1on1は意味がないのか?無駄になってしまう理由と有意義な対話にするためのコツを紹介

1on1ミーティングは上司と部下の間でのコミュニケーションを促進し、お互いの信頼関係を築く重要な機会とされています。しかし、現場から「1on1は無意味ではないか?」という声が上がることがあります。本記事では、1on1がなぜ不要だと感じられてしまうのか、その理由や対処法について探究し、1on1を意義あるものにするためのアプローチを紹介します。

1on1とは?

1on1(ワンオンワン)とは、上司と部下が一対一で行う面談です。上司と部下の面談には業務の進捗確認や目標設定、人事評価面談などの面談が挙げられますが、1on1はこれらのどれとも異なります。1on1(ワンオンワン)ミーティングとは、上司と部下が一対一で行う面談です。上司と部下の面談には業務の進捗確認や目標設定、人事評価面談などの面談が挙げられますが、1on1はこれらのどれとも異なります。

1on1の特徴は、お互いの対話型コミュニケーションを重視し、上司から受動的に指導されるのではなく、双方が共同で議論するスタイルで進められることです。上司は部下から日常の悩みや不安、業務に関する課題感などに耳を傾けて積極的に引き出すことが目的であり、これはコーチングのような関わり方とも言えます。

また、上司から部下への指示や指摘、連絡事項を目的とする人事評価面談とは異なり、比較的オープンな雰囲気で実施されるため、部下も上司に率直に意見を伝え合える機会が提供されます。

さらに、1on1と従来の面談との大きな違いの1つは、実施サイクルです。従来の面談は四半期あるいは半年に1回が主流でしたが、対してシリコンバレー由来の1on1は、週に1回、最低でも1ヶ月に1回の短いサイクルで定期的に実施されます。面談の時間も長くて30分程度が一般的です。部下から本音を引き出すことが1on1ミーティングにおける大きな目標となりますが、実施の際は上の図のような座席の位置で行うことをおすすめします。この座席配置は90度法と呼ばれており、常に目線を合わせる必要がないため、カウンセリングなどの現場でも相手がリラックスできる座り方として活用されています。お互いにリラックスして行うことで感情や感性などを引き出しやすくなるでしょう。

なぜ1on1は不要だと思われてしまうのか

1on1ミーティングは、従来の人事評価面談と違い、上司と部下の間でのコミュニケーションが促進されることでお互いの信頼関係が築け、部下の育成につなげることが可能です。その他にも組織・職場、上司や部下にも多くのメリットをもたらします。1on1の効果については以下の記事にて詳しく解説しています。

しかし、1on1形式がうまく機能しておらず、組織の中で形骸化しているケースも少なくありません。上司や管理者は積極的に1on1を行う必要がありますが、その運用には難しさも伴います。このため、まずは上司や管理者が直面している課題や問題点に焦点を当て、代表的な3つの要因を取り上げます。

上司が一方的に話す場になってしまっている

1on1ミーティングは通常、部下と上司の対話の場です。
しかしながら、そうした場面で気付けば上司だけが話していたというケースも決して少なくはありません。
そもそも1on1ミーティングは部下にとって緊張感をもたらす場であるうえに、一方的な会話の場合、部下は評価面談のように感じることから実施にマイナスイメージを抱いてしまうこともあります

業務報告や雑談で終わる

1on1で話すべき内容や目的が明確でないと、雑談や業務報告に終始してしまうことも少なくありません。部下の緊張を解すために雑談は効果的ではありますが、プライベートなことを詮索しすぎると、場合によってはパワハラだと捉えられかねません。何がOKでNGなのかは、その人の個性やその人との関係性にもよります。ポイントは相手が話したいかどうかで、詮索はしない方が良いでしょう

また、1on1は部下の本音を引き出せる貴重な機会であり、情報共有ではなく感情共有の場であるべきです。業務報告は別途チームミーティング等で行いましょう。

心理的、工数的な負担が大きい

定期的にミーティングに時間を割く必要がある上司は、心理的な負担を感じることもあるでしょう。多くの部下をまとめている管理者や、経験の浅い場合であればなおさらです。

さらに、担当する部下の数が多いほど、全員とコミュニケーションを取るには十分な時間が必要です。細かなスケジュールの調整と管理も不可欠となるため、負担は大きなものになってしまいます。

1on1が無意味なものになってしまう理由

1on1は不要であると思われてしまうには上で述べてきた要因が大きく関わっています。さらに、実施したとしても効果が得られず、無意味なものに終わってしまうとより「1on1は不要」だと認識してしまうでしょう。

以下では1on1が無意味なものになってしまう理由を解説します。

目的が共有されていない

「1on1ミーティング」は、上司と部下が定期的に行うコミュニケーションの機会ですが、その目的が双方で共有されていないケースが多くあります。上司側は部下の悩みや関心事を聞き、必要に応じて支援して業務を円滑に進めることを目的として1on1を実施する場合でも、それが共有されていないと、部下側は与えられた面談の機会を利用し、質問に応えるだけといった認識にとどまる可能性もあります

話すことがない

上司・マネージャーなど部下をマネジメントする立場で1on1ミーティングを実施する人が「話すことがない」と感じる理由は主に「1on1のやり方が分からない」、「業務が多すぎて話題を考える時間がない」といったことが挙げられます。

上司側の視点では、相手の話を引き出せない・話題が思いつかない、つまりは「話し方が分からない」というコミュニケーションのスキル不足や、1on1ミーティングやマネジメントに対するモチベーションの低さ、マネージャーとしての忙しさが原因と想定できるでしょう

また、部下・メンバーなど1on1ミーティングを受ける側においては、「上司のことを信頼していない」、「そもそも1on1で何を話せば良いのかわかっていない」といった理由から「話すことがない」と感じてしまうことが多いようです。

このことから、部下の視点では、上司と同様に1on1に対するモチベーションの低さや、そもそも何を話すべきなのかわかっていない、自分のことを話さないといけない苦痛、特に上司を信頼していないがために話したくないと心を閉ざしていることが原因と想定できます

一言で「話すことがない」といっても立場によってその原因は異なるため、それに沿ったアプローチが必要です。

1on1のスキル不足

上司のスキル不足が1on1ミーティングに与える影響は大きく、部下のモチベーションを下げたり、コミュニケーションの円滑さを損なったりする可能性があります。

相手の話に耳を傾ける傾聴の姿勢を大切にし、話の内容に応じてオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを使い分ける必要があるほか、部下の成長を促すためにコーチングとティーチングを適切に使い分けなければなりません

このスキルセットが上手くいっていないと、就業時間内に行われる雑談という形に終わり、アクションにつなげることができずに意味のある1on1が実施できたとは言い難い状況になってしまいます。

1on1は魔法の杖ではない。関係性が改善しない理由

1on1は上司と部下の良い関係性を築くのに有用ですが、行えば必ずしも効果が表れる訳ではありません。実施したにも関わらず、効果が出なかった場合は、下記3つの点を意識することが重要です。

  1. そもそも1on1 を実施する前の段階で、関係性が構築されていない他者に1on1 だからといって、部下が他者(上司)に胸襟を開くことはない。
  2. 1on1が会社の方向性によって設けられた施策、さらには業務であったとしても、指示されて部下が他者(上司)に胸襟を開くことはない。
  3. 1on1 が世の中のトレンドだから、もしくは同業他社でやっているからと言って、実施しても部下が他者(上司)に胸襟を開くことはない

私たちは、信頼のおけない他者に、本音や真意を吐露できるほど、大胆でありません。

1on1 という場は、あくまでもその名の通り、部下と上司の個別具体的な関係性が足場になり、その足場から対話や合意形成が生まれます。

言い変えれば、この足場がなければ1on1 という方法が、秀逸であり、組織的支持であったとしても求める本音や心理的契約を結ぶことは基本的には不可能なのです。

1on1を有意義なものにするために必要なこと

ここまで1on1がなぜ不要と言われてしまうのか、その理由を掘り下げてきました。
1on1にマイナスイメージがあるのも確かですが、上で述べたように多くのメリットを享受できるのも事実です。組織・職場、従業員によい効果をもたらす1on1を実施するためには、以下のポイントに留意しましょう。

1on1の目的を共有する

意義のある1on1のためには、目的を明確にすることが重要ですが、実施の目的と言っても「企業理念やパーパスの浸透」、「部下の成長をサポートする」など組織または職場によってさまざまでしょう。この目的を共有し、これをベースに1on1の話題・テーマを決定することで1on1が意義のあるものになります。

1on1で交わされなくてはならないのは、心理的契約の過程の話です。
合理的もしくは、論理的契約つまり雇用関係、部下と上司の組織的関係、目標数字との関係のみで職場、部門が機能すると認識しているビジネスパーソンは存在しないでしょう。

しかし、この心理的契約に関しては、論理的契約よりも費用や時間を費やされないものです。

重要なのは、まず上司側から胸襟を開くことです。会社としての目的を共有する前に、上司と部下で現状認識を合わせる必要がありますが、その際、上司は現状の認識に対して自分の率直な認識を胸襟を開いて話します。そこから自身(上司)と部下の課題や目標が浮かび上がるのです。会社として定めた「部下の成長をサポートする」といった1on1の目的をどう果たすのかは、その上司と部下ごとに異なるものです。目的にどうアプローチが必要なのか、すり合わせを行うことによってアクションが起こしやすくなります。

綿密な事前準備を行う

1on1は自由な話題が特徴の「対話」ですが、「雑談」ではないことを意識しなければなりません。そのためにも、事前に前述した話題例を参考に、議題やアジェンダをざっくりと組んで、それに沿って進める必要があります。メリハリのある対話にするためには、タイムキープ用の時計を用意し、時間をしっかり守ることも重要です。

しかしながら、回数を重ねていくと話題が切れてしまうこともあるかもしれません。そうした際には、過去の1on1を振り返るのも1つの手です。以前話した内容に関して、進捗はどうか、悩みはないかなどを確認すると良いでしょう

1on1が成功したのかどうかは、端的に言ってしまえば部下の本音を引き出せたかどうかですが、1on1に馴染みのない部下は、上司と二人きり=指導の場とネガティブなイメージを抱きやすく、部下が緊張や警戒をしている状態では本音を言い出せなくなり、その分話も深まりづらくなってしまいます。

上司・部下のスキル向上

多くの企業・組織では、管理職のコミュニケーションスキル不足を課題として捉え、1on1を導入しています。たしかに、管理職が部下との良好な関係を築き、適切な指導を行うためには、優れたコミュニケーションスキルが不可欠です。

しかし、見落としてはいけないのは、部下側もコミュニケーションスキル不足に悩んでいるケースが少なくないことです。自身の意見をうまく伝えられない、人間関係上の衝突・葛藤を避けようとする、なんらかの心理的な課題を抱えているなど、さまざまな要因が考えられます。

とはいえ、部下全員にコミュニケーションに関する研修を実施するのは、時間とコストがかかるため現実的ではありません。そういった場合、コミュニケーション関連のゲームやツールを1on1に導入することで、対症療法的な1つの手段としてコミュニケーションスキル不足を解消することもできます。

しかし、コミュニケーション不足に対し、完全に構造化して対応することは不可能です。そのような状況では、コミュニケーションの専門家によるコーチングやコンサルタントの力を借りることで、より効果的な1on1を設計・実行することができます。

専門家は企業の文化や課題・問題を理解した上で、1on1の進め方に関するアドバイスを行うことができるため、無理に内製化せずとも確実にコミュニケーションスキル不足を解消することができます。

継続的に実施する

1on1の重要性は、定期的で継続的な実施にあります。これは、コミュニケーションの頻度が高ければ高いほど相互の関係が近くなり、情報共有も密になるためです。1on1が企業や組織内で定着し、継続的に実施されることは効果的なコミュニケーションや人材育成にとって重要な要素となります。

先に挙げた内容と関連しますが、1on1が定着しない一番の原因は、実施する目的や導入を決めた背景を、参加者に十分に説明していないことが挙げられます。社員や従業員がなぜ1on1を行う必要があるのかを理解していないとその重要性や意義が伝わらず、定着しづらくなってしまいます。

また、短絡的な目線による成果判断も定着を阻む要因になりえます。部下の自主性を尊重し、成長や改善を促すためには長期的な視点での成果評価が求められます。1on1は単なる情報伝達の場ではなく、部下とのコミュニケーションを通じて目標達成や組織の発展につなげる重要な機会であると認識しなければなりません

まとめ

1on1を有意義なものにするためには、準備をしっかりと行い、目的を明確にすることが重要です。また、上司と部下がお互いにリスペクトを持ち、率直な対話を心がけることも大切です。

1on1は、個人の成長やチームの発展にとって貴重な機会であることを忘れず、有意義な対話を行ってより良い関係性と成果を築いていきましょう。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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