クリティカルシンキングとは?身につけ方や実践方法を紹介!

近年、前提や論拠がそもそも正しいのかを問うことにより、本質を見抜こうとする批判的思考(クリティカルシンキング)がビジネスを前進させるために必要な力として注目を集めています。批判的思考(クリティカルシンキング)を身につけることは、従来の考え方や方法にとらわれることなく不確実な未来を生き残るために役立ちます。

批判的思考(クリティカルシンキング)の概要や必要性を説明し、その能力をどう身につければよいのか、さらに実践方法について解説します。

批判的思考(クリティカルシンキング)とは何か

批判的思考(クリティカルシンキング)とは、批判的な思考や視点を通じて物事を正確に理解することを指します。

ここでは批判的思考(クリティカルシンキング)について、その定義や必要性、またロジカルシンキングとの違いなどを解説します。

批判的思考(クリティカルシンキング)の定義

批判的思考(クリティカルシンキング=critical thinking)とは、前提や論拠がそもそも正しいのかを疑うことによって、本質的な課題が抽出されているかを理解するための思考プロセスを指します。

「批判的」という言葉に、ネガティブなイメージを抱いてしまうことがありますが、批判的思考は物事を正確に理解する上で役立ちます。

Aという事象や主張に対して批判的な観点で見ることで、Aがより深く理解できるようになったりするものです。

例えば、「A=B、B=C、即ちA=Cである。」という主張Aがあるとします。

この主張Aを批判的に見るためには「本当にA=Bなのか?」もしくは「B=Cである理由は?」などを調べたり、視点を変えてみたりする必要があるわけです。この疑うプロセス自体は、主張Aを自ら進んで理解するプロセスです。したがって批判しないということは、本質を理解するプロセスを省いてしまっていることと同じなのです。

極端な例ですが、あなたは自分の組織の戦略やビジョンを批判的に見たことはありますか?もしないのであれば、批判的に見たほうがより理解が進むようになるでしょう。

論理的には問題のないことでも、それが真実であるとは限りません。批判的思考(クリティカルシンキング)はロジカルの前提や背景をあえて、批判することです。

つまり批判的思考(クリティカルシンキング)の目的は、意見を否定することではなく、背景となるデータやエビデンスを反映した意見かどうかを精査することによって、本質的な課題や意味を捉えることです。

これはいわば、反証のプロセスともいえるでしょう。裁判などで、相手の主張事実が存在し得ない事実であることを証明する時に提出する証拠のようなものです。

ロジカルシンキングとの違い

批判的思考(クリティカルシンキング)とよく比較されるのが、ロジカルシンキング(logical thinking)です。logicalが「論理的、合理的」を意味することから、日本語では「論理的思考」と呼ばれます。

ロジカルシンキングは、論理の整合性が取れているかどうか、つまり物事を要素ごとに分解し、筋道立てているかどうかが重要であり、そもそも“根拠が正しいか、偏った情報をもとにしていないか”などは精査の対象になりません。個人の思考のクセや偏りから生まれる歪みを考慮しない点において、批判的思考(クリティカルシンキング)とは異なります。

つまり、ロジカルシンキングでは”論理的には正しい”といえても、”論理的であるから正しい”といえるわけではないのです。

ロジカルシンキングは、いわば思考の基礎のようなもので、批判的思考(クリティカルシンキング)は簡単にいえばロジカルシンキングに批判的な見方を加えているものであると考えるとわかりやすいでしょうか。つまり同列で比べられる考え方ではないのです。

批判的思考(クリティカルシンキング)がなぜ必要なのか

批判的思考(クリティカルシンキング)が注目されているのは、近年、地球規模のヒト・モノ・カネの移動が激しくなったことに起因します。結果として、外部環境が大きく変化するようになり、これまでと同じ方法で成功する保証はなくなりました。不確実性の高い時代においては、これまでの経験から培われてきた前提やセオリーが通用しなくなってきているからです。つまり、敢えて批判的な視点や立場で物事を捉えることで、それまで見えなかった深い部分に意識を向けられたり、理解が深まったりします。また、これは批判という立場や視点だけではなく、さまざまな立場や視点へ考えを切り替える方法でもあります。

そのほかにも、デマやフェイクニュース、個々の情報処理の必要性が求められていることや、同調圧力による思考停止の回避にも役立ちます。

批判的思考(クリティカルシンキング)の基本姿勢

批判的思考(クリティカルシンキング)を行うためには、曖昧さを廃除する、思考のクセに左右されないようにするなど、以下の5つの基本姿勢を身につける必要があります。

曖昧さを排除する

批判的思考(クリティカルシンキング)を実践するためには、会話からできるだけ曖昧さを廃除し、具体的に話すことを意識しましょう。例えば「いつ・誰が・何を」といった主語や目的語、時制は省かない、「これ・あれ・それ」などの代名詞を使わずに具体的な名称や固有名詞を伝えるなどを意識すれば、曖昧さが軽減され意図を正確に伝えられるようになります 。情報の定義や参照元を明確にすることも曖昧さを回避する上で有効です 。

思考の目的を常に念頭におく

批判的思考(クリティカルシンキング)では、さまざまな検討を経た末に、どのような論点を解消したいのか、思考の目的を常に念頭に置いておくことも重要です。何のために思考を重ねているのかが意識から外れてしまうと、前提を疑ったり多面的な批判を取り入れたりしているうちに、本来の論点からずれてしまう恐れがあります。枝葉末節にこだわってしまうと本質を見失い、根本的な課題解決に至らない場合があるということです。そのため議論を始める前には、まず思考の目的に対する共通認識を築き、論が進むごとに本論から外れていないかを立ち返り確認することで、間違いなく結論へと向かえるようにしましょう。

思考のクセや偏りに左右されない(バイアスを認識する

参照元:https://www.gapingvoid.com/blog/2019/03/05/want-to-know-how-to-turn-change-into-a-movement/

上図は、のちに詳しく解説する「DIKWモデル」というデータ分析モデルを図に表したものです。

DIKWモデルとは、情報をデータ(Data)、情報(Information)、知識(Knowledge)、知恵(Wisdom)の4つの階層に分けることで分析するフレームワークです。

上図でわかるように、最小単位のデータ以外は、すべて何かしらのバイアスがかかっています。つまり、“バイアスはあるもの“という前提を持つことが批判的思考を行う上で重要です。

これまでの経験による思考のクセや偏り、先入観など、誰しもが多かれ少なかれさまざまなバイアスに陥っているものです。そのバイアスを通して認識していることが周囲の認識と食い違っていたり、議論がかみ合わなかったり、理解の齟齬が生じたりすることは少なくありません。そのため批判的思考(クリティカルシンキング)においては、自分の思考のクセや偏り、感情を自覚し、「これは自分の主観ではないか」と自身に常に問いかけることで、バイアスに振り回されないよう意識することが大切です。

また、思考の偏りを回避するためには、仮説検証を繰り返すのが効果的です。仮説を立てたときに、「この仮説自体が間違っているのではないか」と自分の思考の基礎を批判的に疑い検証することで、思考の偏りのない仮説を立てられるようになります。

結論に至っても問い続ける

批判的思考(クリティカルシンキング)では、課題が解決されたあともそこで思考を停止せず、その結論の正当性を自らに問い続けることが大切です。その際に問うのは、以下の3点です。

  • なぜこの結論に至ったのか?(Why?)
  • 正しい結論なのか?(True?)
  • この結論から何が導き出されるのか?(So what?)

このように、その結論によって本当に当初の論点が解消されるのかを確認します。こう問い続けることで、そのときには見えなかったことが見えてきたり、正解と思っていたことが実は違っていたと気づいたりすることがあります。また、問い続けるプロセスにおいて、批判的思考(クリティカルシンキング)が身に付いていくでしょう。

事実と意見を区別する

批判的思考(クリティカルシンキング)においては、データに基づく客観的な事実と、自分や人の主観に基づく意見を区別して話したり聞いたりする能力も重要です。例えば、4つの候補案のうち、1つ目の案に46%と最も多い票が集まったという事実があったとします。その際「最も多くの社員がこの案を支持しているのだから採用すべきだ」というのはもっともらしく聞こえますが、単なる意見に過ぎません。同じ事実でも、着眼点によっては「半分以上の社員はこの案に反対しているのだから再検討すべきだ」と考える人もいるためです。

データに基づいて思考を深めるためには、次のDIKWモデルが参考になります。DIKWモデルとは、Data(データ)・Information(情報)・Knowledge(知識)・Wisdom(知恵)の頭文字を取った、情報を解釈するためのフレームワークです。それぞれの語彙の意味は以下の通りです。

Data:それ自体では意味を持たない数字や記号など。

Information:データを整理して意味づけされたもの。Who・What・Where・Whenの答えとなり得るもの。

Knowledge:情報をまとめて体系化されたもの。Howの答えとなり得るもの。

Wisdom:知識を正しく認識し、価値観やモラルに昇華させたもの。Whyの答えとなり得るもの。

このように、DataからWhyの答えとなるWisdomまでには距離があり、回答に近づくためにはこれらのステップを1つずつ上っていかなければなりません。事実から結論へ、簡単に結びつけることは難しいということです。

批判的思考(クリティカルシンキング)の実践方法

批判的思考(クリティカルシンキング)を実践するためには、議題を明確にしたうえで根拠の妥当性を検証し、論理の整合性をとるといった以下のようなステップを踏む必要があります。

議題とそれに関連する要素の明確化

議論を始める前に、まず議題は何なのか、どの論点を解消することによって、何を得たいのかを明確にする必要があります。クリティカルシンキングにおいて最も重要なプロセスです。議論に関わる人それぞれの主張や根拠は何であるかを明確にすることで、互いの主張を理解します。

議題自体が、定義されていない不明確なものは「論」ではなく単なる「対話」になり、最悪の場合、関係性が悪くなる可能性もあるので注意が必要です。

批判的思考(クリティカルシンキング)を練習する場合は、最近の法律や社会ルールなどは良いテーマですし、同じ職場であれば、組織の仕組みやルールをなどが適切な議題になります。議論する人たちの情報非対称があると、議論が成立しない場合がありますので、議論する人たちの知識に偏りのないテーマを選びましょう。

職場などで行う場合は、組織内の課題や組織内ルールなど、体感的に理解できるようになるでしょう。ここでも、批判=拒絶・否定ではなく、感情を差し引いた論理で議論を展開することが重要です。

根拠の妥当性を検証

上記のプロセスを経たうえで、各自の主張や持論を支える根拠が偏った情報源から得たものではないか、事実ではなく自分の意見を根拠にしてないかなどを問い直します。データが根拠とされている場合には、調査方法は妥当なものであったか、サンプル数は十分だったかなどを検証し、確かな根拠に基づくものかを確認しておきます。

論理の整合性をはかる

信頼に値するデータに支えられた根拠であった場合にも、主張を支えるのに妥当なものであるか、論の筋道が立っているかを確認します。また、思考のクセによるバイアスは、本人には気づきにくいものです。偏った見方によって事実が都合の良いように解釈されていないかも確認しましょう。

批判的思考(クリティカルシンキング)を訓練する方法として、職場でディベートを実践するのも良いでしょう。勝敗がつけられるディベートでは、自分たちが正しいことを証明するために信頼できるデータを集め、論理的に説明しなければなりません。ときには自分が普段考えていることとは逆の意見を支える立場として思考することも求められます。

ディベートについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

批判的思考(クリティカルシンキング)の身につけ方

批判的思考(クリティカルシンキング)は、日本社会では自然に身に付く力ではありません。そのため批判的思考(クリティカルシンキング)を習得したい場合には、普段から自身の思考を深掘りしたり、思考の偏りを減らしたりする習慣を自らつけることが求められます。

自身の思考や日常的な事柄を深掘りする

批判的思考(クリティカルシンキング)を身につけるには、日ごろから耳にする事象についても、なぜそうなのか、本当にそうなのかという視点を持って、深掘りする習慣を持つことが大切です。

例えば「今の若手社員は入ってもすぐ辞めていくから人材が育たない」と聞いたときに、

  • なぜ辞めていくのか
  • すぐとはどれくらいの期間なのか
  • 辞めるから育たないのは本当なのか、育てる環境がないから辞めてしまうのではないのか

など、前提や根拠を疑う思考のクセをつけましょう。

自身の意見への反論を考える

自分自身の思考に対しても、上記と同様の疑問を投げかけ、正当性に欠ける点がないか考えることも大切です。

例えば「この仕事量だと明後日までには間に合わない」と思ったときに、

  • 間に合わないと判断した根拠は何なのか
  • 間に合う・間に合わない仕事量をどのように見極めているのか
  • 間に合わせる方法は本当にないのか

といったように、自身の思考に第三者として疑問を投げかけるなど、自己批判の習慣を身につけましょう。これらは、メタ認知のトレーニングです。自身の考えや判断を客観的な思考で認知することで、冷静な判断や思考ができるようになります。

思考の偏りを減らす

批判的思考(クリティカルシンキング)を身につけるには、無意識に陥りがちな思考の偏りを減らす必要があります。そのために、フレームワークでの客観的な分析方法を試したり、書籍を読んだりすることで、できるだけ広く多様な考え方を身につけることが大切です。

人によって捉え方の違う語彙を使わない

批判的思考(クリティカルシンキング)を身につけるために、人によって捉え方が違う曖昧な語彙を普段から使わないよう意識しましょう。例えば「少ない」「劇的な」といった個人の感覚に頼るような語彙は、相手との間に理解の齟齬が生じる可能性があるため普段から避けるトレーニングをすると効果的です。また、「収穫量が8%増加した」などのデータに基づく事実だとしても、その数字が多いか少ないか、捉え方は各人の期待値やこれまでの経験によって違うことも、常に念頭に置いておきましょう。

まとめ

本質的な課題を捉える批判的思考(クリティカルシンキング)は、従来の考え方にとらわれず、不確実性の高い未来を生き抜くために必要な力です。批判的思考(クリティカルシンキング)では、曖昧さを廃除し、思考のクセに左右されないよう努めるといった姿勢が大切です。

批判的思考(クリティカルシンキング)を通じて、思考のタガを外したり、新しい視点を生み出したり、感情的ではなく理性的に伝える能力が身に付きます。

小学生や中学生の会話の中で、2ちゃんねるの創業者ひろゆきさんの真似をして、「それってあなたの感想ですよね?」と言っているそうです。

これも、事実と意見を区別する=クリティカルシンキングの一部なのです

日本では批判的思考(クリティカルシンキング)が自然と身に付くことはないので、意識的に習得に取り組む必要があります。批判的思考(クリティカルシンキング)の身につけ方や教育方法にお困りの際は、どうぞソフィアまでご相談ください。

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