
コミュニケーターが切り開く未来志向のAI戦略 世界のインターナルコミュニケーション最前線⑤

目次
多くの企業がAI(人工知能)を業務に取り入れる中で、コミュニケーション担当者は、AI戦略の策定と実行において、透明性を促進し、AI技術を倫理的に導入する上で重要な役割を果たすべきである。
このようにIABCのWeb誌’Catalyst’は4月15日、トロント・チャプターが掲載した記事 “Shaping the Future: How Communicators Drive AI Strategy”を転載しました。
AI戦略の推進者として最適なコミュニケーター
「コミュニケーターは、今こそ企業のAI戦略を積極的に推進する時です」と著者のCaterina Valentino 氏は強調します。
日本企業の広報担当者に、この自覚はあるでしょうか。
コミュニケーターは、次のような独特の強みを持っています。
あらゆる部門や関係者とつながりプロジェクトを推進する重要な立場
コミュニケーターは、組織のAI戦略の策定と実行を支援する独自の立場にあります。
メッセージを創り出すだけでなく、複雑な技術と人間の理解のギャップを埋める役割を担っています。
この役割は、AIの取り組みが組織の価値観と一致し、多様なオーディエンスに共感を生み、信頼を築くために重要なことです。
また、コミュニケーターは、サイロ化しがちな社内の部門間と協力する立場にあり、各部門の戦略的なAIの取り組みが企業全体のビジネス目標と一致していることを確認することができます。
コミュニケーターは、部門の目標を調整し、AIの取り組みの導入プロセスを管理することに長けた達人です。
さらに、コミュニケーターは、社内向けメッセージを作り出し、多様な部門が互いに補完し合うAIの取り組みを引き出すよう促進できる専門家でもあります。
要するに、コミュニケーターは、AIチーム、ビジネスリーダー、従業員、外部のオーディエンスなど、さまざまなステークホルダーをつなぎ、全員が企業のAI戦略を理解し、支持し、成功するための推進役となるのです。
効果的なAI戦略プランの作成
著者が指摘するAI戦略プランとは、組織がいかにAIを採用し、導入し、組織内で活用するか、その方法を定めるロードマップです。
ビジネスの目標は、AIを使用して、以下のような持続可能な競争優位性を創出することだとしています。
価値がある:
クライアントの問題を競合他社よりも効果的に解決する。
希少性がある:
競合他社が真似できない独自性を持つ。
模倣困難:
独自の技術、ブランドの評判、専門知識など、他社がコピーし難い要素を持つ。
代替不可能:
予見できる将来にわたって、効果的な代替手段が存在しない。
AI戦略の力は、組織のビジネス目標と市場のニーズを一致させることにあります。
これが達成されると、コミュニケーターは、企業の中核的な目標やプロセスとシームレスに統合されたAI戦略の開発を推進できると著者は指摘します。
効果的なAI戦略の5つの柱
企業のAI戦略は、最新のAIツールを採用すればいいということではありません。
それはAIを中核的なビジネスプロセスに統合し、業務を強化するための構造化されたアプローチです。
AI戦略は組織のメンバーが新しいAIの取り組みを実施する際に、「情報に基づいた意思決定を行うための明確なフレームワークを提供する」としてAnalytics8社による「生成AI戦略の5つの主要な柱」を引用し、AIの能力を組織の主要なパフォーマンス領域とどのように一致させるかを視覚的に示しています。
ビジネスとの整合性
効果的な企業AI戦略とは、単に新しいテクノロジーを導入するだけでなく、AIをビジネスオペレーションにシームレスに統合し、意義のある効果を生み出すことです。
明確に定義された戦略は、意思決定者にロードマップを提供し、組織目標と整合し、全体的な効率性を高める方法でAIの取り組みの導入を導きます。
AIをプロセスそのものではなく、プロセスの一部として位置付ける上で、コミュニケーション担当者は重要な役割を果たします。
実行可能なロードマップ
実行可能なAIロードマップの構築は、準備の問題ではなく、組織の現在のプロセスとAI技術の整合性の問題です。
コミュニケーターが企業の技術、人材スキル、プロセス、既存のデータインフラを理解している場合に、スムーズな移行は達成されます。
コミュニケーターが同僚と協力して、優先順位の高いアクションや取り組みのリストを作成すると、現在のデータは価値を加速し、会社を新たな収益性へと導く「情報」へと変換されます。
技術の最適化
コミュニケーターは、蓄積された企業のテクノロジーを含め、パフォーマンスを牽引する技術に精通します。
コミュニケーターは同僚と連携し、テクノロジーの強化、利益の最大化、コスト削減の機会を特定します。
データ・ガバナンス
コミュニケーターは、AIを活用するにあたっては強力なデータ・ガバナンスを提唱します。
コミュニケーターは、社内の各部門間でのテクノロジーの相互運用性を促進し、正確性やセキュリティといったAI特有の課題への対応に重点を置いています。
人材管理
コミュニケーターは、AI ツールの効果を最大限に高めるために従業員トレーニングを推進しています。
倫理的問題に焦点を当て、データが機械によって解釈される際に内在するバイアスを排除するために、人間による監督の必要性を強調しています。
AI戦略計画の策定
これらの柱(=前提条件)を整えた後、コミュニケーターは企業の戦略計画を主体的に実行できるようになります。
これには、いくつかの重要なタスクが含まれます。社会一般および顧客の懸念を予測すること、AIの取り組みが信頼でき持続可能であることを確認することなどです。
また、導入後の活動をモニタリングし、トレンドを追跡して一過性の流行を排除するために調整することも求められるかもしれません。
結論としては、コミュニケーターこそが、企業のAI戦略の策定を調整するうえで最も適した立場にあるということです。
彼らは、経営陣が安易にAIブームに乗ることを防ぐためのガイドラインを提供し、AIツールとビジネス目標の間に明確なつながりを持たせる役割を果たします。
元記事(英文)はこちらをご覧ください:Shaping the Future: How Communicators Drive AI Strategy – IABC Catalyst

株式会社ソフィア
ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント
池田 勝彦
主にビデオ制作で撮影から編集までを担当しています。記事原稿も書いていますが、英語による取材・編集もやりますし、翻訳もできます。
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池田 勝彦
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