eラーニングを利用した社内研修を実施する際のポイントと事例をご紹介

#Eラーニング#ラーニングデザイン#働き方#研修・ワークショップ

29.Jul.2020

インターネットの普及やICT技術とデジタルデバイスの性能が劇的に向上したことに伴って、学習コンテンツをデジタル化したオンラインのeラーニングが社内研修に活用されるようになりました。
オフラインの社内研修はディスカッションやロールプレイングを交えた体験型研修が強みでしたが、今ではeラーニングがこれらの体験型学習を機能として実現できるようになり、さらに効果的な研修が実施できるようになっています。
また、eラーニングの普及とともに、それらを管理するLMS(ラーニング・マネジメント・システム)というツールも進化し、働き方改革と連動して人材育成のあり方が大きく変容している時代であると言えます。

昨今の人材開発において、「ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)」という概念がトレンドになっていることをご存知でしょうか。
1990年代にアメリカでeラーニングが生まれたと同時に、eラーニングを管理するLMSが生まれましたが、最近ではこのLMSから、「LXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)」が注目されるようになっています。

ラーニング・エクスペリエンスもしくはラーナー・エクスペリエンス、すなわち「学習者体験」は、従業員の「学習」を取り巻くあらゆる体験を指します。

もうお分かりの方もいると思いますが、マーケティングで用いられるカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の概念を、研修や学習に利活用した考え方です。

学習をする際の従業員の心理状態や社内での学習環境、学習前や学習時、学習後に何を考えどう感じたか、受講者同士の関係性はどのようなものであったか、これらの体験をすべてを網羅したプラットフォームがLXPです。

具体的には、システムのインターフェースや操作性、学習時間の確保、学習実績や成績の記録、マルチデバイス化による柔軟な学習環境の整備、情報の鮮度、実務との関連性など、学習にまつわるさまざまなデータを統合し、管理者がコントロールしやすいように一元化したものです。

社内研修をeラーニングで実施する場合は、LXPの観点も持ちながら導入を図る必要があります。
本記事では、eラーニングを利用して社内研修を実施する際のポイントと、実際にeラーニング研修を導入した企業の事例について解説します。

eラーニングを利用した社内研修とは?

社内研修にeラーニングを利用することは、企業側にとっても、研修を受講する社員にとっても多くの利点があります。

eラーニングを利用した社内研修 企業側のメリット

研修を実施する企業側のメリットを4つ挙げます。

コストの大幅な削減

研修には会場となる場所を確保する必要がありますが、自社の会議室で全員を収容しきれないような大型研修の場合、有料の貸し会議室を借りるコストが発生します。
一方、eラーニングを利用した社員研修では受講者が一ヶ所に集まる必要がないため、この会場費がまるまる削減されるわけです。

また、集合研修で登壇する講師の招聘に関してもコストを考慮しなければなりません(講師への報酬や交通費など)。
近年のeラーニングでは動画形式のコンテンツを制作ができるため、事前に動画を撮影してコンテンツを作っておけば、講師を毎回手配する必要がなくなります。

そして集合研修においては、手元で閲覧する紙資料を配布する場合が多いですが、eラーニングではこの資料もデジタル化できるため、印刷しておく必要がありません。
コスト削減はもちろんですが、地球環境保護のために紙の使用の削減が企業にも要請されている昨今、重要な観点のひとつです。

自発的学習を促進できる

eラーニングを利用した研修は、受講者の都合がつく時に任意で開始することができます。
あらかじめまとまった時間を確保する必要がないため、従業員の自発性を刺激しやすくなるでしょう。

また、eラーニングにおける最近のトレンドとして「マイクロラーニング」があります。5分未満の短い学習コンテンツを豊富に用意することで、従業員に「学習の選択肢」が生まれます。
コンテンツを組み合わせて学習コースを設け、自由に受講できるようアナウンスしておくことで、従業員が自分の受講したいコンテンツを柔軟に受けられるというのも、自発的学習を促進する大きな要因になるはずです。

受講者に対して一斉提供できる

eラーニングによる研修は場所を選ばず、受講者がどこにいてもインターネットに接続できる環境さえあれば一斉受講が可能となります。
簡単に言えば「全社員がオフィスの自席で一斉に受講できる」、あるいは昨今の働き方に合わせると「全社員が自宅やサテライトオフィスで就業していても一斉に受講できる」ということです。
また、配信する内容は、同一にすることも個別にすることも可能なため、受講者のレベルに合わせてコンテンツを提供できるようにもなります。

社員の早期即戦力化

本来、社員研修は「現場で生かせる知識や技術を修得させること」が目的のはずです。
そのためには、受動的なコンテンツよりも、社員が能動的に学習へ参加する実践型・体験型の学習コンテンツの方が高い効果を生みます。

eラーニングを利用すれば、よりインタラクティブな研修が可能となります。
動画コンテンツとあわせて、受講者同士のコミュニケーションを図りながらロールプレイングやゲームのような研修もできますし、最近ではAI(人工知能)が自動的にフィードバックやアドバイスをする機能も開発されています。

実践型・体験型の研修は、いわゆる「OJT」に近いものだと考えていただければわかりやすいでしょう。
現場ですぐに生かせるスキルを身に付けることで、社員の戦力化を早めることにつながります。
新入社員が早期に活躍できるようにするためにも、これらの研修が力を発揮することでしょう。

eラーニングを利用した社内研修 受講者側のメリット

続いて受講者側のメリットです。
こちらも大きく4つに分けられます。

時間や場所を選ばずに研修を受講できる

企業側のメリットに挙げましたが、これは受講者側のメリットでもあります。
例えば、客先への訪問前の待ち時間、在宅勤務中の待機時間、接客業において顧客が来店していない時間帯、業務終了時刻より前倒しで作業が終わった場合など、受講者の時間的余裕を活用して学習を進められるのは大きなメリットです。

自身でスケジュールを立てられる

「こんなに忙しい時期に研修をするの?」「ちょっと今は余裕がないのに…」
受講する側になったことがある担当者は、一度はこうした経験をしたのではないでしょうか。
トップダウンで割り当てられた研修は日常業務の妨げと感じられやすく、社員の不平不満を招きがちなものでした。
一方、eラーニング型の研修であれば、受講する時間帯を受講者が自分自身で決められるため、自分のタスクを最優先にスケジュールを組み立てられます。

また、最近のeラーニング管理プラットフォームにはスマートフォンのアプリにも対応しているサービスがあり、未受講の際にプッシュ通知を送ることができるため、スケジュールの設定漏れがあっても安心です。

進捗状況やテスト結果などのフィードバックが即座に確認できる

先ほど紹介したLMS365などのeラーニング管理プラットフォームをあわせて利用すれば、受講者が受講した研修の進捗状況や、受講後に受けた理解度テストの結果をすぐに確認できるようになります(これまで担当者が手作業で行っていた採点や、採点後の結果送信がプラットフォームによって自動的に行われるため)。
フィードバックまでの時間を短縮することで、受講者の意欲を保ちつつネクストアクションへとつなげられます。

スキルアップ

「マイクロラーニング」という概念について紹介しましたが、eラーニング化に伴って豊富な学習コンテンツを受講者に提供することで、受講者が能動的に学習に取り組むようになり、スキルアップを促進しやすくなります。

新卒であればビジネスマナーでも良いでしょうし、ISO研修やロジカルシンキング研修、交渉術や自社内だけのノウハウを凝縮したコンテンツも有用です。
技術書や専門書を個人で購入して学習するよりも個人の負担が小さく、社員にはとても重宝がられることでしょう。

さらに、こうした学習機会を用意している企業に対し、従業員のロイヤルティが高まるという副次的効果も大いに期待できます。

eラーニングを利用した社内研修実施のポイント

社内研修にeラーニングを導入すると良いことばかりのように見えるかもしれませんが、実施の際にはいくつか注意点もあります。
これらを疎かにするとせっかくのメリットが失われることにもなりかねないので、導入前には必ず検討してください。

受講期限や受講目的を明確化する

「いつでも受けられる」ということは、逆に言えば「受けられる時間がなければ受けない」という特性も持っていることに着目してください。
日々の業務に追われていると、多少の時間が空いたとしても学習に割こうという意欲が生まれにくいものです。

また、「豊富なコンテンツが用意されている」ということは、「自分ごととしてとらえてもらいにくい」という側面もあります。
「忙しい最中、用もないのに図書館に放り込まれる」シーンを想像してみてください。おそらく仕事のことが頭から離れず、まわりに広がるたくさんの本に手を付けることはないでしょう。それは、eラーニングであっても同じことです。

受講者に対して「あなたはなぜこの研修を(業務の合間をぬって)受講する必要があるのか」という目的を理解してもらい、その上で受講期限を明確に示す必要があります。
何度か受講して、その有効性や簡便さor手軽さに受講者自身が気付けば、そこからは自発的に受講してもらえるでしょう。

コンテンツ制作の負担を減らす

eラーニングにおいて重要なのは、受講者と企業、双方にとっての負担をなくすor軽減することです。
研修内容をマイクロラーニング化することで受講者側の受講時の負担が減るように、コンテンツ製作者にとっても、制作の負担が減るように工夫しなければなりません。
なお、動画コンテンツの場合は伝えられる情報量が多く、これまでテキストで伝えていた内容をものの数分で伝えられるという特性も考慮する必要があります。
コンテンツ制作の前に、受講者にとって本当に必要な学習内容を絞り込み、どういった形でコンテンツ化するかという事前作業が重要になってきます。

コンテンツを視聴・共有しやすくする

昨今のeラーニングのメリットである「マルチデバイス化」を十分に活かしましょう。
スマートフォンやタブレットを社員に貸与している企業であれば、モバイル端末でも受講しやすいコンテンツへと改良する必要があります。
例えばLMS365の場合は、Microsoft SharePointで制作した社内ポータルや社内SNSのYammerとも連携できるため、研修内容についてディスカッションする場を設けたり、感想を共有したり、受講者からフィードバックを送信したりする際にも有用です。

受講状況を管理

eラーニングで研修を行う際は、各受講者の進捗状況や各コンテンツの受講状況をLMSで把握しておく必要があります。
進捗状況が芳しくないコンテンツや、受講される頻度が少ないコンテンツには、何かしらの原因があるはずです。
社員から意見を吸い上げる場を設け、本当に有用なコンテンツだけに絞って最適化を図っていきましょう。

現場の社員と協力する

コンテンツ制作の際には、現場における社員の即戦力化に必要な知識・スキルを網羅しておくことが不可欠です。
「学習コンテンツやプラットフォームは便利だと思うが、研修内容が現場での業務に役立たない」
社員からこういったフィードバックを受けたときは、eラーニング研修が効果的でない可能性があります。企業として伝えたいことと、現場とのそれが解離している状況にあるかもしれないので、現場社員の声にしっかりと耳を傾けて改修に臨む必要があります。

eラーニングを超えたラーニングエクスペリエンス

冒頭でも触れましたが、社内教育をデジタル化したeラーニングおよびLMSが主流となる未来においては、従業員に対してマーケティング(インターナルマーケティング)の視点を持った人材教育の実施が不可欠です。
このインターナルマーケティングによって、ラーニング・エクスペリエンスの向上を図ることができます。

これは簡単に言うと、企業が社員を「顧客」としてとらえ、ラーニング・エクスペリエンス、すなわち「学習時の体験」を快いものにしていくということです。
ラーニング・エクスペリエンスの向上により、流動的になっている人材のロイヤルティ向上や、確保した人材が現場で実践できるスキルの修得、そして彼らが持っている知見を全社で共有し、組織の資産として還元するなど、これからの企業成長にとって欠かせないさまざまなメリットが期待できます。

eラーニング研修の導入事例

最後に、実際にeラーニング研修を導入して人材育成の改革に成功した事例を紹介します。

大手建設会社の事例

東京都に本社を置く某大手建設会社では、社内で使用していたMicrosoft 365(旧 Office 365)と親和性の高い「LMS 365」をeラーニング研修のプラットフォームとして導入しました(LMS 365は、SharePoint 365のアドインです)。

同社では、階層別研修にeラーニングを用いています。
次期管理職層を対象とした階層別の集合研修で動画コンテンツを利用し、さらに事前と事後に課題を課すという内容です。

元々は「もっと効果的な研修を」という要望からスタートし、現場の業務に即したコンテンツになるよう、社員へのヒアリングを行いました。
その内容を踏まえて生まれた研修が、「同社が次世代のリーダーとなる社員に求める経営戦略などの知識を伝えるとともに、自社の現状と将来について考え、今後の事業に向けた提言をプレゼンテーションする」というものです。

ユニークな点は、初回の集合研修から最終プレゼンテーション発表までの期間を半年間と長く据えたところでしょう。
その間にモチベーションや緊張感を持続させられるよう、人材開発社内ポータルサイト(SharePoint Online)上で研修限定のコミュニティを設け、チャットでディスカッションの場を作ったり、課題提出を随時行わせるなどの工夫をこらしています。社外の講師も、チャット上で情報提供やサゼッションを実施しています。

オンラインでディスカッションできる場を作ることや、課題を取りまとめて管理しフィードバックすることは、従来の手法では難しかったことですが、ツールの活用によって実現させました。また、チャット上でのアクセスログなどの解析により、受講者のモチベーション状況を把握できます。

その結果、eラーニングやデジタル上のワーク、そして集合研修までの流れをシームレスに受講者に提供し、抵抗感なく受け入れてもらうことができ、「後輩にもぜひ受けてほしい」という満足度の高い内容となりました。

まとめ

eラーニングのメリットと、従来の集合研修のメリットをうまく組み合わせた研修によって、より長期的に効果が持続し、実践的に受講できるコンテンツの開発が可能となります。
自社だけではそういったコンテンツの企画が難しい部分もありますので、専門家に相談するという手も有用でしょう。
社内外のリソースを最大限に活用して、御社でも有益な研修を実現させてください。

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