
2023.03.13
職場ってなに?「職場とは何か?」構成要素とこれからの展望を解説!

目次
「職場」という言葉は日常的に使われる言葉です。細かい定義などは諸説ありますが、良い職場を作るために必要な要素はコミュニケーションにあります。この記事では、職場の場所などの物理的な話ではなく、職場の在り方やコミュニケーションについて解説します。テレワークが普及する中で、時代と共に変化していく職場の在り方は、今後どのような形態になるのでしょうか。これからの職場に必要なコミュニケーションスキルも紹介しますので、良い職場を目指すための参考にしてみてください。
職場の意味と定義
多くの人が多くの時間を費やす「職場」は、業務や執務を遂行する場所、もしくは設備環境といった物理的空間としての意味合いもあれば、従業員同士の人間関係の構築や発揮の場としての社会的空間の意味合いで話されることもあります。言い換えると、業務遂行という機能的側面と、人間関係という社会的人間的側面に関連する空間であると言えるでしょう。ではその職場とは一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、職場の意味と定義を解説します。
そもそも職場とは?
数多くある組織と呼ばれる集団の中でも、常に顔を合わせて直接的なコミュニケーションを取れる少人数の集団が職場です。現在のような、物理的資本より人的資本が生産性やイノベーションのカギを握る産業構造の場合において、組織の人的資本のパフォーマンスを向上させるには、職場における機能や合理的側面と情愛や精神的側面の均衡が重要です。均衡を調整するのはコミュケーションであり、職場で必要なコミュケーションスキルを身に着付けることが良い職場の形成につながります。
職場をひも解くゲマインシャフトとゲゼルシャフト―2つの概念
ドイツの社会科学者のフェルディナント・テンニースは、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトという2つの概念で、家族や集団、組織もしくは国家も含めて、あらゆる人の集まりを類型化しています。
ゲマインシャフトは、血縁・家族や、村落などの地域的な集まり、企業などにおける社内サークル、創業期のベンチャーなど、情愛や精神的意思でつながる集団や組織とされています。
一方ゲゼルシャフトは、国家機関、政党機関、都市などの自治体、大企業などといった、目的機能や合理的意思でつながる集団や組織だと位置付けられています。平たく言えば、ゲマインシャフトは構成員の精神的な意思で集まる集団であり、一方ゲゼルシャフトは、合理的意思で集まる集団ということになります。
分類基準は若干異なりますが、米国の社会学者のチャールズ・ホートン・クーリーは、「第1次集団」と「第2次集団」、ロバート・M. マッキーバーは、「コミュニティ」と「アソシエーション」といったように、同じような意味合いで類型化をしています。それぞれ提唱された時代背景は異なるので、それらを踏まえた精査・解釈の必要はあるものの、集団を精神的情愛的側面と合理的功利的側面に分けることは可能です。
では、職場とは、ゲマインシャフト(精神的情愛的)とゲゼルシャフト(合理的功利的)のどちらに当たるのでしょうか。ゲゼルシャフトの典型であるとされる大企業や機能分化された組織の一部である職場も、当然ながらゲゼルシャフト(合理的功利的)の性格を強く持つはずです。しかし一方で、一般的に職場は比較的小人数の従業員で構成され、お互いに顔を併合わせながら仕事をする環境にあることが多く、従業員間のコミュニケーション頻度も高くなることから、業務上の権限、役割、責任を超えた濃密な人間関係が成り立ちうると考えられます。つまり、職場とは、機能や合理的側面と情愛や精神的側面が両方併存している場であると考えられます。そうした複合的な側面を持つが故に、時には実態の相克から「面従腹背」という状態を産み出すこともあります。また、困難な問題に直面したとき、必ずしも業務上の役割や責任を持たない職場の仲間からの助けのおかげで、何とか対処できることも少なくありません。
上記のようなことから、ゲゼルシャフト的側面とゲマインシャフト的側面が併存する均衡が、職場の中には存在すると言えます。また、その均衡が崩れることで、職場独特の問題が発生するわけです。この均衡とうまく付き合うためには、大まかに言えば、経営陣や会社と従業員とのコミュニケーションを通じて精神的な関係性や深めることが必要です。例えば、企業のパーパス、理念、ミッション、ビジョンや戦略計画を頭で理解するだけでなく、共感を生んで自分の事ごととして捉えられるようにすることです。ただ、それだけでは解決できない問題が「職場」にはあります。
職場におけるコミュニケーションと組織と職場の違い
「組織」と「従業員」とのコミュニケーションと「職場」内での「従業員間」のコミュニケーションは、いくつかの面で異なります。その最たる違いはコミュニケーションのスタイルです。
従業員数が多い大企業では、多くの従業員に多くの情報を極力リアルタイムで伝えることが優先されることから、マス的な(一度に多くの情報を一方的に伝える)コミュニケーションがどうしても多くなります。抽象度が高く、演出の要素が多くなりがちなこの手のコミュニケーションでは、経営陣と社員の間に直接的な関係性を構築することは困難であり、一社員が組織全体状況を広く深く理解することも困難です。
また、「組織」は非人格的な対象として、距離を置くことが可能です。つまりは、社員にとって会社は会社、個人は個人として整理することができます。
一方、「職場」内での「従業員間」コミュニケーションは、直接顔を合わせて会話ができる環境を考えると、頻度も多く直接的で従業員同士の人となりが色濃く反映されます。つまり、職場は形態自体が、ゲマインシャフト(精神的情愛的)に近く、従業員同士は否応なく精神的な繋がりが求められるようになります。職場と個人の距離を空けることは、組織のように整理できない要素が多く含んでおり、職場の独特な問題の要因と言えます。
ゲゼルシャフトとゲマインシャフトの双方の側面を持つ職場でのコミュケーションは、自職場の一人ひとりの属人的な価値観や考え方に影響を大きく受けます。その両面を均衡させるためには、従業員のコミュケーションスキルに頼る部分が非常に大きく、特に職場のリーダー(最小単位の長)のコミュケーションに強く影響されます。
現在のような、物理的資本より人的資本が生産性やイノベーションのカギを握る産業構造の場合においては、組織の人的資本のパフォーマンスを向上するには、職場における機能能や合理的側面と情愛や精神的側面の均衡が肝であり、均衡を調整するのはコミュケーションであると言えます。
職場は組織の中にあるさまざまな要素が相互作用する対面小集団
現代の職場では、以下のようなものが求められます。
- テレワーク
- 働き方改革
- 従業員の多様性
- 人財の流動性
- 職場間連携
- 事業環境の不確実性
- デジタルトランスフォーメーション
上記のように、現在の職場の状況において、求められるミッションや達成すべきタスクは複雑かつ多様で多量です。この状況の中で、職場の機能的合理的側面と情愛的精神的側面のバランスを保つことは、極めて重要でありながらもなかなか難しいものです。日常業務の中で試行しながらコミュケーションスキルを向上させようと努めているものの、実際は、従業員のエンゲージメントやモチベーションを上げることもままならず、問題は山積し、それらの要因の複雑さゆえに、自分自身の動機すら失いかねないといった現状ではないでしょうか。ここからは「具体的に均衡を取る為のコミュケーションとはいったい何なのか?」を解説していきます。
職場における見えるものと見えないもの
組織においては、業務を形成するために必要なプロセスを2つに分けて考えることができます。
1つ目は、業務プロセスやスケジュールの作成、誰がどの業務を担当するのかという役割分担など、目に見える要素です。2つ目は、モチベーションやメンバー間のコミュニケーション、職場の雰囲気や人と人との関係性など、目に見えない要素です。
目に見える要素は把握しやすいので、意識的にケアしていると思います。しかし、目に見えない要素については、どうしても後手に回りがちです。
こうした目に見えない部分を支えているのがコミュニケーションです。上記でも解説したように、職場における問題やその要因は、コミュニケーションによるものが大半です。特に現代の多くの職場では、業務が複雑化し、外部も含めたさまざまなメンバーが関わるようになっていることから、人間関係を新たに構築しなければいけない場面が増えています。そういった背景から、職場内のコミュニケーションの重要性は従来以上に高くなっていると言えるでしょう。
職場の効果を発揮するためには
職場の効果を高めるためには、どうしたらいいのでしょうか。
そもそもなぜ人が集まるのかといえば、個人で取り組むよりも効率よく成果を上げられるからです。この効果を高めるためには、先に紹介した、職場の「機能的合理的側面」と「情愛的精神的側面」の均衡をとることが大切です。
目に見える要素へのアプローチとしては、職場の目標達成に必要な業務を割り出して、従業員の能力やモチベーションに合わせて適切なタスクを割り振ることが大切です。
一方、目に見えない要素については、従業員同士の関わり合いをどう作るかがポイントになります。一人ひとりが日々の仕事の中で相手を観察しながら気配りを示すためには、相手に関心をもってその人物の背景を理解する必要があります。相互理解と日々の仕事の実践の繰り返しの中で、共感的な理解と尊重の気持ちが生まれてきます。相手に寄り添い、相手から寄り添われながら、自分に自信を持ち、必要なときに遠慮なく頼れるような人間関係の構築が職場の成果に与える影響の大きさは、想像に難くありません。
ただし、そうした変化は自然発生的には生まれません。大事になるのは、リーダーなどの職場内での影響力のある人物の存在です。リーダーが上記の均衡の大切さを理解し、過度に効率化やスピード重視に偏らず、回り道だと思ってもメンバー間の関係性を構築する機会やプロセスを意識して用意できるかは、継続的に成果を生み出す職場になれるかどうかの分岐点と言えます。リーダーが異動したり、変更になったりすることで、チームががらりと生まれ変わるということはよくあります。達成すべき目標のために職場に最適なリーダーを配置することで、業績の向上につながるケースは多くあります。影響力のある役職の人物をどう立てるのか注意しながら、職場をデザインしていきましょう。
オンラインの職場とオフラインの職場との違い
昨今の在宅勤務の増加に伴ってオンラインの職場が増えています。オンラインの職場では、対面で仕事をするオフラインの職場に比べると、メンバーが得られる情報量が少なくなります。また、コミュニケーションがどうしても業務に直結するものに限られがちなので、お互いの背景を理解するために必要な情報が得られにくくなります。
オンラインでは文字によるコミュニケーションが多くなるので、情報の伝達に齟齬が生まれやすくなるのも大きな問題です。特に複雑な問題に取り組む場合は、高いコミュニケーションスキルが求められ、情報共有の方法を工夫する必要があります。
ただし、オンラインの職場ならではのメリットもあります。それは、オンラインなら物理的な距離の壁を越えられることです。チームの垣根を超えてより多くの人とコミュニケーションをとれるようになります。時間の面でも、チャットルームの活用などによって、同時にコミュニケーションをとらなくても、それぞれが可能な時間に業務に関わりながら進めていくことも可能です。
一方で、ふだんいつも関わっていない人との接点が増えることで、コミュニケーションの難易度も上がります。やはり高度なコミュニケーションを取りたい場合や、信頼関係を構築したい場合などは、オフラインのコミュニケーションも組み合わせるなど、双方の良さを取り入れる必要があります。
このようにオンラインの職場とオフラインの職場には、大きな差があります。「やっぱり雑談が大事だよね」ということで、オンラインで雑談の場を設けているという事例も多くなっています。職場ではメンバー間の関係性を作り上げることを求められているからこそ、このようなコミュニケーションを取る必要があるとも言えるでしょう。
しかし、現在の技術では、オンラインでオフラインの情報量を超えることは難しいということも知っておかなければなりません。オフラインの情報量に近づくためには、オンライン化されて少なくなった情報量を、一人ひとりが想像、もしくは創造していかなければなりません。テレワークを主体としながら、目に見えない要素にいかに触れられるか、そのためにはオフラインの場も適切に組み合わせながら、職場の新しい在り方を形成していくことが今後の大きなテーマになります。
見えない要素のカギを握るのはリーダー
職場の見えない要素のカギを握るのはリーダーです。リーダーの行動が、職場の価値観や文化を作っていくことになります。まずはリーダーを正しく選出しましょう。そして選ばれたリーダーは、組織内のコミュニケーションの場を積極的に作っていきましょう。仕組みを作るだけでなく、自分が理想的な行動をとることも大切です。リーダーの行動は、組織内に大きく影響します。だからこそ、メンバーに自分の行動を見せることが大切です。
目に見えない要素は、非常にケアが難しいものです。「目に見えないものをしっかり管理できるかどうかが、職場の効果を大きく左右する」ということを、リーダーはしっかり意識し日々の業務にあたる必要があります。
これからの職場に必要なコミュニケーションスキル
コロナ禍を経て働き方が大きく変わった昨今、職場において求められるコミュニケーションの形にも大きな変化が生じています。企業は、自社の変化にフィットするような新しいコミュニケーションのあり方を再考する必要があるでしょう。変化を積極的に受け入れていく姿勢が大切です。
また、コロナだけでなく、AI等の技術進化による変化の波も大きくなってきています。これからの職場では、人間がこれまで行っていた業務がどんどんIT化されていき、人間はより創造的な業務を担うようになるでしょう。従来までのコミュニケーションのあり方とは違う、複雑でクリエイティブな会話が必要になるはずです。
以下では、これからの職場のコミュニケーションのために、重要となる手法を紹介します。
対話
対話とは、お互いの立場や意見の違いを理解し、そのズレを擦り合わせることを目的に行うものです。対話の際には、普段の生活では自分でもあまり意識することのないものを言語化し、感情的な部分を吐露するなど、相手の言葉と同じ地平に並べ、客観的に見てみます。どちらが正しい、正しくないといった理屈では片づけられない角が立つような問題を取り扱うときや、あちらを立てればこちらが立たないというような利害関係の袋小路にはまってしまった際に、共感や感情の力を活用した対話は効果的なコミュニケーション手法です。
対話についてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
プロジェクトファシリテーション
プロジェクトファシリテーションとは、プロジェクトメンバーの支援や社内外の関係者との調整・折衝を行うことを指します。プロジェクトのゴールに対するプロジェクトメンバーの納得感を醸成し、プロジェクト内外の状況の変化に柔軟に対応しながら、メンバーのモチベーションを高め、安心して活動ができるような場づくりを行います。組織や人、プロジェクトそのものが複雑になっている昨今、その重要性はますます高まっています。
ファシリテーションについてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
ディスカッション
ディスカッションとは、対立せずに意見を出し合うことで、納得できる結論を見いだす作業です。特定の課題を解決するために、合意形成(コンセンサス)を取りたいときにもディスカッションが行われます。ただし、ディスカッションは、必ずしも何か意思決定をしたいときだけに行われるものではありません。コミュニケーションの一環としてディスカッションが行われることもあります。
ディスカッションについてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
ディベート
ディベートとは、「自分たちが正しい」と相手に認めさせることが目的の討論方法です。そのため、ディベートにおいては自分たちの正しさを証明できるデータを集め、論理的に説明しなければなりません。公式には第三者が客観的に判定を下しますが、非公式の場合は最終的に双方が合意する、あるいは一方があきらめることでディベートは終了します。
ディベートについてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、ストーリーを語ることで相手により深く印象付けて理解を促す手法です。ビジネスの世界ではプレゼンテーションや提案時など、語り手がより深く聞き手に内容を伝える必要がある重要なシーンで、度々ストーリーテリングが用いられています。
ストーリーテリングについてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
レトリック
レトリックとは、説得やスピーチという文脈で用いられる場合が多く、コミュニケーションの場において情報を発信する側が、受信側を説得したり、納得させたりするための手法です。
ビジネスにおいてレトリックを活かせる場面としては、新規事業開発や新商品開発の担当者が上位者へプレゼンテーションを行う、上司が部下に対して業務への動機付けを行う、営業担当者が顧客に対して提案を行う、などのシーンが挙げられます。
レトリックについてのより詳しい解説は、下記をご確認ください。
まとめ
職場とは、所属する人たちがコミュニケーションを取り合い、関係性をつくることで形成されていくものです。また、組織開発において、メンバーのモチベーションの維持などの目に見えない要素の鍵を握っているのはリーダーです。リーダーによる適切な働きかけにより、コミュニケーションを活発化させ、良い職場を作っていきましょう。さらに、職場でのコミュニケーションを活発にするためにはそういった機会を提供できる仕組みをつくることも効果的です。オンラインとオフラインの職場の違いにも留意しつつ、さまざまな施策を打つことで職場での社員の懸念を払拭していきましょう。