組織を変えるインターナルコミュニケーション経営とは?

インターナルコミュニケーションは、社内のつながりを強化し、従業員の帰属意識を高めるために重要なものです。この記事では、インターナルコミュニケーションが経営にどのように役に立ち影響を与えるのか、また経営業績に良い影響を与えるインターナルコミュニケーションを実施するためにはどうしたらいいのかを整理していきます。事例にも触れながら、インターナルコミュニケーションへの理解を深めていきましょう。

そもそもインターナルコミュニケーションとは

「インターナルコミュニケーション」とは、社内やグループ会社内など、同一の組織内における広報活動のことです。
「社内コミュニケーション」と訳されることもありますが、インターナルコミュニケーションは社内広報誌やその他メディアでの一方通行の発信だけでなく、社員同士の情報交換のような双方向のコミュニケーションを含みます。「インターナルコミュニケーション経営」は情報交換・対話をすることで、社員が企業理念・ビジョン・バリュー、カルチャーなどを深く理解することが目的です。また、社員自ら企業のビジョンを体現し、ひいてはメッセージとして外部へ発信してくれるような存在になることを促します。インターナルコミュニケーションにより、経営層と現場の社員や、異なる部署間の社員同士など、上下関係や部門間を超えて、経営や業務への理解を深め合うことが可能です。社員の業務や経営への理解を深めるためのインターナルコミュニケーション施策としては、会社のビジョンについて意見を交わす場を設けたり、セミナーや講演会を開いたりすることがあげられます。

なぜインターナルコミュニケーション経営が必要なのか?

なぜ、インターナルコミュニケーションを重視した経営が重要なのでしょうか。そのひとつの理由として、効果的なコミュニケーションと会社の業績の相関関係が挙げられます。
タワーズワトソンの調査レポート
「Clear Direction in a Complex World」—2011-2012 Change and Communication ROI report —で以下のように述べられています。

  • 効果的なコミュニケーションと業績は強い相関関係があり、コミュニケーションの有効性が高い企業は、そうでない企業に比べ1.7倍の業績を上げる傾向がある。
  • 本研究で明らかになったのは、効果的なコミュニケーションは組織変革マネージメントの重要な要素であり、コミュニケーションと組織変革マネジメント両方を上手くやれば業績とのより強い相関関係があることだ。コミュニケーションと組織変革マネージメントの両方とも有効性が高い企業は、そのどちらかの要素が低い企業と比べて、2.5倍の業績を上げる傾向がある。

このように、インターナルコミュニケーションは、企業の業績向上に大きく寄与すると考えられています。
では、日本企業におけるインターナルコミュニケーションの現状はどうでしょうか。欧米や中国では、かねてよりインターナルコミュニケーションが重要視され、優れたノウハウやナレッジが培われてきました。その背景にあるのは、転職しながら給与を上げていくというキャリアスタイルです。転職が当たり前の国では、従業員が数年で入れ替わるという前提で企業が運営されるので、インターナルコミュニケーションは組織維持において重要な経営要素になります

一方、日本では、長らく正社員の終身雇用制が一般的でした。しかし近年、転職する人の割合が増えているため欧米や中国と同様の兆しが見えています。JOB型人事制度を取り入れて採用を行う企業も増えており、今後もこの傾向はますます加速するでしょう。そのため日本の企業にとっても、インターナルコミュニケーションはより一層重要なものになります。

インターナルコミュニケーション経営の効果

コミュニケーションというものは、それ自体が目的になるケースは少なく、あくまで何かを実現させるための手段です。企業にとってインターナルコミュニケーションは、経営上の課題を解決するために必要な手段です。そのため、インターナルコミュニケーションを導入する際は、企業に今どのような課題があるのかをあらかじめ考えた上で、実行に移していきましょう

従業員向けコミュニケーションデジタルツールを提供している「Staffbase」が行った調査では、インターナルコミュニケーションにコストをかけていない企業では、従業員が意欲を失い、業務効率が落ちたため、平均12%の労働時間が浪費されていることが分かりました。これにより企業が支払っている給与の35%が無駄になっているという結果も出ています。さらに、やる気のない従業員が増え、離職率は34%という高い数値になります。
一方、インターナルコミュニケーションにコストをかけている企業の上位4社は、離職率や事故が低く、生産性・収益性が高いことがわかりました。さらに顧客満足度の指標も高くなっています。このように、インターナルコミュニケーションを活性化させることは、企業にとって大きな効果をもたらします。

経営の構成要素とインターナルコミュニケーション

ここからは、もう少し詳しく、経営の構成要素とインターナルコミュニケーションの関係性を紹介します。

戦略・ビジョンとインターナルコミュニケーション

戦略・ビジョンを従業員に伝えるコミュニケーションは、インターナルコミュニケーションの最も重要な部分だと言えます。また、ビジョンや戦略計画を伝えることにより、従業員に共感を惹き起こし、行動を促すことも重要です。そのためには、日々変化する環境の中において、業績、KPIデータ、そして組織や人のアクティビティを分析しなければなりません。その上で、ビジョンや戦略との整合性や一貫性を検討する必要があります。これはトップマネジメントの重要な役割となるため、戦略ビジョンとインターナルコミュニケーションはトップマネジメントが行わなければなりません

業務タスクとインターナルコミュニケーション

円滑に業務を行うためにも、インターナルコミュニケーションは重要となります。コミュニケーションが希薄になると、指示や連絡がタイムリーに伝わらないため、生産性が低下したり、業務上のトラブルを引き起こす原因となったりします。そういった問題を避けるためには、個別の業務内容を可視化し共有する必要があります。また、業務進行状況や業務従事する従業員の状態も可視化し共有しましょう。

組織として戦略ビジョンを遂行、そして達成するために業務やタスクは設計されます。そのためには、経営組織は業務を可視化し、分業化し、個別業務に落とし込まなければなりません。しかし、工程分業やバリューチェーンはサイロ化を生み出し、個別業務に従事する従業員は業務の全体が見えなくなります。特に現在ではテレワーク普及により、個別業務に従事する従業員は前工程や後工程がどのような業務を行っているのかということでさえ把握できなくなっています。

このような状態では円滑に業務を行うことができません。個人の業務がブラックボックス化する可能性が高く、万が一トラブルが起きた際に対応できないことも考えられます。 つまり、円滑な業務運営にはインターナルコミュニケーションが必要です。例えば、全体の状況はポータルサイトやBIツールなどを活用し可視化・共有化を行いましょう。デジタルワークプレイスやコミュニケーションプラットフォームをフル活用することで可視化・共有化が可能となります。

組織構造・制度・ルールとインターナルコミュニケーション

既存の組織構造や制度、ルールは、コミュニケーションの阻害要因になっており、インターナルコミュニケーションで補完しなければ組織は動きません。組織構造はレポートライン、すなわちコミュケーションの流れを決めます。また、人事制度や組織内の規定は、秩序や規範を生み出しますが、制度、ルールを超えたコミュニケーションは発生しません。例えば、情報セキュリティを遵守することは重要ですが、遵守していれば、あるいは決まった手順を踏んでいれば、完全に防げるわけではありません。ただセキュリティ対策が複雑化するにつれ、ルール化した仕組みの背景や内容はある事すら知らない状況です。そして未だに情報漏洩に問題は人為的なものが多いのです。

人事制度や目標管理など評価制度なども同じで、各職場の各人の設定した目標だけを実行すれば、組織全体の成果が出るわけではありません。ビジネス環境の変化や職務役割の決められたことだけをやることは、組織全体の成果にはつながりにくいとされ、最近では基本の人事評価に加え、職務外の活動も評価の対象になっているものが取り入れられており、職場環境を良くするため、自分の仕事以外に行動なども評価するようになってます。制度やルールとコミュニケーション(背景と意義 ビジョンやありたい姿)が併記されなければ、平たく言えば手段の目的化を注意するという事です。

組織構造や制度、ルールは一定の共通する秩序を生み出す反面、コミュニケーションを減らす要因になるともいえます。そのため、組織構造や制度、ルールの意図や歪みをインターナルコミュニケーションで補完する必要があります。人事制度改定や基幹システム導入において、組織や従業員に対するコミュニケーションに失敗すれば、組織と従業員で制度の意図をそれぞれが個別に解釈・運用し、結果として改悪になるケースも少なくありません。組織構造や制度ルールを上手く運用するためには、インターナルコミュニケーションが重要となります。

人財・人とインターナルコミュニケーション

従業員のコミュニケーションスキルや能力向上は、インターナルコミュニケーションの基礎とも言えます。組織のインターナルコミュニケーション能力は、従業員一人ひとりのコミュニケーション能力です。 経営の意思決定をする役員会や、上司と部下の1on1ミーティングなどにおいて、社員同士の言語・非言語コミュニケーションは事あるごとに発生します。特に日本企業は和を重んじるような対話を好む傾向もあり、変革や改革に必要な討論などのコミュニケーションはあまり行われていません。

しかし、組織が成長するためには議論や討論が必要な場面もあります。効果的な議論や討論を行うためにはコミュニケーションスキルを向上させなければなりません。コミュケーションスキルを向上させることが、インターナルコミュニケーションの促進につながります。

組織文化・風土とインターナルコミュニケーション

インターナルコミュニケーションは、良い組織風土や文化も、悪い組織風土や文化も醸成します。良い組織風土や文化を醸成しようと考えるのであれば、インターナルコミュニケーション変革から始めましょう
「大企業病」という言葉があります。大企業病は、大規模組織の管理過剰が生み出す病気とされています。「意思決定が遅い」「内向きで現場・市場の声が通らない」「無駄な手続きが多い」「管理者が内向きで動かない」などが大企業病の特徴です。これは、不健全なインターナルコミュニケーションが、良くない組織風土や文化を醸成した例でもあります。会社が成長する過程には4つの段階がありますが、とかく会社が安定期になると動きが鈍り変化を受け入れない体制になりがちです。このようなことにならないためにもチャレンジを是とする風土づくりや、企業のミッションやビジョンを明確にし、絶えず発信していくことが重要なのです。

ここまでで、経営の構成要素とインターナルコミュニケーションの関係を、いくつかの要素に分けて説明しました。インターナルコミュニケーションは構成要素の整合性を取る役割もあり、複雑であり流動性の高いのが特徴です。また、上記の要素同士のコミュニケーションも、インターナルコミュニケーションになります。2問~3問程度の毎月パルスチェックやES調査、社内デジタルツール(チャット、イントラ)のトラフィックのログデータなど、上記各要素の変数をモニタリングし、コミュニケーション状態を整理分析しながら進めることが肝要です。

インターナルコミュニケーション経営の3つのコンテンツ

ここからは、『人を活かし組織を変える インターナル・コミュニケーション経営-経営と広報の新潮流』 (経団連出版 (著)清水 正道 , 柴山 慎一 , 北見 幸一 , 中村 昭典 , 佐桑 徹 , 池田 勝彦 , 佐藤 浩史)を参考に、インターナルコミュニケーション経営を行う際に意識するべき、3つのコンテンツを紹介します。インターナルコミュニケーションにはさまざまなやり方がありますが、一例としてご覧ください。

知識(Knowledge)

まず意識したいのは、企業としての知識(ナレッジ)を充実させることです。 知識には、「暗黙知」と「形式知」の2種類があります。

企業としての知識
・暗黙知・  暗黙知は言語化されていない知識 
・形式知・  言語化されている知識 

 
暗黙知は言語化されていない知識のことで、形式知は言語化されている知識のことを表します。インターナルコミュニケーションで重要なのは、暗黙知を言語化し、形式知にしていくことです。
たとえばトップ層と現場の間で成功事例・失敗事例を共有すれば、暗黙知だったものが形式知になるでしょう。さらに経営理念に対する実践活動の事例を共有すれば、暗黙知がまたひとつ形式知になります。

このように各々の知識をコンセプト化して形式知にすれば、企業としてのナレッジが充実し、インターナルコミュニケーション経営に役立てることができます。知識(ナレッジ)を強化するインターナルコミュニケーションの施策には、オンボーディングやデジタルワークプレイス、ポータルサイトなどがあります。詳しくは以下の記事を参照ください。

態度(Attitude)

人や物事に対する考えや姿勢、感じ方に対する影響も意識していきましょう。態度は、行動と違ってはっきりとは見えにくいものですが、組織の雰囲気を良好に保つためにかなり重要なものです。実際、インターナルコミュニケーション経営を実践できている企業は、社内の雰囲気がよく、ムードメーカーがいることも多いです。インターナルコミュニケーションを通じて態度に良い影響を与えることができれば、組織で働く人の気持ちも良い方向に変えていくことが可能です。従業員の態度にかかわる具体的な施策については、下記のリンクも参考にしてみてください。

行動(Behavior)

実際に表面に出てくる動作や立ち居振る舞いも、当然意識する必要があります。従業員の行動変容を意識したインターナルコミュニケーション施策を実施することで、社内間での人間関係が改善され、良好な人間関係が業務に良い影響を与えることもあります。
行動変容のマネジメントについては、下記のリンクを参考にしてみてください。

インターナルコミュニケーション経営の事例

ここまで、インターナルコミュニケーション経営が企業にとって重要であることを解説してきました。最後に、インターナルコミュニケーション経営に成功している3つの企業の事例をご紹介します。

株式会社ユーグレナ

ユーグレナを使ったヘルスケア商品などで有名な株式会社ユーグレナでは、コロナ禍の中、リアル+オンラインのハイブリッド形式で、グループ総会を実施しました。

総会の前後には、MicrosoftのSwayを活用したオンラインパンフレットを作成。総会の内容を発信し、簡単にコンテンツを確認できるようにしました。結果、情報共有に役立ったのはもちろん、今後の総会への参加モチベーションを高めることにも寄与しました。インターナルコミュニケーションによって、社員の意欲向上を実現できたのです。詳しく読む

三井不動産

三井不動産グループの新規事業創出を支援する、三井不動産株式会社のビジネスイノベーション推進部は、企業風土の刷新のための情報ポータルサイトを作りました。同社はもともと体育会系のカルチャーが強く、創造性やクリエイティビティを発揮しづらい雰囲気がありました。そこで、情報発信の拠点となる「WARP PORTAL」を立ち上げ、社内の新規事業事例を紹介したり、さまざまな起業に取材をして記事を掲載したりしたのです。企業風土を刷新し、新しいことにチャレンジする人を応援する気風を創っています。詳しく読む

NTTデータ

NTTデータでは、中堅社員の育成を促すために、ワーキンググループ型のプログラムを実施しました。同社の中堅社員は現場で経験を積んできた人が多く、目の前の課題に対して適切に効率よく取り組むことができます。しかし彼らを将来のミドルマネージャーに育てるためには、より抽象的な問題への思考能力をつける必要がありました。そこで、通常は経営層が策定する「新中期経営計画」を、中堅社員に真剣に考えてもらうワークを実施。最終的に経営層へプレゼンする場も設け、マインドの向上、エンゲージメントの向上を促しました。詳しく読む

まとめ

インターナルコミュニケーション経営を行うためのポイントを、事例を含めて整理しました。インターナルコミュニケーションは、企業の業績に直結するものです。インターナルコミュニケーションを用いて業績の向上や改善を促したいのであれば、ぜひソフィアにお問い合わせ下さい。

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