データ利活用で自社ビジネスを促進させよう!なぜ、いまデータが必要なのか

日本企業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が進み、ビッグデータをビジネスの分野で利活用しようとする動きが多くの企業でみられるようになってきました。本記事ではなぜデータが必要なのか、実際にデータを利活用することでどんなメリットがあるのか、どういうステップでデータを扱うべきかを、実際の企業事例に基づいて解説します。

なぜ今データの利活用が注目されているのか

2000年代からインターネットやIoT、ロボットやAI、スマートフォンといったテクノロジーが急速に発達し、今もなお進化し続けています。このような状況で、「ビッグデータ」を中心とするデータ群にフォーカスが当てられるようになりました。ビッグデータとは、膨大で複雑な、加工の困難なデータの集合体です。これまで多くの企業ではビッグデータの分析はおろか、莫大なデータを収集することすら難しかったのですが、クラウドや分析手法の進化によってビッグデータの収集・蓄積や抽出・加工・分析の技術的なハードルが下がりました。こうした背景から、ビジネスにおけるデータの利用だけでなく活用までを含めた「利活用」について、さまざまな場面で言及されるようになったわけです。また、ビジネス分野においてデータの利活用が注目されるようになったことには技術の進歩以外に大きく2つの理由があります。

将来の問題発生を予見し、予測・予防を行うため

データの活用方法は2種類あります。1つ目は、主張を証明するための根拠としてデータを用いる方法です。何かを主張する際の具体的かつ客観的な裏付けとしてデータを用います。2つ目は、新たなひらめきを得るためのヒントとしてデータを用いる方法です。事実を並べて関係性を探り、そこからアイディアや課題を発見できます。
例えば、何か問題が起きた際のデータを分析することによって、さまざまな状況下において将来的にどんな問題が起きるかどうかを予測することが可能です。問題が起きる際の条件を問題が発生する前からあらかじめ認識することによって、予測や対策ができるようになります。

個人ごとに情報をカスタマイズしてサービスの向上を図るため

例えばWebブラウザを使っていて、ある商品のWebサイトを閲覧したのち、その商品もしくは関連商品の広告画像が他のサイトに表示されるようになったという経験はないでしょうか。これは、個人の閲覧履歴データをもとに広告がパーソナライズされたためです。また、ECサイトで商品を検索すると他のおすすめ商品が出てくるのも、閲覧者に合わせて情報がカスタマイズされていることによります。これは、データを活用することで個人ごとに情報をカスタマイズしてサービスの向上を図った事例です。
企業内でいえば、LMP(Learning Management Platform; 学習管理システム)の導入により、社員のスキルや経験にあわせてeラーニングのコンテンツをサジェストできるようにもなります。社員に対して教育サービスの向上を図った例といえるでしょう。

社内で蓄積されるデータが注目されている

LMPの例で示したとおり、社内のデータを利活用することで人材育成に役立てられるほか、業務改善や人件費を削減することにもつながります。そのため、マーケティングなど市場を対象とした分野だけでなく、企業の組織内においてもデータの利活用が注目されるようになってきました。
代表的な活用事例として、タレントマネジメントシステムは、社員のスキルや経験をデータとして可視化し、人材管理や育成に役立てることができます。タレントマネジメントシステムによって社員のパフォーマンスがデータ化できるようになると、人材の配置や育成の計画がより精緻に立てられるようになることや、成長の妨げになっていること、コストをかけるべきところがどこなのかが、感覚ではなく客観的に判断できるようになります。

社内のデータ利活用のステップ

実際にデータを利活用するためにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。これまであまりデータを活用してこなかった企業にとってはハードルが高いように思えるかもしれません。ここでは、データ利活用のステップを5段階に分けて解説します。

目的設定・計画

何のためにデータを収集・分析するのか、必ず目的を設定しましょう。例えば「売上を増加させる」ことを最終的な目標とするならば、「どのような条件のもとにどのようなアクションを取ることが売上向上に最大の効果をもたらすのか」を判断することがデータ取得の目的となるでしょう。この目的を達成するためにはまず、売上を構成する要素、または売上に影響を与える要素を、あらかじめ漏れなく洗い出しておく必要があります。店舗の売上は顧客数*顧客単価で成り立ちます。顧客数はそれぞれ時期や時間帯、広告宣伝の活動や店舗の外装・看板に影響を受けますし、顧客単価も同様に時期や時間帯はもちろん、接客対応の質や商品の陳列によって変わってくるでしょう。今までPOSで行ってきたそうした分析に加え、店舗全体やエリア、本社側のオペレーションデータを含めることで、より詳細な要因分析が可能になります。また、目的をさらに詳細にブレイクダウンする中で、スタッフが接した特徴的な顧客のニーズや、長期的な接遇スキルの向上、スタッフのエンゲージメント状況、エリア・店舗間の連携状況、もしくはより偶然性の高い発見のためにはスタッフのあらゆる属性データなども必要となってくるかもしれません。このように、まずデータ利活用の目的を明確にすることで、データ取得・分析の計画を立てることができます。

収集・蓄積

その上で、利活用するデータを実際に集めていきます。データを集める際の入り口としては、POSやCRMなどのほか、社内の基幹システム、社員に関するデータであれば勤怠管理システム、イントラネット、導入していればタレントマネジメントシステムなど人事関連システム等が挙げられます。顧客や社員など人に関するデータを集める際には、年齢や性別などのデモグラフィックなデータ、あるいは嗜好や価値観などのサイコグラフィックな情報をひとつのデータサーバー収集し、蓄積していきます。技術的な側面が大きいので、自社に技術やリソースがない場合は外部のベンダー企業に協力を依頼しましょう。

データの整理・整形

データを収集・蓄積できたら、得られたデータを分析できるように情報を整理していきます。具体的には、人間が分析をしやすいようにデータの形式や表示を整えたり、関連性のあるデータをまとめたりつなげたりすることです。担当者によって差が大きく現れる作業でもあります。整理を間違えるとその後の分析結果も誤ってしまうので要注意です。専門とするデータエンジニア・データアナリストの力を借りるとよいでしょう。

分析・可視化

データを整形できたら、ようやく分析ができるようになります。
データの分析とは、収集された情報をもとに相関関係や因果関係を導き、仮説の立案・検証や、情報群を組み合わせて新しい知見を得たりすることを指します。分析方法はさまざまに体系化されていて、目的によって異なる取るべき手法が存在します。分析した結果、常に目標として追いかける指標や、目標に影響を与える要因などをまとめ、一目で確認できるようビジュアル化したレポート化を行うことも重要です。会議の際に常にそれを確認したり、組織全体に共有したりすることによって、意思決定の根拠となり、またさまざまな気付きや仮説が生まれやすくなります。

ビジネスモデルへの展開

データによって裏付けできた主張や、データが導き出した仮説をもとに、事業やプロジェクト、ビジネスモデルへと展開していくことが最終ステップです。データの利活用はここで終了ではなく、新たなビジネスモデルによって得たデータをさらに収集・蓄積・整形・分析し、改善へとつなげていきます。このサイクルは「データドリブン」、マーケティングにおいては「データドリブンマーケティング」、経営においては「データドリブン経営」と呼ばれます。連続性のあるデータ分析と捉えていただければわかりやすいでしょう。

データを利活用できていない企業は、各部門がデータを蓄積する必要性を感じておらず(あるいは企業自体がそのような文化・風土であるために)分析に耐えうるデータが整理されていません。そういった場合、データ利活用の必要性を社内に理解してもらうための取り組みが優先となります。

また、データ分析を行う上では、「それがどのように従業員の役に立つのか」といった観点からもアナウンスしておくと各部門からの協力が得やすくなります。データはセンシティブなものなので、特に個人に関わるデータの提供には抵抗を感じる社員も存在するでしょう。データ利活用の目的やメリットに加え、データ管理の体制についてもしっかりと伝え、関係部門との関係性を築いた上でデータを受領することが重要です。

データ利活用の改革事例

すでに多くの企業がデータの利活用を進めています。決してIT企業だけではなく、メーカーや食品メーカー、飲食業などさまざまです。ここからは具体的な企業事例を4つ紹介します。

スシロー

回転寿司で有名な株式会社あきんどスシローはシステム化に対して非常に積極的です。現場の勘や経験を蔑ろにせず、逆にそれらの感覚をシステム化しようと試みている点が特徴的です。
回転寿司チェーン「スシロー」は他チェーンと比べるとレーンに流す寿司の量が圧倒的に多く、廃棄となってしまう寿司の量を削減することが大きなビジネス課題となっていたといいます。そのため、まったく手をつけていなかった40億件にものぼる寿司の売上データを活用し、流す商品の種類をコントロールすることで、年間に億単位のコスト削減を行っています。その他、データは売上分析や新商品開発にも使われており、データを利活用した好例といえるでしょう。

富士通

富士通は、農業経営を支援する「FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウドAkisai」というクラウドサービスの提供を2012年に開始しました。農作物の栽培や施設園芸、畜産業務における生産活動や経営を支援するためのアプリケーションを、農業生産者やJA、大手の流通業者や自治体などに提供しています。利活用するデータは作業実績や栽培状況、栽培環境や気象データなどです。これらを活用して温室のコントロールなどにつなげ、サービス利用者のコストの削減を実現しています。

ダイドードリンコ

コーヒー飲料を主力商品とする飲料メーカー、ダイドードリンコでは、データの利活用によって、自動販売機でドリンクを販売する際の商品サンプルの配置を決めています。ここで利用するのは「アイトラッキング・データ」です。これは、人が商品を購入する際に「どこを見るか」をデータ化したもので、これまで飲料業界では常識とされていたZ型の配列(左上から右下に視線が動く配列)を改める結果となりました。実際に自社データを利活用した陳列を行うことで売上も増加しています。

大阪ガス

関西圏のガス会社である大阪ガスでは分析力を強みとしてビジネスに貢献する専門部署である「ビジネスアナリシスセンター」を設置し、データ分析によるソリューションを社内に提案し導入するミッションを持たせることで、業務プロセスの改善につなげています。業務用車両の待機拠点をGPSデータから選定することでユーザーの利便性を上げるなど、実際に大きな効果を上げています。

まとめ

社内にすでにあるデータを利活用することで、企業のビジネスの成長に役立てることができます。しかし、データの利活用の経験のない企業の場合、収集の時点でつまずいてしまう場合があります。ソフィアではデータの利活用の支援も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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