eラーニング社内研修を成功させる導入手順とLMS選定ポイント
最終更新日:2026.03.27
目次
eラーニングを社内研修に導入すると、時間・場所の制約を減らしつつ、受講状況や理解度をデータで把握できます。一方で“受けっぱなし”になれば効果は出ません。本記事ではLMSの選び方からコンテンツ設計、運用・効果測定、事例まで、失敗しないポイントを整理します。
インターネットの普及やICT技術とデジタルデバイスの性能が劇的に向上したことに伴って、学習コンテンツをデジタル化したオンラインのeラーニングが社内研修に活用されるようになりました。
オフラインの社内研修はディスカッションやロールプレイングを交えた体験型研修が強みでしたが、今ではeラーニングがこれらの体験型学習を機能として実現できるようになり、さらに効果的な研修が実施できるようになっています。
また、eラーニングの普及とともに、それらを管理するLMS(ラーニング・マネジメント・システム)というツールも進化し、働き方改革と連動して人材育成のあり方が大きく変容している時代であると言えます。
昨今の人材開発において、「ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)」という概念がトレンドになっていることをご存知でしょうか。
世界初のデジタルLMS「FirstClass」は1990年代にアメリカで生まれ、そののち1999年にeラーニングと呼ばれるようになりました。近年、eラーニングを管理するLMSが「LXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)」が注目されるようになっています。
ラーニング・エクスペリエンスもしくはラーナー・エクスペリエンス、すなわち「学習者体験」は、従業員の「学習」を取り巻くあらゆる体験を指します。
もうお分かりの方もいると思いますが、マーケティングで用いられるカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の概念を、研修や学習に利活用した考え方です。
学習をする際の従業員の心理状態や社内での学習環境、学習前や学習時、学習後に何を考えどう感じたか、受講者同士の関係性はどのようなものであったか、これらの体験をすべてを網羅したプラットフォームがLXPです。
具体的には、システムのインターフェースや操作性、学習時間の確保、学習実績や成績の記録、マルチデバイス化による柔軟な学習環境の…情報の鮮度、実務との関連性など、学習にまつわるさまざまなデータを統合し、管理者がコントロールしやすいように一元化したものです。
社内研修をeラーニングで実施する場合は、LXPの観点も持ちながら導入を図る必要があります。
本記事では、eラーニングを利用して社内研修を実施する際のポイントに加え、eラーニング社内研修の検討で必ず論点になる「デメリットと対策」「費用の考え方」「LMS選定の比較軸」「導入手順」「効果測定」まで、まとめて解説します。
eラーニングの社内研修活用とその概要
社内研修にeラーニングを利用することは、企業側にとっても、研修を受講する社員にとっても多くの利点があります。
ただし「eラーニング=動画視聴」ではありません。一般的には、教材コンテンツ(動画・資料・テスト等)と、それを配信・管理するLMS(学習管理システム)を組み合わせ、受講/進捗/理解度/履歴を管理します。
また、学習ログの扱いを高度化したい場合は、標準規格(例:SCORM、xAPI)への対応可否が、後々の移行性・分析可能性に影響します。
「LMS」と「LXP」の違い
LMSは「研修の提供・受講状況の管理」など、管理者視点で学習を運用する仕組みとして活用されることが多い一方、LXPは学習者のニーズに合わせた学習体験を支え、Off-JTだけでなく業務の中の学びも対象にし得る、という整理がされています。
つまり、社内研修(必須研修・階層別研修)を確実に回すならLMSの強みが活き、学習文化の醸成や学び合いまで含めるならLXPの視点を併せ持つ設計が有効です。
eラーニング社内研修の導入メリット
社内研修にeラーニングを利用することは、企業側にとっても、研修を受講する社員にとっても多くの利点があります。
企業側のメリット
研修を実施する企業側のメリットを4つ挙げます。
コストの大幅な削減
研修には会場となる場所を確保する必要がありますが、自社の会議室で全員を収容しきれないような大型研修の場合、有料の貸し会議室を借りるコストが発生します。
一方、eラーニングを利用した社員研修では受講者が一ヶ所に集まる必要がないため、この会場費がまるまる削減されるわけです。
また、集合研修で登壇する講師の招聘に関してもコストを考慮しなければなりません(講師への報酬や交通費など)。
近年のeラーニングでは動画形式のコンテンツを制作ができるため、事前に動画を撮影してコンテンツを作っておけば、講師を毎回手配する必要がなくなります。
そして集合研修においては、手元で閲覧する紙資料を配布する場合が多いですが、eラーニングではこの資料もデジタル化できるため、印刷しておく必要がありません。
コスト削減はもちろんですが、地球環境保護のために紙の使用の削減が企業にも要請されている昨今、重要な観点のひとつです。
自発的学習の促進
eラーニングを利用した研修は、受講者の都合がつく時に任意で開始することができます。
あらかじめまとまった時間を確保する必要がないため、従業員の自発性を刺激しやすくなるでしょう。
また、eラーニングにおける最近のトレンドとして「マイクロラーニング」があります。1〜10分程度の短い学習コンテンツを豊富に用意することで、従業員に「学習の選択肢」が生まれます。
PRISMAに基づくシステマティックレビューでは、マイクロラーニングを「短時間で目的に直結した小分けの学習」と位置づけ、学習成果へのポジティブな影響が示唆されています。
コンテンツを組み合わせて学習コースを設け、自由に受講できるようアナウンスしておくことで、従業員が自分の受講したいコンテンツを柔軟に受けられるというのも、自発的学習を促進する大きな要因になるはずです。
受講者への一斉提供
eラーニングによる研修は場所を選ばず、受講者がどこにいてもインターネットに接続できる環境さえあれば一斉受講が可能となります。
平たく言うと「全社員がオフィスの自席で一斉に受講できる」、あるいは昨今の働き方に合わせると「全社員が自宅やサテライトオフィスで就業していても一斉に受講できる」ということです。
また、配信する内容は、同一にすることも個別にすることも可能なため、受講者のレベルに合わせてコンテンツを提供できるようにもなります。
社員の早期即戦力化
本来、社員研修は「現場で生かせる知識や技術を修得させること」が目的のはずです。
そのためには、受動的なコンテンツよりも、社員が能動的に学習へ参加する実践型・体験型の学習コンテンツの方が高い効果を生みます。
eラーニングを利用すれば、よりインタラクティブな研修が可能となります。
動画コンテンツとあわせて、受講者同士のコミュニケーションを図りながらロールプレイングやゲームのような研修もできますし、最近ではAI(人工知能)が自動的にフィードバックやアドバイスをする機能も開発されています。
上位記事でも「新人の即戦力化」「ナレッジ共有」など、用途別の活用が整理されています。自社の研修目的(新人育成/必須研修/職種研修/マネジメント研修)に合わせて、コース設計を作り分けるのが近道です。
実践型・体験型の研修は、いわゆる「OJT」に近いものだと考えていただければわかりやすいでしょう。
現場ですぐに生かせるスキルを身に付けることで、社員の戦力化を早めることにつながります。
新入社員が早期に活躍できるようにするためにも、これらの研修が力を発揮することでしょう。
受講者側のメリット
続いて受講者側のメリットです。こちらも大きく4つに分けられます。
時間・場所を問わない受講環境
企業側のメリットに挙げましたが、これは受講者側のメリットでもあります。
例えば、客先への訪問前の待ち時間、在宅勤務中の待機時間、接客業において顧客が来店していない時間帯、業務終了時刻より前倒しで作業が終わった場合など、受講者の時間的余裕を活用して学習を進められるのは大きなメリットです。
自身によるスケジュール管理
「こんなに忙しい時期に研修をするの?」「ちょっと今は余裕がないのに…」
受講する側になったことがある担当者は、一度はこうした経験をしたのではないでしょうか。
トップダウンで割り当てられた研修は日常業務の妨げと感じられやすく、社員の不平不満を招きがちなものでした。
一方、eラーニング型の研修であれば、受講する時間帯を受講者が自分自身で決められるため、自分のタスクを最優先にスケジュールを組み立てられます。
即時フィードバックの確認
先ほど紹介したLearn365(旧LMS365)などのeラーニング管理プラットフォームをあわせて利用すれば、受講者が受講した研修の進捗状況や、受講後に受けた理解度テストの結果をすぐに確認できるようになります(これまで担当者が手作業で行っていた採点や、採点後の結果送信がプラットフォームによって自動的に行われるため)。
フィードバックまでの時間を短縮することで、受講者の意欲を保ちつつネクストアクションへとつなげられます。
スキルアップ機会の充実
「マイクロラーニング」という概念について紹介しましたが、eラーニング化に伴って豊富な学習コンテンツを受講者に提供することで、受講者が能動的に学習に取り組むようになり、スキルアップを促進しやすくなります。
新卒であればビジネスマナーでも良いでしょうし、ISO研修やロジカルシンキング研修、交渉術や自社内だけのノウハウを凝縮したコンテンツも有用です。
技術書や専門書を個人で購入して学習するよりも個人の負担が小さく、社員にはとても重宝がられることでしょう。
さらに、こうした学習機会を用意している企業に対し、従業員のロイヤルティが高まるという副次的効果も大いに期待できます。
eラーニング社内研修のデメリットと対策
上位記事では、メリットと同じくらい「デメリット(つまずきポイント)」が重視されています。導入前に”落とし穴”を明確にしておくと、現場の反発や形骸化を避けやすくなります。
- 集合研修ほどの強制力はない
期限・目的・評価(小テスト/課題)・リマインド設計で補う - 受講者のモチベーション維持が難しい
5分前後の小分け、アウトプット前提、コミュニティ/上司関与で補う - コンテンツ制作・更新に手間がかかる
テンプレ化、内製範囲の設計、外部教材併用、更新責任者の明確化 - IT運用・問い合わせ対応が増える
FAQ整備、権限設計、SPOC(一次窓口)の設定、運用KPIで改善
弊社ソフィアの調査では、社内研修/学習コンテンツに対して「受講しても実務に役立たない/役立て方がわからない」が最も多い課題として挙がっています。つまり”受講させる”以前に、研修設計が「実務と接続できているか」を詰めることが、最大のデメリット対策になります。
eラーニングと集合研修の使い分け
結論から言うと、「知識のインプット」はeラーニングで効率化し、「ディスカッション」「ロールプレイング」「現場課題の解決」など動的な学習は集合研修で効果を上げる、という”いいとこどり”が有効です。
米国教育省のメタ分析では、ブレンディッド(オンライン+対面)条件が対面のみより強い学習成果を示す平均効果量が報告されており、オンライン単体よりも「組み合わせ」に設計余地があることが示唆されます。
実務上のおすすめは次の3点です。
- 事前:eラーニングで前提知識・共通言語を揃える(受講状況をLMSで確認)
- 当日:集合研修でアウトプット(討議・演習・ケース)を中心にする
- 事後:小テストや課題で反復し、現場適用の”やり方”まで落とす
LMSに必要な機能と選定の基礎知識
上位記事でも、eラーニングは「教材コンテンツ」と「LMS」で構成される、という整理が繰り返し登場します。
研修担当(人事)と基盤担当(情シス)で重視点は異なりますが、最低限の”共通必須”は次の通りです。
- 配信/受講:コース配信、モバイル対応、字幕/倍速など視聴補助
- 進捗/評価:受講状況、テスト、アンケート、レポート提出、リマインド
- 権限/組織:部署・階層・職種などグルーピングと権限(RBAC)
- レポート:受講率、未受講者、理解度、部門比較、CSV出力
- 標準規格:SCORM対応(他システム移行時の保険)、必要に応じてxAPI連携
SCORMはADLの資料でも、SCORMに準拠したeラーニング開発手順の考え方が整理されています。
xAPIはADLが、学習経験データの記録・移転を可能にするデータ/インターフェース標準として説明しており、動画視聴以外(シミュレーション、OJT等)まで学習ログを広げたい場合に検討余地があります。
eラーニングシステム選定の比較軸
競合記事では「サービス比較軸」「製品選びのポイント」が独立章として置かれています。選定の判断軸を明文化しておくと、検索者の”次の行動(資料請求・相談)”につながりやすくなります。
人事・研修担当者が見るべき比較軸
- 教材の調達方針:外部教材中心か、内製中心か、併用か
- 研修設計のしやすさ:コース設計、受講条件、リマインド、アンケート
- 運用負荷:受講者登録、問い合わせ対応、レポート作成の工数
- 効果測定:テスト、課題、受講後フォロー(現場適用の確認)
情報システム(LMS基盤)担当者が見るべき比較軸
- ID管理:SSO、アカウント自動連携(入退社/異動)
- セキュリティ:アクセス制御、ログ、暗号化、端末紛失時の対策
- 個人情報保護:学習ログ/人事データの取り扱い、保存期間、委託先管理
- アクセシビリティ:キーボード操作、コントラスト、字幕など(WCAGを参照)
- 標準規格:SCORM/xAPI、データエクスポート、将来の乗り換え容易性
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人データの安全管理措置としてアクセス制御や不正アクセス防止などの技術的安全管理措置が示されています。LMSは学習履歴という個人データを扱うため、この観点は要件定義に入れるべきです。
モバイル受講を想定する場合、IPAは暗号化や端末ロック、利用者認証、端末を最新状態に保つこと等を挙げています。社内研修の”受けやすさ”と”守り”はトレードオフになりやすいため、要件として最初に握るのが安全です。
アクセシビリティについては、WCAG 2.2がW3C Recommendationとして公表されています。受講者の多様性が高い大企業ほど、到達率を落とさないための基本要件になります。
eラーニング社内研修の導入手順
Schooなど上位記事は「導入手順」を独立章で示しています。社内の意思決定・稟議・情シス調整が発生するため、手順の見える化は検索者にとって重要なポイントです。
- 目的・対象・到達目標を定義(必須研修/階層別/職種別/オンボーディング等)
- 現状課題を棚卸し(受講率、実務適用、運用工数、コンテンツ不足)
- 要件定義(人事・事業部・情シスで合意:機能、セキュリティ、連携、運用)
- コンテンツ方針決定(外部/内製/併用、更新ルール、レビュー体制)
- PoC(小さく試す):1〜2部門で受講率と現場適用を検証
弊社ソフィアの調査では、研修が「実務に役立たない」と感じる理由として「現場の具体的なニーズに合っていない」「カスタマイズがされていない」「インプット中心で実践のイメージがわかない」等が挙がっています。導入手順の初期(目的定義・要件定義・コンテンツ方針)で、現場を必ず巻き込むべき根拠になります。
学習コンテンツの設計・制作ポイント
社内研修にeラーニングを導入すると良いことばかりのように見えるかもしれませんが、実施の際にはいくつか注意点もあります。
これらを疎かにするとせっかくのメリットが失われることにもなりかねないので、導入前には必ず検討してください。
受講期限と受講目的の明確化
「いつでも受けられる」ということは、逆に言えば「受けられる時間がなければ受けない」という特性も持っていることに着目してください。
日々の業務に追われていると、多少の時間が空いたとしても学習に割こうという意欲が生まれにくいものです。
また、「豊富なコンテンツが用意されている」ということは、「自分ごととしてとらえてもらいにくい」という側面もあります。
「忙しい最中、用もないのに図書館に放り込まれる」シーンを想像してみてください。おそらく仕事のことが頭から離れず、まわりに広がるたくさんの本に手を付けることはないでしょう。それは、eラーニングであっても同じことです。
受講者に対して「あなたはなぜこの研修を(業務の合間をぬって)受講する必要があるのか」という目的を理解してもらい、その上で受講期限を明確に示す必要があります。
何度か受講して、その有効性や簡便さ・手軽さに受講者自身が気付けば、そこからは自発的に受講してもらえるでしょう。
コンテンツ制作の負担軽減
eラーニングにおいて重要なのは、受講者と企業、双方にとっての負担をなくす・軽減することです。
研修内容をマイクロラーニング化することで受講者側の受講時の負担が減るように、コンテンツ製作者にとっても、制作の負担が減るように工夫しなければなりません。
なお、動画コンテンツの場合は伝えられる情報量が多く、これまでテキストで伝えていた内容をものの数分で伝えられるという特性も考慮する必要があります。
コンテンツ制作の前に、受講者にとって本当に必要な学習内容を絞り込み、どういった形でコンテンツ化するかという事前作業が重要になってきます。
コンテンツの視聴・共有しやすい設計
昨今のeラーニングのメリットである「マルチデバイス化」を十分に活かしましょう。
スマートフォンやタブレットを社員に貸与している企業であれば、モバイル端末でも受講しやすいコンテンツへと改良する必要があります。
例えばLearn365(旧LMS365)の場合は、Microsoft SharePointで制作した社内ポータルや社内SNSの Viva Engage (旧Yammer)とも連携できるため、研修内容についてディスカッションする場を設けたり、感想を共有したり、受講者からフィードバックを送信したりする際にも有用です。
受講状況の管理
eラーニングで研修を行う際は、各受講者の進捗状況や各コンテンツの受講状況をLMSで把握しておく必要があります。
進捗状況が芳しくないコンテンツや、受講される頻度が少ないコンテンツには、何かしらの原因があるはずです。
社員から意見を吸い上げる場を設け、本当に有用なコンテンツだけに絞って最適化を図っていきましょう。
現場の社員との協力体制
コンテンツ制作の際には、現場における社員の即戦力化に必要な知識・スキルを網羅しておくことが不可欠です。
「学習コンテンツやプラットフォームは便利だと思うが、研修内容が現場での業務に役立たない」
社員からこういったフィードバックを受けたときは、eラーニング研修が効果的でない可能性があります。企業として伝えたいことと、現場とのそれが解離している状況にあるかもしれないので、現場社員の声にしっかりと耳を傾けて改修に臨む必要があります。
学習定着を促す設計
知識を配信して終わりにせず、「思い出す」「繰り返す」「使う」機会を入れると、学びの定着が大きく変わります。
分散学習(spacing)は多くの実験を統合したメタ分析でも扱われており、短期集中よりも間隔を空けた学習が保持に有利になり得ることが整理されています。
また、テスト(想起)は”測るため”だけでなく”学ぶため”にも機能し得ることが示されており、小テストの設計は学習効果を上げる手段になります。

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LXPを前提にした社内研修設計
eラーニングを超えたラーニングエクスペリエンス
冒頭でも触れましたが、社内教育をデジタル化したeラーニングおよびLMSが主流となる未来においては、従業員に対してマーケティング(インターナルマーケティング)の視点を持った人材教育の実施が不可欠です。
このインターナルマーケティングによって、ラーニング・エクスペリエンスの向上を図ることができます。
これは簡単に言うと、企業が社員を「顧客」としてとらえ、ラーニング・エクスペリエンス、すなわち「学習時の体験」を快いものにしていくということです。
ラーニング・エクスペリエンスの向上により、流動的になっている人材のロイヤルティ向上や、確保した人材が現場で実践できるスキルの…ている知見を全社で共有し、組織の資産として還元するなど、これからの企業成長にとって欠かせないさまざまなメリットが期待できます。
情報処理学会(IPSJ)の事例紹介でも、LXPは学習者目線で学習体験を高め、学び合い等を支える機能を備える点が説明されています。一方で「プラットフォームを入れるだけでは学習習慣は確立しない」ため、促進・習慣化の支援が重要だ、という指摘もあり、まさに運用設計が成否を分けます。
受講率・学習効果を高める運用のコツ
運用で重要なのは「受講率」と「実務適用」を別物として扱うことです。受講率が高くても、実務に活かせなければ投資対効果は出ません。
弊社ソフィアの調査でも、研修の課題として「実務に役立たない/役立て方がわからない」が最も多く、理由として「現場ニーズ不一致」「カスタマイズ不足」「実践イメージがわかない」等が挙がっています。運用側は”受講の促進”だけでなく”活かし方の設計”まで踏み込む必要があります。
- 上司・現場を巻き込む:研修後に「現場で何を試すか」を1つ決める
- コミュニティを作る:質問・共有の場(Teams等)を用意する
- 学習ログを活かす:離脱箇所・未受講理由を特定して改善する
- 難易度を分ける:簡単すぎ/難しすぎを同時に起こさない(レベル分け)
eラーニング研修の導入事例
最後に、実際にeラーニング研修を導入して人材育成の改革に成功した事例をご紹介します。
大手建設会社の事例
東京都に本社を置く某大手建設会社では、社内で使用していたMicrosoft 365(旧 Office 365)と親和性の高い「LMS365」をeラーニング研修のプラットフォームとして導入しました(LMS365は、現Learn365のアドインです)。
同社では、階層別研修にeラーニングを用いています。
次期管理職層を対象とした階層別の集合研修で動画コンテンツを利用し、さらに事前と事後に課題を課すという内容です。
元々は「もっと効果的な研修を」という要望からスタートし、現場の業務に即したコンテンツになるよう、社員へのヒアリングを行いました。
その内容を踏まえて生まれた研修が、「同社が次世代のリーダーとなる社員に求める経営戦略などの知識を伝えるとともに、自社の現状と将来について考え、今後の事業に向けた提言をプレゼンテーションする」というものです。
ユニークな点は、初回の集合研修から最終プレゼンテーション発表までの期間を半年間と長く据えたところでしょう。
その間にモチベーションや緊張感を持続させられるよう、人材開発社内ポータルサイト(SharePoint Online)上で研修限定のコミュニティを設け、チャットでディスカッションの場を作ったり、課題提出を随時行わせるなどの工夫をこらしています。社外の講師も、チャット上で情報提供やサジェスションを実施しています。
オンラインでディスカッションできる場を作ることや、課題を取りまとめて管理しフィードバックすることは、従来の手法では難しかったことですが、ツールの活用によって実現させました。また、チャット上でのアクセスログなどの解析により、受講者のモチベーション状況を把握できます。
その結果、eラーニングやデジタル上のワーク、そして集合研修までの流れをシームレスに受講者に提供し、抵抗感なく受け入れてもらうことができ、「後輩にもぜひ受けてほしい」という満足度の高い内容となりました。
eラーニング社内研修の費用の考え方
上位記事では「eラーニングと集合研修を費用で比較」という章が置かれることが多く、費用感は検索者の重要な論点です。
比較のコツは、次の”3つの箱”に分解することです。
- 初期費:LMS初期設定、ID連携、テンプレ設計、運用設計、コンテンツ初期制作
- 運用費:ID費/利用料、サポート、コンテンツ更新、問い合わせ対応
- 削減効果:会場費、移動/宿泊、講師手配、印刷、調整工数
さらに、制度活用の選択肢として、厚生労働省は「人材開発支援助成金」を、職務に関連した知識・技能の習得等を計画に沿って実施した場合に訓練経費や賃金の一部などを助成する制度として案内しています(制度は改正・更新があるため最新要件の確認が必要です)。
まとめ
eラーニングのメリットと、従来の集合研修のメリットをうまく組み合わせた研修によって、より長期的に効果が持続し、実践的に受講できるコンテンツの開発が可能となります。
自社だけではそういったコンテンツの企画が難しい部分もありますので、専門家に相談するという手も有用でしょう。
社内外のリソースを最大限に活用して、御社でも有益な研修を実現させてください。












