組織風土改革がうまくいかない理由は? 組織風土改革の手順及び成功のコツをご紹介

これまで多くの企業が様々な目的のために組織風土を変える取り組みを行ってきました。ある大手小売企業は、赤字体質からの脱却を目指し社員の意識と行動を変えた結果、見事V字回復を果たしました。一方である企業は社長交代とともに、これまでの穏やかな社風から挑戦的な風土へ変えようと取り組んだところ社員が大量に離職してしまいました。このように組織風土を変えることは、成功すれば大きな成果が得られる一方で、常に失敗するリスクを抱えています。組織風土改革がうまくいかない理由は何なのでしょうか。今回は組織風土改革の手順と成功のコツをご紹介します。

組織風土改革とは 概念と意識改革との違いをご紹介

組織風土改革という言葉は、企業や人によって意味や定義が異なります。
組織風土も改革も少し曖昧な言葉であり、目的によってその意味が変わってくるからです。
また経営者の視点と担当者の視点でも認識が違うときもあります。経営者の視点からでは組織は会社そのものであるのに対し、担当者は職場のことを指している場合もあるのです。
経営や組織開発の領域で使われているこの組織風土改革とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

組織風土改革とは

組織風土改革を考えるまえに、まず「組織」と「風土」が何かを考える必要があります。
経営学者バーナードの定義によれば、組織は、ある共通の目的をもってお互いにコミュニケーションをとりながら何かに取り組む意思を持っていることで成り立っています。この定義があてはまっていれば、2人だけでも組織になります。

人と人が目的に向かって協力しあう時、お互いの価値観の違いからぶつかり合いやタイミングの違いなどの非効率が生まれることがあります。企業組織では、こうした非効率を排除するために暗黙のルールが出来上がることがあります。また、ある程度の人数が集まる集団では人は一人でいる時とは異なる行動をとることがわかっています。周囲に合わせてしまう同調圧力や、合理的な判断よりも集団的判断を優先するグループシンクなど、組織では組織特有の不思議な現象が起こるのです。
こうした人と人とが織りなすパターンの繰り返しにより、組織風土が徐々に出来上がっていきます。

組織風土は複雑なプロセスにより出来上がります。
組織心理学の権威、エドガー H.シャインは組織文化の3段階モデルを用いて風土を説明しています。

レベル1、人工物のレベル

レベル1は人の手によってつくられた見えるもののレベルです。組織において目に見えるものとは、組織体制、社訓や理念などの外形的なルールや決まりのことです。もっと具体的に言えば、トップがどんな人なのか、オフィスのレイアウトや社員の服装、振る舞いなども組織風土を作り上げる要因です。

レベル2、標榜されている価値観のレベル

次のレベルは見えないけれど言葉にはできるものです。企業組織には理念や戦略、経営哲学などの方向性を示す言葉があります。またコアバリューなど、組織の価値観が言語化されている場合もあります。ただしすべてが言語化されているのではなく、一部は暗黙知となって存在しています。例えばある企業で「スピード」を重要な価値観としていた場合、「スピード」に対する社員の考え方は全員同じではない可能性があります。こうした組織の中で共有している言語化された価値観は社員の行動に影響を与えます。

レベル3 、無意識のレベル

組織の中で最もわかりづらいのが無意識のレベルです。イメージ化も言語化もされていませんが、日々無意識に行っていることを指します。例えばある大手企業では、経営トップに怒られることを恐れて、社員は失敗をしない確実な業務だけをこなしています。こうした「失敗したくない」「怒られたくない」という社員の共通の思いが「挑戦をしない」「無難に過ごす」という暗黙のルールを形成しているのです。
こうした3つのレベルが絡み合って「組織風土」を形成しています。

意識改革と風土改革の違い

では単なる意識改革と風土改革とは何が異なるのでしょうか。先ほどの組織文化の3段階モデルを用いて考えてみましょう。
意識改革は社員ひとりひとりの考え方や心構えにアプローチすることを指します。
例えば「失敗したくない」と考えている社員に挑戦をさせるために、カウンセリングやコーチング、研修などを通じて意識に変化を促す試みを行います。
意識改革は意識だけにアプローチするのに対し、組織風土改革は組織の仕組み自体を変えます。

組織風土を抜本的に改革する際には経営意思決定や組織構造や人事制度などの組織内の仕組みやルールを変え、戦略や理念を変更する場合もあります。

組織風土改革では、ひとりひとりの社員の価値観や考え方に変化を促すだけでなく、言動や行動を支配する明示されている規律や暗黙の規範を、社員自ら創り組織の当たり前の習慣を変えることに取り組むことです。

組織風土改革が必要となるタイミング

さて、組織風土を変える必要に迫られるのはどんなタイミングなのでしょうか。

会社の統合など事業環境の変化

多くの場合、事業環境が変わった際に組織風土を変える取り組みが行われています。例えば、会社同士が合併した際や急激な環境変化により売上成長が止まった際などです。これらのタイミングに共通しているのが、これまでの価値観ややり方では成長が難しいことが予想されている点です。
多くの場合、経営戦略を見直し、新たな経営の方針を策定します。それに伴い、社員の行動を変える必要がある際に組織風土改革の取り組みが行われます。また反対に会社規模が大きくなり、さらなる成長を遂げる際にも組織風土改革は行われます。多くの場合、言語化されていなかった暗黙のルールを理念や戦略として言語化し社員に浸透させます。
このように、会社の成長に影響するほどの事業環境変化が予想される場合に組織風土改革に取り組む企業は多いでしょう。

人材の多様化による従業員の労働・雇用環境の変化

急成長する企業では、急速に中途採用者が増加する現象や急激な海外展開を行う場合があります。また、安定的な企業でも雇用環境の変化によりリモートワークをする社員が増え、コミュニケーションの在り方が変わることもあるでしょう。こうした人材の多様化や雇用環境の変化により、これまでの価値観が薄まり、改めて共通の価値観を組織に浸透させる必要に迫られる際に組織風土改革・形成の取り組みが行われます。

事件・事故などの不祥事の発生

組織にある暗黙のルールが不祥事を起こすことがあります。例えば、世間や経営トップに知られてはいけない情報を隠すことを繰り返すうちにそれが暗黙のルールとして習慣化されてしまう、いわゆる隠蔽体質です。このような隠蔽体質が明るみに出た際には、新たなルールを策定して不祥事を繰り返さないような仕組みづくりがおこなわれます。一方で、行き過ぎた理念や価値観が不祥事につながることもあります。あまりにも従業員をないがしろにするような組織のルールが社員を間違った方向に導いてしまうこともあるでしょう。

組織風土改革におけるステップ

では実際に組織風土改革に取り組むにはどうすればよいのでしょうか。

現在の組織風土を理解する

組織風土を変えるためには、まずは現在の組織風土を見える化しましょう。
組織心理学者のシャインによれば、組織風土を見える化するためにはグループディスカッションが有効だと言います。というのも意外と社員は会社に対してそれぞれの感じ方や考え方をもっています。こうした感じ方や考え方の違いを明らかにするために、なるべく社員全員で集まって会社の風土に関するキーワードをブレインストーミングによりホワイトボードや模造紙に書き出します。こうして見える化されたキーワードを総合的にまとめたものがあなたの会社の組織風土です。

問題点を可視化する

こうして見える化された現在の組織風土に対し、これからの会社の成長を考えた場合に阻害要因となるキーワードを特定していきます。同時に、どのようなキーワードであれば成長を実現できるかを考えましょう。新しいキーワードを洗いだしたら、現在の組織風土をあらわすキーワードに追加するキーワード、入れ替えるキーワードを特定していきます。新たなキーワードがまとまったら、それに向けてどう取り組むかを考えていきます。

実施目的の共有

理由や目的がなく組織風土を変えることはほとんど不可能と言えるでしょう。組織風土改革は会社の組織という物理的なものを変えるように感じますが、その実態は人の意識や行動を変えることです。社員全員の納得感がなければ組織風土を変えることはできません。経営トップが先頭に立って、これからの会社の成長のために組織風土を変えることが不可欠であることを繰り返し社員に訴えていきましょう。

組織的な経験を産みだし、組織風土をアップデートする

一番難しいのが、既存の風土やスタイルへの揺り戻しとの葛藤になります。誤解を恐れずわかりやすく説明すると、ダイエットしたい方が、パーソナルコーチを雇い、食事制限や筋力トレーニングをします。しかし、「食べたい」「休みたい」という葛藤と戦う必要があります。今までと違う事をする事や挑戦する事は、普通の人には辛いものです。しかし、ダイエットに成功し、今までに着ることができなかった服を着られたり、健康的な生活を経験したり、新たな経験も同時に生み出されます。その経験を前向きに認識できれば、辛いという認識ではなく、価値あることを続けるという認識に変わります。組織に置き換えると、新たなスタイルや風土を獲得するために、新たな経験を実行します。組織内抵抗や揺り戻し、もしくは業績への影響など多くの葛藤抵抗が存在します。しかし新たな経験や結果を、前向きに組織内全体に還流しにコミュケーションし、組織的な経験をアップデ―トできれば、おのずと組織文化は変わります。つまり、経験を産みださない限り、風土はアップデートされません。

新たな組織風土を仕組み化する

新たな組織風土を定着させるには、仕組み化することが不可欠です。評価や報酬制度の変更により、新たなキーワードに基づく行動を行った社員が評価されるようにしましょう。同時に上司からのフィードバックにより、新たな風土に基づくふるまいを行った社員を褒め、旧来のふるまいをする社員を叱る必要もあります。最初は従業員表彰制度も活用しながら、新たな行動を賞賛する取り組みを始め、徐々に新しいふるまいを奨励するのがおすすめです。

組織風土改革の成功事例

最後に組織風土改革の成功事例をご紹介します。

NEC 〜「ボトムアップ」型の活動と、「トップダウン」型の活動を実施

日本の電機メーカー大手であるNECは2018年に創業から119年目を迎え、企業文化の抜本的な改革を行うために「カルチャー改革本部」を新設しました。このカルチャー改革本部の推進のもと、以下のような取り組みが行われています。

・人事評価・育成制度の変革
・スマートワーク(働き方改革)
・変革をドライブするための社内コミュニケーション

これからの時代に即した社員の「行動基準」を新たに制定し、「NECグループとして、今後どんな行動にフォーカスしていくべきか」、「どんなルールに従って採用・人事評価・育成を行うか」を明確化しました。さらには、ワークショップ形式で現場の本音を引き出し、活動の成果を人事評価制度に繋げるなど、現在も継続して取り組んでいます。

まとめ

組織風土改革の取り組みは、目に見える仕組みから共通の価値観、そして暗黙のルールをも変える取り組みです。そして、組織風土は組織風土が良いとか悪いとか、という主観的なものではなく、ビジョンや事業戦略にあっている、あっていないで判断されるものです。葛藤や抵抗を乗り越え、新たな風土が定着するにはそれなりの時間があります。また、完全に新たな風土が定着する前に取り組みをやめてしまうと元の風土にすぐ戻ってしまうこともあるでしょう。本当に会社が「変わった」と言えるようになるには長い道のりになりますが、根気強く継続的に取り組みましょう。

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株式会社ソフィア

フィールド・リサーチ&コンサルティング事業責任者 シニア・コンサルタント

森口 静香

先が見えない、課題が曖昧でどうすればよいかわからないプロジェクトの伴走をすることが多いです。議論をその場で図解したり、時にはグラレコや動画を使って、みなさんの共通認識をつくることを得意としています。

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