DX推進に立ちはだかる社内の反対の声とどう向き合う?状況別傾向と対策

2021年9月、新たな政府機関としてデジタル庁が設置されました。2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマンによって提唱された「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の概念が、日本でも定着した象徴的なできごとと言えるでしょう。
近年では数多くの企業が着々とDXに対する取り組みを進めているため、この記事をご覧の方のなかにも社内のDX推進担当者がいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、2020年にボストンコンサルティンググループが行った調査によると、実際にDXに取り組んだ日本企業のなかで成功したのはわずか14%に過ぎないという結果が報告されています。

重要性・必要性を感じてDXに取り組む企業は多くあるのにもかかわらず、実際の成功事例が少ない背景には、戦略や予算など多くの要因が関係していると考えられます。なかでも、DXを組織全体へスケールさせていく際の大きな課題となる要素は、これまでの仕事のやり方を変えることに抵抗がある、社内の「反対勢力・抵抗勢力」の存在です。
変革を是とするDX推進側の立場からみると、こうした守旧派は過去の体験にこだわり組織の成長を妨げる「敵対勢力」として認識されがちです。

きっと皆さんのなかにも、大きな声では言えないものの、そのような「反対勢力・抵抗勢力」の存在による推進力低下を感じたことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、新しい物事に取り組む際には、旧来のやり方が否定されてしまうのかという反発や、未知の事象に対する不安、費用対効果への懸念などが生じるのはむしろ当然のことなのかもしれません。
この記事では、DXの推進が社内での反対の声に押され進展しないという状況を防ぐために、それら反対勢力・抵抗勢力の状況別に対策方法を紹介してまいります。

DX推進は誰の役割?「デジタル化」と「トランスフォーメーション」のジレンマ

DX推進に反対する大きな理由としてよく挙げられるのは、

  • デジタルを使いこなせれば便利になるのは理解できるが、ついていけるか不安
  • 変えていくのは費用も時間もかかり、投下コストの回収見込みがつきにくい
  • 通常の業務を行いながら移行するので、仕事の円滑な遂行を妨げる
  • 現状の仕組みでも不自由なく間に合っているので、無理して変える必要性がない

というような意見です。
こうした声が発生する原因は、現場も管理者もDXに対して腹落ちできていないことにあります。そもそも、DXを推進する主体者は誰なのでしょうか。現場の役割なのか、それとも経営者・管理者が担うべきものなのか。まずはDXという言葉から、DXを推進が誰の役割なのかを考えてみましょう。

DXの概念は、「デジタル(化)」と「トランスフォーメーション」という2つの単語から成立しています。

・デジタル化:デジタルを活用した「業務改善」
 → 本来は現場主導のボトムアップで進めるべきもの

・トランスフォーメーション:事業や業務の「変革」
 → トップダウンで全体像を描いて進めるべきもの

デジタル化は、たとえばそれまでタイムカードを用いてアナログで管理していた勤怠管理を、クラウドを使ってスマホやPC上で行うように変更するような事例が当てはまります。これにより、打刻ミスの訂正作業や集計、給与計算など勤怠管理が関係する業務は大きく効率化し、休暇や交通費の申請も書類交付がなくなって、申請者も現場担当もその時間や手間から解放されます。
また、マネジメントの立場から見れば、有給や育児休暇の取得状況、事業所ごとの勤怠状況、アルバイト・パートのワークバランスなど、さまざまな情報が俯瞰的に把握できるようになるため、業務の変革や事業上の判断に資する大きな意味を持ちます。これがすなわち、トランスフォーメーション(変革)です。

「デジタル(化)」と「トランスフォーメーション」の両面で成果をあげるためには、「部署を超えた業務システム全体の視点」と「現場の状況の改善につながる実際的な視点」のどちらもが必要です。
どちらかの視点が欠けている場合は、仮に実業務を熟知している現場から業務改善のアイデアが出されても「費用対効果が明確でない」等の理由で稟議が通らなかったり、逆にトップダウンで進められた新しい仕組みが現場のニーズに合わず、結局誰も使わないなど、面従腹背を生む原因となったりします。

現場主導でもトップダウンでもうまくいかないというジレンマを解消するためには、現場と決裁者のどちらが主体か、という考えを超えて両者を一体とした取り組みを行わなくてはなりません。
そのためには、導入に対して顕在的・潜在的に抵抗する人々の「誰が、どういう理由で反対・抵抗しているのか」を把握し、それぞれの「腹落ち」をうながすことが大切です。

「腹落ち」について、詳しくはこちらをご覧ください

DX抵抗勢力のタイプと傾向に合わせた対策方法

私たちソフィアは企業の組織改革と、そのためのインターナルコミュニケーション支援を主な事業としており、さまざまな企業の現場にかかわってきました。その経験を踏まえて、DX推進を阻む社内要因の傾向と、それに対する対応策の考えを解説します。

現場主導の取り組みで、決裁者が抵抗するケース

まず挙げられるのは、現場が推進したいとするDXのあり方に対し、決裁者(権限を持つ上長や経営陣)の側が抵抗感を示してGOサインを出さないケースです。どのような要因が考えられるのか、それぞれの立場や役割を踏まえてみていきましょう。

考えられる原因

このようなケースでは、決裁者は大きな潮流としてDXの波が来ていることを理解していても、自社や組織に導入するのは時期尚早と判断している場合が多いです。

DXが企業の戦略として位置付けられていなければ、現状の業務推進やほかの事業戦略課題が優先され、デジタル化は後回しにされるでしょう。また、トップがDXに期待しているにもかかわらず、現場の決裁者がその重要性や緊急性を理解していない、できていないために壁が生じている場合も考えられます。

対策方法

「現場主導の取り組みで、決裁者が抵抗するケース」の対策としては、ボトムアップ型のプロジェクトを立ち上げる際と同じように、決裁者の理解や共感をうながす下記のような取り組みが効果的となります。

・DXの重要性を語る
 データや事例、競合他社の動きなどの情報を集めて「やり方を変えない=停滞ではなく退化」であることを認識させる。

・DXの費用対効果をデータで語る
 導入した場合と現状維持の場合のシミュレーションを行って、得失のバランスを視覚化したフィジビリティ・スタディ(実現可能性調査)をデータで示し、中長期的に投資が回収できること、機会損失を防げることを納得させる。

・ありたい姿を明確にする
 現場における業務プロセスのそもそも論や、今後どうなるべきなのか、社会状況や業界動向などのSWOT環境分析などを示して目指すビジョンを明確に提示する。

・チームを作る
 DX推進に向けた社内チーム(PJ化)を立ち上げ、決裁者もメンバーに加えて一体化した仕組みづくりに協力してもらう=決裁者を巻き込む。

・DXへの覚悟を語る
 経営陣に対して定期的なPJ報告や、プレゼンテーションを行い、議事録は社内公開して期待感や機運を形成する=外堀を埋める。

会社主導の取り組みで現場が抵抗するケース

次に、企業や決裁者はDXを進めたいと考えているものの、現場側から「そうは言っても余裕がない」「思い付きで改革を始められても現場は困る」という声が上がるケースがあります。

これは、現場の側がDXの重要性や緊急性を理解しておらず、得られるメリットの大きさに気づいていないことが原因です。導入が現場にとって決してマイナスにならず、むしろ資することが大きいという理解を「腹落ち」とともにうながす施策を展開することが肝要でしょう。

考えられる原因

現場の社員一人ひとりはすでに日常業務を抱えています。そのため、プロセスに影響を与えるような変革は「業務に負荷を与えるマイナスの要素」として認識され、排除や無視といった行動に結びついてしまうのです。また、組織の暗黙知として属人的に持っている知識がデジタル化によりオープンになってしまい、自分の存在価値が薄れることを恐れる人もいるでしょう。

対策方法

「会社主導の取り組みで現場が抵抗するケース」においてもやはり、「DXの重要性」を語ることで、現場が腹落ちできるレベルでDXの有効性や重要性を理解・共感してもらうことが重要です。

データや事例、競合他社の動きなどの情報を集め、「やり方を変えない=停滞ではなく退化」であることを認識してもらわなくてはなりません。タイプとしては下記の3つが考えられます。

  • タイプ1:「変化自体にNO!今のままで十分なのになんで変えなきゃいけないんだ」絶対反対派
  • タイプ2:「賛成だけど(やるべきなのはわかるけど)私の業務は変えられないですね」総論賛成各論反対
  • タイプ3:「反対しないけど何もしない……」サイレント反対集団

では、それぞれの状況に合わせた対策方法をみていきましょう。

・タイプ1:不安を吐き出す場づくり
DXへの懸念点、疑問点を集め、それを解消していく/DXをすることによるメリットを明確に伝えると共に、やらないでいる場合のデメリットを強く理解させる。

・タイプ2:むだに気付かせる・実施の機会をつくる
業務の可視化やフローの可視化により、改善される可能性を提示し、実際に小さな改善を積み重ねることで改善の楽しさを実感・体感してもらう。(「5分かかっていた作業を、自動化することで5秒にしましょう」等)

・タイプ3:語る人を変える・「みんなやっている」状態を作り出す
経営トップや新入社員からメッセージを発信してもらい、無視しづらい雰囲気に。インナーメディアを活用して社内の風土や機自体を盛り上げ巻き込んでいき、自身がやらざるを得ない状態へ持っていくことで、腰を上げさせる。

まとめ

トップダウンにしろボトムアップにしろ、DXの推進で大切なのは、それがただの流行や現場レベルの改善ではなく「企業戦略のなかに位置づけられたものとして明確なビジョンが示されている」ということです。
トップのコミットメントが不可欠ですが、常にそれができるとは限らない場合もあります。企業変革という面からは、現場から粘り強く会社を変えていった事例も少なくありません。

また、たとえトップのコミットメントがあったとしても、拙速なやり方で現場に変化を強要した結果、面従腹背を生んでしまうのでは本末転倒です。
DXを進めるためには、「現場」と「決裁者」の両方を味方につけてコミュニケーションを取ることが大切であり、最後の段階でトップにご登場いただくのがプロセスとしては望ましいでしょう。
DXを推進する事務局が担う役割は、いわば調整と根回しという地道な、縁の下の力持ち的作業です。部門間の利害関係などが原因で、社内での調整が難しくコンフリクトが起る場合や、経営の上層部を納得させるデータを現場で集めるのが難しい場合などには、外部の専門家など第三者が介入することも有効です。

DXを推進する上で、適切なコミュニケーションの手法や組織のあり方について、また自社に合ったDX推進の方策についてお困りの際は、ぜひソフィアにご相談ください。

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