これからのIT部門は何をするのか?

#ICTシステム活用支援#イントラポータル#コミュニケーション

19.Jul.2019

クラウドサービスの台頭でIT部門の仕事がなくなる

企業のIT部門の仕事、と聞いて何を思い浮かべるだろうか。自社の社内システムやネットワークを構築するために要件定義を行い、社外ベンダーの選定を行い、システム設計とプロジェクトマネジメントを行う。サーバーが正常に作動しているか常に監視し、システムを保守し、ユーザー部門からのさまざまな問い合わせやカスタマイズの要望に応える。トラブルがあれば夜を徹して対応し、決して会社の業務を止めることがないよう全力を尽くしている。

というのが旧来のIT部門のイメージではないだろうか。しかし、それらの仕事の多くは現在なくなりつつある。その背景にあるのはオンプレミス(自社運用)からクラウドへの流れだ。自社に物理サーバーを置いて、自社でシステムを構築し、保守や更新を行うには膨大な設備投資費と人件費がかかり、テクノロジーの進化に合わせたスピーディーな更新も難しい。また、災害時などBCPの観点でのリスクも大きい。そのため、自社内に置いていたITインフラをMicrosoft AzureやAmazon Web Servicesなどのクラウドサービスに切り替え、業務システムにもクラウド上で提供されるアプリケーションを利用する企業が増えてきている。とくに後者については、多くの企業が導入していたオンプレミス版のIBM Notesのサポート終了によって、Microsoft Office365などのクラウドサービスへの移行が加速している。

社内システムのクラウド化によってIT部門の仕事はどう変わるだろうか?私は、極端に言うとこれからの企業でIT部門は不要になるのではないかと思っている。まず、サーバーがクラウド化すれば自社で監視や保守を行う必要がなくなる。必要なのは最初にベンダーを選定し、導入するサービスを決定することくらいだ。

そもそも企業がオンプレミスのシステムやアプリケーションを導入する際には、どこの部署が使うにしろ会社の資産として計上しなければならないため、常にIT部門を通して購入し、IT部門が管理する必要があった。また導入には高い専門性が必要となるため、各部門が直接ベンダーとやりとりして独自のシステムやアプリケーションを導入することは実質不可能だった。しかし、ASPやSaaSと呼ばれるネットワークを介したアプリケーションをライセンスで利用する場合には、資産計上も、高い専門知識も必要とされないため、IT部門を通さずに各部門の予算で導入することが可能だ。結果として各部門が独自により新しく・便利で・自部門の業務に適した外部サービスを導入し、IT部門もその全体像が把握できていない、といった事態が起こっている。現場はもう、IT部門を必要としていないのだ。

作るIT部門から、コミュニケーションするIT部門へ

その一方で、「NotesからShare Point Onlineへの移行が失敗する3つの要因と、成功のための処方箋」でも触れたように、企業の文化とIT部門のマインドが「システムを開発する」という前提からなかなか抜け出せないパターンもある。

まず、クラウド型の業務システムを導入する際には、オンプレミスの業務システムを導入するときとは発想を大きく転換する必要がある。オンプレミスの場合は「自社の業務にシステムを合わせる」という発想でさまざまなカスタマイズが可能であり、「ユーザー部門からのリクエストに応えて新たなシステムや機能を開発する」ことがIT部門の重要な仕事だった。しかし、クラウドで提供される業務システムは、往々にして業務の生産性に関する考え方が先進的であり、しかも随時バージョンアップしていく。

この「提供されるアプリケーションに自分の行動を合わせる」「こちらの意思とは関係なくバージョンアップされる」というのは、スマートフォンアプリに慣れ親しんだ私たちにとっては珍しいことではないはずだが、日常の業務となると旧来のやり方を変えたがらない人も多い。そこでIT 部門はシステムの機能や技術面だけでなく、業務プロセスや職場の文化・風土というところまで踏み込んで、ユーザー部門に対して、新しいワークスタイルの実現に向けた啓蒙活動を展開していく必要がある。これは従来IT部門の仕事とは180度性質が異なる仕事だ。

実際には、現在の企業ではこういった仕事を担える部門・人材が存在せず、また外部ベンダーにとっても専門外だ。そのため、困り果てた企業の経営企画部やIT部からの問い合わせがしばしば弊社に舞い込んでくる。ITを戦略的に活用するために関係各所へ情報提供し、現場の業務プロセスやITに対する要望をとりまとめ、ユーザー部門に対して利害調整や啓蒙活動を行う。こういった役割を担える部署や人材が企業に育たないのはなぜだろうか。そもそも経営層が事業戦略におけるITの重要性を十分に認識していないからではないだろうか。役員にCIO(Chief Information Officer)を置いている会社もまだ多くはなく、全社の戦略としてITの活用・デジタルトランスフォーメーションが位置付けられていない。そのため、いまIT部門に求められる役割が大きく転換していることを経営陣が自覚し、変革に乗り出すという動きはなかなか起こらない。

IT部門が顧客向けのシステム開発を担っている場合はまた事情が異なるかもしれないが、社内向けのシステムを主に手掛けるIT部門は、今後役割が大きく変わるか、部門自体が企業にとって不要になるかのどちらかであることは明らかだ。IT部門の役割が大きく変わるとき、求められるIT人材像も大きく変わる。今後求められるのは、企業の成長戦略の中にITの活用を位置付けて全体最適の視点で考えられる人、そして、デジタルトランスフォーメーションに向けてさまざまな社内外の関係者と連携して交渉や調整を行い、全社的な意識改革に向けたコミュニケーションを展開できる人だ。

時代の変化に敏感な経営者や担当者はもう動き始めている。私たちは、インターナルコミュニケーションのプロフェッショナルとして、そういった方々や企業の変革を後押ししていきたい。

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