
2021.09.24
トップダウン・ボトムアップとは?意味やそれぞれのメリット・デメリットについて

目次
営業現場で担当別に売上目標を立案するとき、あるいは業務のプロセスを見直すときなどに、トップダウンそれともボトムアップのいずれで進めるかは意見の分かれるところです。
その前に、トップダウン・ボトムアップの本質を理解している方は、意外と少ないかもしれません
この記事では、トップダウンやボトムアップの定義、それぞれのメリットデメリットや適しているケースについて解説すると同時に、ボトムアップ経営を実現させるメソッドを紹介します。
「トップダウン」「ボトムアップ」とは?
「トップダウン」と「ボトムアップ」はいずれも、意思決定や問題改善の実現を目的とするメソッドであり、プロセスの違いこそあれ目指すところは同じです。
「トップダウン」とは。トップダウンのメリットとデメリット
トップダウン型経営では、企業トップの意思決定がまずスタートにあり、決定事項をトップから各事業本部、本部から支社や営業所といった要領で上意下達式にブレイクダウンしていきます。
実はトップダウンでもボトムダウンでも、最終的に経営トップが判断を下すという点では同じです。異なるのは意思決定に至るコミュニケーションプロセスの違いです。
トップダウンのメリットは、意思決定から実行までの判断を迅速に行える点です。現在の日本企業では少なくなってきましたが、ビジネスプロセスが単純で計画通りに実行すればある程度の成果が見込まれるビジネスモデルや、組織やビジネス全体をトップが俯瞰できる小規模ベンチャーやビジネスには、トップダウンが向いています。
一方、トップダウンの代表的なデメリットとしては、従業員の判断スキル低下、悪い情報の隠ぺい、経営者の資質によるブレなどが考えられます。まず従業員の判断スキル低下ですが、トップが重要な経営判断を独断で下すので、部下は指示されたことをただ黙々と処理するようになります。
次に隠ぺいですが、トップダウン型組織においては悪い情報が上がってこなくなりトップが「裸の王様」になりがちです。
最後に経営者の資質です。トップダウン型組織では意思決定の材料として現場の意見をトップに届ける仕組みがないため、現場の意見を取り入れるかどうかはトップ次第になってしまいます。中にはまめに現場に足を運んで社員の話に耳を傾けるトップも存在しますが、多くは現場の意見も聞かずに経営者の独断で物事を決めてしまいます。
そうなると、よほど現場がわかっている経営者でもない限り偏った意思決定に陥りやすく、往々にして、致命的な間違いを起こしやすいのです。
「ボトムアップ」とは。ボトムアップのメリットとデメリット
ボトムアップ型経営では、現場からの提案を経営層にまで集約させ、これをベースとしてトップの意思決定につなげます。むしろボトムアップで意思決定していかないと、現代のような不確実性の高い時代を生き残るのは難しいかもしれません。
「ボトムアップ」のメリットは、まず社員の主体性醸成です。自分の意見・提案が汲み取られるので、社員は自ら考え行動するようになります。同時に、社員のやる気向上にもつながります。
2番目が現場密着型の経営です。ボトムアップ型では現場に寄り添った意見が経営に活かされやすく、得意先や顧客の変化にも柔軟に対応できます。
「ボトムアップ」のデメリットは、意思決定の方向性をまとめるのに時間がかかる、多くの意見を集めるのでありきたりの結論に陥りがちといった点が挙げられます。そして2つの課題を解消するには、一定の工夫が欠かせません。
実際のところ、完全なボトムアップ型・トップダウン型を取っている企業は少なく、併用しているところが大多数のようです。
例えば年度予算編成を取り上げると、売上や利益の目標を各事業部門や各部から重層的に積み上げ全社目標を策定するボトムアップ予算編成、経営層が掲げる全社売上・利益目標を各事業部門・各部に割り当てるトップダウン予算編成に手法は大別されます。
一方のみで予算を策定する企業は少数派で、一般的にはボトムアップで積み上げた売上・予算を経営層が策定した目標とすり合わせて、最終的な着地を決めるといった手法をとるケースが多いようです。
全ての組織や職場で、最終的な意思決定はトップダウンです。ただし、大なり小なりボトムアップの情報がインプットされない限り、的確な意思決定はできません。しかし、意思決定には必ずタイムリミットがあるため、際限なくボトムアップの情報を集めて検討することはできません。
トップダウンとボトムアップそれぞれのメリット・デメリットを踏まえながら、どの程度現場の情報を反映してトップが意思決定するのか、そのさじ加減をトップが判断する必要があります。
トップダウンが適している問題・ケース
現場の意見を重視しない独断専行のトップダウン型意思決定は「判断ミス」という大きなリスクを抱えています。
ただし、アジャイル(迅速)かつ大胆な経営判断が求められる場面、たとえば大胆な経営戦略でベンチャー企業が急成長するとき、ビジネスモデルや事業構造を大きく改革するとき、コロナ禍といった外的要因による経営環境激変に見舞われたときなどは、トップダウンが適しています。
また、自律的に行動できる社員が育っていない組織で完全なボトムアップ型を導入すると、社員の混乱を招き、結果として経営における意思決定も質の低いものとなりかねません。
ボトムアップが適している問題・ケース
ボトムアップは情報吸い上げのプロセスであり、現場から適切な情報が円滑に吸い上げられるのならボトムアップの方が適しています。たとえば営業現場の売上目標設定なら、営業担当者のスキルが高く、販売現場の状況や課題を的確に把握し目標設定に反映できるならボトムアップが理想的でしょう。
ボトムアップ経営を成功させるために
前述の通り、トップダウンのメリットは迅速な経営判断です。ただし、ボトムアップで迅速性さがムリというわけではなく、一定条件さえ整えば十分に可能です。
具体的には、技術的な側面(BIツールとイントラ)、人間的側面(オープンな状況・関係性)が迅速性のカギを握ります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションプラットフォームを用意する
今までは、意思決定に時間がかかることが、ボトムアップ推進のボトルネックとされてきました。この制約条件を一気に解決するのが、ITツールを活用したコミュニケーションプラットフォームです。
たとえば、全社員を集めた意見交換を開こうと思っても、全国から集まらなくてはいけないなどの問題でこれまでは実現が困難でした。一方でオンラインとリアルを併用した集会なら、ログイン登録した全国の社員が参加でき、距離的制約を一気に超えられます。
さらにチャット機能を使えば、その場でリアルタイムに社員の回答や意見を集約でき、さらには即刻で施策に反映といった離れ業も可能です。
なんでも言い合える関係性を作る
積極的な意見や前向きな意見をといっても、上司や先輩の前では遠慮してしまうこともあるでしょう。同時に失敗が許されないような組織では、果敢に挑戦する社員も出てきません。やはり上に立つ人間が、自由な発言やチャレンジを歓迎する空気を意図的に作っていかなければいけません。
たとえばディスカッションを行うときも若手にまとめ役を任せるなど、地道な工夫の積み重ねが欠かせないのです。
前向きな意見やチャレンジが認知されれば、たとえ若手であっても能動的に物事を考えるようになります。そしてたとえ一社員でも、「自分が上司の立場だったら」と俯瞰した視点を持てるようにもなるのです。
双方向が交流しやすい文化を作る
積極的な意見を交わす前提条件は、双方向のコミュニケーションにあります。双方向コミュニケーションを促すために、ファシリテーターによる進行・ホワイトボードなどツールの活用などをルール化することがよくありますが、ルール化だけでコミュニケーションは活発化しません
カギを握るのは、オープンな組織風土の醸成です。上司や先輩による無言の圧力、今までのやり方を替えられない暗黙のルールなど、小さなことでも心理的な見えない鎖を少しずつ取り除いていくことで、組織は学習を繰り返し風土が改善されてゆくのです。もちろんトップからの情報発信も、風土改善に寄与します。

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まとめ
結論として、迅速な判断が求められる場合にはトップダウンもやむを得ないですが、理想的にはボトムアップが望ましいといえそうです。
ただしボトムアップを実現するには、環境整備が欠かせません。みなさんの職場はどうですか?問題山積でも、あきらめることはありません。課題を着実にあぶり出して現状を改善し、一歩一歩ボトムアップ型経営に近づけていきましょう。
この記事を、みなさんの職場における意思決定・問題改善の迅速化、生産性向上を考える際に参考にしていただければ幸いです。