企業の組織力強化のカギは社内のコミュニケーション!

企業のグローバル化、不確実性(VUCA)の時代とも言われる社会の状況、不況による業績不振など、激化する外部環境の変化に直面し、企業は変化への対応を求められています。これらの環境変化への対応として企業が行う組織構造の改革や、事業の変革、その結果として生じる働き方や人材の多様化は、企業に遠心力をもたらし、意思決定や変化への適応のスピードを低下させます。

組織の求心力を高めて変化への対応を続けていくためには、組織力の強化が不可欠です。そして高い組織力を支えるのは、活発な組織内コミュニケーションです。

本記事では、コミュニケーションが組織力にもたらす影響や、コミュニケーションの改善によって組織力を強化する方法、組織力を強化するコミュニケーション施策とはなにかについて解説します。

組織力とは

組織とは、共通の目的を持って集まり、その目的を達成するために分業や調整を行う人々の集団のことです。組織が目標に向けて意思決定や実行を行うためには、コミュニケーションによって関係者の意見調整や合意形成を行うことが必要です。大きなものでは経営方針の決定、小さなものでは会議日程の決定など、組織では日々大小さまざまな意思決定が行われており、意思決定のスピードは組織のパフォーマンスを左右します。

こういったことから、ソフィアでは、組織力が高い状態とは「組織内の意見調整や意思決定がスムーズに進む状態」であり、その土台には活発な組織内コミュニケーションがあると考えています。

また、環境の変化が激しい不確実な現代においては、変化に対して迅速に柔軟に対応し、合わせて素早く組織を変えていく必要があります。情報共有や意思疎通を円滑に行い、どのような状況にも対応できる力も組織力に含まれます。

組織力を「強化する」とは

では、組織力の強化とはどのようなことでしょうか。
そもそも強化とは、「足りない部分を見極め、補ってさらに向上させること」を意味します。足りない部分を見極めるためには、まず「ありたい組織の状態」を描く必要があります。それによって、現状とのギャップやその原因を明確に把握することができ、現実を理想に近づけるための具体的な施策を策定することが可能となるのです。

組織の状態や問題点、そして組織力低下の原因は、企業によって異なります。さらに、社会の移り変わりが激しい昨今では、何が成功につながるのかを読むことは困難です。つまり、組織力の強化には万能の施策が存在するわけではなく、自組織の状態や社会情勢に応じた効果的な対策を打つことが重要なのです。


組織力の高い企業の特徴

組織力の高い企業の特徴は、以下の通りです。

社内にビジョンが浸透する経営者のコミュニケーション能力

ビジョンは組織の方向性や目標を示すものであり、社内全体で共有されることが重要となります。経営者はビジョンを明確にし、社員に伝える役割を果たすことが求められます。そこで必要になるのがコミュニケーションです。

コミュニケーション能力の高い経営者は、複雑な情報を簡潔にまとめ、重要なポイントを的確に伝えることができます。また、従業員との対話も大切にしており、アイディアや意見を受け入れる姿勢で、正直で公平なコミュニケーションを心掛け、情報を共有しやすい環境を整える努力をしているのです。

このような経営者であれば、従業員との間に信頼関係が生まれやすく、打ち出されたビジョンに対して、従業員は理解し受け入れようと努力するのではないでしょうか。

心理的安全性が高くコミュニケーションが活発

心理的安全性とは、組織において個人が発言・行動する際に周囲からの反応を気にしすぎることなく、ありのままの自分でいることのできる状態を意味する概念です。組織行動学を研究している、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱しました。 さらに「成功するチームを構築するために、心理的安全性はもっとも重要なものである」と米Google社が発表し、注目を浴びています。

心理的安全性の高い企業では、恐れることなく、自己表現や意見を積極的に発信し、アイディアを提案することができます。また、従業員同士のコミュニケーションが円滑であり、信頼関係が築かれているため、チームメンバーはお互いを尊重し、意見や意図をオープンに共有することもできます。このような環境では、コミュニケーションの質が向上し、問題解決や意思決定がスムーズに行われるのです。

ただし、コミュニケーションが円滑で何でも言い合える関係性だとしても、誰かが標榜しているだけの状況や、悩んだり考えたりする煩わしいことを避けたような、仲良く楽しい会話だけでは価値の創造につながりません。お互いの考えや想いを尊重した、生産性のあるコミュニケーションを心掛けましょう。 組織が心理的安全性を重視し、コミュニケーションが活発になることで、社内全体で協力し合い、業務の効率性や生産性の向上につながります。よって、組織の風土も健全に維持されるのです。

人材配置が適格

人材配置は、個人の適性や能力に応じて、適材適所に配置することです。採用時や人事異動などのタイミングで行われ、組織の機能や生産性が最大限に引き出せることが期待できます。 人材配置を最適化するためには、従業員の能力やスキル、業務経験、適性、モチベーションなどを評価し、適切なポジションに配置する必要があります。しかし、これらの情報は従業員自身が持っていることが多く、上司や人事部とのコミュニケーションを通じて明らかになります。

人材配置が適格である企業は、従業員それぞれの意向や希望、意見や悩みを聞き出し、把握することができています。従業員のポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の成果を高めるために、組織のニーズや目標に合わせた配置を行っています。


コミュニケーションで組織力を強化するためには?

それでは、コミュニケーションを活性化させることで組織力を強化するためには、どのようなことに留意すればよいのでしょうか。ここでは代表的な3つのポイントを解説します。

コミュニケーションの量と質を知る

まずは組織内のコミュニケーションの現状について把握することが必要です。今現在の組織内コミュニケーションの量と質について測るにはPCF調査が役立ちます。

PCFとは、「Penetration(浸透的コミュニケーション=トップダウン)」、「Cooperation(協創的コミュニケーション=ナレッジシェア)」、「Feedback(提言的コミュニケーション=ボトムアップ)」という組織内で行われる3方向のコミュニケーションの頭文字をとった言葉です。どのコミュニケーションがうまくいっているか、どのコミュニケーションに課題があるかを分析する調査です。

公式のコミュニケーションと非公式のコミュニケーションを使い分ける

コミュニケーションには、「公式」のコミュニケーションと「非公式」のコミュニケーションとが存在します。公式のコミュニケーションとは企業が意図的に行う情報伝達であり、経営メッセージや業務連絡、ペーパー資料やマニュアルなどです。

対して非公式のコミュニケーションとは、組織内の個人間やチーム間に対する自然発生的なコミュニケーションのことを指し、噂話や評判なども含まれます。組織力を強化するためには、これら公式と非公式のコミュニケーションの違いを知っておく必要があります。

これは、公式が良いコミュニケーションで非公式が悪いというような意味ではありません。どちらも必ず組織内に存在するもので、それぞれの役割があります。目的に応じて、どちらのコミュニケーションが適切かを見極めて使い分けたり、うまく両方のコミュニケーションを連携させたりして、組織全体のコミュニケーションを促していくことが大切なのです。

心理的安全性を高める

「組織力の高い企業の特徴」でもお伝えした通り、心理的安全性は組織力において重要な要素の一つです。アイディアを出したときに非難されたり、取り組みに失敗した際に周囲から糾弾されるような心配がない状態です。

心理的安全性を高めることで、個人が発言しやすい環境が生まれ、他者の意見を尊重し、お互いに助け合おうようとする姿勢も生まれます。 いろいろな考え、異なる価値観を持つ人たちが集まる組織において心理的安全性を確保するためには、意見の違いを理解し、許容する社内風土づくりが重要です。また、こうした環境下で社員が自由に発言できる機会を意図的に設けることも同じように重要であるといえます。

ただ、自由に発言できる場を設けたとしても、いつも特定の人ばかりが発言しているような状況が生まれてしまうと、その人たちのだけ発言力が増してしまい、他の従業員のモチベーションが低下してしまう恐れがあります。心理的安全性の向上のためには、従業員全員、平等に発言できるような工夫が必要となります。

組織力を強化するコミュニケーション施策

組織力を強化するためには、管理層とのタテのつながりだけでなく、チーム間の情報共有、現場から経営への提言など、前述のPCF調査でいう3種類すべてのコミュニケーションのバランスが重要です。さらに、事業が多角化しており、異なる視点や文化を受け入れ多様な人々とのコミュニケーションが求められています。必要な施策は組織の状態によって異なりますが、ここでは代表的な3つの施策をご紹介します。

コミュニケーションの場をつくる

インターネットの普及によってSNS等で個人が情報発信することが一般的になり、私たちが利用できる情報源は大幅に増加するとともに、幅広い層の人や組織との双方向コミュニケーションが可能になりました。企業においても、経営が一方的に情報発信するだけではなく、チームや個人が情報発信できる場を設けることが、組織内コミュニケーションの活性化につながります。

具体的には、社内報への投稿募集や、Web社内報のコメント覧などをはじめ、個人が直接情報発信できる社内SNSなどの仕組みを導入する方法もあります。これらは一からデザインすることが難しく、またその他のコミュニケーション施策と組み合わせることでより効果を発揮するものでもあるため、社外の専門家のアドバイスを得ながら導入するのがよいでしょう。

組織力向上の土台となる社内コミュニケーションを活発にするには、業務以外でのつながりの場を整備し、マネジメントすることも効果的です。ここでは業務内外問わず、社員間の人間関係を強固にする場づくりの一例をご紹介します。

共通言語とコミュニケーションスキルの向上

社員間に共通言語が存在すると、組織内のコミュニケーションコストが下がり、コミュニケーションの円滑化につながります。ここでの共通言語とは、大きな意味では社員の行動や判断の基準となる企業理念やビジョンの浸透を指しますが、細かい話で言えばオンボーディングで得られるような、組織で働くうえでの知識も含まれます。

これらは、人材が組織の文化になじむための育成といってもよいでしょう。さまざまな価値観・考え方を持った社員が、組織の一員として一体感をおぼえ、新しく入った社員は、いち早くなじむことができるような、コミュニケーションの基盤が必要となります。これを作っておくことで、組織におけるコミュニケーションの活性化に大きな影響を与えます。

また、これらの施策は従業員エンゲージメントの強化、心理的安全性の強化にもつながります。 理念・ビジョンの浸透や、オンボーディングの取り組みにおいて、社内だけでは思うような成果が出ない場合には、外部の支援を利用することも考慮に入れておきましょう。

業務以外のつながりの場を作る

組織力向上の土台となる社内コミュニケーションを活発にするには、業務以外でのつながりの場を整備し、マネジメントすることも効果的です。ここでは業務内外問わず、社員間の人間関係を強固にする場づくりの一例をご紹介します。 個人の興味・関心にあった場を選んで参加できるようにするために、業績への影響や社員のワークライフバランスに配慮しつつ、複数の場を設けることをお薦めします。ソフィアでは、こういったイベント施策やコミュニティづくりの支援も行っています。

部活動

業務から離れながら協働をレクリエーション的に楽しめる部活動では、同じ趣味嗜好という共通の話題があるため、コミュニケーションが円滑に進みます。活動を通して、普段見ることのない同僚の違った顔を見られるという利点もあります。部によっては他社と競い合うこともあり、そのような活動ではより強固な絆が結ばれるでしょう。

勉強会

現代においては報酬や評価のような外発的動機より、自分が成長できるかといった内発的な動機によって企業を選ぶ社員が増えています。自らの成長を重視する社員にとって、成長を促す機会を企業が提供し、それを共に高め合える仲間がいることは非常に頼もしく、そこから生まれるコミュニケーションも快いものであるはずです。

TGIFなどの懇親会

TGIFはGoogle社なども採用している社内でのフランクなコミュニケーションの場で、お酒や軽食が振る舞われるものの、単なる「飲みニケーション」で終わらせていません。社長や幹部が会社や自社の事業についてプレゼンをし、質問者はそれに対して直接質問ができるような場としています。意見交換を気軽に行うことができることから、心理的安全性を高める有効な施策になるといえるでしょう。

まとめ

組織力強化に向けたコミュニケーション施策を実施している企業は多い一方で、実際に組織力の強化へと確実につなげることは容易ではありません。企業の現状や組織力強化の目的に応じてしっかりと施策をデザインして、実施後には効果を確認して改善を繰り返す必要があります。 ソフィアでは、多くの企業様の社内コミュニケーション活性化を支援し、組織力強化につなげてきました。もし組織力強化の手法についてお悩みだったり、社内コミュニケーションの活性化をうまくできていなかったりしている場合は、お気軽にご相談ください。

よくある質問
  • 組織力強化のポインは何ですか?
  • 「足りない部分を見極め、補ってさらに向上させること」です。足りない部分を見極めるためには、まず「ありたい組織の状態」を描くことが必要です。そのうえで、理想と現実のギャップがどこにあるのか、どの程度あるのか、その原因は何なのかを見極めます。そこではじめて、現実を理想に近づけるため施策を考えることが可能になります。

  • コミュニケーションが組織力にもたらす影響はどんなものですか?
  • 意思決定のスピードを左右します。組織内の意見調整や意思決定がスムーズに進む状態にすることで組織力が安定します。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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