
2025.07.18
Office 365 Yammerで社内SNS活性化:情報共有とエンゲージメント向上

目次
社内 SNS というサービスは、とくに中規模〜大企業において、同じ会社に勤めているのに顔を知らない・話したことがない未知の同僚たちとのコミュニケーションの接点として機能します。また、業務に関する情報を収集する観点でも非常に便利なツールとなります。本記事では社内 SNS で有名なマイクロソフト社の「Yammer(ヤマー)」というサービスについて紹介するとともに、効果的な活用方法を解説します。
Office 365(現 Microsoft 365)ツール「Yammer」とは
世界最大の SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である Facebook が爆発的な人気を博した 2010 年前後、NTT データ、キヤノンマーケティングジャパン、本田総研などの大手企業が社内 SNS を導入し始めました。
マイクロソフト社が提供する Yammer もこの社内 SNS と呼ばれるサービスの一つです。
Yammer の用途、対象
Yammer は企業を主とした組織向けの SNS サービスです。
組織内の個人が気軽に情報を発信でき、それらが拡散・共有されることで広範囲なつながりが生まれ、組織力の強化やエンゲージメントの向上が期待できます。
Yammer には組織ドメインの概念が導入されており、各社員が関与できるコミュニケーションの範囲を管理者によってコントロールできます。
そのため、各社員に応じて必要十分な情報だけを選択的に接続し、共有することが可能です。
Yammer の特徴
Yammer は炎上しにくい SNS といわれています。やはり炎上しにくいとされる Facebook も同様に、現実の世界で自身を取り巻く人たちによって形成されており、個人が特定できる情報が多分に含まれています。
匿名の SNS や掲示板と比較すると「発言に責任があるかどうか」の意識が芽生えやすく、これが炎上しにくい要因になっていると考えられます。
また、他者の投稿につけることができる「いいね!」も、一見気軽そうに見えますが責任を伴います。
投稿に対して「いいね!」をしたユーザーは第三者からも確認できるため、過激な発言をする人に対して「いいね!」をしていることが周囲にわかると、同調者だと捉えられてしまう可能性があります。
そのためセンシティブな内容の投稿が自然と排されるようになり、コミュニケーションの健全さが保たれやすくなっています。
さらに、Yammer は企業向けのエンタープライズレベルのセキュリティを備えています。社内ポリシーに沿った詳細なアクセス権限設定や監視機能があり、機密性の高い議論も安心して行うことができます。
Teams との違い
Office 365(現 Microsoft 365)には、「Microsoft Teams」というコミュニケーションツールが存在します。
Teams と Yammer はしばしば機能面で比較されますが、Teams のメイン機能は「ビジネスチャット(テキスト、音声、ビデオ)」であるという点で異なります。
1 対 1もしくは少人数のグループにおいて、目的がある会話(打ち合わせ、会議など)に向いています。
一方Yammer は大多数に向けた、もしくはグループ間での情報発信と共有、社内のつながりを醸成するために用いられる「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」です。
多くの企業では、Yammer を社内のメディア(コミュニケーション媒体)として活用しています。
たとえば、従来の社内報の代わりに、WEB 社内報の役割としてYammer を活用している企業もあります。
Teams は基本的に管理者が対象ユーザーを招待して利用を開始するのに対し、Yammer はユーザー自身が興味や目的に応じたコミュニティ(グループ)を見つけて参加し、自由に情報発信を行うことができます。
そのため、「特定メンバー内で共有すべき話題」か「社内全体で議論すべき話題」かによって使い分けることが肝要です。
たとえば、社外秘の案件や顧客機密が関わる内容は Teams で共有し、製品・市場動向や技術情報、社内制度に関する質問受付など社内全員で共有したい情報は Yammer で行う、といった使い分けが考えられます。
また、2022 年には Teams 上で Yammer を利用するための Viva Engage 機能が発表され、翌2023 年には「Yammer」というブランドは廃止され Microsoft Viva Engage に統合されました。
これにより、Teams アプリから Yammer のコミュニティ機能(Viva Engage)にアクセスでき、従業員は両ツールをシームレスに活用できます。
Office 365(現Microsoft 365)「Yammer」の機能を解説
Yammer の概説を終えたところで、ここからは細かい機能について解説します。
メッセージ投稿
個人が自由にメッセージを投稿できる点は他 SNS と同様です。
投稿は全社に向けて行えるほか、指定した相手(複数可)だけに向けたプライベートメッセージ、自身が参加しているグループ(事業プロジェクトや有志のサークル・コミュニティなど)に限定して発信することも可能です。
また、質問と回答(選択肢)を用意することで簡単なアンケートを実施できる「投票」形式の投稿や、有益な情報を共有したユーザーを評価したり特定のユーザーの成功を祝ったりできる「称賛」形式の投稿も可能です。
ファイル・画像共有
Teams にも同様の機能がありますが、ファイルや画像などを Yammer のグループ内で共有できます。
これらは同一のファイルで共同編集を行う際などに便利です。
なお、これらのファイルや画像は OneDrive や SharePoint、Outlook などから選択できるため、社内のファイルサーバや個人のパソコンなどを経由しなくてもクラウドからシームレスにアクセス・共有できます。
いいねボタン
他メンバーの投稿に対して「いいね!」ボタンを押すことで、コメントの代わりに自身の感想を表明できます。
「いいね!」にはいくつかのバリエーションが用意されており、よりエモーショナルに自身の思いを相手に伝えることができます。
グループの作成
部署やチーム、社内サークル、関わっているプロジェクトなど、任意のメンバーを召集・追加してグループを立ち上げることができます。
立ち上げたグループでは、限定的なメッセージを投稿したり、ファイルや画像を共有したりといった活動が可能です。また、自分でグループを作成するだけでなく、他者が作成したグループにメンバーとして参加することもできます。
メンバーのフォロー
特定のメンバーを「フォロー」できます。フォローしたメンバーのメッセージは自身のフィードに表示されるため、コメントや「いいね!」などのリアクションをしやすくなります。
Yammer 内シェア
メッセージや会話、ファイルや画像のシェアが可能です。
これらのシェアは相手を指定できます。ただし、プライベートグループ内のメッセージをパブリックグループで共有した場合は、そのプライベートグループのメンバーのみが完全な会話を表示できるようになっています。
マルチデバイス対応
Yammer はパソコンだけでなく、タブレットやスマートフォン用のアプリを通じてデバイスを問わず利用できます。
大規模イベント・ライブ配信
Yammer は社内向けのオンラインイベントやライブ配信にも利用できます。
たとえば、
ライブ配信後は録画をオンデマンドで共有できるため、各参加者が都合の良いタイミングで視聴することもできます。
Yammer の活用事例
Yammer は現在、世界中で広く導入されており、Fortune 500 企業の 85%以上が利用する業界標準の社内 SNS となっています。
グローバルでは 50 万社以上の企業が Yammer で社内のチームワーク強化に取り組んでいます。
具体的な活用例としては、部門や世代を超えたナレッジ共有や社内Q&A 掲示板として Yammer を活用し、社内に埋もれていた専門知識を引き出して課題解決につなげているケースがあります。
また、従業員同士がカジュアルにやり取りできる場を提供することで、会社全体の一体感が高まり、企業文化の醸成や従業員エンゲージメントの向上につながったとの報告もあります。
実際の導入企業の例では、伊藤忠商事が Yammer により組織内の情報可視化や部門間連携の活性化、さらには産休・育休中の社員支援を実現しています。
また、株式会社 HDE では
さらに、ある企業では Yammer の活用によって会議を Yammer 上のやり取りに吸収して大幅に削減し、社内ヘルプデスクが不要になるほど情報共有が進んだ結果、従業員が参加できるプロジェクトの数が飛躍的に増加したケースも報告されています。
Yammer の利用は社員の満足度や定着率の向上にもつながります。社内 SNS 上での活発なコミュニケーションが従業員エクスペリエンスを高め、結果的に離職率の低下につながる点は見逃せません。
Yammer 導入の手順
大企業で Yammer を導入する際は、事前準備と段階的な展開が重要です。一般的な導入プロセスの例を以下に示します。
目的・活用方針の明確化
Yammer を通じて実現したいことや解決したい課題を整理し、社内 SNS 活用の目的を定義します。
経営層や主要ステークホルダーと合意形成し、「社員同士の情報共有促進」「組織横断のコミュニティ形成」など明確な方針を立てましょう。
推進体制の構築
人事や IT 部門を中心に、Yammer 導入プロジェクトチームを組成します。
各部門からメンバーを募り、利用ルールの策定やコンテンツ企画、社内周知・トレーニングを行う推進体制を整備します。
パイロット導入(試験運用)
まずは限定された部署やチームで Yammer を試験的に導入し、小規模で運用テストを行います。
実際の利用を通じて課題点や効果を検証し、得られたフィードバックをもとに運用ルールや設定を調整します。
全社展開と利用促進
パイロットで得た知見を踏まえて Yammer を全社に展開します。
社内ポータルや説明会で使い方を周知し、経営メッセージを Yammer 上で発信するなどトップダウンの情報発信も行いましょう。
あわせて利用促進キャンペーン(有益な投稿を表彰する制度等)を実施し、社員の参加意欲を高めます。
定着化と継続的改善
導入後は定期的に利用状況をモニタリングし、活用度合いや投稿内容を分析します。
ユーザーアンケートやアクセス解析を通じて課題を把握し、必要に応じて追加研修の実施や運用ルールの見直しを行います。
成功事例を社内で共有し、良い取り組みを横展開して社内 SNS 文化を根付かせましょう。
Yammer 導入を成功に導くポイント
社内コミュニケーションを活性化させるツールとして非常に効果的な Yammer ですが、導入にあたってはあらかじめ検討しておくべき重要なポイントがいくつか存在します。
コミュニケーションの規範を作る
現実の世界でも暗黙のルールがあるように、社内 SNS でもコミュニケーションの暗黙のルール、つまり規範を作ることが重要です。
海外や社外マーケティングの世界では、これを”コミュニティマネジメント”と呼び、「SNS などのコミュニティの規範を維持し運営する」一つの職業として存在しています。
では、社内 SNS の運営において、暗黙のルールをどのように形成すればよいのでしょうか?厳格な投稿ガイドラインを設けたり利用上のルールを厳しくしたりすると交流が抑制される原因となります。
かといって、まったくルールが明示されないと無法地帯になるか、怖くて誰も投稿しない状況が起こりえます。
例を挙げると、誰かの投稿に管理職など影響力のある人が先んじて「いいね!」をすれば、他の社員も「いいね!」しやすくなります。
コメントも同様で、誰も投稿をしていない真っ白な状態では一般社員はなかなか投稿できないものです。これはあえて明文化する程のものではなく、マネジメント層へ周知する程度でよいでしょう。
また投稿の内容に関しても、たとえば上司が「美味しいご飯屋さん」の投稿ばかりしていると、部下も同様の投稿しかしないようになってしまい、用途が限られてしまいます。
こちらもマネジメント層と事前に認識を統一しておくことが重要です。
あらかじめ「社内 SNS をどんなことに活用したいのか」という目的をきちんと明確にして規範を作りましょう。
コミュニティマネジメント自体が専門性の高い業務ですので、自社内にノウハウがないのであれば、専門家を活用することも重要です。
自社内に熱意を持って社内 SNS 活用を推進できるアンバサダー(推進担当者)を募り、主要コミュニティで積極的に発信やフォローをしてもらうのも有効です。
社員がお手本にできる存在がいることで、利用が活性化しやすくなります。
フラッグシップでアプローチ
Yammer に限らずグループウェアや何かしらの大きな施策を導入・実施する際に常に念頭に置いておきたいことですが、まずはトライアルとして限定的に導入し、検証と改善を行いながら徐々に広げていくことがトラブル防止につながります。
具体的には事業部 → 全社 → グループ全体 → 海外拠点といった順です。
グローバルな事業展開をする大手企業では、国を跨いでリアルな現地情報の交流の場を設けることがフラッグシップになりうるでしょう。
また一般企業でも、「こんな記事がありましたよ」「○○に関する資料ありませんか?」といった全社で行われやすい模範的なコミュニケーションを掲げておくことで、有意義なやりとりが浸透しやすくなります。
まとめ
社内 SNS は部門の垣根を超えたコミュニケーションを活性化させる、大手企業にとってとくに重要なツールとなります。
また、全社規模で情報を共有するためのプラットフォームとして非常に有効であり、個人の知見を組織の知見へと昇華させ、それが別の個人へと還元されるきっかけにもなります。
オープンな企業風土の醸成にも大きく貢献することでしょう。しかしコミュニケーションツールである以上、きちんとした規範を設けて企業の目的に沿った利用を促すことが重要です。
導入にあたっては、社内 SNS を自社でどのように生かしたいか、どんなコミュニケーションを実現したいかをしっかりと検討しましょう。
関連サービス
よくある質問
- Yammerとは何ですか?
社内限定で公開されるSNSで、記事の投稿やファイル添付、プライベートメッセージの送信などができます。
チームを作成して部活や同期メンバーで雑談したり、日報を投稿して他の社員の業務状況を把握したり、議論や質問の場に使ったりと、社員同士のゆるやかなコミュニケーションを促進します。
- Microsoft365の代表的なサービスにはどんなものがありますか?
・SharePoint Online
・Yammer
・Stream
・Teams
・One Drive
・Microsoft Flow
・Office Online
などがあります。

株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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