「問い」を立てることから始める課題解決【前編】


【この記事のポイント】
・課題が解決に至らないのは、成功事例や「答えがあるもの」に頼りすぎ、課題そのものに焦点を当てていないからかもし知れない
・「答えのあるもの」から離れ、現状に目を向けて考えるためのアプローチ法には2つのやり方がある
・「答え」はひとつではなく、状況により刻々と変わるもの。「ただひとつの正解を見つけなければ」という呪縛から自らを解放し、解決への可能性を広げよう


なぜ、「答え」ではなく「問い」から考えることが大事なのか

ベストを尽くしているはずなのに、なぜ成果が見えないのか

優秀な人材を集めてプロジェクトを実施したのに、状況が改善されない…
成功事例を試してみたが、成果が見られない…
ビジネス書を読み漁っても、答えが見えない…

自社の課題解決に向けて、自分たちなりに最善の策を講じているのに、手応えがないと感じている人は少なくないのではないでしょうか。成果が得られないのは、「実績があるもの」「答えがあるもの」に頼ってしまい、自社の課題に焦点を当てた取り組みをしていないからなのかもしれません。

自社の現状ではなく、他社の成功事例に目を向けていませんか?

新しいプロジェクトを立ち上げることになった担当者から相談を受けるとき、真っ先に「他社様ではどうしていますか?」と聞かれることがよくあります。もちろん、他社で成功した取り組みは実績があることなので、課題を解決するヒントにはなります。しかし、他社の成功事例にとらわれすぎると、解決すべき自社の課題そのものがなおざりになったプロジェクトになってしまいます。

過去の実績や経験に頼っていませんか?

有能なメンバーでチームを組んでプロジェクトを実施したのにもかかわらず、期待した成果を得ることができないのは、「失敗したくない」「失敗することはできない」という意識が強いからかもしれません。その結果、自分たちの頭のなかにストックされた知識や過去のデータから、「こうなるだろう」と想定される、「答え」がある策を選んでしまい、焦点を当てるべき課題ではなく、「答え」に向かって取り組んでしまうのです。

「答え」ではなく、置かれている現状に目を向ける

では、「答え」のあるものから離れて、自社の現状に目を向けて考えるには、どうしたらいいでしょうか。たとえば、次のような二つのアプローチが考えられます。

1.「何をするためにここにいるのか?」という「問い」からの展開

私たちは、何をするためにここにいるのか?(なぜ、この会社で働いているのか?)」という「問い」を掘り下げていくと、成功事例や実績などから離れたところから思考することができます。

たとえば、「森を守る」というミッションを掲げている、林業に携わる企業のプロジェクトチームで、こんな会話が展開されるかもしれません。

 

「私たちが社会のためにすべきことは?」
「森を守ることですよね」
「どうして森を守らなくてはならないのですか?」
「そんなの、当たり前じゃないですか」
「当たり前かもしれませんが、それをあえて言葉にするとどうなりますか?」
「…。」

 

ここで、「どうして森を守らなくてはならないのですか?」という問いに、メンバー全員が答えられるようになってはじめて、一人ひとりが自社の課題に向けた視点をもてるようになります。そこから、「では、『森を守る』とはどういうことか?」「森を守った結果、社会はどうなるのか?」と、話を深掘りしていくと、

 

私たちはこの状態を目指している

でも現状はこんな状態

ならば、こんな取り組みを実施したら目指すところに近づけるのでは?

 

といったように話が展開し、自社の課題に焦点が当たった、様々な意見が出てくるのではないでしょうか。

2.「違和感」を言葉にして、周囲に話してみる

職場で違和感をもちながらも、「そう感じているのは自分だけかも」と、曖昧なままにしていることはないでしょうか。そうした違和感を言葉にしてみると、自分が置かれている組織の状況に目を向けた「問い」が生まれます。

さらに、それを口に出してみたら、実はみんなそう思っていたということもあるかもしれません。たとえば、アンデルセン童話の『裸の王様』に、そうした状況を見ることができます。

物語の後半、完成した王様の衣装を見たとき、王様と周囲の召使いは違和感(あれ、裸なんじゃないか?)をもちます。しかし、その前提となっているルール「おろか者には見えない」によって、違和感を誰も声にすることができなかったという場面があります。そして、この物語の最後、誰しもおかしいと思っても言えない場面で、「王様は裸だ」と言うことができたのは、子どもでした。

なぜ、王様や召使いは違和感を口にできず、子どもは口にできたのでしょうか? そして、そもそも、なぜ大人たちは職人を装った詐欺師の持ち込んだルールに違和感をもたなかったのでしょうか?(違和感をもった召使いもいたのかもしれませんが、その違和感は城の中で共有されなかったようです)。

この物語をあなたの職場に当てはめてみると、職場にある違和感が見えてくるかもしれません。

 

  • 王様は誰?
  • 召使は誰?
  • 子どもはどこにいる?
  • 見えない衣装(アウトプット)は何?
  • みんなを縛るルールは?

 

といった具合に。

「正解はない」という前提で考えると、可能性が広がる

今回は、「答え」ではなく、現状に焦点を当てて考えるための二つのアプローチを紹介しましたが、どちらにも共通する大事なことがあります。それは、「唯一無二の正解はない」という前提で意見を出し合うことです。

「正しい答えは一つしかない」という前提で話を進めると、「正しくない」とされる意見は切り捨てられることになります。それは、新しいアイデアに出合う可能性を狭めているとも言えます。もしかすると、「正しくない」とされる意見のなかに、本当に問うべきことや、新しいアイデアにつながるヒントがあるかもしれないからです。

そもそも、「答え」は一つだけではなく、正解も不正解もありません。なぜなら「答え」は、自分たちが置かれている状況によって日々、変わるからです。「いろんな答えがあるし、いろんな失敗もする」という心構えでいれば、自由な発想を生みだしやすくなり、新しい道が開けてくるかもしれません。

「答え」のあるものから離れて、課題に焦点を当てた「問い」を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。

次回【後編】では、「問い」の立て方について、詳しく紹介します。

 

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株式会社ソフィア

ラーニングデザイナー

古川 貴啓

組織の風土、行動を変えていく取り組みを企画設計から、実行継続まで支援しています。ワークショップなどの対話を通して新たな気づきを組織に生みだし、新たな取り組みを始めるための支援を得意としています。

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