組織の暗黙の了解(暗黙のルール)とは?会社の不文律を解説

暗黙の了解や暗黙のルールという言葉は、誰しも日常生活で一度は聞いたことがあるでしょう。「電車やエレベーターの出入り口では『降りる人』が優先」「初対面の人に対して政治や宗教の話をしない」など、当たり前のように多くの人が従っている不文律を意味します。

こうした暗黙の了解や暗黙のルールは、企業などの組織においても存在します。日常的なものでは「人とすれ違ったら『おつかれさまです』と言う」などです。
組織における暗黙の了解や暗黙のルールにはどのようなものがあり、わたしたちはどういったことに気をつけておくべきなのでしょうか。
本記事では、組織の暗黙の了解、暗黙のルールについて詳しく解説します。

暗黙の了解/暗黙のルールとは?

暗黙の了解(暗黙のルール)の辞典・辞書的な意味は以下のとおりです(Weblio辞書より引用)。

『口に出して明言しないものの、当事者間の理解や納得が得られているさま。言葉にしなくても皆が了承しているさま。』

ここで「皆が了承しているさま」と定義されているように、暗黙の了解(暗黙のルール)は集団や組織の間で発生する概念であり、個人の中には存在しません。「ここではこうすべきである」という規範のようなもので、組織においては組織文化や組織風土に近いものでもあり、不文律と呼ばれることもあります

マナーのようにあえて口にするまでもない常識となっている場合もあれば、例えば「関東ではエスカレーターに乗るとき、右側を空ける」のような、知らない人にとってはわからないものが暗黙のルール化されている場合もあります。
しかし、暗黙の了解やルールのすべてが決して悪いものというわけではありません。

今回は暗黙の了解(暗黙のルール)を「明文化されていない組織的前提」であると定義づけて解説します。

組織における暗黙の了解/暗黙のルールの例

組織(企業)においては、日常生活ではみられない独特な暗黙の了解(暗黙のルール)が存在します。組織によっても異なりますが、例えば以下のようなものです。

  • 電話は新入社員が取る
  • 上司が帰るまでは帰れない
  • 上司の誘いは断らない
  • メールの返信がなければ「承知した」とみなしてよい

こういった暗黙の了解(暗黙のルール)は、誰しも一度は経験したり、見聞きしたりしたことがあるのではないでしょうか。

先に挙げた組織の不文律は人の行動をコントロールするものですが、逆に以下の例のように不文律があることによってコミュニケーションがとりやすくなる面もあります。

  • 相手のことを「さん」付けして敬う
  • チームの誰かが困っていたら助ける
  • 雑談をすることはあっても、プライベートなことには口をはさみすぎない

これはいわゆる「空気を読む」といった意味合いであり、それによってコミュニケーションが円滑に進む場合もあるということです。

自社の暗黙の了解/暗黙のルールに不安を感じたら

組織内においては、前提となる文脈の理解(暗黙の了解)がある上で成り立つハイコンテクストなコミュニケーションは効率が良いものです。
しかし、語られない相手の意図を察する「阿吽の呼吸」が前提となっている組織文化は、事業環境に大きな変化がなければ効率的な経営や高い生産性につながることもある一方で、事業環境の変化や人材の多様化に直面した際に組織文化が大きな弱点となってしまうリスクもあります

組織に暗黙の了解やルールが多く、居心地の悪さや将来への不安を感じている方や、現状を変えていきたいと考えている方は、ぜひこれから紹介する方法を試してみてください。

前提を変える

社員にとっては、暗黙の了解や暗黙のルールについては「社内で話題して良いのかどうか」すら判断がつきません。それは、あくまで「暗黙の(語られない)了解事項・ルール(従うべき決まり)」であるという前提が組織内にできてしまっているからです。
そのような状況で、あえて空気を読まずに話題に出したり異を唱えたりすることは、個人にとってリスクがあります。この前提自体を変えるには、ゲームなどの方法を用いるのが効果的です。

前提を変えることで、これまで語られなかったことについて気軽に語れるようになるだけでなく、これまでとは異なる新たな視点を獲得することもできます。
今回は、暗黙の了解や暗黙のルールの前提を変える3つの方法を解説します。

●シックス・ハット法

シックス・ハットは「6つの帽子」を意味し、視点が異なる6つの帽子(客観的、直感的、肯定的、否定的、革新的、俯瞰的な帽子)のいずれか1つを選んでかぶった状態で、与えられたテーマについて考える発想法です。ものごとをさまざまな角度から見直すことで新しい発想を得られるようにするための手法として使われています。例えば「電話は新人が取る」という不文律があるとしたら、それを6つの帽子を1つずつかぶって見直し(電話を新人に取らせることは客観的に考えてどうか?否定的に考えてどうか?)、よいものになるよう検証していくといったものです。
この方法を用いることで、これまで話題にすらせず当たり前に従うものとされていた暗黙の了解(暗黙のルール)の前提を変え、さまざまな視点から考え、検討することができます

●ディベート

ディベートでは、あるテーマについて肯定派と否定派の2つに分かれ、議論していきます。「男性はヒゲを伸ばしていい」「男性はヒゲを剃らなければならない」といったようにそれぞれ異なる立場に立ち、議論を行います。
ルールに基づいて肯定派・否定派を演じることで、個人がリスクを負うことなく暗黙の了解(暗黙のルール)を話題に出し、ネガティブな側面についても語ることができます

●問いを立てて議論する

「答え」ではなく、現状に焦点を当てて考えるために「シックスハット法」「ディベート」の2つのアプローチを紹介しましたが、どちらにも共通する大事なことがあります。それは、「唯一無二の正解はない」という前提で意見を出し合うことです。「正解はない」という前提で考えると、暗黙の了解(暗黙のルール)も、「語られない」「従うべき」といった前提も絶対的なものではなくなり、議論の可能性が広がります。

議論を行う際はとかく「正しい答えは一つしかない」という前提で話を進めがちですが、そうすると「正しくない」とされる意見は切り捨てられることになります。それは、新しいアイデアに出合う可能性を狭めているとも言えます。もしかすると、「正しくない」とされた意見のなかに、本当に問うべきことや、新しいアイデアにつながるヒントがあるかもしれないからです。

そもそも、組織内の問題に対する「答え」は一つだけではなく、正解も不正解もありません。なぜなら「答え」は、自分たちが置かれている状況によって日々変わるからです。「いろんな答えがあるし、いろんな失敗もする」という心構えでいれば、自由な発想を生みだしやすくなり、新しい道が開けてくるかもしれません。

たとえば、「電話は新人が取る」という不文律について議論するのであれば、「最近の新人はあまり電話をとらない。どうすればもっと取るようになるか」と正解を探すのではなく、「なぜ『電話は新人が取る』という暗黙のルールがあるのか」「なぜ新人が電話を取らないことが問題になるのか」など、課題に焦点を当てた「問い」を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。

なんでも言い合える関係性を作る

好ましくない暗黙の了解(暗黙のルール)がある場合に、「この風潮はよくないのではないか」と率直に言える人がいたり、言える文化があったりすると、悪い状況を打破しやすくなります。
そのためにはなんでも言い合える関係性を構築することが望ましく、なんでも言い合える関係性を構築するには、社内コミュニケーションを活性化させることが重要です。自社の社内コミュニケーションが良好かどうかを調査によって把握しておくことも有効でしょう。

チームの暗黙の了解/暗黙のルールを明文化する

暗黙の了解(暗黙のルール)を文字に起こして明文化することで、不文律の見直しを図ることもできます。ただしこれは個人的に行うぶんには難しくないのですが、社内で複数人が集まり不文律を挙げていく際には、「これは挙げるべきではないのではないか」といった同調圧力が働きやすく、難しくなります。

組織においては、元来はきちんと意味があってできた暗黙の了解(暗黙のルール)が、時代に合わなくなっていたり、本来の意図から離れて度を超えてしまうことでうまくいかなくなっているケースが多く見受けられます。

本来の意図から離れてルールが一人歩きし、ルールを守ることが目的化してしまうと、新たに入った社員はなぜそれを守らなければならないのか理解できません。こうした状態から脱却するには、前述の「前提を変える」方法を用いて社内で暗黙の了解(暗黙のルール)について話すとともに、それらを明文化し、気軽にその是非を発信したり見直したりできるようにしていきましょう。
暗黙の了解(暗黙のルール)自体に良し悪しはなく、必要に応じて見直しができるかどうかがカギです。

まとめ

繰り返しになりますが、暗黙の了解(暗黙のルール)は、良い・悪いで判断できるものではありません。企業の戦略や外部環境の変化において、今ある暗黙の了解(暗黙のルール)がいつしか理解されない不文律となり、組織の力を弱め、成長を阻害する要因となってしまうことが問題です。そのような状況を変えていくためには、上記で挙げた方法による発想の転換や、社内コミュニケーションを活性化させていくことが重要です。自社における暗黙の了解(暗黙のルール)を一度洗い出してみて、やはりその不文律は変えるべきだと感じるようであれば、まずは社内コミュニケーションの見直しを図ってみてください。

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