2023.08.18
コミュニケーションとは?コミュニケーションの意味や本質、種類や目的を徹底解説
目次
ビジネス・家庭・学校・友人関係など、人々が生活するあらゆる場面で必要となるものがコミュニケーションです。声による言葉のやり取りや、文章によるやり取りをはじめ、デジタルツールが普及した昨今ではTikTokのような動画でのやり取りも行われています。
あらゆる人の営みにおいて中心にあるコミュニケーションですが、ビジネスにおいても重要な役目を担っています。コミュニケーションの活かし方によって企業・組織の経営が左右すると言ってもよいほどにその影響力は測り知れません。
この記事では、ビジネス上のコミュニケーションにフォーカスし、効果や使い方、種類や特徴、注意点について解説します。
コミュニケーションとは
コミュニケーションとは、互いの考えや感情、価値観を伝える行為です。言葉だけでなく、身振り手振りや顔の表情・声のトーン・視線の動きなどの非言語的要素も含まれます。親族間・友人・知人をはじめ、職場や取引先などのビジネス上の人間関係、買い物や外出時に出会うお店の従業員との短いやり取りにおいても、コミュニケーションは発生しています。
ここでは、コミュニケーションの意味や定義について解説します。
コミュニケーションの意味や定義
コミュニケーションという言葉は、ビジネスだけでなく、親族間や学校、地域の中でなど、さまざまな分野・領域で広く使われています。岩波書店発行の『広辞苑』では、コミュニケーションを「社会生活を送る人々の間での知覚や感情、思考の伝達」と定義しています。
ビジネスにおいても、報告・連絡・相談や、上司から部下への指導、顧客とのやり取りなど、さまざまな場面でコミュニケーションが必要です。円滑なコミュニケーションは生産性の向上につながるため、多くの企業が社内の人間関係の構築の施策に力を入れています。
また、社内での良質なコミュニケーションは社員同士の相互理解を深めるだけでなく、問題あるいは課題に対する解決や、創造的なアイデアの創出にも役立ちます。つまり、コミュニケーションの質は間接的に業務の質にも影響し、優れた商品・サービスを作り出すためにも重要な要素となります。
しかし、上記のように、コミュニケーションの種類は多種多様であり、状況に依存する場合が多いのも事実です。たとえば、「君って優秀だね」という言葉を考えてみましょう。文字通りには、この言葉は相手への称賛を示しています。しかし、発言者と受容者の関係や発言者の声の調子、発音の仕方によって、受容者への侮蔑表現にもなりえます。
この記事では、一様ではないこのコミュニケーションを、いかにして実社会に応用できるのかを、多様な観点から検討してみたいと思います。
企業が事業やプロジェクトを成功させ、成長していくためには、社員同士が良好なコミュニケーションを取れていることが必須です。コミュニケーションは日常生活だけでなく、仕事の質や満足度に大きく関係している部分だと言えます。
このコミュニケーションの重要性と不可能性という一見相反するこの性質をどのあたりで、融合させればいいのかを考えていきましょう。
コミュニケーションは単なる情報伝達ではない
ビジネスパーソンのよくある誤解に、企業内における社員同士のコミュニケーションと、情報伝達を混同していることがあります。情報伝達は単なるデータや情報の伝達であり、感情や感覚といった人間的な意識を伝えることはないため、コミュニケーションとは異なる性質を持つ別物の概念です。
一方、コミュニケーションには、相手との感情の共有、互いの考えや価値観などの理解を深めるプロセスが含まれており、情報伝達を含めたより広い意味を持ち、適応範囲もさまざまです。社内の人間関係や取引先とのやり取り、ユーザーや顧客への対応など、あらゆる場面でコミュニケーションは必要です。
総合すると、ビジネスパーソンは情報伝達とコミュニケーションの違いを正しく理解し、用途に合わせて適切に使い分けるスキルを養う必要があるということです。
大切なことは、コミュニケーションの範囲の情報伝達の範囲よりも、はるかに広いということです。というより、コミュニケーションは事実上無限であり、同じコミュニケーションは、厳密には言えば、二度と起きえないと言えるでしょう。
たとえば、情報伝達による2×2のこたえは4以外はありません。これは、誰がどう伝えようと同じをものを指します。この誰がどう伝えようとも、同じであるという性質は、サイエンスの分野では非常に重要です。医学であれ、工学であれ、物理であれ、化学であれ、発信者と受信者の間で、ほとんど違いが起きないことが、求められます。2×2=5になる様な情報伝達は捨てられます。
一方で、コミュニケーションという観点からは、2×2=4だけが正解ではなくなり、ことと次第によっては、そこに認識の創造性が生じ、新しいイノベーションをも生み出します。
私たちは、時と場合にあわせて自分が扱っている言語活動が、情報伝達なのか、それともコミュニケーションなのかを常に意識しておくことが肝要です。情報伝達の場所なのに、不正確な話をすれば、信頼を失うでしょう。逆に、コミュニケーションの場に、すべて正確だからと言って、数字ばかりを並べれば、退屈されることもあります。
今、自分が、情報伝達の場に置かれているのか、それとも、コミュニケーションの場に置かれているのかを、常に意識し、それに応じて自分の発信内容を変えていくことが重要でしょう。つまり、良質なコミュニケーションとは、発信者と受信者の間で、情報のやり取りに関する区別がしっかりとついているということです。誰に対して、いつも同じように話している人などいません。その場にふさわしいコミュニケーションを取れる人は、情報伝達とコミュニケーションの違いをしっかりと理解し、それに応じて自分を変えていける人のことではないでしょうか。
いつも同じ話し方をしたいというのは人の性です。しかし、それでは、情報伝達で不都合がなくても、コミュニケーションはできないでしょう。職場であれ、学校であれ、家庭であれ、無限に存在するシチュエーションに対して、常に変えていこうとするエネルギーが求められますが、これを決して厭ってはなりません。
コミュニケーションがなぜビジネスに必要なのか?
ビジネスコミュニケーションは、現代の企業・組織の活動において、欠かせない要素となっています。企業内でのコミュニケーションだけでなく、多様な相手や媒体を通じて行われるコミュニケーションには異なる特性があります。
ビジネスコミュニケーションの目的は、生産性やモチベーションの向上、企業・組織のモラルや倫理観の維持など、ビジネスを支える根幹に係ってきます。また、個々の社員は、コミュニケーションを通じて他の社員や外部の人を動かして成果を上げ、企業・組織の持続性を確保しています。
このように、ビジネスコミュニケーションは、単なる情報伝達の手段ではなく、企業・組織の成果や経営・運営を支えるために必要不可欠な要素になっています。物的資本よりも人的資本が価値の源泉に変化する昨今、優秀な人財を集めても、人財と人財を繋ぐコミュニケーションが成立せず、全く機能しない組織や職場は後を絶ちません。
ビジネスパーソンがビジネスコミュニケーションのスキルを高めることは、社員同士の円滑な連携や業務の効率化、それに伴った生産性を向上させるためには必須です。企業・組織の成果に直結するビジネスコミュニケーションを、個々の社員が積極的に学べる仕組みを企業・組織が用意することも大切です。
コミュニケーションを取ることの一般的によく言われる効果
ビジネス上のコミュニケーションにはいくつもの効果があります。一般論としては大きく3つの効果があると言われています。ここからは一般的な3つの効果について解説します。
1.信頼関係の構築
ビジネスにおいて、コミュニケーションを通して信頼関係を構築する際は、ただ単に自分の感情や業務に必要な情報を伝えるだけでなく、相手の感情や考え方、価値観を正しく理解することも重要です。
相手の感情を理解することで相手の人間性を把握することができ、これにより特定の状況において相手の反応を予測することができます。コミュニケーション上の予測可能性が高まれば、より円滑に情報伝達や話し合い・相談が行えますし、活発なコミュニケーションは信頼関係の構築にも貢献します。
ここでのキーワードは、「感情」でしょう。感情は情報伝達とは関係がありません。しかし、コミュニケーションになった途端、感情や気分や雰囲気といった無限のバリエーションが私たちの前に現れます。
上司が部下に、仕事を注意を伝える場合でも、他の社員の前でそうするのか、別室に呼んでそうするのか、会社の近くで喫茶店でそうするのかによって、同じ情報伝達であっても、コミュニケーションの結果はバラバラです。
何も喫茶店に連れていくことが良いとも限りません。場合によっては社員のいる前で注意をすることも必要です。その見極めは発信者がその時その時の状況によって判断するもので決して一律の基準はありません。
コミュニケーションにおいては、情報伝達とは違い、その場に合わせること、そして目的を達成すること、これに留意しておくことが大事です。
2.情報共有と伝達の円滑化
現代のビジネスにおいて、円滑なコミュニケーションを日常化させ、スムーズに情報共有を行う社内文化も重要なものです。
ITテクノロジーが普及し、さまざまな情報を交換できるようになった反面、情報量が爆発的に増え、人々の認知負荷は高まり、大量の情報を処理しきれなくなりました。
そのような現代のビジネスにおいて、情報を意味づけや優先順位を添えてコミュニケーションをすることが、情報に付加価値をつけ、それによってなされた情報共有は、企業・組織にとって強力な武器になります。
情報化社会において、企業・組織内において情報共有の円滑化に効果的なコミュニケーションを確立するには、適切なツールや仕組みの導入が不可欠です。その上で、社員同士の適切な意味づけや目的を添えたコミュニケーションを図るためには、対話の場を設ける必要があります。
3.生産性/価値の向上
ビジネスコミュニケーションによる恩恵の1つに、生産性の向上があります。円滑な情報共有業務と信頼関係の構築により、業務の効率化と成果が期待されます。また、目標やスキルの共有により、業務の分担と部署・チームとしての生産性向上も実現します。
しかし、間違ったコミュニケーションは社内の人間関係を悪化させたり、生産性を低下させる要因にもなり得ます。たとえば、情報不足や指示の曖昧さ、社員同士の理解不足、意思疎通の齟齬などが挙げられ、これらの問題はコミュニケーションが持つ本来のメリットを阻害し、業務の円滑な進行を阻んでしまう場合もあります。
そのため、企業・組織内で効果的なコミュニケーションを持続させるためには、仕組化や適切な環境の整備、フォローアップ体制の確立が重要です。また、社員同士の積極的な意見交換とフィードバックを行うことも必要です。これらの施策により、適切なコミュニケーションを維持し、生産性の向上と業務の円滑な遂行を安定的なものにできるでしょう。
日本の製造業やメーカーの生産性は今でも世界では上位であり、自動車産業の卓越した改善と工程管理は、現在の競争優位の賜物であります。それは、前工程から後工程に進めば進むほど価値が向上していくということです。
サービス業などのPCやデジタル端末で仕事に従事している職種の人々も、情報やコミュニケーションをやり取りし価値を創造しています。モノと情報の違いはありますが、前工程から後工程を経ることで、付加価値が増え価値が工程を追うごとに向上していくわけです。しかし、この日本の情報とコミュニケーションの加工工場の生産性は、贔屓目に見ても世界で上位とは言えないでしょう。
つまり、コミュニケーションの過程や工程を通じて、価値のある行動やアウトプットが産み出されているということになります。
日本労働生産性の低さは、コミュニケーションが一つの要因であるという事はできないでしょうか?
では、一般論やあるべき論はあるものの、コミュニケーションの現在地は一体どのような状況なのでしょうか?代表的な悩み事象と要因を説明していきます。
コミュニケーションのよくある悩みと要因
先ほどは、3つに大別された一般論について解説しましたが、解像度上げて、具体的によくある悩みから要因を分析していきます。ビジネス上のコミュニケーションにおいて、適切に意思疎通が行えないままにすると、誤解や業務上のミスが起こり、その結果不信感などの感情を抱いてしまうことがあります。さらにコミュニケーションの軋轢は社員の業務態度にも現れ、責任転嫁や他の社員との関係性が悪化するなど、複雑にこじれてしまう場合があります。
ではなぜ、規則や社内ルールが設けられているビジネスの現場において、コミュニケーション上の問題が頻繁に発生するのでしょうか。ここではコミュニケーションのよくある悩みについて解説します。
ミスコミュニケーション(誤解・遅延)
ビジネス上で行われるコミュニケーションの課題の1つが、ミスコミュニケーションの発生です。ミスコミュニケーションは、誤解を生んで社内の人間関係を悪化させたり、手違いや勘違いによって業務を滞らせたりしてしまいます。
ビジネス上で適切なコミュニケーションを実現するためには、主観的な解釈を排除し、具体的な指示や詳細な説明を行うことが不可欠です。コミュニケーションの落とし穴を押さえておくことで、ミスコミュニケーションを最小限に抑えることができます。
ポストモダンの哲学者デリダは、人と人とのコミュニケーションを「郵便」に例えました。郵便と聞いて、何を思うでしょうか?
まず、発信者と受信者の間に、時間的なずれが必ず生じます。郵便物が届くためには必ず、2~3日の時間的ずれがあります。デリダはこれを「遅延」と言いました
もう一つ郵便につきものですが配達する人の手違いで、間違って住所へ届けられることもあります。デリダはこれを「誤配」を呼びました。
現代のメールやチャットにより時間的ずれを最小限にしても、「既読」にならないモヤモヤや「既読スルー」のいらだちも説明できます。テクノロジーは変化しても本質は何も変化しいてません。デリダの言うこの「遅延」と「誤配」こそ、人と人とのコミュニケーションなのです。
発信者のメッセージが、100%過不足なくに受信者に伝わることはありません。そこには必ず、遅延や誤配がつきもので、それをなくすことはできません。だからこそこの遅延や誤配を意識したコミュニケーションをすべきだと述べています。言い方を変えれば、コミュニケーションの不可能性を常に心にとめておくということです。
それぞれの社員が常に誤解の可能性を意識することで、誤解の可能性をむしろ小さくしていくのではないでしょうか。
逆に、自分のメッセージがすべて理解してもらえるという思い込みから、対立や軋轢が生じるとも言えます。誤解のつきものなのだと、社員が心にとめていくことが 良質なコミュニケーションの最大の土台であることをデリダは教えています。
コミュニケーション起点のハラスメントやジェネレーションギャップの問題
社内のコミュニケーションの悩みには、ハラスメントやジェネレーションギャップの問題が絡んでいる場合があります。
たとえばハラスメントが絡んでいる場合、上司が部下にパワハラを行っていると、部下は上司の言動を恐れて業務上必要な報連相などを行わなくなり、必要なコミュニケーションが不足して業務に支障が出る場合があります。
さらに、萎縮して積極性が失われたり、社員同士が協力しないといった、必要な連携ができなくなる可能性もあるでしょう。
パワハラ・モラハラ・セクハラといったハラスメント全般は、適切なコミュニケーションを行うために必要な職場の雰囲気を大きく損なうものです。この場合は社内のコミュニケーション以前の問題であるため、社内外の必要な窓口に相談するなどの対策が必要です。
また、世代間の価値観の違い、いわゆるジェネレーションギャップも、社内のコミュニケーションの弊害になります。
バブル期の労働観に強く影響を受けている世代は、終身雇用などの安心・安定を提供してくれる企業への帰属意識が強く、上司の言動に従うことを基本としています。
そのような価値観を持つ人が上司となった場合、働き方の多様性や転職を当然としている若年世代とは仕事に対する価値観が合わず、コミュニケーション上で齟齬が生まれる、といったケースが考えられます。
とくに就職氷河期世代やその後の世代は、企業への帰属意識は高くなく、自身のスキルや職場環境・待遇を重視する傾向にあります。つまり、昭和・平成・令和の異なる労働観が混在する職場環境そのものが、コミュニケーションの弊害を生んでいると言えます。
言い換えれば、企業とは、年齢も価値観も性別もバラバラのモノが、集まっている場所であり、そこにジェネレーションギャップはできて当たり前で、受信者次第では、ハラスメントとみなされる場合も起きてくるでしょう。この事態は避けることはできません。
大事なのは、ここでも自分の言動が、自分の思った通りに受信されるとは限らないこと、遅延や誤配の可能性がいつもあることを社内で共有し、ハラスメントが起きた場合、それをスムーズに申告でき、申告された側も、怒るのではなく、遅延や誤配が起きたのだと、反省する材料にしていけばいいだけのことです。
ジェネレーションギャップもハラスメントもなくすことではできません。なくすために努力するのではなく、起きた時に申告する人も申告される人も当たり前のことなのだと、気楽に受け止め反省する材料にすればよいだけで、その周知徹底は、経営トップの管理の仕方によるところでしょう。
雑談、相談などのコミュニケーションが不足し孤立する
社内のコミュニケーションの問題でありがちなのが、社員同士での雑談・相談が不足し、特定の社員が孤立してしまうことです。とくに、以下のコミュニケーションの場が不足している場合、注意する必要があります。
- 業務上の些細なことを相談できる場
- 雑談に特化したコミュニケーションの場
- 業務上の情報共有や近況報告がフラットに言い合える場
- 直面している悩みや問題を素直に吐き出せる場
上記のような雑談や相談の場が不足すると、業務を1人で抱え込んで、業務上の悩みや不安を大きくし、孤立を深めてしまう要因になります。
社内のコミュニケーションは、社員一人ひとりの身体の健康やメンタルケア、職場における幸福度にも関わってくる重要なものなのです。
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部門間の連携不足
テレワークなど、出社しない形の業務形態が普及する中、企業・組織には「コミュニケーションの困難さ」と「社内連携の課題」の問題が起こっています。
離れ離れで働く状況では社員同士の繋がりが薄れ、とくに部門間の連携不足が深刻化しサイロ化のリスクも高まります。この問題に対処するためには、オンラインコミュニケーションの活用と部門間の連携の強化の施策が必要です。加えて、リアルタイムで収集したデータ分析を通じ、コミュニケーションや社内連携の頻繁な仮説検証を行うことが求められます。
部門間の連携が不十分な場合、各部門の意図や目標が共有し辛くなり、業務全体の図が見えにくくなります。
たとえば、営業部門は売れやすい価格を抑えた目玉商品を求めている一方、生産部門は既存商品の改善と高品質商品の開発に注力したいと考えているといったケースです。
このような意図や目標がそれぞれの方向に向いていると、対立や溝が生まれる可能性があり、さらに生産性や業務効率に悪影響が出る場合もあるでしょう。
幸いなことに、テクノロジーの発達によってリアルタイムで顔を見ながら音声でのやり取りがスムーズにできる時代です。以前は、社内で会えなければ、コミュニケーション不足は避けられませんでした。
今は、社内で会わなくても、その気になれば、十分なコミュニケーションを取ることができます。ZOOMやTEAMS などのコミュニケーションツールを使わない手はありません。
暗黙の了解、忖度、行き過ぎた配慮が不正の温床にもなる
日本企業の特徴として、暗黙の了解や忖度による過剰な配慮が社内に蔓延しており、内向き志向と行き過ぎた配慮によって不正行為が広がるという深刻な問題を抱えています。
終身雇用が崩壊し、これまでの企業の組織体制は見直されつつあるものの、年功序列や同質性による見えない圧力・不文律はまだまだ存在しており、それらをベースにした悪い意味で濃い人間関係も根強く残っています。
グローバル化が進む昨今のビジネスにおいて、このような日本企業の独特のコミュニケーションはマイナス要素が大きく、多様性や働き方改革といった側面においても、足枷になっていると言わざるをえません。
とくに、上層部に忖度してミスや事故等を隠ぺいしたり、不正行為とわかっていながら社内政治のために押し通してしまうなど、行き過ぎた配慮は日本企業のコミュニケーションの大きな問題になっています。
また、同質性がもたらす、見て見ぬふりをする体質も問題です。違反・不正行為をしていると知りながらも、社内での自身のポジションや立場を悪くしないため、黙って見過ごすといった忖度もよくあるパターンです。
前節みたコミュニケーション不足による孤立化と ここで指摘している「濃い」人間関係は、対照的ですが、どちらにしても極端に振れていることは非常に危険です。とくにここで指摘している不正行為は、社会で責任を果たすべき企業が、最も避けなければならないことではないでしょうか。
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」において、日本の組織におけるコミュニケーション問題は、明確に記載されている通り、かつての日本軍は、戦争の末期巨大な組織なのにほとんどコミュニケーションが取れない集団になっていました。いかなる巨大組織でも、コミュニケーション不足による不正行為は最終的には組織そのものを内側から崩壊させ、その構成員一人ひとりを路頭に迷わせる結果となります。社員は不正行為を見て見ぬふりをしてはならないということは、コミュニケーション不全を同じ意味です。
組織が無くなっては、元も子もありません。身近で不正行為に気づいたら、それをしっかりと発言することは自分を含む家族や企業そのものを助けになることを自覚することが大切です。事前措置として、社内で内部告発のルート最初から明るみに出しておくことも一つの手でしょう。
企業経営においては、性善説では限界があります。とくにコミュニケーションが取れなくなった時、不正行為とは無縁だった社員も、手を染めてしまう可能性もあります。きちんとした内部告発のルートを表明しておくことによって、未然に不正行為を防ぎ、またコミュニケーションが取らざ得る得ない状況へと持っていくことが大事です。
政治哲学者のハンナ・アーレントは、「エルサレムのアイヒマン」という著書のなかで、全体を見ずに、目の前の職務にのみに忠実だったアイヒマンという中間管理職を描き出しています。アイヒマンは、ハンガリーでのユダヤ人捕虜輸送にかかわり、卓越したロジスティクスを構築した軍人でしたが、戦後の裁判で自分の仕事が全体としてどのような意味を持っているか、考えたことは一度もないと述べました。コミュニケーション不全は、優秀な人財の倫理観を簡単に失わせる恐ろしさがあるということは、常に注意しておくべきことでしょう。
上記問題は、些細な問題から、不正や風土などの根深い問題まで、コミュニケーションの影響を与えます。
しかし、これは、社員のコミュニケーションスキルや組織内部の風土だけの問題でしょうか?
今度は、内部ではなく、コミュニケーションにまつわる問題について、4つの社会的要因に分けて解説します。
コミュニケーションの問題は社会的な環境要因に大きく起因している
ビジネスの場におけるコミュニケーションは、時代が作り出す社会の空気やイデオロギーも関係しています。個人の性格や価値観の集合体で企業、組織内のコミュニケーションが構築されるわけではなく、むしろ経済的な環境やITテクノロジーが大きな要因になっています。
ここでは、コミュニケーションにまつわる問題について、4つの社会的要因に分けて解説します。
VUCA(ブーカ)はコミュニケーションの障害になっている
「VUCA(ブーカ)」は、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、近年のビジネスや経済の世界で頻繁に使用されるようになった概念です。
VUCAの時代では、予測困難なほどの速度で環境が変化し、これまでの常識があっという間に通じなくなるため、これらの状況に柔軟に適応する能力が求められます。
しかし、その事実に反するように、VUCAの状況下では流れる情報が不確かで曖昧であり、情報の信憑性や再現性等を把握することも難しくなっています。言い換えると、ビジネスパーソン同士が相互理解を築くための基盤(共通認識となる情報)が揺らいでいると言え、コミュニケーションそのものが困難になっているのがVUCAの時代です。
ただし、現実世界をどれほど素早く察知する為のツールの活用は重要でありながら、限界があることも事実です。むしろを視点を変えて、現実の世界を追いかけるではなく、ゼロから新しいものを社内コミュニケーションを通じて創りだす、あるいは、現実世界に発信するという姿勢に変えることが重要ではないです。情報収集や分析にしても、価値創造のためのツールに過ぎません。
しかし、ツールに過ぎない、情報収集分析が主たる業務内容になっていまい、本来なすべきコミュニケーションを通じた価値創造が疎かになっているのではないでしょうか?市場に価値を問うたそのときから批判が集まるかもしれませんが、その批判を恐れず、自分が良いと思った価値を理解してもらう努力を続けることが企業のあるべき状態です。
多様化の中で共通言語が少ないからコミュニケーションは難しい
日本は、高度経済成長期の終わりとともに産業の成熟化が進み、大手企業を中心に多角化の経営を進めるようになりました。
自律分散型組織に変容したことにより、現場の社員に意思決定権と責任が委譲され、企業は地域や業界を超えた相手との協業を増やしています。
さらに、加速度的なグローバル化やITテクノロジーによる社会の変化を受け、社外のパートナーや専門家との提携・連携は不可欠となりました。
また、日本企業はかつて、年功序列・終身雇用・企業内組合を基盤としていましたが、グローバル化により、海外の企業・組織とのコミュニケーションの必要性が高まりました。企業・組織内にも、派遣や外注、嘱託といった異なる雇用形態の社員も増え、人材の流動性が高まり、転職や出向、外部連携が一般的になっています。
つまり、現代のビジネスパーソンは、多様なバックグラウンドを持つ人々と意思疎通ができるコミュニケーションを取るスキルを身につける必要があるということです。多角化し、企業・組織がさまざまな相手と提携・連携を図る中において、社員のコミュニケーションの重要性が一段と高まっているのが現代です。
企業・組織の構造や仕組みは、事業と人の変化に連動できず事業活動を阻害する要因になっている現在、構造や仕組みよりも、コミュニケーションや関係に注目が集まっているのは、自然な流れだと捉えるはできないでしょうか?
変化の激しい時代において、企業・組織は柔軟性を持ち、多様化した社員の異なる視点や文化を受け入れることで、成功に向かう道を切り拓くことはコミュニケーションでしか成しえません。
フランス哲学者ドゥルーズが組織モデルで「リゾーム」という概念があります。ツリーモデルとは対照的に、リゾームにおいて表面で見る部分では、多様であり中心もはじまりもなく、集合離散を繰り返し、一時として同じかたちのまま留まることはないというモデルです。
リゾームモデルで特徴的なことは、表面で見る部分では、変化ばかりバラバラなように見えても、統制が取れていないように見えて、実は見えない根の部分では、それぞれの集団がしっかり繋がっているということです。根においてもバラバラな場合、それは無秩序であり社会は成り立ちません。
しかし、根で繋がっているがゆえに、バラバラに見えても、その振れ具合には節度があり荒唐無稽で極端なものが生まれにくくなります。
この先、日本社会はかつての阿吽の呼吸や以心伝心を取り戻すことはできないでしょう。
しかし、リゾームで見られる根底でつながることが理解できれば、ここの集団が自由に動いているはずなのに、おのずと抑制が効くという創造的なプラットフォームへの可能性が見えてきます。
そして、リゾームモデルの根にあるものこそ、企業哲学理念であり、パーパスであるはずです。今一度自社がどのような根茎をもち価値創造を生み出しているのか?を再検討し、そしてどのような経営理念で経営しているか、を問い直す時期でしょう。今までやってこなかったからと言って恐れる必要ありません。
最適化された工程分業とサイロ化はコミュニケーションはあるが価値は生まない
検索機能発達により、個人の得られる情報の範囲は大きく広がりました。これはそのまま、ビジネスの拡大につながりそうなものですが、落とし穴があります。
アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず、見たい情報が優先的に表示されます。俗に言う「フィルターバブル」です。
つまり、検索を掛けるときでもまったく自由にしている訳ではなく、過去の影響を受けながらそれに見合った検索ワードが出ているに過ぎないと冷静に見たほうがいいでしょう。つまり、インターネットの検索から新しい価値創造ができたとしても、それは自分の過去の自分の思考があたかも新しい発見のように映し出されるだけだからです。社内ポータルもイントラネットも技術は一緒です。
これを、普段の職場に置き換えて考えてみたらどうでしょうか。職場の上司やメンバーに対する質問や問題解決に関する内容は、Webの検索以上に「フィルターバブル」です。効率化と引き換えに、自分の過去からその職場で良し悪し関係なくつくられた規範と関係性から、コミュニケーションは固定化しています。
フィルターバブルを前提とした検索から新たな視点や観点は生みだされず、コミュニケーションの固定化した職場からも同じだということです。
これを回避することは、社員が一人ひとりがさらにアナログ方法を意識的に取ることが求められます。具体的には、知らない人と会う、価値観が違う人同士をチームに組み込む、知らなった分野の本を読むといったことを意図的に行う必要があります。これは、多様性の本質価値の部分に通じます。
コミュニケーションテクノロジーの高度化と認知負荷の問題
ITテクノロジーの進化により、現代社会ではさまざまなツールがコミュニケーションの際に利用されています。対面の方法に加えて、SNSやビデオ会議など新たなツールが普及し、遠隔地にいる人々とのリアルタイムなコミュニケーションを可能にしたため、ビジネス・教育・医療など幅広い領域で活用されています。
その一方でITテクノロジーの進歩により、希薄な人間関係を作ってしまう問題が生じています。たとえば、SNS上でのコミュニケーションは、対面でのやり取りと比べて相手の表情や声、非言語コミュニケーションの要素を伝えることが難しく、本来伝えたかったことが伝わらないといった問題が生じる可能性があります。
ビデオ会議も問題があり、非言語コミュニケーションを伝えることは可能ですが、微妙なタイムラグや相槌を打つのタイミングを逃してしまったり、対面のコミュニケーションよりもストレスや疲労感が生じることが多々あります。
さらに重要な問題として、Webの一般化による情報量の増加に伴い、人々の認知負荷が大きくなっていることも挙げられます。とくにSNSは情報が波のように押し寄せており、人間の認知能力の限界を超える負担がかかるため、本当に必要な情報を理解するための、脳のリソースを確保しておくことが難しいといった課題があります。
また、情報過多によるストレスは、メンタルや身体の不調とも関係しており、イライラや不眠、自律神経の不調などを招くため、使用頻度や時間に関して慎重になる必要があるでしょう。
このような状況において、コミュニケーションツールの利用と、対面での直接的なコミュニケーションをバランス良く使い分け、適切な情報伝達と社員同士の相互理解を図るコミュニケーションを行うことが大切です。
一方で、人間関係の希薄化は悪いことばかりではありません。弱いつながりというSNS時代にあっては、人間関係はむしろ濃密でない方が望ましく、弱いつながりをあちこちには巡らせておく方が、よりイノベーションが起きやすい場合もあります。強いつながりの会社は、コミュニケーションコストは低く、阿吽の呼吸で仕事が進み、一体感もありますが、この強いつながりによって業績が向上するとは限りません。思考や行動はどんどん均質し、同調圧力が生まれやすい側面があります。
テレワークによって、物理的にコミュニケーションが希薄化することで生産性が下がっている会社もあります。それと同時に、むしろ生産性が上がったというデータもあるくらいです。
認知負荷自体は、IT技術の情報処理能力に、人間が追いつくことはないでしょう。つまり、指数関数的に増える情報やコミュニケーションと、付き合っていくためには、発信者や情報と自分自身がいかに「距離」を置くかということ、希薄濃密という単純な内容ではなく、人間関係も情報も、個別にケースバイケースで距離を取って接する姿勢やスタンスが重要です。
コミュニケーションする相手との「距離」に関して、つきつめると哲学や思想の力を借りないと解決はできません。俗に言うリベラルアーツです。
コミュニケーション問題が管理職以上の役職に集中せざるを得ない理由
アメリカ合衆国の技術者で、フレデリック・テイラーによって提唱された「科学的管理法」により、経営管理者、中間管理職、チームリーダーは現代社会において重要な役割を果たしています。ビジネスの現場におけるマネジメントは、「人の管理」と「業務管理」の2つの領域で機能に大別されます。
しかし昨今の高度に分業化された現場では、マネジメントの機能は管理ではなく、問題解決にあります。事実、カナダのマギル大学教授ヘンリー・ミンツバーグの著書「マネージャーの実像」に記載された調査にも明確にある通り、管理職は管理自体を行わず、問題解決に過半数の時間を費やしています。
リーダーや管理職の問題解決を具体的には言えば、業務に携わる現場の社員の言葉に耳を傾けたり、上層部への問題・課題のプレゼンテーション、部署・部門間、あるいは上下の人間関係の調整など役目を担っています。
つまり、ビジネスの現場における管理職(マネジメント)の業務の本質は、コミュニケーションであり、コミュニケーションの問題・課題が管理職に集中する理由は、上下の人間関係の仲介に入っているからだと言えます。
これは、構造的なものであり、コミュニケーションや職場の問題が、すぐに上司や管理職の問題に直結するのは、連結の交差点だからです。しかし、コミュニケーション渋滞の原因は、交差点を調整する管理職や上司以外の要因は多く、不可能に近い職務の可能性すらあります。
昨今の管理職やリーダー職に昇進昇格者希望者が少ないいのは、管理職の複雑且つ大量の調整的なコミュニケーションを目の当たりしているからではないでしょうか?。中間管理職の要求されるコミュニケーションスキルを見れば管理職の職務に対する待遇に見合わないという若手の意見もうなずけるのではないでしょうか?
このようなコミュニケーションは、かなり高度な能力が必要です。管理職以上に必要な最大の能力はコミュニケーションと言っても過言ではなく、要求されるコミュニケーション能力は、「阿吽の呼吸」時代のコミュニケーションスキルでは全く通用せず、国際的レベルでも通用しません。
コミュニケーションスキルは、企業内では若手や下階層に実施している企業が多く、若手層向けの研修直後のアンケートには、必ず「上司にも受けたほうがいい」と発言が散在します。
管理職以上には、既にコミュニケーションスキルは備わっているものであるという幻想がそこにはあります。
現在、管理職以上に1on1導入や離職防止の目的から、コミュニケーションスキルを管理職以上に、実施している企業が増えているのは、管理職以上、もしくは経営層ですら、コミュニケーションスキルが全くアップデートされていない事を物語っています。
逆に言えば、優れたコミュニケーションを実行する経営管理者、中間管理職、チームリーダーは、優れたマネジメントを遂行していると言えるでしょう。
では、コミュニケーションスキルは、如何にアップデートするのか?という問いになるともいます。それにはまず、コミュニケーションを幾つかの切り口で構造化する必要があります。
コミュニケーションのレベル
ビジネス上のコミュニケーションにもさまざまなレベル(意図・手法の違い)があり、コミュニケーションを取る側の立場によって用途が変わってきます。
ビジネス上のコミュニケーションは、大きくわけて以下の5つのレベルに分けることができます。
コミュニケーションの範囲は広いので、このように区分することでそれぞれのレベルを解説します。
情報伝達/情報収集
相手に知らせたい情報を伝えるためにコミュニケーションを行います。情報伝達には、指示・報告・提案・説明などが含まれ、主に業務における情報のみを伝えるコミュニケーションです。社員・上司・上層部に至るまで、あらゆる立場の人が行います。
相手から情報を収集するためにコミュニケーションを行います。情報収集には、聞き取り・インタビュー・アンケート調査などが含まれ、業務上必要な情報を相手から引き出したり、複数の相手から収集したりするコミュニケーションです。主に社員が業務上で行うことが多いコミュニケーションです。
理解促進/関係構築
相手に理解を促すためにコミュニケーションを行います。理解促進には、質問・要約・確認・フィードバックなどが含まれ、業務上の問題・課題の伝達、社員の訓練時などにおける対話、上司と部下のやり取りなどで行われるコミュニケーションです。上司や管理者が行うことの多いコミュニケーションです。
相手との関係を構築し、維持するためにコミュニケーションを行います。関係構築には、挨拶・交流・共感・支援などが含まれ、出勤・退勤時の挨拶、休憩時間の会話、業務上のサポートなどを行うコミュニケーションです。社員・上司・管理者など、幅広い人が行うコミュニケーションです。
意思決定/合意形成
物事を決断する際に必要なコミュニケーションを行います。意思決定には、指示・共感・意思疎通・説明などが含まれ、業務上の決断、担当業務の配置、リーダーシップなどを行うコミュニケーションです。主に上層部や上司が行うコミュニケーションですが、社員の立場でも、業務で何かを決める際に行うことがあります。
合意形成が達成されると、双方が関与意識を持ち、同じ熱意で業務に取り組みます。一方、合意形成に失敗し、目的や手法に理解や共感が得られず、一部の人が疑問や不満を抱えたまま物事を進めると、途中で認識や意見のズレによりミスや軋轢が生じる可能性があるため、注意が必要です。その結果、スケジュールの遅延や計画の挫折、誤謬といったリスクも考えられるでしょう。
また、合意形成に成功するためには、双方の考えを整理するために合意が必要な内容が理解されており、かつ納得されている状態が欠かせません。
合意形成は、スムーズな意思決定や行動につなげるために重要なプロセスです。関係者が持つ多様な前提を明確にし、それぞれの考えを合意形成に取り入れる方法はないか、しっかりと議論する必要があります。
つまり「論理」と「心理」の両方が必要であるということです。
このコミュケーションモデルを最初に理論化したのは、言語学者のヤコブソンです。ヤコブソンによるとコミュケーションは単なる情報のやり取りだけではありません。
たとえば、挨拶が典型的ですが「おはよう」の言葉に、内容はありません。けれど、おはようと言いあうことによって、関係構築を目指しています。
ヤコブソンはこれを「交話的コミュケーション」と呼び、情報は伝達されていなくても、コミュケーションとしては重要な役割を果たすことを述べました。
言いかえれば、情報が伝達されていないというより、交話的コミュケーションでは、親しさを伝えていると言った方がいいでしょう。
質の良い職場をつくる為には、交話的コミュケーションを欠かすことはできません。
コミュニケーションの特徴と種類
ビジネス上で使われるコミュニケーションの種類は考えている以上に多く、特徴もそれぞれ異なっています。
ここでは、ビジネス上のコミュニケーションの特徴と種類、コミュニケーション能力を向上させるために押さえて欲しい概念について解説します。
言葉・記号によるコミュニケーション
テキストを使ったコミュニケーションにおいて、人の思考や情報伝達をする上で欠かせないのが、言葉や記号です。メールやSNSをはじめ、テキストと記号を組み合わせた文章は、相手に思考や情報を伝えるために不可欠な表現になっています。
とくに重要なのが適切な言葉選びや文法、表現ですが、言葉と記号を効果的に使うことにより、文章にわかりやすさと柔らかさを持たせることができるため、相手の理解を得やすいメッセージにすることができます。これは、バーバルコミュニケーションはこの一部です。
非言語によるコミュニケーション
言葉に頼らずに情報を伝えるコミュニケーションを非言語コミュニケーションと言い、すべての人類が用いているコミュニケーションの方法です。別名、ノンバーバル・コミュニケーションとも呼ばれ、非言語の要素には、身振り・表情・声のトーン・服装・環境などがあります。
もちろん、非言語コミュニケーションはビジネスにおいても重要な手法です。伝える内容以上に、話し方や表情、間の取り方や身振り手振りが受け手に与える印象は強く、非言語コミュニケーションの使い方次第で商談・面談などのやり取りをスムーズに進めることもできます。
ノンバーバルコミュニケーションにこそ、差別やハラスメントの温床があることを管理職は知っておきましょう。非言語の部分、たとえば、沈黙、無視、はぐらかし、の行為で、相手の感情を傷つけることは十分にあり得ます。言葉の上では、間違ったことを言っていなくても、ノンバーバルなレベルでは、相手を傷つけることがあることを記憶しておくべきです。
共通性コミュニケーション
言語や文字を用いたコミュニケーションを理解するには、共通性があることが重要です。それぞれの単語や文脈が意味を持つ中で、共通の背景や前提を発信者側と受け手が共有することで、意図している内容を伝えることができます。
共有している背景や前提があれば、記号やアイコンといった、言語外の意味を受け手は理解することもできます。たとえば、看板などに記されているピクトグラムがそれに当たり、人や物をアイコン化し、見た人が共有している頭の中の情報を引き出して意味を伝え、行動を促します。道路交通での「止まれ」、スポーツ競技場のアイコン、切符売り場を示すアイコンなど、ピクトグラムは社会に広く普及しています。
コミュニケーションにおいても同じことが言え、ピクトグラムのアイコンと同じように、頭の中に共有している背景や前提があることで、スムーズに意見・感情・価値観・情報を伝えることができます。
ビジネス上でよく聞く「ボタンの掛け違い」という言葉は、コミュニケーション上の前提や常識がずれてままビジネスに進み後になって双方が気づくことがあります。
共通性は初期段階で如何に詳細に共通認識をすり合わせるのか?が、実はビジネスにおけるコミュニケーションの成否だったりもします。双方は相手の言いたい事や意図など、注意深く確認ししながらコミュニケーションを進めます。初期段階で関係性構築も重要ですが、注意深く、言葉の意味や意図を整理していく緊張したコミュニケーションです。共通性をしっかり活用するには、初期段階ではむしろ、共通項を見つけながら実際には、疑り深く批判的な思考が産まれています。よく言われるクリティカルシンキングです。
差異性コミュニケーション
ビジネス上で価値のあるコミュニケーションは、「差異性」があるからこそ発生する側面があります。なぜなら、人同士の差異が大きいほど違った意見・背景知識・情報が集まり、新鮮なアイデアやイノベーションを生み出しやすいからです。
差異性とは、簡単に言うと人同士の異なる要素を指しています。文化・これまでのキャリア・価値観・考え方・言語など、さまざまな要素が差異性には含まれています。人はそれぞれ異なる経験をバックグラウンドに持っており、必ず独自の視点を持っています。
そのため、いかにその独自の視点がかけ離れている者同士を集め、意見を出し合う状態にできるかが、ビジネス上の価値あるコミュニケーションを発生させるための重要なポイントになります。
差異性が大きく、多角的であるほど、新しい発想や視点がコミュニケーションの場に出揃い、それらをさらに練り上げることで、ビジネス上の問題・課題に対する効果的でイノベーティブな解決策を生み出すことができます。
視点が違った相手とコミュケーションをすることで、難航しながらもさまざまなアイディアやプランがうまれます。しかし日本社会では、違いに対して敏感であり、教育現場をはじめあらゆる職場の隅々にいたるまでそういった雰囲気があるのではないでしょうか。これまでの自社のあゆみを共有することは重要ですが、あたらしい価値を生み出すためには差異が必要であり、差異を許容する力を持っているかどうかが、一人ひとりの従業員や組織全体の成長を左右するポイントです。
経営管理職や中間管理職は、規則やルールを守りながらも、それとは真逆の意見の多様化、反対意見、異論反論という差異が果てしてなく続く不安定に耐え、むしろそれを喜びとするくらいの、自由闊達さが求められます。これは差異事態を価値に変えるプロセスが要求されます。ファシリテーションです。
論理のコミュニケーション
一般常識があり、ビジネスであればビジネス常識や業界常識が存在します。コミュニケーションは、コミュニケーションにはお互いが共通に理解している足場が必要です。ビジネスにおいてもっとも重要な足場は論理です。例えば、数学や言語記号が論理です。数学や数字などで分解し、整理して矛盾のない状態にするコミュニケーションです。
さまざまな情報や感情を、基礎的な条件や「筋道」を通し整理しを伝えたり表現したり、理性的にコミュケーションする活動です。ロジカルシンキングやクリティカルシンキングと言ったビジネスで非常に活用度の高いコミュニケーション方法です。
感情のコミュニケーション
感情を重視したコミュニケーションに「対話」があります。対話とは、お互いの立場や意見の違いを考慮した上で、共通の理解・認識を得るために行われるコミュニケーションです。
対話と似た概念に会話がありますが、対話が目的を有することに対し、会話は特定の目的を持ちません。会話も感情を込めることはできますが、ビジネス上で有効になるのは、目的を有した対話になるでしょう。
会話は、上で述べたおしゃべりになる場合が多く、目的を持たず、議論の流れも一定せず、正確な情報伝達がされているとは限りません。
対話の場では、自身の行動や発言の背景にある感情や考え方、価値観について掘り下げて話を進めます。これにより普段は意識していない要素を言語化し、顕在化させることで、相手と自身の双方の立場の視点から、議題・話題について客観的に捉えることができます。
対話は主に、論理では超えられない感情や価値観を交話的コミュケーションを一歩進めて、双方の感情を平場に挙げて、コミュニケーションを取ります。交話的コミュケーションの力を借りて、論理を超えたコラボレーションが実現します。対話ではない会話を、明るいなんでも話せる人間関係と美化されてはなりません。心理的葛藤を避け対話と標榜したおしゃべりでは価値創造はできません。それは日々の対話からしか生まれないということも、振り返っておきましょう。
「対話」について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
コミュニケーションする場と媒体
社内や仕事の現場で業務に関係する会話を行うことをフォーマルコミュニケーションと言います。ビジネス上の業務に関係する会話なため、公式を意味する「フォーマル」が付けられています。
基本的に、フォーマルコミュニケーションはあらかじめ決められた形式で行われることが多く、たとえば、会議やプレゼンテーション、報告・連絡事項の伝達などが該当します。
一方で日常的なカジュアルな会話や交流、雑談を行うことを、インフォーマルコミュニケーションと言います。また、業務上決まっている相手との会話ではなく、偶然の出会いによる会話という意味もあり、ビジネス外の話題が多いため非公式を意味する「インフォーマル」が付けられています。
平たく言えば、TPO は「時・場所・場面」に応じてという事になります。
TPOが現在では、媒体と言い換えることができるでしょう。「場(媒体)」とは、情報を伝えるための媒体です。
現代ではオンラインでもコミュニケーションをする機会が増えました。たくさんのコミュニケーション方法の中から、自分の思いをデジタル空間で伝えるか、直接対面で伝えるかを考える必要があります。また、1対1で伝えるのか、複数人に一斉に伝えるのかも決めていきます。使う手段についても考慮しなければなりません。
例えば、メールが適している場合もあれば、動画が最適な場合もあります。時には「いいね」ボタンが有効な手段になることもあります。様々な表現方法の中から、伝えたい相手と手段を選んでいきます。
コミュニケーションを構成する要素はたくさんありますが、「誰に、どのように、どのように認識してほしいのか?」、「どう行動してほしいのか?」ということを意識することが重要です。加えて「いつ?」「どこで?」は、伝える内容をより、環境やツールの力を使い、動画、GIF、アイコンと言った表現方法の拡張にまで発展しています。
そのためには、コミュケーション能力が高い人は相手が言いたいことを論理的かつ感情的に理解するスキルがあるだけでなく、上記の構成要素を状況に合わせ且つかけわせてコミュケーションしています。
コミュニケーションを取る上で重要なメラビアンの法則とは
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学の名誉教授アルバート・メラビアンが1971年に発表した「メラビアンの法則」は、人々が言語情報よりも聴覚・視覚情報から影響を受け、コミュニケーションを行っていることを証明した概念になります。
各要素の影響の度合いを数字で表すと、言語情報は7%、聴覚情報は38%、視覚情報は55%影響しているとされています。とくに影響が強いのが視覚情報の55%で、人は目で受け取った情報に左右されやすいことがわかります。
また、メラビアンの法則によると、感情的なメッセージを伝える際、発する言葉と声のトーンやジェスチャーが一致していないと、誤解を招く可能性があることも示しています。たとえば、感謝を伝えるなどの場合において、適切な表情や声のトーンでないと、嫌味だと思われたり、心がこもっておらず裏がある、などと受け取られる可能性があるということです。
メラビアンの法則は、非言語コミュニケーションの重要性を示唆しており、人間関係の構築やビジネス上の協力関係・体制作りを行う際の大きな手がかりを与えてくれています。社内でのコミュニケーションを磨く際に非常に重要な概念になりますので、押さえておきましょう。
記号論では、伝達手段は言語のみとは限らず、服装、身振り、雰囲気、からも多くのモノを伝達していると述べています。その意味で、メラビアンの法則は、まさしく記号論の流れに入る研究で、とくに重要なのは、発した言葉と態度が一致すべきだということです。
記号論では、言葉だけでなくがそれ以外からもメッセージを発していることに発信者は留意していくべきです。とくに大事な商談、身の回りの同僚との会話、上司への報告、においては、言葉による正確さだけではなく、服装や身振りも含め、自分が漂わせている雰囲気が、メッセージにふさわしいかどうかを、常に気にかけておくべきです。
よく言われることですが、できるビジネスパーソンはよく鏡を見るということがこれらに該当します。
「目に見える」言語・非言語と「目に見えない」思考・解釈
コミュニケーションは、Aさんの言語や非言語のコミュニケーション(目に見える)を、Bさんが、認識し、Bさんの頭の中で解釈し思考(目に見えない)され、そしてBさんが、言語や非言語のコミュニケーション(目に見えない)で、Aさんに伝えるというプロセスです。
つまり、コミュニケーションは、双方の「目に見える」言語・非言語と「目に見えない」思考・解釈の連続で意味が生成されていきます。当たり前の話です。
しかし、当たり前のことですが、この「目に見えない」思考・解釈が、曖昧だったり、理性的に整理されていないことが、コミュニケーションの主な原因が多いです。しかし、その原因を「目に見えない」部分な為、前述して問題が、雪だるま式に膨れ上がるのです。
コミュニケーションにおいて、相手の話や発言もしくは、意図、そして奥底にある感情などを、聴く事は重要で、コーチングや1on1などで、傾聴というコミュニケーションスキルが、繰り返し繰り返し研修されています。傾聴の重要性は十分理解しているでしょう。
しかし、自分の話や発言もしくは、意図、奥底にある感情などを、自分で観察することは意識している人は多くはないでしょう。俗に言うメタ認知能力です。
傾聴は相手の言語や非言語から読み取りますが、その読み取っている自身の解釈や思考自体を読みとることはもっと重要です。なぜならば、傾聴していても、その「聴く」側の自己の思考や解釈のメカニズムが、ズレていれば、如何に慎重に傾聴しても、結果が変化しないかもしれません。重要な議論や会議の場では、相手と自己の「見えない部分」である思考と解釈に着目し、思考しながらコミュニケーションし、自分自身をメタで認知しながら臨むことが肝要です。
コミュニケーションを取る上でのマインド
コミュニケーションは万能ではなく、適切に効果を発揮するためには、用いる際には注意点があります。ここでは、コミュニケーションを取る上で必要なマインド(心持ち)について解説します。
伝えたいことが相手に伝わっていない(伝わらない)ことが前提
コミュニケーションにおいては、大前提として伝わっていない(伝わらない)認識を持つことが重要です。なぜなら、人は受け取った言葉や文章を自身の経験に結び付け、理解・整理しようとするため、解釈に齟齬が生まれやすいからです。
とくに、解釈が曖昧になりがちな内容については、誤解・誤認されやすいため、理解がしやすいように言葉や文章に配慮しながら伝える必要があります。
また、情報や考えを正確に理解してもらうために、何度も繰り返し伝えることが必要な場合もあります。
人が一度のコミュニケーションで理解できることは多くありません。持っている知識・経験には必ず違いがあるため、自身の理解力と相手の理解力を同質・同等に扱えないからです。そのような場合は、同じ話を何度も相手に伝えることも必要になります。
コミュニケーションの伝達効果をより高めるためには、相手の理解度をその都度確認し、認識のずれを修正するためのコミュニケーションを取ることも大切です。
その際、質問を投げかけたり、相手の意見・感想を肯定的に受け取るなど、コミュニケーションの深度を深めていくことも重要です。
できるだけ相手に伝わりやすいコミュニケーションにするためにも、可能な限り伝える工夫をするようにしましょう。
以前指摘していたように、コミュニケーションには、デリダが言う「誤配」や「遅配」がつきものであることを、肝に銘じておくべきでしょう。情報は発信者が思うように伝わることが、むしろ稀なのだと良い意味で諦めておくべきです。
それでも、コミュニケーションを成立させるためには、相手の誤解への肯定的な態度が不可欠です。
何度も言わせるなとか、なぜわからないんだ、といった否定的な言葉は、いかなる場合でも言ってはならない言葉です。
誤解は避けられないならば、受信者が理解してくれるまで、肯定的に接しなければならないことを心に留めておく必要があります。それは、相手が同僚であれ上司であれ顧客であれ同じです。
受信者が発信者の考えが軽いコミュニケーションによって一致するという幻想は、捨てるべきです。世界は多様であり、一人として同じ人はおらず、その意味では完璧なコミュニケーションはありえません。その諦めの境地に立って、それでも理解を求める努力をするほかありません。
コミュニケーションの目的を見失っていることもある
コミュニケーションで重要なのは、そのコミュニケーションの目的を明確にすることです。しばしば、自身の考えや意図を伝えたり、円滑な話し合いが行われたことに満足し、肝心の次のアクションに繋げることもなく、コミュニケーションができたと思い込んでしまうことがあります。
当然ですが、コミュニケーションはそれ自体で成果を上げられたり、企業・組織の経営が良くなったりするわけではありません。重要なのは、コミュニケーションに目的を設定し、その目的を達成するために必要な議論・対話・話し合いを行い、目的に即して導き出した結論を持って次のアクションに繋げるまでのプロセスです。
厳しい言い方ですが、ビジネスにおいて目的を見失った状態で取るコミュニケーションは、雑談や日常の会話と同じレベルのものであり、貴重な時間と労力を無駄にする行為です。ビジネスにおいては、コミュニケーション自体に満足するのではなく、コミュニケーションの結果にフォーカスするようにしましょう。
前出のヤコブソンの言語機能において、交話的コミュニケーションでは、コミュニケーションをしただけで、満足してよいものです。挨拶がこれにあたります。意味はありませんが、挨拶をすることによって同じ場を共有する者同士、円滑になるわけです。
しかし、企業でのコミュニケーションが、交話的だけではことが進みません。ヤコブソンも指摘している通り、言語機能の最大のものは情報伝達です。職場では常に何の目的のために情報伝達を行っているのか考えながらコミュニケーションすることは非常に重要です。
コミュニケーションができたから業績が上がるわけではない
ビジネスにおいてコミュニケーションは重要なものですが、コミュニケーションを取れば業務で成果が出るわけではありません。コミュニケーションは業務上の問題・課題解決、意思決定、社員同士の相互理解に役立ちますが、以下の条件に当てはまっていない場合、ビジネスで活用できているとは言い難くなります。
- コミュニケーションで得た情報を活用し、適切な形で行動に繋げることができている
- コミュニケーションにより、部署・チーム全体が共有している目標やビジョンが明確になっている
- コミュニケーションにより、社員同士やメンバー間の信頼関係や協力体制が構築されている
- コミュニケーションにより、問題・課題の解決に必要な適切な意思決定プロセスを確立できている
以上の条件が揃っていてはじめて、ビジネスにおいてコミュニケーションが機能していると言えます。ビジネス上のコミュニケーションは、業務の成果や企業・組織の経営や運営にプラスに働かなければ意味がありません。仕事の一環であることを忘れずに取り組む必要があります。
うまくコミュニケーションを取るためにはコミュニケーション能力の向上が必要
他のビジネスの能力・スキルと同じように、コミュニケーションがうまくなるには、能力を向上させるトレーニングが必要です。ここでは、コミュニケーション能力において意識すべきポイントや、鍛えなければならない部分、コミュニケーションを機能させるための環境設定について解説します。
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力は一般的に、言葉や文章などを用いて相手と意思疎通を図り、良好な関係を構築したり、仕事や遊びなどをスムーズに進めるために必要な対人スキルを指します。家庭・学校・会社・地域・友人関係など、あらゆる場面で必要とされており、その方法も多岐に渡ります。
コミュニケーション能力を向上させることにより、ビジネスをはじめ、幅広い状況で人間関係を良好にすることができます。
たとえば、家庭であればパートナーや家族との信頼関係を強くできますし、学校であれば教師やクラスメートとの関係を良好にし、勉強やスポーツを効率的に学ぶ協力関係を構築することもできます。
ビジネスにおいても、コミュニケーション能力の向上によって、社員同士の相互理解や信頼関係・協力関係の構築といった効果が期待でき、その結果、業務を効率的に進めて生産性を高めたり、イノベーションを起こすといった意義の活動にも繋がってきます。
つまり、コミュニケーション能力は、人間関係が発生するすべての状況・環境において欠かせないものであり、社会的な成功、あるいは良好な人間関係の構築において、必要不可欠なスキルであると言えます。
コミュニケーション能力のスキルレベルは訓練と経験を積み重ねることで確実に上達します。しかし、生産性に対して必ず頭打ちが来ます。上記で説明したようにコミュニケーションは、非常に奥が深く、コミュニケーション能力を突き詰めれば、必ず「言葉」とは何か、「人間」とは何か、「思考」、「認識」・・というレベルの命題に必ずぶつかります。これは、哲学や人文学的な領域の力を借りる必要があります。俗に言うリベラルアーツです。もし、コミュニケーション能力やスキルに限界を感じたら、哲学やリベラルアーツを学習することも重要です。
ビジネスに必要なコミュニケーション能力とツール(場)
ビジネスにおけるコミュニケーションは、家庭内や友人とのコミュニケーションとは異なり、ビジネスの場において必要なツールや言葉遣い、マナーを使い分ける必要があります。
ビジネスでのコミュニケーションでは「伝達する力」が要求されます。業務上のミスや失敗のリスクを下げるため、状況や相手の特性・立場に応じた伝達手段を選択し、わかりやすい形で表現する能力が必要です。言葉選びや表現の工夫により相手の理解を深め、生産性や業務効率の向上など、成果に繋げなければなりません。
また、相手が発してきた言葉や文章を「理解する力」も必要です。自身が投げかけた情報や意見に対し、相手が意見などを返答してくることもありますし、他の社員がコミュニケーションを取ってくる場合もあります。そういった場合、相手の言葉や身振り手振りを観察し、共感しながら発する内容の意図や要望を正しく理解する必要があります。相手の意見を尊重することにより、円滑なコミュニケーションを取ることができます。
伝達する力、理解する力をより発揮するためには、デジタルツールなどによる対話の場を設けることも有効です。たとえばデジタルツールであれば、社内ポータル・SNS・チャットツールなどがあり、対面でのコミュニケーションと併用して適宜活用すると、業務上の意思疎通や情報共有などを円滑に行うことができます。
メラビアンの法則では、言語情報は7%、聴覚情報は38%、視覚情報は55%とされています。このことから動画を簡単に送れるSNSの企業内コミュニケーションが有用であることがわかります。動画方が文字情報よりはるかに多くの情報を伝えうるのですから、経営者としてはSNSによる社内コミュニケーションを促進するべきです。
しかし、SNSが登場してきたので、ここ10年のことで、その使い方について規範が定まっているわけではありません。社内でのSNSの規範を創る前に考えなければならないものをいくつか挙げてみます。
たとえばLINEの場合は、既読がどのような意味を持つのかという点です。それは開いて読んだということなのか、それとも理解したということなのか規範が曖昧でいるとツールとしては不完全なものになってしまいます。
いいねについても同じです。いいねがつくことは、単に見たということなのか、本当に共感したということなのかは、人それぞれです。社内SNSを活用するうえでそれについてのルールや規範を、ある程度決めておくことが、円滑なSNSの運用に役立つはずです。SNSのルールや規範をつくることは難しい面もありますが、それをはっきりさせておかないと、誤解から発展してハラスメントが起きる可能性もあることを留意しておきましょう。
コミュニケーションに関する、コミュニケーションが大切だということでもあります。ヤコブソンはこの種のコミュニケーションを、メタ言語のコミュニケーションと名付けました。ここへの目配りも、必要です。
まとめ
ビジネス上で用いられるコミュニケーションは、目的や状況によって使い分けられています。また、コミュニケーションは非常に奥深いものであり、絶対的な正解など存在しない概念です。とくに変化の激しく、グローバル化が加速した現代のビジネスの現場においては、半ば手探りでコミュニケーションを取らなければならない場面も多いことでしょう。
しかし、ビジネス上のコミュニケーションは、日々の訓練と工夫によって向上させていくことが可能です。コミュニケーションは、単なる情報伝達の手段ではなく、企業・組織の成果や経営・運営を支えるために必要不可欠な要素のため、今後のビジネスにとってコミュニケーションスキルを身に付けることが重要となるでしょう。
人は、考える動物であるとは、よく言われることです。西洋哲学でも、デカルト以来考えることが、存在の証明のように語られ来ました。しかし、考えたものは、話さなければ、他者に伝わることはありません、ここからコミュニケーションが始まります。人間は考えるという動物と同時に、話す動物でもあります。
コミュニケーションはそれゆえに、私たちの人生の最初から最後まで、伴走するものであり、このスキルを持っていることは、友人関係であれ、家族関係であれ、職場関係であれ、いかなる場合でも、メリットとなります。
しかし、何度も指摘したようにコミュニケーションは、短い言葉のキャッチボールですべてが理解されるものではありません。コミュニケーションのなかで誤解をできるだけ少なくする努力が求められます。職場の各人が実践することで円滑なコミュニケーションは楽しくビジネスの利益にもなるということを社員一人ひとりが実感することが大切です。性別、年齢、経験、人種にかかわらず、コミュニケーションが大事であることを、社員が意識している職場はそれだけで、成功が約束されている職場となるでしょう。
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先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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