組織変革

【2026年最新】風土醸成とは?組織を成功に導く意味とメリット、具体例を徹底解説

あなたの職場では、理念や戦略を打ち出しても現場に届かない、変革を試みても組織が動かないと感じることはありませんか?その原因の多くは、戦略や制度(ハード)の問題ではなく、組織の根底に流れる「習慣」、すなわち組織風土にあります。

本記事では、「風土醸成とは何か」という定義から、その構成要素、醸成のメリット、具体的なステップ、そして実際の企業事例まで、人事担当者や経営層が押さえておくべき内容を体系的に解説します。

風土醸成とは

ここでは、風土醸成を進めるうえで理解しておきたい「組織」の定義と、組織風土の本質について解説します。人事責任者や研修企画担当者が風土改革を推進する際の基盤となる考え方を整理します。

組織の定義

「組織」の定義はさまざまで、明確に定義づけることは難しいというのが実際のところです。早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授である入山章栄氏の著書『世界標準の経営理論』によれば、組織とは「事業部門や政府部門など、特定の目的を持つ人々の組織化されたグループ」と定義づけられています。

また、「人々」とあるように、組織は複数の構成員によって形成されます。一方で、アメリカの実業家・経営理論家チェスター・バーナード氏は、3要素からなる組織論を提唱しています(バーナード組織の3要素)。

本理論によれば、組織は「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通の目標」の3つから成立し、これらのうちどれか一つでも欠けてしまうと組織不全に陥るとバーナードは定義しています。また、同じくアメリカの社会科学者・経済学者であるハーバート・サイモン氏によれば、組織とは「意思決定とその実行の過程を含めた、人間集団におけるコミュニケーションとその関係のパターン」であるとしています。

これらが現在も支持されている組織の定義の一例であり、この内容から、組織にとってコミュニケーションが重要な存在であることがわかります。組織という枠組みを維持し、成長させるための生命線がコミュニケーションなのです。

組織風土の正体

組織の定義について触れたところで、組織風土とはどのようなものかについても解説します。一般的に「風土醸成」とは、組織のメンバーが共有する価値観やルールを育て、根付かせていくプロセスを意味します。

組織は人が集まって成り立ちます。人と人が目的に向かって協力しあう時、お互いの価値観の違いからぶつかり合いやタイミングの違いなどの非効率が生まれることがあります。こうした非効率を排除するために、周囲に合わせてしまう同調圧力や、合理的な判断よりも集団的判断を優先するグループシンクなど、組織特有の不思議な現象が起こることがあります。

こうした人と人とが織りなすパターンの繰り返しにより、組織風土が徐々に出来上がっていくのです。「組織の習慣」は、組織のパフォーマンスに良い影響を与えることもあれば、場合によっては企業不祥事などを引き起こすという恐い側面も持っています。

組織風土の定義とよくある形態

冒頭で、組織風土とは「組織の習慣」であると定義しましたが、実際には学術研究などによって定義に若干のバラつきがあります。ここでは、わかりやすくするために、企業の問題を例に挙げて組織風土について解説をしていきます。

「大企業病」という言葉を、耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。「大企業病」はまさに「組織の習慣」と言えます。「大企業病」に特化して、2016年にリクルートマネジメントソリューションズが行なった調査があります。その調査結果では、「自社を大企業病と感じる理由」が、以下のようにいくつかのパターンに類型化されました。

  • 「意思決定が遅い」
  • 「内向きで現場・市場の声が通らない」
  • 「無駄な手続きが多い」
  • 「管理者が内向きで動かない」

また、この調査結果では、慣例やルールにとらわれて非効率な業務や本質的でない施策を増やすなど、組織の「形式化」が大企業病の諸症状になって現れるとしています。こういった症状の根底には、顧客や従業員をエンゲージメントするより、過去の慣例の方が重要だと、組織が判断してしまっていることがあります。

組織風土と企業文化の違い

組織風土と似た言葉として、「企業文化」や「社風」が挙げられます。これらの概念を正確に区別することは、自社のどこに課題があり、どのアプローチが有効かを判断するために不可欠です。

組織風土と組織文化の区別

組織風土と混同されやすい概念として、「組織文化」があります。組織風土がいつのまにか定着してしまった「組織の習慣」である一方、組織文化は意図的にデザインすることが可能です。

ここでは、組織心理学の権威、エドガー H.シャイン氏の組織文化の3段階モデルを用いて組織文化を構成する要素について説明します。

  • 1つ目の要素は、組織体制、社訓、経営理念、戦略、トップの人物像など、目に見える形で存在するものです。いわゆるハード要素です。
  • 2つ目の要素は、暗黙のルール、社内コミュニケーション、責任の所在、トップの影響力など、見えないものです。ソフトの要素といえます。
  • 3つ目の要素は基本的過程です。噛み砕いて言えば、組織の大多数が当然と思い込み、疑うことがなくなってしまっている価値観や行動などです。

近年、メーカーなどのリコール隠し、データ改ざんなどが多く報じられましたが、企業の不祥事が発生した際には往々にして、ミスを報告しづらくする「職場の風通しの悪さ」だけが問題視されがちです。

しかし、組織風土の構成要素を鑑みれば、長年の間に不正が慣例化して組織文化として根付いてしまい、「悪いことだと理解した上で」悪事を行って周囲もそれを隠すという組織風土が形成されていた可能性も十分に考えられます。

認知的文化と情緒的文化

ペンシルバニア大学のシーガル・バーセイドとジョージメイソン大学のオリビア・A・オニール氏は、10年に及ぶ調査結果から、企業文化が大きく2つに大別されると指摘しています。

1つは「認知的文化」で、仕事の上での発想や行動を方向づけるもの、もう一つは「情緒的文化」で、職場における社員の感情の表出に影響があると主張しています。認知的文化は、組織のメンバー間で共有される、理念や規範、成果、前提など、外部環境への対応や組織の目標達成を目指す上で水準となる文化であると言えます。
情緒的文化は、企業業績やこの認知文化や規範に対して、社員一人ひとりが抱く感情から産まれる企業文化です。2つの大きな違いは、「認知的文化」は考え方を軸としており、主に発言や行動を介して伝わるのに対し、「情緒的文化」は、感じ方を軸としており、身振り手振りや表情から伝わる傾向が強いことです。

しかし、認知的文化は、企業や経営者が経営の中で重要な要素として、認識し管理・変革している一方で、情緒的文化は、ほとんど無視されてきているということを、この調査においては問題視しています。そして、情緒的文化が経営業績に多大な影響を及ぼすことを調査研究で示しています。

実際にスタートアップ企業やベンチャーでは「仕事を楽しむ」ということを「行動指針やWAY」としている企業も増えています。一方で、情緒的文化のみを重視して、認知的文化を軽視してもいいということではなく、情緒的文化と認知的文化は相互に補完するものであると、この研究では示しています。

そして、良い情緒的文化を組織内に醸成するためには、経営トップを筆頭にすべてのリーダーが望ましい感情や振る舞いを体現し、周囲がそれに同調し、完全に模倣してなり切るまで繰り返すことが必要と述べています。最近では、個人またはグループの状態を示す「ウェルビーイング」が経営として着目されていることも、企業自身が情緒的文化の重要性に気付き始めている証拠であると言えます。

日本企業において組織文化、または企業文化というときには、大抵の場合は企業の理念やビジョン、行動指針などである程度明文化されている「認知的文化」のことを指しています。一方で、「組織風土」というときには、組織内の発言や行動、表情や身振り手振り、口調などにあらわれる、感情や雰囲気なども含まれ、「情緒的文化」に近いものです。

つまり、組織文化はある程度意図的に管理・運営することができますが、組織風土は組織内の人々の中で自然に醸成されるものと言えるのではないでしょうか。良い組織文化を形成し、従業員がその文化を反映したふるまいを積み重ね、相互に影響を与え合うことができれば、自ずと良い組織風土が醸成されていくはずです。

組織風土の構成要素:ハード・ソフト・メンタル

良質な風土を醸成するためには、組織風土を構成する3つの要素について深く理解し、それぞれに対して適切なアプローチを計画する必要があります。これらの要素は相互に影響を与え合っています。

組織風土の構成要素は、目に見えるものから従業員の心理的なものまで多岐にわたります。これらを体系的に整理すると、以下の3つの要素に分類されます。

要素の種類 特徴 具体例 難易度と変革の期間
ハード要素 組織において明文化された価値観やルール 企業理念、MVV、人事評価制度、就業規則、組織体制、コンプライアンスなど 経営陣の意思決定により比較的短期で改定可能
ソフト要素 従業員の価値観や行動規範、関係性で生み出されるもの チームの人間関係、コミュニケーション、ローカルルール、意思決定の傾向など 現場での対話や意識づけが必要で、中長期的な時間が必要
メンタル要素 従業員の精神状態や心理面に強く影響する要素 心理的安全性、信頼関係、業務へのモチベーション、従業員エンゲージメント 感情が関わるためコントロールが最も難しく、多大な労力を要する

 

1. ハード要素の重要性と落とし穴

「ハード要素」とは、企業理念や人事評価制度など、組織において明文化されている要素を指します。これらは企業と従業員が進むべき方向性(ベクトル)を合わせるための重要な基盤となります。ルールや評価基準が明確でなければ、従業員はどのような行動が評価されるのか分からず、不安を抱えることになります。

しかし、理念やビジョンを額縁に入れて掲げるだけでは風土は変わりません。弊社ソフィアの調査では、自社の経営目標や戦略に対して「共感している」と答えた社員はわずか1割にとどまり、理念浸透の不足が深刻であることが浮き彫りになりました。これは、ハード要素である戦略や目標が現場の言葉に翻訳されておらず、単なる経営陣からの一方的な伝達に終始していることが原因と考えられます。

2. ソフト要素におけるコミュニケーションの分断

「ソフト要素」は、コミュニケーションの取りやすさやチーム内のローカルルールなど、明文化されていない暗黙の規範です。風通しの良さや、部門間の連携のしやすさなどは、このソフト要素に大きく依存します。

近年は働き方の多様化やテレワークの普及が進み、このソフト要素の維持が難しくなっています。弊社ソフィアの調査では、組織の多層化や部門間の分断といった従来からの課題に加え、リモートワークの普及に伴う「ナレッジの分散や活用不足」「コミュニケーション機会の変化」といった新たな論点が顕在化していることがわかっています。偶発的な雑談が減少したことで、ソフト要素に亀裂が入りやすくなっているのが現代の大企業の大きな課題です。

3. メンタル要素と心理的安全性

「メンタル要素」は、従業員のモチベーションやエンゲージメント、心理的安全性といった精神的な基盤を指します。どれほど立派なハード要素を整えても、このメンタル要素が満たされていなければ、従業員は自発的に行動しません。

特に「心理的安全性」は、新しいアイデアの創出やミスの早期報告に直結する重要なメンタル要素です。従業員が「これを言っても批判されない」「失敗しても挑戦が評価される」と信じられる環境を作るには、経営陣やマネージャーが日々のコミュニケーションを通じて、長期的に信頼を積み重ねていく以外に道はありません。

組織風土醸成のメリット

企業が時間とコストをかけて良質な組織風土を醸成することには、経営戦略上、計り知れないメリットがあります。ここでは、具体的にどのような効果が期待できるのかを解説します。

企業が良質な組織風土を醸成することで、次のような多角的なメリットが期待できます。

組織と従業員のベクトルの一致

組織風土の醸成プロセスを通じて、企業理念やビジョンといったハード要素が従業員の心に深く浸透します。その結果、企業が目指す方向と従業員の価値観が一致し、組織全体で同じ目標に向かって力強く進むことができるようになります。

ベクトルが揃うことで、部門間の無駄な対立やセクショナリズムが減少し、全社横断的なプロジェクトもスムーズに進行しやすくなります。従業員一人ひとりが自分の業務と会社の目標のつながりを意識できるようになるため、自律的な判断に基づく行動が増加します。

職場環境と人間関係の改善

互いを尊重し、多様性を認め合う風土が定着すると、従業員同士の人間関係が劇的に改善します。上下関係や部門の壁を越えたコミュニケーションが活発になり、心理的安全性が高まります。

人間関係のストレスが軽減されることで、従業員は本来の業務に集中できるようになります。結果として、従業員は仕事とプライベートのバランスを取りやすくなり、心身ともに健康で働きやすい職場環境が実現します。これは、メンタルヘルス不調による休職者の減少にも直結します。

従業員エンゲージメントの向上と人材定着

企業が従業員を大切にし、意見を吸い上げる風土ができると、従業員の企業に対する愛着や貢献意欲、すなわち「従業員エンゲージメント」が大きく向上します。エンゲージメントが高まれば、「この会社で長く働き続けたい」という意欲が自然と湧き上がり、結果として離職率の低下につながります。

現代のような少子高齢化に伴う労働人口の減少や、雇用の流動化が進む時代において、優秀な人材の確保と定着は企業の至上命題です。離職率の低下は、採用や教育にかかる膨大なコストを削減し、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。

業務効率や生産性の向上

失敗を恐れずに挑戦できる風土や、無駄な慣例を打破できる風土は、業務プロセスの改善を加速させます。現場のアイデアや気づきが経営層に届きやすくなるため、非効率な作業が見直され、イノベーションが生まれやすい土壌が育まれます。

「言っても無駄だ」という学習性無力感が蔓延する組織では生産性が低下しますが、意見提起しやすい自由闊達な風土があれば、従業員は自発的に改善策を講じます。良質な組織風土は、結果として企業全体の生産性向上や業績アップに直接的に寄与するのです。

良い組織風土の可視化と定義

「組織風土」に課題がある、より良い組織風土を醸成したいと考えている場合は、まず目指す状態を描くとともに、組織風土の現状を把握し、可視化することが重要です。

良い組織風土の条件

良い組織風土を醸成するためには、現状の組織風土と自社が目指す状態から、ありたい組織風土をあらかじめ描く必要があります。そのときに「従業員エンゲージメント」の考え方は一つのヒントになるでしょう。

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が現在働いている会社に対して、どれだけ信頼しているか、どれだけ貢献したいと考えているか、ということを意味します。言い換えれば、従業員の自発的(内発的)な貢献意欲、ということになります。
「自発的(内発的)な貢献意欲」とは、賃金や他者からの評価を得たいといった外部からの動機付けではなく、自身の内面から起こる動機付けを意味します。自身の中から湧き出てくる興味や関心などが行動要因となっているため、その行動そのものが目的となっている状態です。

このように、従業員が会社を信頼し、自発的な貢献意欲を持っている状態、すなわち従業員エンゲージメントが高い状態であることは、離職率の低減や生産性の向上、製品・サービス品質の向上など、経営に良い影響を与えます。これは、目指すべき組織の状態の一つと言えるのではないでしょうか。
従業員エンゲージメントに影響を与える要因として、従業員による会社の理念・ビジョンへの共感や、組織内の関係性の質などが挙げられます。こういった要因を改善することが、良い組織風土の醸成につながります。そのためのカギとなるのは、組織内のコミュニケーションです。

良い状態から悪化するリスク

現在、組織風土に問題を抱えていない企業でも、いつのまにか悪い状態に陥っていたという場合があります。

出口の見えないかんぽ生命保険の例について考察をしてみたいと思います。同社では、顧客に不適切な契約を結ばせて成果を上げる、という価値観が根付いてしまっている可能性があり、販売員の上司も、売り方をトレーニングするインストラクターも、そういったやり方をむしろ、賞賛する傾向にあったようです。

不正を行って、あるいは不正ではなくとも顧客のためになっていない方法で業績を上げた人が称賛されている場合、そのような習慣が良しとされる風土が醸成されてしまう場合があります。

偏った価値観をもとに行われたコミュニケーションの影響は、事業がうまくいっている時期は気づきにくいことが多いので注意が必要です。上記のかんぽ生命の事例は、金利が高い時期は顧客の不利益が表面化しづらかったことも、事実の発覚が遅れた原因としてあったようです。

上記は、ビジョンや組織として大切にする価値観や社員一人ひとりの良心よりも、過去の成功体験に基づく偏った価値観(成果主義)が優先されていたために起こったと考えられる事象です。本来大切にすべき理念やビジョンがないがしろにされ、社員一人ひとりが本音に蓋をしたまま偏った価値観にもとづくコミュニケーションに晒されることが、組織風土の悪化を招き、最悪の場合は不正につながることもあるのです。

組織風土醸成の課題と対策

大企業が風土醸成に取り組む際、どのような障壁に直面するのでしょうか。ここでは最新の調査データから、リアルな課題と対策の方向性を紐解きます。

働き方の多様化と新たなコミュニケーション課題

弊社ソフィアの調査では、近年、リモートワークに代表される働き方の多様化が進んでおり、これにより従来の対面を前提とした情報共有や意思疎通の手法について見直しが求められていることが明らかになりました。

特に大企業においては、「組織の多層化」や「部門間の分断(サイロ化)」といった従来からの課題が依然として存在している上に、新たな論点として「ナレッジの分散や活用不足」「非公式なコミュニケーション機会の喪失」が顕在化しています。雑談から生まれる暗黙知の共有が減ったことで、ソフト要素の風土醸成が極めて難しくなっているのが現状です。

1on1ミーティングの光と影

風土醸成やエンゲージメント向上のための対策として、多くの企業が「1on1ミーティング」や「エンゲージメントサーベイ」を導入しています。しかし弊社ソフィアの調査では、社内コミュニケーション促進の取り組みの上位として1on1が挙げられる一方で、皮肉にも「促進に効果的でないと感じられている取り組みのトップ」もまた1on1であるという実態が浮き彫りになりました。

これは、制度というハード要素だけを導入し、マネージャーの傾聴スキルやコーチング能力というソフト要素の教育が追いついていないことが原因です。結果として、単なる業務進捗の報告会に成り下がり、部下にとって負担感だけが増す「形骸化された運用」に陥っているのです。

多角的な観点での定点観測

こうした課題に対策を打つためには、まず自社の実態を正確に把握しなければなりません。弊社ソフィアの調査では、企業におけるインターナルコミュニケーションの実態を多角的に把握するため、以下の6つの観点から調査を実施しています。

  • 職場に対する評価や認識(調査の前提)
  • 社内コミュニケーションの実態
  • 1on1などのマネジメントコミュニケーション
  • ナレッジ共有
  • 非公式なコミュニケーション
  • 働き方とエンゲージメント運用

風土醸成を成功させるためには、感覚値に頼るのではなく、こうした多面的な観点で定期的にサーベイを実施し、データに基づいた課題抽出と対策の実行を繰り返すことが不可欠です。

組織風土醸成の具体的なステップとポイント

良い風土を思い描くだけでは、組織は変わりません。ここでは、企業風土の醸成を成功させるための実践的なポイントと具体的なステップについて解説します。

現状把握とコミュニケーションラインの点検

企業にとって望ましい組織風土を醸成するためには、組織内の情報の流れがスムーズであることが必要です。まずは、下記のチェックポイントを通して、自社の現状を把握することをおすすめします。

  • 経営者や経営チームから、企業のビジョンやあるべき状態がコミュニケーションされているか
  • 現場の状況や現場の本音が、経営や組織全体に伝わっているか
  • メンバー間や部門間を超えたコミュニケーションがなされているか
  • 組織目標に必要な行動や規範を社員一人ひとりのコミュニケーションから確認できているか
  • 社員一人ひとりが本音を吐露しているか
  • 上記に必要なコミュニケーションラインが整備されているか

これらのチェックポイントを通じて自社の現状を客観的に見つめ直し、どこでコミュニケーションが滞っているのか、どの要素(ハード・ソフト・メンタル)にアプローチすべきかを特定することが第一歩となります。

経営陣のコミットメントと制度の見直し

組織風土を醸成するためには、企業ビジョンや人事評価制度など「ハード要素」の変革が不可避となるため、まずは経営陣が率先してコミットする必要があります。経営陣自らが新たな風土を体現できるように、意識や行動を変えることが極めて重要です。上層部が変わることで、そのもとで働く従業員にも変化が浸透しやすくなります。

また、公正公平な評価制度や、多様な働き方を支援する制度へと組織体制を見直すことも欠かせません。制度というハード要素が古いままでは、どれだけソフト要素(現場のコミュニケーション)に働きかけても、従業員の不信感を招くだけだからです。

対話・教育・ツールの「三本柱」による施策展開

風土醸成には、単一の施策ではなく、複層的なアプローチが必要です。弊社ソフィアの調査でも提唱している通り、「対話(現場での良質なコミュニケーション)」「教育(マネジメント層への研修)」「ツール(社内SNSや社内報などの適切な活用)」の三本柱を連動させた戦略が効果的です。

例えば、1on1という「対話」の場を設けるだけでなく、それを機能させるためのマネージャー「教育」を行い、さらにその根底にあるビジョンを社内ポータルという「ツール」で継続的に発信する。このように3つの柱を有機的に組み合わせることで、初めて組織全体に新しい風土が根付き始めます。

中長期的な観点での取り組み

組織風土というものは長い時間をかけて企業で育まれたものであり、短期間で容易に変えられるものではありません。そのため、短期的な成果やROI(投資対効果)ばかりを追い求めるのではなく、中長期的な観点で地道に取り組むという意識が不可欠です。

焦らずに、新たな価値観や多様性を重視する姿勢をメンバーに丁寧に語り続けることが重要となります。風土改革は数年がかりのプロジェクトであることを前提に、経営陣と現場が根気強く歩み寄るプロセスそのものが、強固な組織をつくる糧となります。

組織風土と企業経営の関連性

組織風土と企業経営は密接に結びついています。経営側は風土の悪化を防ぎ、より良い状態を維持するためにどのような点に留意すべきなのでしょうか。

コミュニケーションの質と量のバランス

組織風土の悪化を防ぐために、経営側は何に気をつけるべきでしょうか。不祥事が起こらないよう、「職場や組織の風通し」に目を配り、全社員に研修を行えばいいのでしょうか。

良い組織風土を醸成するためには、コミュニケーションの「量」と「質」のバランスが重要です。組織のミッション・ビジョンを従業員がしっかりと理解し、共感できるよう、コミュニケーションの質と量が担保できているかが重要なポイントになります。いくらコミュニケーションの量が多くても、それが経営から従業員への一方的な情報伝達に偏っていないか、過去の成功体験に引きずられた偏った価値観に基づくコミュニケーションとなっていないか、経営の視点から確認することが必要です。

双方向性の確保とリーダーの体現

また、ミッション・ビジョンや企業価値観・戦略に沿って、経営陣と現場の社員がコミュニケーションできる場や、社員同士で本音のコミュニケーションができる基盤を整える必要があります。

弊社ソフィアの調査でも指摘されている通り、コーポレート部門からの全社向け情報発信が単なる通達になっていないか、現場が直面している問題点を把握し、社内報や社内SNSを用いた双方向性のあるメディア活用ができているかを定期的に見直すことが求められます。

また、その際に、その場に現れる社員の感情に注意を払い、組織の問題を早い段階で把握・対処するとともに、組織内に醸成していきたい感情(楽しさ、前向きさ、親しみなど)をリーダーが積極的に体現していくことも重要です。リーダーの振る舞いこそが、最強の社内メッセージとなるのです。

風土醸成の成功企業事例

最後に、組織風土の醸成や、変革に成功した企業事例を紹介します。いずれもソフィアが支援を行った企業です。理論だけでなく、実際の企業がどのようにハード要素とソフト要素を連動させて風土を変革したのか、そのプロセスを参考にしてください。

中堅企業(社員1,000名以上)の事例

収益を支えていた主力商品の衰退と、同業他社の統廃合に直面していた同社。大規模化する競合の中で生き残りを図るために、自社独自の戦略を打ち出すことが求められていました。また、マネジメント層と現場社員とが一丸となって事業変革を進めていくにあたっては、マネジメント層の連携強化、マネジメントと社員の信頼関係強化が課題でした。

そこで同企業はマネジメント層と現場社員の対話を繰り返し行うとともに、現場社員からの信頼を損なう一つの要因として挙げられていたマネジメントメンバー間の意思疎通の悪さを改善するために、マネジメント層の組織開発を実践しました。

また、現場社員のエンゲージメントや関与の度合いを向上させるため、組織改革に向けた価値観やテーマの検討と実際の改革を進めていくプロジェクトチームを組織し、これを機に行動指針や理念・ビジョンの見直しも行うこととなりました。

さらに、こうした一連の動きがすべての社員にオープンに伝わるように、隔週で社内報を発行し、改革の動きを中心に全社員に伝達しています。結果として、組織内コミュニケーションの活性化と、業績の改善を同時に実現しました。

大規模企業(社員10,000名以上)の事例

同企業では、グローバル本社の経営計画に合わせて、国内市場におけるビジョンを策定し、その実現に向けて組織変革のプロジェクトを立ち上げました。さらに、社員によるビジョンの理解促進と自発的な行動喚起、それらを通じた組織風土の改善に向けて、新たな行動指針を策定。浸透活動を行うにあたって、具体的な施策立案と、プロジェクト推進体制の構築を必要としていました。

そこでソフィアでは、ビジョンの実現に向けたマイルストーンを策定し、「経営層から部長クラスへ、部長クラスから課長クラスへ、そして現場社員へ、直接的なコミュニケーションを通じて浸透するシナリオ」と、「継続的なメディア活用を通じて、組織全体に理解・共感を醸成するためのシナリオ」の2つのシナリオを有機的に組み合わせる施策を立案しました。

具体的な施策として、部長クラス向けに行動指針体感ワークショップの企画・運営支援を行ったほか、ワークショップ実施のためのツールキットの企画・制作、ワークショップ当日の動画撮影・編集、Web会議システムを活用したバーチャル研修の企画・運営などを行い、ビジョンの浸透と行動喚起を後押ししています。

まとめ

あなたの組織では、今どのような課題を感じているでしょうか。

良い組織風土を醸成するためには、現状の組織風土の状態を把握・可視化した上で、ありたい組織風土の状態をあらかじめ描き、必要な施策を打っていく必要があります。良い組織風土を考える上では「従業員エンゲージメント」の考え方が参考になります。

また、経営の視点では、コミュニケーションの質と量に目をむけ、会社が大切にしたい価値観に基づいた情報がしっかり社員に届いているか、コミュニケーションされている内容や場所に偏りはないか、社員の声に経営が触れる機会が確保されているかを確認し、問題を改善していくことが大切です。

要するに、組織風土の醸成は一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、ハード・ソフト・メンタルの各要素に粘り強く働きかけることで、確実に組織は良い方向へと変化します。本記事の内容が、自社の組織風土に問題点を感じ、改善していきたいと思われている方々の参考になれば幸いです。

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よくある質問
  • 風土醸成とは何ですか?
  • 簡潔に言うと「組織の習慣及び空気」です。
    人と人が目的に向かって協力しあう時や集団や組織が課題に、どのように意思決定が行われ、どのように情報が共有され、どのように仕事が実行されるかという過程が、習慣や空気をつくり、風土が創られます。周囲に合わせてしまう同調圧力や、合理的な判断よりも集団的判断を優先するグループシンクなど、組織特有の不思議な現象が起こることがあります。

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