2025.06.23

#組織開発

ビジネスにおけるレジリエンスとは?個人頼みではなく組織で育む回復力

レジリエンスとは困難から立ち直る「回復力」のことです。社員個人の頑張りに頼る”がんばれ論”では真のレジリエンスは育ちません。関係性や組織文化による支えを通じてこそ、企業は変化に強いしなやかさを発揮できます。本記事ではビジネスにおけるレジリエンスの意味と重要性、そして組織全体でレジリエンスを高める方法を解説します。

レジリエンスとは何か?定義と意味

「レジリエンス」とは、一言で言えば困難に直面しても折れずに素早く回復できる力のことです。もともと「弾性」「復元力」という意味で、物理学では外部から力が加わっても元の形に戻る素材の特性を指しました。そこから転じて、生態学では生態系がダメージから立ち直る力、心理学や経営の分野では個人や社会システムが逆境から適応・回復する能力を表す言葉として使われています。

ビジネスの文脈で語られるレジリエンスには、「個人のレジリエンス」と「組織のレジリエンス」の2種類があります。個人レベルでは、ストレスや失敗を経験しても柔軟に対応し、前向きに行動し続けられるしなやかなマインドセットや対応力を指します。例えば予想外のトラブルが起きてもパニックにならず、状況を受け入れたうえで最善策を考え実行に移せる力です。一方、組織におけるレジリエンスは、環境変化に柔軟に対応し自らを変革できる企業文化や職場環境のことを意味します。つまり人で言う「適応力・回復力」を、組織全体が備えている状態です。

平たく言うと、レジリエンスとは組織や個人に「予期せぬ困難が起きても、折れずに素早く立ち直れるしなやかな強さ」のことです。

レジリエンスは個人の資質と捉えられがちな面もありますが、それだけでは語れません。実はレジリエンスは周囲のサポートや環境要因にも大きく影響されることが研究で示されています。2024年のある分析では、”周囲から得られる支援(ソーシャルサポート)の充実した人ほど困難に対してレジリエントな反応を示しやすい”との報告があります。このように、レジリエンスは決して一人で完結する能力ではないのです。

ビジネスにおけるレジリエンスとは?

では、なぜ今ビジネスの場で「レジリエンス」が注目されているのでしょうか。ここではまず、企業や個人を取り巻く環境変化とレジリエンスが求められる背景について整理します。その上で、「個人頼みの対策ではなぜ不十分なのか」という視点からレジリエンスの重要性を考えてみましょう。

ビジネスにおいてレジリエンスが注目される背景

現代のビジネス環境は変化のスピードがかつてなく早く、将来を正確に予測することが困難になっています。この状況で企業が生き残り成長していくためには、想定外の事態に直面しても素早く回復し、柔軟に対応できる力、すなわちレジリエンスを備えておく必要性が高まっているのです。

例えば、直近の出来事であるコロナ禍を振り返ってみましょう。行動制限による業務停滞、サプライチェーンの寸断、物資不足、急ピッチのリモートワーク導入、さらには職場の感染対策など、企業は次々と未知の困難に直面しました。こうした事態においてレジリエンスが高い企業は、混乱の中でも柔軟に働き方を変えたり、新しいサービスを打ち出したりしていち早く軌道修正できた一方で、変化に対応できない企業は大きく業績を落としたり最悪の場合経営危機に陥ったりしました。

また、日本は自然災害のリスクも高く、地震や台風など予期せぬ外的ショックがビジネスを直撃する場合もあります。さらにテクノロジーの進歩による市場の破壊的変化や、地政学リスク(国際情勢の変化によるサプライチェーン寸断等)など、ビジネスを取り巻く困難はいつ、どこで、どんな形で発生するか分からないのが実情です。そのため、「何が起きても立ち直り事業を継続できるしなやかな企業」であることが、これまで以上に重要視されているのです。

加えて、ビジネスの急速な変化は働き方や労働環境にも影響を及ぼします。急な市場変化に対応するため組織構造が変わったり、新しいスキル習得が求められたりすれば、社員一人ひとりにストレスや負荷がかかります。こうした職場環境の変化によるストレスに対しても、各個人が折れずに業務を遂行し、組織全体でビジネスを前に進めていくために、個人レベルのレジリエンスも確かに重要なのです。

ビジネスにおけるレジリエンスの重要性

では、組織としてレジリエンスを高めることの重要性を改めて考えてみましょう。結論から言えば、事業環境の変化に柔軟に適応し、ダメージから素早く回復しながらビジネスを持続させるためにレジリエンスは欠かせません。環境変化への「適応力」「復元力」を備えていれば、新たなリスクにも耐え、逆にチャンスを活かして成長することも可能です。

そして肝心なのは、そのレジリエンスを組織として発揮できる状態にしておくことです。たとえ組織内に非常にレジリエンスの高い個人がいたとしても、組織全体がレジリエント(しなやかで復元力のある状態)でなければ、急激な事業環境の変化に十分対応することは難しいでしょう。実際、Harvard Business Reviewも「個々の社員のレジリエンスだけでは組織全体の改善や支援の代わりにはならない」と指摘しています。組織としてレジリエンスを備えるためには、組織の構造や意思決定プロセスなどハード面の整備と、企業風土や社内コミュニケーションといったソフト面の醸成の両方から取り組む必要があります。言い換えれば、組織レジリエンスとは個人の精神論を超えた、構造と文化の両面からアプローチすべき経営課題だということです。

レジリエントなビジネス組織づくり

事業環境の変化や予期せぬトラブルに柔軟に対応できるレジリエントな組織を実現するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。本章では、企業内の主体を「現場・チーム」、「全社・経営」、「部門」という3つのレベルに分けて、それぞれで重要となるポイントを整理していきます。

現場・チームレベル: 「意思決定と選択に”あそび”があること」

まずは現場(チーム)レベルでのレジリエンス強化策です。変化やトラブルに強い現場の特徴としてよく挙げられるのが、問題解決の手段に多様なバリエーションがあることです。平たく言うと、ひとつのやり方に固執せず複数の選択肢を用意しておくということです。

その前提として重要なのは、現場で状況判断をして対応できるように、意思決定の権限がある程度委譲されていることです。トップダウンで細部まで指示待ちの状態では、柔軟な対応は望めません。そのうえで、現場の判断で状況に応じた様々な意思決定・対応策を取れるよう、日頃の手順やルール、スケジュールに少し”あそび”(余裕)を持たせておくことが有効です。そうしておけば、予期せぬ事態に直面しても余裕をもって対処しやすくなります。

これはビジネス用語で「冗長性(じょうちょうせい)」とも表現されます。無駄を省き秒単位で効率を追求する従来型のマネジメントから見ると、冗長性は一見ネガティブにも思えます。しかし、不確実性が高まる時代においては短期的な効率より長期的なリスク管理の観点で重要視されるようになってきました。具体的な方策として、例えば以下のようなものがあります。

  1. 納期に余裕(バッファ)を持たせ、調整・交渉できるようにする – 全てをギリギリで詰めず多少の余裕日を設けておくことで、想定外の遅延にも慌てず対応できます。
  2. 同じ業務を担える代替要員や拠点を複数確保しておく – 特定の人や部署だけにノウハウが集中しないようにし、誰か欠けても業務が回る体制にします。
  3. 収益源や手段を複線化する – 単一の製品・サービスだけに依存せず、複数の収益モデルを持つことで市場変化への耐性を高めます。
  4. チーム内で指示変更や役割替えを柔軟に受け入れる – 状況に応じてリーダーや方針を変更する場合でも円滑に合意し協力できる文化を育みます。

上記のように、結果(アウトプット)への執着を少し緩め、プロセスに余地を残して信頼して任せることがポイントです。こうした「現場のレジリエンス」の成否は、現場を率いるマネジメント層の手腕にかかっています。従来の効率重視型マネジメントでは、納期や手順を厳格に管理し、少数精鋭で決まったやり方を突き詰めるのが王道でした。しかし不確実性が高い時代には、このような”冗長さ”をあえて管理する発想が求められます。そのためには、マネージャーがメンバーに対して日々より抽象度の高い視点や目的を示し、裁量を持たせるコミュニケーションを心がける必要があります。言い換えれば、細かな指示出しではなく「何を成し遂げるべきか」というビジョンを共有して任せるマネジメントへシフトするということです。

もっとも、現場レベルで冗長性を確保しレジリエンスを高めようとしても、経営層からの理解と支援がなければ現場だけで実行するのは難しいでしょう。納期に余裕を持たせるにも、複数人員配置にも、経営判断やリソース投資が伴います。したがって、次に挙げる経営レベルでの取り組みによって現場のレジリエンス強化をサポートしていくことが不可欠です。

全社・経営レベル: 「抽象的で高次元な目的意識の浸透」

次に全社・経営レベルでのレジリエンス強化ポイントです。経営トップや本社部門が果たすべき役割は、平時から組織全体に高次元な目的意識を浸透させておくことにあります。

変化の激しい環境下では、そもそも「計画」というものの意味合いが変わってきます。中長期の経営計画も状況に応じて柔軟に修正できるよう、複数のシナリオをあらかじめ用意したり、状況変化に即応して計画を見直したりする必要があります。ここで重要なのは、計画が変更される前提を共有しつつ、その背景にある高次の目的・ビジョンを社員全員が理解していることです。計画そのものより、「何のために我々は存在し何を成し遂げたいのか」という組織のミッション・ビジョンが全社的に腹落ちしている状態が理想です。それにより、たとえ計画変更があっても各所で柔軟に判断・対応でき、全社レベルのレジリエンスの土台が支えられます。

そのために経営層が果たすべき具体的な役割として、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • ビジョンに立脚した中期経営計画を示し共有すること – 単なる数値目標の羅列ではなく、「我が社は何を目指し社会にどう貢献するのか」という根幹のビジョン・価値観を示したうえで経営計画を策定・展開します。計画が変更になる場合も、根底にあるビジョンとの関係性を説明して共有します。
  • 自社を取り巻く社会環境の情報を社員に積極的に提供すること – 業界動向や技術トレンド、社会課題など、会社に影響を及ぼしうる外部環境についての情報を社内報や朝会等で共有し、社員が主体的に先々の変化を考えられるようにします。
  • 現場の判断の拠り所となる理念・価値観を浸透させること – 社是やクレド(行動指針)を形骸化させず日常業務で引用・活用するなど、社員が意思決定に迷ったとき立ち返れる共通の指針を持たせます。

このように、経営陣が示すべきビジョンや情報提供、価値観の共有は、レジリエンスの高い組織を築くうえで非常に重要です。つまり、社員が自律的に動けるよう前提を整えてあげることが経営トップの使命なのです。ちなみに、株式会社ソフィアではこのようにビジョン・バリュー・カルチャーを社内に浸透させ、社員が自ら体現し外部に発信できる状態を目指すコミュニケーション活動をインターナルコミュニケーション(IC)と定義しています。ICを通じて「社員が企業理念を深く理解し、自らの言葉で語れるようになる」ことは、社員一人ひとりの行動判断を支えると同時に、組織全体のレジリエンス強化にも直結するのです。

部門レベル: 「異なる専門性の連携によってさらに多様な手法を取る」

最後に部門レベルでのレジリエンス強化策について考えます。企業全体としてみた場合、事業領域やアプローチ手段が一つしかないより、複数ある方がレジリエンス(耐久力)は高まるといえます。極端な例を挙げれば、雨傘だけを売っているお店は一年間雨が降らなければ経営が成り立ちませんが、晴雨兼用の日傘も売っていれば何とか売上を確保できます。つまり事業ポートフォリオの多様性が高ければ、ある領域が不振でも他で補えるため組織全体としての復元力が増すのです。

ここで重要になるのが、企業内の各部門の連携です。複雑な環境変化や予期せぬ事態に対しては、営業・開発・カスタマーサポートなど各部門の専門性を組み合わせて多角的な対応策を講じることが求められます。しかし実際には、多くの企業で部門間の壁は厚くサイロ化と呼ばれる状態に陥っています。他部門の状況や業務内容がほとんど共有されず、各部門が自部門の目標達成だけを優先して縄張り意識すら生じているようでは、組織横断的な連携など望むべくもありません。このような状態では新しい発想も生まれにくく、環境変化への組織対応力は低下してしまいます。

レジリエントな組織を目指すなら、部門間の壁を打ち崩し情報やリソースを融通し合う風土を醸成する必要があります。そのための具体策として、まず部社内ポータルサイトやグループウェアなどデジタルツールを活用して、署横断的に活動状況や知見といった情報を共有する仕組みを整えましょう。また、部門間連携を促すためには評価制度や目標管理の仕組みに工夫を凝らすことも有効です。部門ごとに数値目標を与えて競わせるだけでは対立を生む恐れがあるため、全社共通の目標に対して各部門が協働した成果を評価するようなKPI設定にするなど、連携インセンティブを高める方法も一つの手でしょう。

さらに日常的にも、部門の垣根を越えたコミュニケーションの活性化を促すことが大切ですが、単に雑談の機会を増やすだけでは不十分です。最終的には業務上の情報交換や知識共有が活発に行われる状態を目指しましょう。たとえば定期的なクロスファンクショナル会議(複数部署合同の打ち合わせ)を設けたり、プロジェクト横断型のタスクフォースを編成したりするのも有効です。最近では社内SNS等で他部署の人とも気軽に質問・相談できるようにする企業も増えています。こうした「組織内の知の巡り」を良くする施策によって、いざというとき迅速に部門横断チームを組んで問題解決に当たれる柔軟性が生まれるでしょう。

以上、現場・経営・部門という3つのレベルからレジリエントな組織づくりのポイントを見てきました。ここで改めて浮き彫りになるのは、ハード面(制度や構造)以上にソフト面(人や文化)の重要性です。どんなに仕組みを整備しても、人材育成や企業風土といったソフト面がネックになるとレジリエンスは発揮できません。次の章では、このソフト面の変革についてさらに掘り下げてみましょう。

人材育成や企業風土といったソフト面の変革が必要

レジリエントな組織を作るうえで最大の課題となるのが、人材育成や企業風土といったハードには見えにくいソフト面です。いくら制度やプロセスを整えても、以下のような状態では真のレジリエンスは実現できません。

  • 重要な情報が特定の人や部門に閉じてしまい共有されていない – 情報が偏在すると現場の判断材料が不足し、非常時に適切な対応が取れなくなります。
  • 上意下達の命令が絶対で、現場が受け身になっている – 部下は指示待ちで自ら考えて動かなくなり、想定外の事態に対応する創意工夫が生まれません。
  • 「空気を読む」ことが優先され多様な意見が出ない職場文化 – いわゆるハイコンテクストなコミュニケーションが支配的で、異なる視点を持つ人材が声を上げにくい雰囲気では、新たな発想や変革の芽が摘まれてしまいます。

このような企業文化上の問題を抱えていては、組織がどれほどレジリエンスのポテンシャル(潜在能力)を持っていても発揮されません。情報共有を促進するITツールの導入などハード面のテコ入れは比較的容易ですが、文化・風土といった部分は一朝一夕には変えられない難しさがあります。たとえ表面的に人材育成プログラムを刷新しても、各職場での日々のコミュニケーションが変わらなければ組織は変わらないのです。

では、ソフト面を変革し組織のレジリエンスを高めるにはどうすれば良いのでしょうか。重要なのは、経営トップが組織の目指す方向性(ビジョン)を明確に打ち出し、それを踏まえて社内コミュニケーションや人材育成の在り方を見直すことです。前章で述べたようにビジョンが社員に浸透していれば、多少ルールを緩めても各々が判断基準を持って動けるようになります。そのうえで、例えばコミュニケーション活性化のためのツール導入(情報の可視化・伝達スピード向上)と、心理的安全性を高めるマネジメント研修や1on1ミーティングの定着などソフト面の施策を組み合わせて検討すると良いでしょう。

ここで参考になるのがダニエル・キム教授の「成功循環モデル」です。同モデルによれば、組織内で「関係の質」=コミュニケーションの質を高めると、相互理解や協調が進み社員が仕事に前向きさを感じるようになります。その結果「思考の質」が向上し、自ら考え行動する力(=「行動の質」)が高まり、成果(結果の質)が出て、さらに関係の質が良くなるという好循環が生まれます。逆にコミュニケーションをおろそかにして成果だけを求めると、命令や批判が増えて関係が悪化し、社員は萎縮して思考・行動の質が低下し、結果も出ず…という悪循環に陥ります。まさに「人と人との関係性こそが組織パフォーマンスを左右する」ことを示したモデルと言えるでしょう。

この成功循環モデルが示唆するように、レジリエンスの源泉も人と人とのつながりにあると考えられます。組織として変化に挑むスピード感や前例のない課題に取り組む柔軟性は、そこで働く人々同士の信頼関係やコミュニケーションの質に大きく左右されます。ですから、組織のレジリエンスを高めたいならハード面だけでなくソフト面にも十分目を向ける必要があるのです。言い換えれば、「社員同士が支え合い安心して挑戦できる風土」を醸成することが、最終的にはどんなマニュアルよりも強力な非常時の拠り所となるでしょう。

要するに、レジリエンス強化はハード面の整備だけでなく、人と人との関係性を重視したソフト面の変革が不可欠だということです。

ビジネスにおけるレジリエンスとアジリティ

最後に、近年ビジネスで重要視されている「アジリティ(敏捷性)」の概念にも触れておきます。レジリエンスとセットで語られることも多いこのアジリティですが、一体どのような関係にあるのでしょうか。本章ではアジリティとレジリエンスの関係性について解説していきます。

アジリティとレジリエンスの関係性

組織のアジリティとは、環境や状況の変化を素早く捉え、俊敏かつ的確に判断・行動できる能力を指します。アジャイル(俊敏)とも呼ばれ、企業がこれを備えていれば新しいリスクや機会をいち早くキャッチし、競合他社より先手を打って戦略を練り行動に移すことができます。近年はDXの進展により、自社の業績や市場の変化をリアルタイムにデータで把握できるようになり、政府や公的機関が公開する各種データから社会環境の兆しを察知することも容易になりました。そのため、ビジネスで俊敏に意思決定できる組織アジリティの効果は以前にも増して大きくなっています。

一方のレジリエンスはここまで述べてきた通り、予測不能な逆境に陥っても折れずに素早く立ち直る力です。アジリティが「先を読む俊敏さ」だとすれば、レジリエンスは「不測の事態に対処する粘り強さ」と言えるでしょう。こう聞くと、片やスピード重視、片やリカバリー重視で両者は相反する概念のように思えるかもしれません。しかし、いずれも「環境変化に迅速に適応する」という点では目指す方向は同じです。変化の激しく先の読めない現在においては、日頃から俊敏な行動でチャンスを掴みに行きつつ、「万一の時に備えて余力を残しておく」ようなアジリティとレジリエンスの双方の強みを兼ね備えた組織を目指すことが重要だと言えるでしょう。

ビジネスの現場では短期的な業績目標に注目が集まりがちですが、目先の業績ばかりを追い求めていては組織としてのレジリエンスは手に入りません。多くの企業は効率化を突き詰め売上・利益を伸ばしてきたため、その枠組みの中では冗長性や多様性を持ち込むことに抵抗を感じるかもしれません。しかし業績とレジリエンスは基本的にトレードオフの関係にあり、真のレジリエンスを得るには経営としてあえて非効率を許容すべき局面もあるのです。要するに、「柔軟で俊敏な行動をとりつつ、何かが起きた時のための余力も持つ」という両面があってこそ、これからの企業は安心して持続的に成長できるでしょう。

幸い、アジリティの向上とレジリエンスの向上には共通点も多いことが分かっています。組織の可変性(変化に合わせて自ら組織構造やプロセスを変えられること)や、社員一人ひとりの自立性(自ら考え動けること)、そしてコミュニケーション能力(情報を集め意思決定を円滑に行うこと)などは、実はアジリティにもレジリエンスにも共通して重要な要素です。デジタルツールの活用による情報の可視化や社内コミュニケーョンの高速化なども、組織のアジリティ・レジリエンス双方に寄与するでしょう。土台にある適応力を磨けば、俊敏さと粘り強さの両方が手に入るわけです。

逆に言えば、アジリティとレジリエンスは対立するものではなく、組織の適応力という共通基盤の上に成り立つ相互補完的な能力だということです。

まとめ

変化の激しい現代において、レジリエンス(回復力)は企業が持続的に成長するための重要な資質です。ただし、それは個人の「折れない心」だけに頼って獲得できるものではありません。本記事で見てきたように、真のレジリエンスは組織内の豊かな関係性やしなやかな職場文化の中でこそ育まれるものです。

効率最優先で最適化された従来型の経営手法に慣れている企業にとって、ビジネスにあえて冗長性や多様性を取り入れるのは非効率に思えて抵抗があるかもしれません。しかし、目先の業績ばかりを追う限り組織としてのレジリエンスは得られないという点は押さえておく必要があります。時には経営判断として「余白」や「遊び」の部分を残し、あえて効率を二の次にする勇気も求められるでしょう。短期的な成果と長期的なレジリエンスはトレードオフの関係にあります。将来の不確実性に備えるためには、一時的な非効率を受け入れる場面もあるということです。

幸い、社内のコミュニケーション改革や人材のエンパワーメント(自主性尊重)などを通じて、アジリティ(敏捷性)とレジリエンス(復元力)を同時に高めていくことも可能です。情報共有を円滑にし意思決定をスピーディーにすること、挑戦や対話を促す心理的安全性の高いチームを作ることなどは、どちらの能力向上にも寄与します。要するに、環境に適応する組織の「しなやかさ」を追求することで、俊敏さと粘り強さの両立が図れるのです。

レジリエンスは変化が激しく困難の多い時代だからこそ、一層求められる資質と言えます。そしてビジネスが過渡期にある今こそ、「レジリエンスでアジャイル」な状態、すなわち柔軟さと素早さを兼ね備えた組織を目指すことが肝要です。社員の頑張りだけに頼らず、支え合う関係性と健全な文化を培うことで、どんな逆風にも折れない強い企業を築いていきたいものですね。もし自社の組織づくりにおいてレジリエンス強化のヒントをお探しの場合は、ぜひお気軽に無料相談や資料請求をご活用ください。私たちソフィアは、インターナルコミュニケーションの視点から貴社の組織レジリエンス向上を伴走支援いたします。

株式会社ソフィア

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ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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