組織変革

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?意味や定義、進め方や人材戦略について解説

近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への取り組みが企業戦略の最重要課題として注目を集めていますが、一方で、DXとは何なのか、その概念は曖昧で何から手を付ければよいか戸惑う企業も少なくありません。実際、企業の約7割がDX推進に失敗しているとの統計もあり、DX成功へのハードルは決して低くないといえるでしょう。

そこで本記事では、大企業の広報部門・経営企画部門の部門長の方々を念頭に、DXの本当の意味と必要性、そして人材と社内コミュニケーション・組織文化に焦点を当て、DX成功のポイントを解説いたします。弊社ソフィアの最新調査結果も交えながら、貴社のDX推進に役立つ実践的な知見をお伝えしてまいります。

DXとは?まず押さえておきたい定義と背景

まずは、デジタルトランスフォーメーションの定義と背景を確認しておきましょう。

デジタルトランスフォーメーションの定義

デジタルトランスフォーメーションとは、最先端のデジタルテクノロジーを使ってビジネスモデルや業務の在り方などを大きく変えることです。2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したことで広まった概念であり、英語のトランス(Trans)の省略形であるXを用いてDXと略されることもあります。

新技術を利用して既存の製品やサービスに付加価値をつける単純な「デジタル化」ではなく、社会の構造を根本から変えることを目指しているので、「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれています。

デジタルトランスフォーメーションのいま

デジタルトランスフォーメーションという言葉自体は、産業界などを中心に少しずつ認知されるようになってきたものの、残念ながら日本ではあまりデジタルトランスフォーメーションが進んでいるとは言えません。既存システムが複雑であるうえ、現場での抵抗感もあり、なかなか実現しないのです。

しかし現実問題として、早急にデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを始めなければいけません。AmazonやUberなどの例が顕著ですが、テクノロジーを利用したサービスが既存の産業に取って代わる「デジタルディスラプション」という現象がすでに進んでいる中、大企業であってもこの先も安定した経営を続けられるかはわからないからです。

経済産業省によると、企業が何の対策もとらなければ2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があります。これは「2025年の崖」と呼ばれていますが、このリミットが迫る中、何らかの対策を打たなければいけません。

参考:経済産業省 「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

DX成功に必要な人材とは?どんな人材がDXを推進するのか

DXを推進する上で「人」の存在は最も重要な要素の一つです。よく「DXはIT部門に任せておけばいい」と思われがちですが、必要なスキルやマインドセットはそれだけでは足りません。DXを全社的に牽引するには、各分野で専門性とリーダーシップを発揮できる「DX人材」の存在が不可欠です。

では、DX人材とは具体的にどのような人材でしょうか?

経済産業省のガイドラインでは、DX人材を次のように定義しています。

  • デジタル技術やデータ活用に精通した人材(DX推進部門に所属)
  • 事業部門において業務に精通しつつデジタルで何ができるかを理解しDXをリードできる人材(各事業部門に存在)

要するに、ITスキルだけでなくビジネス理解と推進力を併せ持った人材が「DX人材」なのです。

残念ながら、こうしたDX人材は今大きく不足しています。情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2020」によれば、多くの大企業でIT人材の量・質双方が不足している状況にあり、年々その不足感が強まっています。特に高度なデジタル人材を必要とする領域で人材獲得競争が激化し、従来にない人材像が求められているのです。

日本企業では「DXを推進したくても、その全体工程を管理する人材やビジネスアイデアを形にする人材を確保できない」という声が多く聞かれます。デジタル技術が日進月歩で進化しているにもかかわらず、それを活用して新たなビジネスモデルを描き、現場に実装できる人材が社内にいない――これではDXが遅々として進まないのも当然でしょう。

したがって、DXを推進するためには何よりDX人材の確保が急務であるといえるでしょう。つまり企業は、DXを牽引できる人材を採用するか、社内で育成するか、いずれにせよ早急に手当てしなくてはなりません。

参考:情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書2020」

DX人材が担う主な役割(ポジション)

DXを推進するにあたり、一口に「DX人材」といっても様々な役割があります。単独のスーパーマンが現れてDXを成し遂げるのではなく、複数の専門人材がチームを組んで協働することでDXが前進します。ここでは代表的なDX人材の職種とその役割を押さえておきましょう。

プロデューサー(DXプロジェクト統括責任者)

DX推進を主導するリーダーです。企業全体のDX戦略を描き、ビジネスの企画・設計から他部署との調整、外部パートナーとの交渉まで指揮します。場合によってはChief Digital Officer(CDO)のような経営層が務め、トップダウンで変革を牽引する重要ポジションです。

プロダクトマネージャー

プロデューサーの描いた戦略に基づき、具体的なDX施策やデジタルプロダクトの企画・開発を推進する役割です。各プロダクトの開発進行管理やマーケティング、関連部門との連携調整を担い、DX施策を現実のビジネスプロセスに落とし込みます。

データエンジニア/データサイエンティスト

膨大なデータを利活用するDXには、データの専門家も欠かせません。社内外のデータを収集・分析し、AIや機械学習など先端技術を駆使してビジネスに有用な知見を導き出します。高度なプログラミングスキルや統計知識が求められるポジションで、DXの技術的中核を担います。

UXデザイナー

デジタル技術を活用した新しいサービスやシステムを、ユーザーが直感的に使える形に設計する専門家です。DXで生まれたアイデアや仕組みを現場で活かすためにはユーザー視点のデザインが不可欠であり、UX(ユーザー体験)デザイナーは「ユーザーにとって使いやすい形で変革を実装する」使命を負います。DXの成果を現場や顧客に届けるための重要な役割といえるでしょう。

エンジニア/プログラマー

DXを技術面で実現するエンジニアリングの担い手です。クラウドやアプリケーション開発、セキュリティなど各分野のITエンジニアがチームに参画し、DXの基盤となるシステムやプロダクトを開発します。ただし専門特化ゆえにビジネス側の視点が不足しがちで、他職種との連携が課題になる場合もあります。そのためエンジニア陣にも「DXとはどんなもので、なぜ自分がチームに参画し、何が果たすべきミッションなのか」をしっかりと伝える必要があります。経営側・現場側との十分な意思疎通があってこそ、技術が効果を発揮できるのです。

以上のような役割を持つ人材が集まり、互いに補完し合ってチームでDXを推進します。当然ながら、これらすべてのDX人材を自社だけで揃えるのは容易ではありません。しかしDXチームから誰一人欠けても全体最適の視点が不足してしまうため、社内人材の育成とともに社外からの登用・協業も視野に入れて人材戦略を立てる必要があります。

DX人材に求められるスキル・マインドセット

DXを成功させるためには、上記のような役割ごとの専門知識・スキルに加えて、共通して求められる資質(マインドセット)があります。いくら高度なIT知識があっても、発想力や推進力が欠けていてはDXは前に進みません。ここではDX人材に求められる主な能力・マインドセットを4つご紹介します。

課題発見能力

現状に安住せず、より良い未来に向けて「何をすべきか」を見極める力です。既存の延長ではなくゼロベースで現状を疑い、隠れた問題を洗い出し課題として定義できる人材はDX推進に不可欠といえるでしょう。

アイディア実行力

優れたアイデアを出せても実行に移せなければ意味がありません。DXには新規性の高い施策が伴うため、粘り強く実行し周囲を巻き込む推進力が求められます。ただ単に指示待ちでなく、自律的に動ける人材かどうか、そして周囲の協力を得て実現まで持っていくリーダーシップが重要です。

戦略的思考

ビジネス全体を見渡し、ゴール(目的)に向けた道筋を描く力です。DXは部分最適ではなく全社的な変革なので、「何のためのDXか(目的)」と「どうやって進めるか(手段)」を明確にし、経営戦略と結び付ける視点が欠かせません。先を見通す洞察力と計画立案力を備えた人材が理想的でしょう。

改善志向

常に現状をより良くしようとする姿勢です。小さなことでも現場の業務を改善していこうという意識を持ち、「もっと良い方法はないか」「より高い価値を提供できないか」とベストを尽くすマインドがDXを加速させます。現状に満足せず貪欲に進化を続ける文化を体現できる人材と言い換えてもよいでしょう。

これらの能力は一朝一夕で身に付くものではありませんが、DX人材を採用・育成する際の重要な評価ポイントとなります。また同時に、組織としてこれらを発揮しやすい環境づくり(失敗を恐れず挑戦できる風土など)も求められます。

DX人材をどう確保するか?採用か社内育成か

必要なDX人材像が見えてきたところで、各企業にとって現実的な課題となるのが「その人材をどう手に入れるか」ではないでしょうか。大きく分けて外部からの採用と社内での育成というアプローチがあります。それぞれメリット・デメリットがありますので考えてみましょう。

外部採用

まず外部採用のメリットは、即戦力となる高度なスキルを持つ人材を迎え入れられる点です。最新のデジタル技術に精通した人材や、他社でDXプロジェクトを成功させた経験者を中途採用できれば、社内にない知見を一気に獲得できます。ただし市場ではDX人材の獲得競争が激しく、人件費も高騰しています。また社風や業界知識に馴染むまで時間がかかるケースもあるでしょう。

社内育成

一方、社内育成のメリットは、自社の業務への深い理解を持つ社員をDX人材に成長させられる点です。既存社員をリスキル(学び直し)してデジタル人材に転身させることで、社内に根付いたDX推進チームを作れます。ただし育成には時間がかかり、研修や教育プログラムへの投資も必要です。

弊社ソフィアの調査では、社内研修に関して「受講しても実務に役立て方がわからない」(25.8%)や「内容がつまらない」(22.4%)と感じる社員が多く、研修内容が現場に直結していないことが課題として挙がりました。DX人材の育成においても、現場のニーズに即した実践的な教育を行わなければ効果が上がらないでしょう。

ハイブリッド戦略も有効

理想的には、即戦力となるプロフェッショナル人材の採用と、将来を担う社内人材の育成をバランス良く進めることです。例えばデータサイエンティストなど専門性の高い職種は外部から招き、既存社員にはDXの基礎リテラシー教育を施してプロジェクトに参画させる、といったハイブリッド戦略も有効でしょう。

ポイントは、DX推進に必要なスキルセットを社内で網羅するための計画を描き、計画的に人材ポートフォリオを整えることです。その際、単に技術研修を行うだけでなく、DXの意義やビジョンを社員と共有しモチベーションを高める施策も並行して行う必要があります。

デジタルトランスフォーメーション導入(DX)の事例

次に、デジタルトランスフォーメーションの具体的な事例を見てみましょう。

名刺のデータベース化

ビジネス上では欠かせない名刺ですが、その管理を社員に任せている企業は今でも多くあります。しかしITを利用すると、紙の名刺を読み取って情報をデジタル化し、社内のサーバーで管理することができます。名刺のデータベース化は、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みの一環と言えます。

名刺をデータベース化することで、異動の際の引継ぎ業務が効率化できたり、組織内における各個人の人脈の共有が容易になったりする というメリットが生まれます。また紛失などのリスクも減少し、個人情報の保護という観点からも優れています。

コンビニや倉庫の省人化

最近では、コンビニや倉庫の省人化も進んでいます。最先端のITを活用することで、できるだけ人手がかからないようにしています。たとえば、レジの無人化や品質管理の機械化はすでに多くのコンビニなどで導入されています。

海外では完全無人の店舗が現れ始めていますが、数年後には日本でも店員のいないコンビニが当たり前になっているかもしれません。店舗や倉庫におけるこのような省人化は、今後起こりうる労働力不足の対策に効果を発揮することが期待されています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)導入の課題

なぜ、デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みは進んでいないのでしょうか。導入への課題を見てみましょう。

経営陣または現場のコミットメント不足

デジタルトランスフォーメーションが進まない理由の1つに、経営陣や現場のコミットメントが不足しているという事情があります。世の中の動きを肌で感じている経営陣は、デジタルトランスフォーメーションが重要であること自体は理解しているものの、実際に何から手を付けたらいいのかよくわかっていません。 そのため具体的な方向性を示すことができず、取り組みが進まないのです。

現場レベルでは、デジタルトランスフォーメーションそのものに対する理解が不足しているケースもあります。また、慣れ親しんだやり方が変わることに対する拒否感もあり、積極的に導入しようという雰囲気になりにくいという事情もあるでしょう。これを解決するためには、経営陣からの明確な指示が必要です。

複雑な既存システム

既存のシステムが複雑であるという点も、デジタルトランスフォーメーションにあたっての大きな課題です。 既存のシステムは更新を重ねながら長期間利用されているため、ブラックボックス化してしまっている ケースがあります。そのためになかなか抜本的な改革に踏み切れないばかりでなく、現行のシステムの維持管理に莫大な費用がかかり、新しい挑戦をするための資金が確保できていません。

長期的な視点を持ってITへの資金・人材投資ができていないことが、多くの日本企業の課題と言えるでしょう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は組織変革のひとつ

デジタルトランスフォーメーションを推進することは、抜本的な組織変革につながります。 デジタルトランスフォーメーションは、今までの方法を見直してより生産性の高い経営を行うための手段 だからです。

ある程度大規模の組織であれば、事業が下降気味であるからと言ってすぐに会社が立ち行かなくなるということは少ないかもしれません。しかし時代の変化から取り残されてしまうと、挽回することが難しいのも現実であり、時代に合わせて組織を変えていくことが大切です。成長が停滞しているときこそ変革のチャンスと捉え、組織の体制を見直しましょう。

IT系の部署が担当するべきか事業戦略系の部署が担当すべきかといった社内での調整ができず、役割をたらいまわしにされるような状況 も生じています。ITコンサルタントのサポートを受けて改革を進める企業もありますが、組織的なコミットメントがなければ社内に浸透しません。

デジタルトランスフォーメーションによって組織の環境が変わることについて、抵抗を感じる中堅以上の社員が多いのも事実です。社員からの理解を得て、組織的にデジタルトランスフォーメーションを推進するためには、組織内における情報伝達、つまりインターナルコミュニケーションに注力するとよいでしょう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とインターナルコミュニケーション

デジタルトランスフォーメーションに取り組む第一歩は、その重要性を社内全体で共有することです。そのためには、インターナルコミュニケーションが有益です。

インターナルコミュニケーションの重要性

インターナルコミュニケーションとは、社内に向けた広報のことです。企業理念や経営目標などを全社員が理解するためには、社内でのコミュニケーションや情報共有が欠かせません。目的に向かって社内全体で取り組む環境を築くため、まずは社内の意識調査や業務のプロセスの見直しを行ってみるのも良いかもしれません。

デジタルトランスフォーメーションにはインターナルコミュニケーションが必須

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、 インターナルコミュニケーションが必須 です。デジタルトランスフォーメーションは経営陣の話し合いだけでは進めることができません。現場の社員の理解や協力を得るためには、業務改革を行う目的や着地点を社内できちんと共有することが重要です。そのために、インターナショナルコミュニケーションの手法である「社内報」などを用い、繰り返し周知し続けることが効果的です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方

では、デジタルトランスフォーメーションをどのように進めていけばいいのか考えてみましょう。

専任者・専門組織の設置

社内に専任者や専門組織を設置しましょう。デジタルトランスフォーメーションは、実際に導入するまでに幾度のトライアルが必要となり、ほかの業務の片手間で扱えるようなことではないからです。

外部コンサルタントとの連携

デジタル技術は日々進歩しており、世の中の流れもそれに合わせてどんどん変わっていきます。そのため、デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みには外部の知見も取り入れるべきです。多くの情報を持つ外部コンサルタントと連携することで、辿るべき道筋が明確になったり助言を得ることができたりするでしょう。

インターナルコミュニケーションの土壌形成

できるだけ早い段階でインターナルコミュニケーションの土壌を形成しておくことも大切です。デジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、やがては全社を巻き込んだ変革になるからです。

インターナルコミュニケーションが機能していれば、社内報などの情報発信ツールを利用して、デジタルトランスフォーメーションに関する社員の理解を深める ことができます。また、社内の思わぬところに知見のある人材が潜んでいる可能性もあるので、効率的にデジタルトランスフォーメーションを進めるためには現場からの意見を積極的に取り入れることも重要です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)による組織変革を実現した事例

日本企業のデジタルトランスフォーメーションは欧米に比べてまだあまり進んでいるとは言えませんが、障壁を乗り越えて組織改革を実現した企業もあります。デジタルトランスフォーメーションを推進している企業の事例を見てみましょう。

花王

化学メーカーの花王は、活用しきれないまま社内に蓄積していた膨大なデータを活用することで事業を成長させるため、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。

花王のデジタルトランスフォーメーションのアプローチは2つです。

1つは、既存のシステムを徐々に新システムに移行していく「サブマリン方式」を採用すること。業務を止めることなくシステムをつくりあげていきました。

2つめは、システムを活用する部門を主体として捉えること。現場中心主義で改革を進めました。

いつでも必要な時に必要なデータを見つけられて取り出せるような状態にしたことで、作業時間の短縮や埋もれていたデータの新発見につながり、新たな発明が生まれるという成果も出ています。価値の創出をしやすくなったことが従業員のモチベーションアップにつながり、「能率化」が進んでいます。

住友商事

大手総合商社の住友商事は、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを加速するために「DXセンター」を立ち上げました。人材面が課題になることも多いデジタルトランスフォーメーションですが、キャリア採用や社外コンサルタントなども活用してデジタル人材を強化し、人事異動などにより組織的な知見や経験の蓄積を図っています。

これまでの海外における事業で集めた知見を活かして先進的な取り組みを積極的に取り入れるだけでなく、グローバルに研究開発を進めることで、イノベーションの創出に適した環境を構築しているのです。グループ全体でデジタルトランスフォーメーションを推進している事例です。

NEC

電機メーカーのNECは、「2025中期経営計画」において、経営改革の中核の1つとして社内デジタルトランスフォーメーションを推進する姿勢を示しました。CEO直下の組織としてTransformation Officeを立ち上げ、コーポレート部門と事業の両方の変革に挑んでいます。

目標としているのは、コーポレートインフラを再構築することで経営基盤と人材の高度化を進め、ビジネスアウトカムの創出につなげることです。大量にあるデータの価値を高めるために企業ベースレポジトリを構築し、競争優位性を生み出しています。

三井不動産

総合不動産会社の三井不動産は、コロナ禍でリモートワークが広がり、人々の生活も大きく変わる中、場所に対する考え方を変化させています。従来のように「場」を提供するだけでなく、人々の行動を起点としたサービスを提供することが重要だという考えのもと、三井不動産はデジタルトランスフォーメーションの促進を進めています。

中核となるのは、「事業改革」「働き方改革」「推進基盤」の3つの軸。ICTを活用したサテライトオフィスなどの新しいワークプレイスの提供や、決済システムと会計システムの統合による効率化、IT人材の増強による組織強化など、複数の観点からデジタルトランスフォーメーションの推進に寄与する取り組みを進めています。

三井物産

総合商社の三井物産も、積極的にデジタルトランスフォーメーションを推進している企業です。三井物産の戦略は「DX事業戦略」と「データドリブン(DD)経営戦略」の2つ。グローバルに事業を展開する強みを活かして、世界各地の現場が保有するリアルなデータにデジタルを掛け合わせて新たな価値を創造することで事業を強化するのが「DX事業戦略」。そして、データに裏打ちされた迅速かつ正確な意思決定で事業経営の強化を図るのが「DD経営戦略」です。

デジタルの力を活用して新たな事業を創造する過程を楽しみ、変化する社会の中で事業の「変革と成長」を実現することを目指して、短期的には生産性向上やエンゲージメントの向上、そして長期的には新たな事業基盤の創出を視野に取り組みを進めています。

まとめ

ここまでDXの本質と成功のカギについて解説してまいりました。要点を整理いたします。

DXは単なるIT化ではなく、企業の根本的な変革である DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化まで含めた包括的な変革を行い、競争優位を確立することです。業務効率化に留まらず、企業の在り方そのものを見直す取り組みといえるでしょう。

人材確保がDX成功の最重要課題 優秀なDX人材の不足が多くの企業でボトルネックとなっています。プロデューサー、データサイエンティスト、UXデザイナーなど多様な専門人材の協働が必要であり、外部採用と社内育成をバランス良く進める戦略が求められます。

組織文化とコミュニケーション改革こそが真の課題 最も重要なのは、DXを受け入れ推進できる組織文化への変革です。経営層の強いコミットメント、現場との双方向コミュニケーション、そして社員の意識改革なくしてDX成功はあり得ません。

最後に、DXは技術導入のプロジェクトであると同時に「人間の意識と組織を変える旅路」です。長期的な視点に立ち、社内の人材・文化にしっかり投資してこそ、デジタル技術も活きてきます。今回ご紹介したポイントを参考に、自社ならではのDX戦略を描き、ぜひ力強く推進していってください。

変革の先には、これまでにない成長機会と競争優位が待っているはずです。DXとは企業とそこで働く人々が共に進化し続けるプロセスとも言えます。貴社のDXが真の成功を収めることを、心より応援しております。

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よくある質問:DX推進に関するQ&A
  • DXと単なる「IT化・デジタル化」は何が違うのですか?
  • 「IT化(デジタル化)」は、紙の資料を電子化したり手作業の業務をシステム化したりするように、現状の業務プロセスをデジタル技術で効率化・自動化することを指します。

    一方DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる効率化に留まらず、ビジネスモデルそのものや組織文化を含めて根本的に変革することを意味します。

    例えば、銀行が紙の通帳を廃止してオンライン取引を導入するのはIT化ですが、フィンテック企業が従来なかった新サービスで金融ビジネスの在り方自体を変えるのがDXです。DXでは「何のために変革するのか」という目的が明確で、デジタル技術はその手段となります。ただITツールを導入するだけではDXとは言えず、ビジネスの提供価値や働き方を再定義するような大きな変革こそがDXだと言えるでしょう。

  • DX推進を成功させるためのポイントは何ですか?
  • DX成功企業の事例から導き出されたポイントは主に以下の3点です。

    ・経営層の強力なコミットメント

    DXは経営戦略そのものです。トップ自ら旗振り役となり、全社にビジョンを示すことが不可欠です。経営トップが本気でDXに取り組み「何のためのDXか」を社内に訴え続ける企業は成功率が高まります。

    ・明確な目的設定とスモールスタート

    「競合がやっているから」ではなく、顧客体験の向上や具体的な業務課題の解決など明確なKPIを定めましょう。そしていきなり大規模に始めるのではなく、小さな成功体験を積み重ねるスモールスタートで進め、成果を検証しながら拡大するのが効果的です。

    ・人材と組織文化への投資
    最新技術への投資以上に、人材育成と組織風土の改革に力を入れることです。DX研修や人材登用、組織横断のプロジェクトチーム設置などを通じて「人」と「文化」を変えていく企業が成功しています。新しい取り組みを受け入れる柔軟な文化づくりも忘れてはなりません。

    以上のポイントを押さえることで、DX成功の可能性は格段に高まります。逆に言えば、多くの企業がこのいずれかを軽視した結果としてDXプロジェクトが停滞しているのです。技術・戦略・人材の三位一体で取り組むことが重要でしょう。

  • DX推進を社内に浸透させるために広報・経営企画部門ができることは?
  • コーポレート部門である広報や経営企画の役割は、経営のDXビジョンと現場を繋ぐ架け橋になることです。具体的には次のようなアクションが考えられます。

    ・ビジョンの発信と共有

    社内報やイントラネット、社長メッセージなどを通じ、DXの目的や進捗状況を分かりやすく伝えましょう。現場社員が「Why DX?(なぜDXが必要か)」を理解できるよう、背景や狙いを具体的に発信します。特に成功事例や現場にもたらすメリットを紹介すると効果的です。

    ・双方向コミュニケーションの場作り

    タウンホールミーティングや部署横断のワークショップ等、現場の声を吸い上げる場を設けます。社員がDXに感じている不安や提案を経営層と直接議論できれば、納得感が生まれ協力も得やすくなります。「自分ごと化」してもらうには対話が不可欠です。

    ・社員の巻き込み施策

    DX推進を盛り上げる社内キャンペーンや表彰制度を企画するのも有効です。例えばDXに関するアイデアコンテストを開催したり、新しく導入したツールの利用促進キャンペーンを行ったりして、楽しみながら変革に参加できる仕掛けを作ります。社員が主体的に関与できる余地を与えることで、抵抗感を和らげモチベーションを高めます。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。