腹落ちとは?社員を動かす原動力となる腹落ちについて解説

腹落ちという言葉を聞いたことがあるでしょうか。腹に落ちるともいいますが、言われた内容に心から納得している状態のことを指します。

一方、一見納得しているように見えても内心では反発している状態は「面従腹背」。ほかにも、腹が黒い、腹が据わる、腹が立つ、腹に一物、腹を固める、腹を決める、腹を読む…など「腹」を含む用語から推察されるように、「腹」は「心中」のような意味合いを持つことがわかります。実際に辞書でも「腹」という言葉は「「心」「胸のうち」という意味を含むことが示されています。

「腹」関係した言葉の中で、特に仕事の場でよく耳にするのは「腹落ち」という言葉ではないでしょうか。会社では、経営層やマネジメント層からトップダウンで現場に指示を出したり、社員教育を行ったりすることが多々あります。しかし、トップダウンの指示や情報に対して社員が腹落ちしていない状態では、企業活動にさまざまな弊害が生じます。

本記事では、社員が主体的に行動を起こすカギとなる「腹落ち」について詳しく解説していきます。

腹落ちとは

腹落ちの定義について、辞書を引用して解説します。(Weblioより引用)。

『納得すること、成程と思うこと、腹に落ちること、などの意味の表現』

頭で理解していても、感情的には反発している状態があります。これは腹落ちしていない状態です。

そもそも、なぜ腹落ちをしないのでしょうか?
実は、腹落ちしない原因は上司と部下の関係性の問題ではありません。

では、十分な状況が提供され、やるべきことが理解できれば腹落ちするのでしょうか?政府が力を入れている施策であり、多くの企業の戦略にも組み込まれている「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を例に考えてみましょう。

働き方改革が日本国内でとくに注目を集めるようになったのは働き方改革関連法が成立した2018年6月、DXについては経済産業省が「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を発表した2018年9月以降です。そこから政府やメディアはさまざまな情報を発信し、多くの企業もこれらを中期経営計画などの戦略に盛り込み、プロジェクトチームを立ち上げるなどで具体的な進め方を検討し、社員に対して働き掛けてきました。
しかしそれらの活動が軌道に乗り、2019年までに本格的な在宅勤務の導入などワークスタイルの変革に成功した企業はごく一部でした。トップダウンの指示で、十分に情報が与えられていても、実際に活動を推進する条件としては不十分だということが読み取れます。

しかし、2019年には国内企業での実施率が16.3%だったテレワークは2020年には42.6%と急激に伸びました(IDC Japanによる調査)。それまでは「国がやれと言うから」「経営がやれと言うから」という意識で、DXや働き方改革に足して受身の姿勢だった企業や社員も、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)拡大下では変わらざるを得なかったはずです。それは、COVID-19に感染しないこと、感染を広げないことはどの企業にとっても、企業内の誰にとっても無関係ではなかったからではないでしょうか。

つまり、「やらなければならない」「やり方がわかる」状態から「できる」「やる」状態へ変化させるためには、企業なり個人なりが、その必要性を自分事として受け止める機会が必要なのです。それは、当事者が明確に「やらないことによる不利益・やることによる利益」を理解でき、それによって「やらないことによる不安・やることによる安心」という感情が生じるということかもしれません。「やるべきである」という押しつけと、「こうすればできる」という情報だけでは、社員の行動を引き起こすだけの原動力にはなり得ません。

腹落ちしていない状況では何が起こるのか

繰り返しになりますが、「腹落ちしていない」というのは、頭で理解はできているが感情が伴っていない状態です。表面上は理解しているように見せているものの、内心では納得していません。そのため、周囲から「やらなければならない」という同調圧力が働いても、当事者には「やりたくない」という抵抗感が生まれます。

「社員が腹落ちしていない」状態が生じがちな組織では、一体何が起こっているのでしょうか?

1つの要因として、目的や背景に関するコミュニケーションが不十分であることが挙げられます。経営からの指示が「こうするべきである」という「べき論」や、具体的な進め方のみに終始して、「なぜそうするべきなのか」「それをやることでどのような状態を目指すのか」「それをやることで会社や社員にどのような良いことがあるのか」という目的や背景が不明瞭なまま取り組みが進んでしまうと、やがて目的達成の手段であったはずの「やること」が目的にすり替わっていきます。現場では「なぜやるか」を考えることなく、指示に従って実行することのみを考えるので、納得感のないまま仕事に取り組む面従腹背の状態になります。

やる意味がわからない、本音ではやりたくない仕事に取り組まざるを得ない社員は、いかに効率よく進めるか、いかに「やっている風」に見せるかを考えるようになるかもしれません。

もしあなたの組織が「自立型人材」を求めていて、一方で自立型人材が育たないことに悩んでいるのであれば、それは社員の能力の問題ではなく腹落ちの問題かもしれないと疑ってみるべきです。

腹落ちが組織に与える効果

社員が自分の取り組むべき仕事や目指すべき方向性について腹落ちすると、手段が目的にすり替わることはなくなります。そして、「とにかく言われた通りにやればいい」という受け身の発想から、「自分たちがこれをやるべきである」「より良い結果を出したい」という自律的な考え方に変わり、目指すべきゴールに向かうためのさまざまな可能性を考えるようにもなります。

ここで、腹落ちが組織に好影響を及ぼした、ひとつの事例をご紹介します。
ある会社でRPA(Robotic Process Automation)の導入が行われたときのことです。導入を支援した大手のコンサル会社が、コーポレート部門への説明の中で「ロボットは違法性がなく、ミスもしません。しかも24時間働けます。なので、導入しましょう!」と提案したところ、現場からは「社員は犯罪(不正)をするし、ミスもすると言いたいのか?ロボットのようにもっと働けということか?」と不満の声が上がりました。
そこで、コンサルタントは現場の社員に「みなさんがもっともやりたくない(不満・不快な)仕事とやっていて楽しい(満足・快い)仕事を洗い出してください」と提案しました。不快な仕事をロボットに対応させて、楽しい仕事は自分たちでやりましょう という流れにしたところ、現場も納得して協力し、RPAの導入が実現したといいます。

上記の事例からもわかるように、社員が自分のやるべきことや目指すべき方向性について腹落ちし、自律的に動けるように会社が働きかける際には「これに取り組むことが自分にとってどのような意味があるのか」という点に受け手が納得できるような、「社員主語のストーリー」が必要になります。例として、「SDGsへの取り組み」についての会社主語のストーリーと、社員主語のストーリーを比べてみましょう。

会社主語のストーリー
「わが社はSDGsに取り組むことで顧客満足度の向上と社会課題の解決を同時に実現し、企業価値を高めていく。SDGsに取り組むことは大企業として当然の責務である。だから社員もSDGsを意識して仕事をするべきである。」

社員主語のストーリー
「世界はつながっていて、SDGsの17のゴールは私たち誰にとっても無関係なことではない。SDGsに取り組むのは他の誰かを助けるためだけではなく、将来の自分自身や次の世代に、豊かな自然や安心・安全な社会を残していくためでもある。私たちは世界中で事業を行っており、自然環境や社会に及ぼしている影響も大きい。だからこそ、組織の中の一人ひとりがSDGsを意識して仕事をし、それを会社全体に広げ、ステークホルダーにも広げていくことで、世界規模の変化につなげていくことができる。」

どちらのストーリーも、最終的に社員がやるべきことは一緒です。しかし、受け取る印象はまったく異なってきます。

現代は、企業にとってとくに「社員の腹落ち」が重要な時代です。ひと昔前の、終身雇用制度が機能し、日本経済が成長していた時代には、「定年退職まで会社が自分と家族の面倒を見てくれる」「世の中はどんどん良くなり、給料も年々上がっていく」「経営の言う通りにしていれば間違いがない」という安心感が社員の側にあり、また会社の側にも「社員は簡単には転職せず一つの会社に勤め続ける」という前提がありました。そのため、社員が腹落ちして仕事に取り組んでいるかどうかはさほど重要ではありませんでした。

しかし現在は社会の先行きが不透明・不確実であり、価値観の多様化も進んでいます。企業、そしてその中で働く人は常に、社会の変化に対応して新しいことに取り組むことが求められています。明確な正解がない中で、異なる価値観を持った人々が協力していくのは非常に難しく、「やるべきこと」が提示されただけではうまくいきません。会社として目指す成果が上がらないだけでなく、仕事をする上で腹落ち感を得ることができない社員は、より良い職場を求めて離れていってしまうでしょう。

だからこそ、関わる全ての人が、今後取り組むべきことを自分事として受け止め、納得できるような「社員主語のストーリー」が必要になるのです。

腹落ちが重要になる場面

社員の腹落ちが重要になるのは、会社全体で見ると「企業内に変化が必要なとき」、そして個人単位では「上司と部下のコミュニケーション」の場面です。

企業のチャレンジ・変革時・外部環境の変化への対応

先に解説した働き方改革やDXの例の通り、企業が新たな取り組みを行う際は社員の腹落ちが重要です。「言われたからやる(内心はやりたくない)」という面従腹背の状態では取り組みが思うように進まず、成果につながりません。社員がその取り組みを自分ごととして受け止めて納得し、自律的に取り組むことができるよう、「社員主語」のコミュニケーションを丁寧に行う必要があります。

上司と部下のコミュニケーション

こちらは個人レベルで腹落ちが必要となる場面です。あらたな取り組みかどうかにはかかわらず、職場が求めている行動を社員が自律的に行い、成果を出すには腹落ちが重要です。職場が求めている行動を知っているはずなのに実行しない、もしくは表面的にはやっているように見えるが受け身の姿勢で責任感が感じられない、などの場合は腹落ちができていません。そのような社員が自律的に行動できるようにするためには、単にやるべきことを指示をするだけでなく、相手に問いかけ、自分ごと化するきっかけをコミュニケーションで作り上げていく必要があります。

社員が腹落ち感を得るために必要なこと

では、社員が腹落ちするために、経営側や上司に求められることはなんでしょうか。重要なポイントは2つです。

感情を把握する

まず、どんな理由で社員の腹落ちができていないのかをしっかりと把握する必要があります。組織主語ではなく社員主語にするために、腹落ちしていない社員の背景や心情を探り、腹落ちを阻害する感情がどのようなものかを把握しましょう。

社員主語のストーリーを作る

次に、社員主語のストーリーを作ります。ただし、ストーリーはあくまできっかけづくりに過ぎません。社員の共感を呼び、当事者意識を生んで、心の底から納得感を得られるような内容を心掛けることが重要です。

社員の腹落ちに向けたステップ

最後に、社員を腹落ちさせるための3つのステップを解説します。

ストーリーできっかけづくり

社員の状況や感情に寄り添った社員主語のストーリーを作りましょう。そして、上司から部下へ話をしたり、社内報などのメディアを通じてストーリーを伝えます。ストーリーをきっかけに、社員がそこで扱われたテーマ(取り組みや方針など)を自分の状況と重ね合わせて考え、自分ごととして捉えられるようになるかどうかがカギとなります。

体験してもらう

次に、社員がストーリーを追体験できるような機会をつくります。当事者意識を生み出すためには、実際に体験してもらい、ストーリーを自分ごととして実感してもらうステップが不可欠です。そのためには、研修やワークショップで疑似的に体験できる機会を設ける、体験できる機会を仕組み化して業務に組み込むなどの方法があります。
本質的な腹落ちは、行動と振り返りにより、そのテーマ(取り組みや方針など)に自分なりのポジティブな意味づけをすることではじめて実現します。

行動・体験を振り返る

最後に振り返りです。体験した際にポジティブな感情を持ってもらうことができれば、その後も何度か繰り返して実施することで自然と定着していくでしょう。実際にどの程度行動や定着に結び付いたのかを、アンケート等の方法を通じて確認します。
もし、これらのアプローチを行っても、社員が自分事として受け止めていないのであれば、ストーリーの調整が必要だといえます。いわゆるPDCAのサイクルを回していくイメージで進めてみてください。

まとめ

不確実なVUCAの時代で企業が生き残っていくためには、企業も個人もアジリティ(敏捷性)が必須です。今日と明日とで状況が変わってしまう可能性があるのであれば、腹落ちにもアジリティが必要になります。うまく社員が腹落ちできていないと感じたら、そこには社員主語の考え方が抜け落ちているかもしれません。現在の社員の行動や感情にしっかりと目を向け、人材育成・管理の手法を今一度見直してみましょう。

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