz氏、Zora Artis氏、Cindy Schmieg氏の5人。それぞれが担当した章を紹介しながら、約2時間にわたって活発な議論が交わされました。
本稿では、発言に沿って主要論点を、自社のコミュニケーションを点検する視点とともに紹介します。読みながら、「自社はどのCが弱いか」「明日、何を変えられるか」を考えてみてください。

7つのCはコミュニケーション技術≠リーダーシップの羅針盤

興味深かったのは、このセッションが単なる書籍紹介にとどまらなかったことです。議論を通して浮かび上がってきたのは、「AI時代だからこそ、人間にしかできないコミュニケーションとは何か 」という、コミュニケーション専門職の未来そのものでした。
これは職能の将来だけでなく、組織における人事・広報・社内コミュニケーションの存在価値を問い直すテーマでもあります。

Dianne Chase氏は、著書の企画について「不確実で、変動が激しく、不安定な現代社会では、さまざまな領域において、コミュニケーションを新しい形で高め、力を与え、そしてリードしていくことが、これまで以上に重要になっています」と説明します。
生成AIの登場、ハイブリッドワークの定着、世代交代、社会の分断、そして組織に対する信頼の低下。こうした環境変化の中では、従来の「情報を伝えるコミュニケーション」だけでは十分ではありません 。発信量や制作スピードだけを価値にしていると、AIで代替できる仕事との境界が曖昧になります。

これから問われるのは、情報を出したかではなく、情報を通じて関係、納得、行動を生み出したか です。

著書の中で提示された7つのC

  • Collaboration(協働)
  • Connection(つながり)
  • Compassion(思いやり)
  • Congruency(一貫性)
  • Cohesion(結束)
  • Community(コミュニティ)
  • Calibration(キャリブレーション)

これらは、そのような環境の中で組織を導くための「羅針盤」として位置づけられています。
しかし、この7つのCはチェックリストでも、コミュニケーション技法集でもありません。Dianne Chase氏は、それらを「未来のコミュニケーション・リーダーシップを導くコンパス」として位置づけています。

つまり、「どう伝えるか」ではなく、「どう組織を導くか」が著書のテーマなのです。
自社の施策を見るときも、「何を発信するか」だけでなく、「その発信によって誰と誰がつながり、どのような行動が変わるのか」まで設計する必要があります

7つのCはそれぞれがつながっている

興味深いのは、パネリストたちがそれぞれの章を個別のテーマとして語るのではなく、互いに関連する考え方として議論を展開していたことです。
あるテーマを語れば別のテーマにつながり、議論は自然に広がっていきました。その様子からも、7つのCが独立した概念ではなく、組織のコミュニケーションを支える一つの体系であることが伝わってきました。
協働がなければつながりは生まれにくく、言葉と行動に一貫性がなければ信頼は損なわれます。7つを別々の施策に分けるのではなく、自社の課題を立体的に捉えるために使うことが重要です。

Collaboration──「協働」はツールではなく文化である

Collaborationを担当したCindy Schmieg氏は、「協働」を次のように説明しています。
「人間関係を築くことであり、多様な視点を理解することであり、そして、成果や結果を生み出すことです。」

この言葉には、多くの企業がコラボレーションという言葉に抱きがちな誤解への問題提起が含まれています。ツールを導入し、会議体を増やしただけで「協働できている」と捉えていないでしょうか。
現在、多くの企業ではTeamsやSlackなどのコラボレーションツールが導入され、部門横断プロジェクトも増えています。しかし、それだけで協働が実現するわけではありません。チャネルの数や参加人数は、協働の質を保証しないからです。

Schmieg氏が強調したのは、協働とはツールではなく、人と人との関係性を築く営みだということです。異なる経験や価値観を持つ人々がお互いを理解し、共通の目的に向かって成果を生み出していく。
その文化を育てることこそ、コミュニケーション専門職が果たすべき役割だと語りました。担当者に求められるのは、場を用意することだけではなく、異なる声が成果につながるプロセスを設計すること です。

これは、日本企業が進める人的資本経営や部門横断のプロジェクトにも共通する課題でしょう。制度や仕組みを整えるだけではなく、互いを理解し、安心して意見を交わせる文化をどう育てるか。その問いは、多くの組織に共通しています。
まずは次の部門横断会議で、目的を同じ言葉で語れているか、異なる意見を安全に出せるか、誰が何を決めるかが明確かを確認してみてください。ここが曖昧なままでは、会議と投稿だけが増え、「協働したつもり」が残ります。

Connection──情報ではなく「関係」をデザインする

Brad Whitworth氏は、Connectionについて議論を進める中で、これからのコミュニケーション専門職の役割は、情報発信そのものではなく、「人と人とのつながり」を生み出すことにあるという視点を示しました。
情報は、今や誰もが簡単に手に入れられる時代です。しかし、情報が共有されることと、人がつながることは同じではありません 。同じ情報を見ても、対話がなければ解釈は分かれたまま です。

討論では、社員同士が自然に対話できる環境や、部門を超えて知識を共有できる仕組みを設計することが、コミュニケーション担当者の重要な仕事として語られました。関係が偶然生まれるのを待つのではなく、対話が起きる条件を意図的につくるということです。

社内ポータルやイントラネットを充実させるだけでは十分ではありません。情報を届けるだけでなく、「その情報をきっかけに人と人がつながる環境をどうつくるか」という視点が求められています。閲覧数や開封率だけで成果を判断すると、情報が届いたことと、関係が動いたことを取り違えてしまいます。

社員同士が相談しやすい雰囲気をつくること。部門を超えた会話が生まれる仕掛けを設計すること。そして、経営メッセージを「読む情報」ではなく、「自分事として語れるテーマ」に変えていくこと。発信する前に、「この情報をきっかけに、誰と誰に、何を話してほしいのか」を一文で定め、質問フォーム、対話会、上司との会話ガイドなど、対話への導線を一つ添えることから始められます。
Connectionとは、そのような「関係性のデザイン」 なのです。情報が届いていても、相談や部門を超えた対話が生まれていないなら、まだConnectionは実現していません。

Compassion──成果を生み出す「思いやり」

Compassion(思いやり)という言葉は、一見するとビジネスとは距離があるように感じるかもしれません。しかし、Dianne Chase氏は、この章でCompassionを感情ではなく、「行動として表れる共感 」と定義しています。

単に相手を思いやる気持ちではありません。相手を理解し、その理解に基づいて行動すること。それがCompassionです。「理解した」と伝えるだけでなく、制度、判断、日々の振る舞いを変えるところまでが含まれます。
Brad Whitworth氏は、その象徴的な事例として、ある電力ガス事業会社のCEOのエピソードを紹介しました。

そのCEOは社員に向かって、「私たちは愛をもって向き合う会社になる」と宣言しました。最初は多くの社員が戸惑ったそうです。しかし、その真意は、「社員一人ひとりに毎日必ず無事に家へ帰ってほしい」という、安全への強い願いにありました。
「愛」という言葉は抽象的に聞こえますが、その理念が現場の安全文化を変え、日々の安全行動や同僚への気遣いという具体的な行動へとつながり、結果として社員同士の信頼、さらには顧客からの信頼向上にもつながったと紹介されました。

Compassionとは、決して「優しい組織」をつくることではありません。人を大切にすることが、組織の成果や持続的な成長につながる実践的な力であることが、この事例からよく伝わってきます。たとえば社員の声を聞いた後、何を変えるのか、変えないならなぜかを必ず返す。聞くだけで行動しなければ、「声を上げても変わらない」という不信を招きかねません。

Congruency──言葉と行動が一致しているか

Jane Mitchell氏が担当したCongruencyは、Alignmentよりも深い概念として語られます。Mitchell氏は、Congruencyを、人々の目的、動機、仕事への関与が首尾一貫して結びついている状態として説明します。Chase氏はさらに、「ひと言で言えば、『言行一致』」だと述べます。

組織の価値観は、壁に掲げるだけでは意味を持ちません。行動規範や企業理念が、日々の判断やリーダーの振る舞いと一致して初めて信頼を生みます。
Mitchell氏は、価値観を理解させるにはストーリーが必要 だと述べます。なぜその価値観が重要なのか、自分の仕事とどう結びつくのかを語れなければ、価値観は単なる言葉で終わってしまいます。

最近の重要な意思決定を一つ選び、掲げる価値観と整合しているかを点検してみてください。整合していないなら、その理由や葛藤を説明する必要があります。どれほど丁寧なメッセージを出しても、言葉と実際の評価・判断が食い違えば、社員は行動のほうを信じます

Cohesion──組織変革に必要なのは結束を育て続けること

今回の討論で最も印象に残ったテーマの一つが、Zora Artis氏が執筆した「Cohesion(結束)」でした。
Artis氏は、長年低迷していたオーストラリアンフットボールの名門クラブRichmond Football Clubが、単に監督や選手を入れ替えるのではなく、「組織文化」を変えることで再生した過程を紹介します。

しかし、Artis氏が伝えたかったのはスポーツの成功談ではありません。
組織が変革を実現するためには、「結束(Cohesion)」がどのように育まれ、維持されるのかという、あらゆる組織に共通する課題でした。人員や制度を変えるだけでは、組織は同じ方向へ動きません。

Artis氏は、結束は一度つくれば終わるものではなく、共有された意味を生み出す(目的)→文化を築く→高いパフォーマンスを実現する→変化に応じて再び組織を更新する(Renewal)という循環を繰り返すもの だと説明します。
そして、多くの組織が苦労するのは、まさに最後の「更新」の段階だと言います。

「なぜなら更新(renewal)は、リーダーや人々に、それまでとは違うものを求めるからです。」とArtis氏は説明します。「それは、うまくいってきたものを手放すことを求めます。そして、その不確実性の中に身を置き、再構築することを求めるのです。」

成功体験がある組織ほど、「これまでうまくいった方法」を手放すことは容易ではありません。市場は変わり、人も変わり、働き方も変わる

それにもかかわらず、過去の成功に固執すれば、組織は徐々に活力を失っていきます。変革が進まない原因は、新しい施策が足りないことではなく、古い前提を手放せていないことかもしれません。

日本企業でも、長年築いてきた企業文化や仕事の進め方をどのように継承し、どのように更新していくかは共通の課題です。その意味でも、この事例は非常に示唆に富むものでした。自社の文化や仕事の進め方を「守るもの」「手放すもの」「新しく試すもの」の三つに分けて言語化することから始められます。何も手放さずに新しい方針だけを積み上げれば、現場の負荷は増え、変革は掛け声で終わります。

信頼は「価値観」ではなく、「結果」である

Richmond Football Clubが文化を変えた象徴的な取り組みが、選手もリーダーも互いに人生を語り合う「Triple H」と呼ばれる対話でした。
Hero(自分に影響を与えた人物)、Hardship(人生で経験した困難)、Highlight(人生で最も誇りに思う出来事)を語り合い、互いの人生を知ることで、相手を「役職」や「ポジション」ではなく、一人の人間として理解するようになったのです。

そのエピソードを紹介した後、Artis氏は今回の討論の中でも最も印象的な言葉を残しました。
信頼は価値観ではありません。信頼は結果なのです 。」

組織では「信頼」を価値観として掲げることがあります。しかしArtis氏は、それに異議を唱えます。信頼とは宣言するものではありません。「信頼向上」という言葉を掲げるだけでは、信頼は生まれないのです。

「行動こそが、あなたを信頼に値する存在にするものです。つまり、あなたは誠実に振る舞っているのか。一貫性をもっているのか。説明責任を果たしているのか。自分がやると言ったことを実行しているのか。」
そうした日々の行動を積み重ねた結果として、相手から与えられるものなのだと指摘します。

この考え方は、理念浸透や組織文化改革に取り組むコミュニケーション専門職にとって、大きな示唆を与えてくれます。信頼をテーマにした社内キャンペーンを始める前に、過去30日間に経営や担当部門が社員へ約束したことを棚卸しし、実行状況を伝える。信頼はメッセージで要求するものではなく、約束を守る行動で積み上げるものです。

Community──利益は企業目的ではなく、使命の結果

Shel Holtz氏が担当したCommunityでは、企業の存在意義そのものが議論されました。
Holtz氏は、企業目的を「利益を上げること」と説明するCEOに対し、いつもこう問い返すと言います。
「それは、どの会社にも当てはまることですよね。」
利益だけでは、その企業らしさは説明できません。では、何が企業を特徴づけるのでしょうか。
Holtz氏は、企業の目的と利益との関係について、その答えを次の一言に集約します。

利益とは、ミッションとパーパスを実践した結果として生まれるもの です。」
つまり、利益は企業活動の目的ではなく、使命や存在意義を実践した結果として生まれるものだという考え方です。パーパスが採用サイトや周年イベントの言葉にとどまり、日々の判断に使われていなければ、その企業らしさは社員にも顧客にも伝わりません。
だからこそ、企業は社員、顧客、地域社会、そして市場全体との関係を「コミュニティ」として捉え、その関係を育て続けなければならないと語ります。

さらにHoltz氏は、社内コミュニティの重要性にも触れました。
Employee Resource Group(ERG)など、多様な社員同士が安心して対話できる場を設けることは、単なる福利厚生ではありません。
それは、社員の声を経営へ届ける重要なコミュニケーション基盤 なのです。
ただし、場をつくるだけでは十分ではありません。そこで出た声がどこへ届き、誰が検討し、何が変わったのかを返す仕組み が必要です。
人事・広報は、コミュニティを「イベント参加者の集まり」ではなく、経営と社員をつなぐ意思決定の回路として設計することが求められます。

Calibration──数字ではなく、共有された真実をつくる

Ginger Horman氏が担当したCalibrationは、測定を超える概念として紹介されました。
Horman氏は、「Measurementは数字を生み出します。Calibrationは共有された真実を生み出します」と語ります。測定値が場所や時間によって同じ意味を持つのか、何を測るべきなのか、その結果をどう行動につなげるのかを問い直すのがCalibration です。

日本企業でもサーベイやエンゲージメント調査は広がっています。しかし、数値だけを見て安心し、自由記述や現場の実感と照合しなければ、現実を見誤ります。
Calibrationは、コミュニケーションを「測ったふり」で終わらせず、組織の学習と改善につなげるための考え方です。まず、直近のサーベイ結果を自由記述、現場との対話、実際の行動と照合し、最も重要な課題を一つに絞る。

そのうえで、期限と責任者を決め、実施後に社員へ結果を返す。調査を繰り返すだけで何も変えなければ、回答する側の期待と信頼を消耗させます

7つのCの根っこは「Trust」

討論の終盤で、Brad Whitworth氏は、Cindy Schmieg氏が事前に寄せた感想を紹介しました。本全体を読んで感じたこととして、「Trust(信頼)が7つすべてのCに共通して現れている」という指摘です。

これをきっかけに、パネリスト全員が「Trust」について語り始めます。
Cindy Schmieg氏は、「信頼は、あらゆる関係に必要です。」と述べます。
Dianne Chase氏は、「コミュニケーションの未来は、信頼にかかっています。」と続けます。
さらにShel Holtz氏は、信頼はコミュニケーションだけでは築けないことを強調しました。「信頼は、コミュニケーションだけによって生まれるものではありません。組織の行動によって生まれるものです。」
そしてZora Artis氏が、先ほどの「信頼は価値観ではありません。それは結果です。」という言葉で議論を締めくくりました。

著書にはTrustという章はありません。しかし、約2時間の討論を通して感じられたのは、Trustこそが7つのCを結びつける土台になっているということ でした。
つまり、7つのCは個別施策のメニューではなく、信頼に値する組織行動を設計するための枠組みです。どれか一つが欠ければ、発信が整っていても、社員に「信じられる」とは受け止めてもらえません。

AI時代だからこそ、人間が担うコミュニケーション

討論の最後は、AIの話題へ移ります。Brad Whitworth氏はユーモアを交えながら質問しました。「これからは7つのCをプロンプトに入力すれば、Copilotが全部やってくれるのでしょうか。」
この問いに対する答えは、パネリストによって少しずつ異なりました。

Dianne Chase氏は、「AIは思考のパートナー(thinking partner)にはなれる」と評価します。
Shel Holtz氏も、著書の考え方をAIに学習させ、社内コミュニケーションの傾向分析やCalibrationに活用できる可能性を紹介しました。
一方で、Cindy Schmieg氏は、「真正性(Authenticity)はAIには代替できません。リーダー自身が前に立たなければなりません。」と強調します。
そして、Zora Artis氏は議論を締めくくるように、こう語ります。「でも、私たちがここで話していることは、根本的には人間のことなのです。」さらに、「コラボレーションであれ、コネクションであれ、コヒージョンであれ、コンパッションであれ、そうしたものはすべて、対話を通じて築かれるものです。」と言葉を重ねました。

AIは文章を書き、情報を整理し、アイデアを広げることはできます。下書き、要約、分析をAIに任せることで、人は対話や意思決定により多くの時間を使えます。
しかし、人の経験を理解し、共感し、相手を信頼し、対話を通じて新しい意味を共につくることは、人間にしかできません

重要なのは、AIを使わないことではありません。AIに任せる領域と、人が最終判断し、説明責任を負う領域を明確にすることです。とくに経営メッセージや変革コミュニケーションでは、リーダー自身の言葉、文脈への理解、双方向の対話を手放してはいけません。

「伝える人」から「組織を動かす人」へ

今回のCircle of Fellowsを通して強く感じたのは、コミュニケーション専門職の役割そのものが変わりつつあるということです。これまでは、「伝えること」が中心でした。社内報を書く人。経営メッセージを発信する人。イベントを企画する人。
もちろん、それらはこれからも重要な仕事です。
しかし、発信物を完成させることだけを成果にしていると、AI時代に自分たちの価値を説明できなくなります。

 組織文化を育てること。部門を越えた協働を促すこと。
 リーダーの意思決定を支え、社員との対話を設計すること。
 組織の中に「信頼」を育むこと。

これらこそが、これからのコミュニケーション専門職に求められる役割なのだと、今回の討論は示していました。人事・広報・社内コミュニケーション担当者は、単なる制作部門ではなく、組織の意思決定と行動変容をデザインする存在へと役割を広げる必要があります

まとめ

『The 7 Cs of the New Communication Compass』が提示する7つのCは、そのための新しい視点であり、今回の討論は、それを実際の組織やリーダーシップの文脈でどのように生かすのかを、多彩な経験を持つIABCフェローが具体的な事例を交えながら語り合った貴重な機会でした。

生成AIの進化は、コミュニケーションの仕事を大きく変えていくでしょう。発信物を作ることだけを自分たちの価値と捉えるなら、AIは脅威になります。一方で、AIを思考のパートナーとして使い、人と人との関係を築き、組織に共通の意味を生み出し、変革を支える仕事へ時間を振り向けるなら、AIは強力な味方になります。

著書と今回のCircle of Fellowsは、そのことを改めて私たちに問いかける内容でした。日本のコミュニケーション専門職にとっても、自らの役割を見つめ直し、未来を考えるための多くの示唆を与えてくれるセッションだったと言えるでしょう。

まず今週、30分だけ7つのCで自社の施策を点検してください。最も弱いCを一つ選び、30日以内に試す小さな行動、責任者、社員へ結果を返す日を決める。羅針盤は、眺めるためではなく、進路を変えるためにあります。あなたの組織で、最初に動かすべきCはどれでしょうか。

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株式会社ソフィア

ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント

池田 勝彦

主にビデオ制作で撮影から編集までを担当しています。記事原稿も書いていますが、英語による取材・編集もやりますし、翻訳もできます。