人材育成

ピープルマネジメントとは?次世代の人的資本経営と実践手法

ピープルマネジメントというマネジメント手法をご存知でしょうか。ピープルマネジメントは、これからの時代に必要とされる新たなマネジメント手法だと考えられています。

マネジメントと聞くと、企業が人や組織を管理するというイメージが強いのではないでしょうか。数多くのマネジメント手法がある中で、ピープルマネジメントとは一体どういうものなのでしょうか。

本記事では、このピープルマネジメントの概念や手法についてご紹介します。とくに、大企業においてDX推進や社内ポータルを通じたインターナルコミュニケーションを担う皆様にとって、従業員一人ひとりの内面的なポテンシャルを引き出す組織づくりは急務となっています。最新の実態調査データや各省庁のガイドラインを交えながら、実践に向けたノウハウを徹底解説します。

ピープルマネジメントとは

ピープルマネジメントは、これまでのマネジメント手法とは着目するポイントが異なります。そのため、ピープルマネジメントを知る際は、従来のマネジメントと比較して、その違いも知っておく必要があるでしょう。

具体的には、仕事のプロセスや目先の成果のみに目を向けるのではなく、従業員一人ひとりの興味関心やニーズ、強みなどの内面的なリソースを上司側が把握し、伴走することからスタートします。対話を通じて部下のモチベーションや、企業のために自ら貢献しようという「従業員エンゲージメント」を高めていく点が最大の特徴です。

従来のマネジメントとの違い

従来の人材領域のマネジメントでは「タレントマネジメント」が重視されてきました。タレントマネジメントは、「タレント(従業員)」の持つスキルや経験を最大限に活かすために、人材配置や人材育成を戦略的に行うマネジメント手法です。そのためにタレントマネジメントシステムが生まれ、従業員の属性をデータ化して管理・分析できる仕組みが作られ、今も活用されています。

対してピープルマネジメントは、人から場(チーム)に着目します。タレントマネジメントで扱うような人事データではなく、さまざまな動機や価値観、意欲や働き方、キャリアを持った「チーム」を、その中の人と併せてマネジメントするものです。ピープルマネジメントで管理すべきものは、データ化しにくい、従業員のいわば「ソフト面」を担うものです。

そのため、これまでのマネジメントと比べても、いっそう一人ひとりの従業員に向き合い、彼らの成功にコミットすることが求められます。

従来のマネジメントとの違いをさらに分かりやすく整理すると、以下のようになります。

比較項目 従来のマネジメント ピープルマネジメント
マネジメントの目的 経営資源の管理による組織成果の最大化 個人の成功・成長を通じた組織成果の最大化
重視するポイント 成果・パフォーマンス・業務遂行力 従業員のエンゲージメント・モチベーション
マネージャーの役割 監督、管理、評価、指示(トップダウン) 伴走者、コーチング、成長支援(ボトムアップ)
目標・評価の頻度 半年〜1年に1回程度の定期評価 隔週〜月に1回程度の高頻度な対話とフィードバック
人材の捉え方 適切に配置すべき経営資源(リソース) 可能性を引き出し投資すべき資本(キャピタル)

このように、従来は「ヒト・モノ・カネ」という経営資源をいかに無駄なく管理し、短期的なビジネス上の成果を上げるかが重視されていました。しかし現在は、パフォーマンスだけでなくメンバーのキャリアや働き方を含めた「成功」にコミットすることが、結果として組織の成長に直結するという考え方へとシフトしています。


ピープルマネジメントが必要となる背景

なぜ従来のタレントマネジメントではなく、ピープルマネジメントの必要性が叫ばれるようになったのか、疑問に思われる方も多いでしょう。ここからは、その背景について解説します。

クルト・レヴィンの法則

ピープルマネジメントの必要性は、社会心理学の父と呼ばれるドイツ出身の心理学者(後にアメリカへ移住)、クルト・レヴィンの提唱した法則から説明ができます。クルト・レヴィンの法則は、「人が取る行動(Behavior)は、人間の特性やスキルなど(Personality)と環境(Environment)とが、B=f(P,E) と相互に作用して生じる」というものです。これは決して新しい概念ではありません。

ここでいう特性(Personality)とは人の性格や価値観・スキルなどで、環境とは組織の風土・人間関係・上司など周囲の状況です。

簡潔に言うと、同じ環境であっても人が違えば取る行動は変わり、逆に同じ人でも環境が違えば取る行動は変わってくるということです。

従来のタレントマネジメントは、個人のスキルや経験を可視化しデータ化することで、マネジメントの負荷を下げることを目的としていました。タレントマネジメントを実施した次の段階として、マネージャーが強化しなければならないのは環境のマネジメントであり、そのためにピープルマネジメントがあるのです。


ビジネスサイクルへの対応力

ビジネスサイクルとは、景気の拡大や後退、回復や悪化といった、循環的な景気変動を指した言葉です。企業がこのビジネスサイクルに対応するためには、チームの力、ひいては人の力が必要です。

日本が急速に経済成長していた時代は、市場の動きや人々のニーズがある程度予測可能でした。企業は能力の高い人材を終身雇用で囲い込んでイノベーションを創出し、トップダウンによる意思決定のもと、似たような属性や考えの社員が一丸となって動くことで業績を上げてきました。そのため、経営が個々の従業員に向き合う必要性は低かったのです。

一方、現在は人々のニーズが多様化し、世の中の変化は経営にとっても予測不可能である上に、人材の流動性も高まっています。イノベーションを起こすのは人であり、人の集合体であるチームです。そのため、企業は人に向き合い、最大限にパフォーマンスを発揮できるような環境を提供する側に回る必要があるのです。そして個人のパフォーマンスを引き出す鍵が、エンゲージメントやカルチャーといった、タレントマネジメントシステムでは管理しにくいものであることがわかってきています。

働き方の多様化

一昔前は終身雇用が当然の時代で、転職の選択肢はほとんど考えられませんでした。しかし今では、自分が力を発揮できる環境を求めて転職することが当たり前になり、特に人事部門の方々は、この変化を採用の現場でひしひしと感じていることでしょう。

こうした働き方の変化の中で企業が行うべきは、自社にとって必要な資質を持つ優秀な人材を自社に留めておく組織づくりだといえます。従業員のエンゲージメントを高め、良いカルチャーを社内に醸成するためには、企業がそれを叶えるマネジメントを行わなければなりません。そうした背景から、ピープルマネジメントに注目が集まってきたという経緯です。

弊社ソフィアの調査では、従業員が職場を「いい職場だ」と評価する要因として「人間関係・上司部下関係」が54%で最多となり、「職場環境」(48%)や「待遇・報酬」(43%)を上回る結果が出ました。このデータからも、働き方が多様化する中で優秀な人材を定着させるためには、日々の人間関係やコミュニケーションの質を担保するピープルマネジメントがいかに重要であるかが読み取れます。

また、人材の流動化と多様化によって、チームやプロジェクトの目的に最適な人材を集めることが可能となりました。しかし、最適であるということは一人ひとりのメンバーの貢献度が高いことを意味し、一人でもメンバーが欠けるとチームやプロジェクトが立ち行かなくなる可能性もあります。そのため、チームやプロジェクト全体をうまく機能させるマネジメント手法であるピープルマネジメントが、企業にとって必要になっているわけです。


テクノロジーの発展

「AIが人間に取って代わる」という言葉が脅し文句のように取り沙汰されていますが、テクノロジーの発展でオートマティックにできる仕事が増え、働く人は「何をすべきか、何ができるのか」をあらためて問われる時代となりました。そのような背景から、デジタルネイティブ世代の若年層には「成長できる環境を求めて会社を選ぶ」という考え方が多く見られます。

働く人はあらためて「自分の仕事に意味はあるのか」という疑問を持ち始めており、モチベーションが揺らぎ始めています。そして、従業員のこういった疑問に応えないまま、企業がこれまでと変わらない活動を続けていれば、エンゲージメントの低下は免れません。人が人だからこそできることを、人と向き合って任せる必要が出てきたのです。

また、タレントマネジメントに代表されるように、デジタル化によって人のスキルやデモグラフィック(人口統計学的)な属性はほぼ可視化が可能となりました。こういった部分のマネジメントの負荷が下がり始めている一方で、可視化が難しい組織の環境や人の関係は、デジタル化やオートメーション化ができません。これからはこれらの部分のマネジメントに注力すべきであり、テクノロジーの発展に伴って、人の手でマネジメントを行う必要のある範囲が変わってきているともいえるでしょう。


ピープルマネジメントと人的資本経営(経済産業省・人材版伊藤レポート2.0)

ピープルマネジメントの潮流を強力に後押ししているのが、国を挙げて推進されている「人的資本経営」です。経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート2.0」では、人材をコストではなく、価値創造の源泉となる「資本」として捉え直すことが提唱されました。

同レポートでは、経営戦略と人材戦略を連動させ、中長期的な企業価値を向上させるための枠組みとして「3つの視点と5つの共通要素」が示されています。とくに5つの共通要素に含まれる「従業員エンゲージメントの向上」や「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」を実現するためには、画一的なトップダウン管理は通用しません。

各個人のキャリア志向や価値観に寄り添い、ポテンシャルを引き出すピープルマネジメントの手法が必要不可欠です。企業価値を高め、海外投資家からの評価を獲得するためには(なお、2014年の伊藤レポートではROE8%以上の達成が目標として掲げられています)、現場のマネージャー一人ひとりが『人を活かす』意識を持つことが前提となるのです。

ピープルマネジメントと人的資本開示・ISO30414

さらに、グローバルな潮流として「ISO30414」による人的資本情報の開示ガイドラインが大きな影響を与えています。2018年に国際標準化機構(ISO)が発表したこの規格は、組織のリーダーシップ、組織文化、従業員エンゲージメント、多様性などを定量的に測定し、ステークホルダーに開示するための枠組みです。

日本でも、2023年3月期から上場企業に対して、有価証券報告書等における人的資本情報の開示が義務付けられました。企業はもはや「我が社は人を大切にしている」と定性的に語るだけでは不十分であり、エンゲージメントスコア、採用・離職率、後継者育成の状況などをデータとして客観的に示さなければなりません。

ISO30414の11領域には、「コンプライアンスと倫理」「組織文化」「健康・安全」などが含まれており、これらはピープルマネジメントの質に直結する項目です。ピープルマネジメントの実践は、こうした非財務指標を健全に保ち、投資家や労働市場からの信頼を獲得するための具体的なアクションプランとして機能します。

厚生労働省の調査・白書に見る従業員エンゲージメントと1on1コミュニケーション

従業員のエンゲージメント低下は、組織にとって深刻なリスクをもたらします。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によれば、離職理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」が男女ともに上位(女性1位:13.0%、男性2位:9.1%)に挙げられており、また前年比で上昇幅が最も大きかった理由として「仕事の内容に興味を持てなかった」(男性:+2.9ポイント)も注目されています。

また、厚生労働省の「労働経済白書」においては、将来のキャリア展望を明確化することが「働きがい(ワーク・エンゲイジメント)」の向上に直結し、結果として定着率や労働生産性に大きなプラスの影響を与えると指摘されています。

こうした背景から、政府機関自身も職員のエンゲージメント低下を早期に発見するため、定期的なサーベイや1on1ミーティングの導入を進めています。部下の興味関心や価値観に耳を傾け、キャリアの希望に沿った業務アサインを心がけるピープルマネジメントは、仕事への熱意や没頭を引き出し、優秀な人材の予期せぬ離職を効果的に防ぐ手段として公的にも推奨されています。

心理的安全性(エドモンドソン論文)とチームの生産性

ピープルマネジメントが機能する前提として、チーム内の「心理的安全性」が欠かせません。ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性を「チームにおいて、他のメンバーが自分の発言を恥じたり、拒絶したり、罰を与えるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義しています。

エドモンドソン教授によれば、心理的安全性が低い職場のメンバーは、以下の「4つの不安」を抱えています。

  1.  無知だと思われる不安(Ignorant)
  2.  無能だと思われる不安(Incompetent)
  3.  邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)
  4. ネガティブだと思われる不安(Negative)

これらの不安から、メンバーは本来の自分を偽り、ミスを隠す自己防衛(自己印象操作)に走ってしまいます。Google社の「プロジェクト・アリストテレス」でも実証された通り、チームの生産性を左右する最も重要な要素は、この心理的安全性です。

ピープルマネジメントは、相互尊重を大前提とし、対等な関係性で対話を行います。意見の衝突(コンフリクト)を恐れず、互いに率直な意見を言い合える環境をマネージャーが意図的に構築することで、強靭なチーム力が培われます。

ピープルマネジメントのメリット・成功事例・導入ステップ

ピープルマネジメントを組織に導入することで、企業と従業員の双方に多大なメリットがもたらされます。

第一に、従業員の自主性と生産性の向上です。上司からの指示をただ待つのではなく、「自らの強みを組織でどう活かすか」を自律的に考えるようになります。自分で目標を決定し、達成プロセスに伴走してもらうことで納得感が高まり、結果として生産性が劇的に向上します。

第二に、離職防止と定着率の改善です。従業員のキャリアビジョンと会社の目標を擦り合わせることで、組織への帰属意識(エンゲージメント)が高まり、優秀な人材の流出を防ぐことができます。

導入のステップとしては、いきなり高度なマネジメントを求めるのではなく、まずは「コミュニケーションの量」を増やすことから始めます。週に1回、あるいは隔週での1on1ミーティングを制度化し、上司と部下が対話する絶対的な時間を確保します。その上で、フィードバックの質を高めるための研修(SBIモデルの活用など)を行い、徐々にマネジメントの「質」を向上させていくアプローチが成功の鍵です。

ピープルマネジメントのポイント

ピープルマネジメントのポイントは、「見えない」「可視化できない」「データ化しにくい」内容をマネジメントすることであり、企業においては「場」をマネジメントすることといえます。

ここで重要になってくるのが、コミュニケーションの「深度」と「頻度」です。

アナリティクスツールの導入

ピープルマネジメントのトレンドに合わせて、従業員のエンゲージメントやモチベーションを分析するアナリティクスツールが登場しています。これまでのタレントマネジメントツールのようなパフォーマンスに関する指標(知識や能力、経験など)とは異なる、ピープルマネジメントに必要な項目の測定・管理・分析機能を持ったツールです。

ただし、ツールの導入にあたっては注意が必要です。弊社ソフィアの調査では、従業員数1,000人以上の企業において「エンゲージメントサーベイ結果の数値を上げること自体が目的化していると思う」と回答した層が半数に迫りました。ツールによる数値化はあくまで現状把握の手段であり、その結果をもとにマネージャーが部下と対話し、職場環境の改善に活かすという本来の目的を見失わないことが重要です。


組織開発(OD)

1960年代に日本に導入されたものの、当時は理解されず浸透しなかった「組織開発(OD:Organization Development)」が、2010年ごろから再び注目されています。企業の文脈におけるODとは、会社という組織が、その中で動いている従業員自身の手によって組織をよりよくしていく、あるいはそのための支援を行うことを指します。「ビジネスサイクルへの対応力」の項でお伝えした「現代では企業よりも人が力を持っており、イノベーションを起こすのは人であり、人の集合体であるチームである」という考え方は、まさにODに合致するものです。

ODにおいては、組織文化や意欲、満足度、人間関係やコミュニケーションの状態、協働性、リーダーシップ、規範などに働きかけて組織をよりよくしていきます。

これらは総じて「ヒューマンプロセス」と呼ばれ、「個人がどんな感情を持って、どのような動機で、どのような関係でどのように影響を及ぼし合い、どのような企業風土の中でどのようなコミュニケーションが行われているのかという、集団における関係性の質」と定義づけられています。


ピープルマネジメント実践の手がかり

チームメンバーの普段の振る舞いを見ていてマネージャーが思うことや、1on1ミーティングの中で出てきた内容、それぞれが他のメンバーの見ていないところで行っていることなどを統合し、個々と向き合っていきます。それぞれに必要とされているサポートや、チームの環境、キャリアについての対話を通して、従業員一人ひとりに寄り添う姿勢を作り上げていきましょう。

これらをチーム単位で実践し、すくいあげた課題をまとめて、チームとして解決していきます。それらが、従業員エンゲージメントを高め、モチベーションを向上させる取り組みへとつながっていくでしょう。



ピープルマネジメントにおける1on1コミュニケーションの課題・解決策

ピープルマネジメントを実践する上で最も代表的な施策が「1on1(ワンオンワン)ミーティング」ですが、運用には多くの課題が伴います。

弊社ソフィアの調査では、大企業の「6割強」で1on1が実施されており、制度自体は着実に広がっています。しかし一方で、実施頻度が「半年に1回以上(30%)」「3カ月に1回以上(21%)」という層が多く、ピープルマネジメントに必要とされる「高頻度な対話」には至っていない実態が明らかになりました。

さらに、1on1が業務やキャリアに役立っているかという問いに対し「どちらでもない」が36%で最多となり、有用性を実感できていない層が少なくありません。これはマネージャーの傾聴力や対話の「質」にばらつきがあることを示唆しています。

これらの課題を解決するためには、以下のような対策が有効です。

大企業の社内ポータル・DX推進・インターナルコミュニケーションとピープルマネジメント活用事例

大企業におけるピープルマネジメントは、上司と部下の1対1の関係性だけでなく、組織全体のインターナルコミュニケーション(社内コミュニケーション)と密接に連動しています。DX推進部門や広報部門が運用する「社内ポータル」は、ピープルマネジメントを補完する重要なプラットフォームです。

弊社ソフィアの調査では、他部署の情報を入手する経路として「定例会議・全社会議」が40%で最多となる一方で、「何も実施していない」企業も26%存在し、部署間の情報共有に大きなばらつきがあることが分かりました。また、職場の関係性構築において「一緒に仕事をする経験」だけでなく、「偶発的な雑談や立ち話」を高く評価する声が多く、雑談の頻度が高い層ほど職場を「良い職場」と評価する傾向が顕著に出ています。

こうした実態を踏まえ、大企業におけるDX推進や社内ポータルの活用事例として、以下のような取り組みが効果を上げています。

ピープルマネジメント導入における管理職の業務過多・負担軽減・対策

ピープルマネジメントは個別の対話を重視するため、マネージャーの業務時間と精神的な負担が増大しやすいという構造的な課題があります。プレイングマネージャーとして自身の業務を抱えながら、メンバー全員と月に何度も質の高い1on1を行うのは容易なことではありません。

この「管理職の業務過多」を防ぐためには、組織的な負担軽減策が不可欠です。

  1. HRテクノロジーの活用による業務効率化定型的な人事手続き、目標管理の進捗確認、サーベイの集計などをタレントマネジメントシステム等で自動化し、マネージャーがメンバーと向き合う「対話の時間」を創出します。
  2. 権限移譲とメンター制度の活用マネージャー一人ですべてを抱え込むのではなく、業務の指導はシニアメンバーやリーダー層に権限を移譲(エルダー制度・メンター制度)し、役割を分散させます。
  3. 外部専門家の活用社内の人間関係だけでは解決しづらいキャリアの悩みなどについて、外部のキャリアコンサルタントやコーチング専門家による1on1サポートを併用し、マネージャーの精神的負担を軽減します。

ピープルマネジメントの導入ステップ・スモールスタート・研修

ピープルマネジメントを全社に定着させるためには、一朝一夕にはいきません。現場の混乱を避け、着実に浸透させるための導入ステップを解説します。

ステップ1:スモールスタートによる効果検証

全社一斉に新しいマネジメント手法を強制すると、「また人事から面倒な施策が降ってきた」と現場の反発を招く恐れがあります。まずは、変革への意欲が高い一部の部署や、モデルとなるチームを選定して「スモールスタート」で導入します。そこで得られた成功体験(エンゲージメントスコアの向上や離職率の低下など)のデータを蓄積し、社内ポータル等で好事例として広く共有しながら、段階的に全社展開していくアプローチが最も確実です。

ステップ2:マネージャー向け研修の実施

マネジメントの質を揃えるために、管理職向けの継続的なトレーニングや研修プログラムの実施が必須です。

ステップ3:中長期的な視点での評価

ピープルマネジメントは、ヒューマンプロセスに働きかける性質上、短期的に目に見える売上などの成果が出るものではありません。経営層や人事部門は短期的な結果を求めすぎず、中長期的な視点で組織文化が醸成されるのを見守る姿勢が求められます。


まとめ

ピープルマネジメントは日本での情報がまだ少ないものの、タレントマネジメントに次ぐ現代のマネジメント手法としてHR業界ではトレンドとなっており、すでに実践している企業も見られます。とくに、人材版伊藤レポート2.0やISO30414の要請により、人的資本情報の開示が強く求められる昨今、企業経営の観点からもその重要性は揺るぎないものとなっています。

マネジメントにおける最大の失敗の1つは、「時代に遅れること」です。社会背景の移り変わりによって労働に対する人の価値観が刻々と変化している中で、企業がヒューマンプロセスに合わせてアップデートできないようでは、優秀な人材の流出は回避できません。

記事中でも述べたとおり、今は個人とチームの力が重要性を増しています。会社は、働く人がそれぞれの目指す姿になるためのフィールドへと変化しつつあります。そんな中で自社が選ばれるには、自社の環境が他のどの競合よりも優れていると従業員に感じさせ、エンゲージメントとモチベーションを維持できるようにすることが不可欠です。

もし自社のマネジメントに課題があったり、違和感を覚えたりするようであれば、それは刷新のアラートかもしれません。また、コロナ禍において在宅勤務やリモートワークが導入されている中、ピープルマネジメントは一層重要性を増しつつも、企業において取り組むことが非常に難しい状況となっています。

ソフィアはピープルマネジメントを進める上での手法を持っています。漠然としたマネジメントのお悩みでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問
  • 従来のタレントマネジメントとの併用は可能ですか?
  • はい、可能です。むしろ両立させることが理想的です。タレントマネジメントシステムを用いてスキルや経験などの「ハード面」のデータを可視化し、適切な配置を行うことは依然として重要です。その上で、配置された現場において、マネージャーが個人の価値観や意欲といった「ソフト面」に寄り添うピープルマネジメントを実践することで、組織のパフォーマンスは最大化されます。

  • 成果主義とピープルマネジメントは相反しませんか?
  • 相反するものではありません。ピープルマネジメントは「成果を軽視する」のではなく、「成果に至るためのプロセス(人の感情やモチベーション)」にフォーカスする手法です。定性的な行動や成長意欲を正当に評価しつつ、事業目標と個人の目標をリンクさせることで、健全な成果主義を支える基盤となります。

  • リモートワークやハイブリッドワーク下でピープルマネジメントを行うコツは何ですか?
  • リモート環境では偶発的な雑談が減少し、部下のコンディションが見えにくくなります。そのため、対面時以上に「意図的なコミュニケーションの機会」を設計することが重要です。弊社ソフィアの調査でも示されたように、雑談がもたらすリフレッシュ効果や心理的距離の縮小は業務に好影響を与えます。1on1ミーティングの頻度を上げることや、チャットツールを活用した気軽なやり取りを組み合わせることで、物理的な距離があっても心理的距離を縮めることが可能です。

株式会社ソフィア

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ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。