行動指針の策定手順とは?浸透させる作り方と企業の成功事例を解説
最終更新日:2026.02.19
目次
「経営理念はあるが、現場の行動に結びついていない」「組織が拡大し、部門間の連携がうまくいかなくなった」
こうした課題に直面している経営企画・広報部門の責任者の方は多いのではないでしょうか。
組織が拡大するにつれ、経営層の想いを現場社員一人ひとりの具体的なアクションに落とし込むことは難しくなっていきます。弊社ソフィアの調査でも、多くの大企業が「部門間の壁」や「情報共有の不全」に悩んでいることが明らかになりました。
本記事では、単なるスローガンで終わらせず、社員の行動変容と組織の成長を促す「生きた行動指針」の策定手順と、それを社内に深く浸透させるための具体的な施策について、最新の調査データや成功事例を交えて徹底的に解説します。
行動指針とは?企業における意味と経営理念との違い
企業における行動指針とは、企業が活動していくうえで経営者や従業員の行動の指標となるものです。ルールや判断基準を定め、企業の理想の状態に近づくための指標となります。これは企業が行動指針に反した活動をしないよう制限をかけることにもつながるでしょう。
また、行動指針という言葉の意味としての経緯を知ることは重要ですが、言葉の定義にとらわれず、必要性の観点で活用することが重要です。
多くの理念体系の中で、企業理念やパーパスに比べて、行動指針は抽象度が低いと言えます。つまり、より具体的と言えます。その内容は具体的な行動や姿勢に対する記述すが多く、解釈の幅が狭いため、わかりにくいといったことはありません。
一般的な行動指針の定義とは
一般的に行動指針とは、なにかしらの行動においてとるべき方針、道標となるものを意味します。企業における行動指針も同様の意味で使われています。
具体的には、企業理念やビジョンといった上位概念を実現するために、社員一人ひとりが日々の業務において「どのように考え、どう行動すべきか」を示した具体的なルールや基準のことを指します。平たく言うと、抽象的な理念を、現場レベルの実務に翻訳した「行動のガイドライン」と言えるでしょう。
例えば、顧客からのクレーム対応や、新規事業のリスク判断など、マニュアルではカバーしきれない「判断のグレーゾーン」に直面した際、立ち返るべき原点となるのが行動指針です。
では、企業において行動指針を策定することには、どのような意味があるのでしょうか。本記事では、行動指針を策定するメリットと、行動指針の策定後に必要な「組織への浸透」の活動事例について解説していきます。
企業理念との違い
多くの企業において、理念体系は階層構造になっています。その中で行動指針がどのような位置づけにあるのかを理解することは、策定の第一歩となるでしょう。
企業における行動指針とは、企業が活動していくうえで経営者や従業員の行動の指標となるものです。ルールや判断基準を定め、企業の理想の状態に近づくための指標となります。これは企業が行動指針に反した活動をしないよう制限をかけることにもつながると考えられます。
よく似た概念として「企業理念」があります。
企業理念とは、企業が経営上もっとも重要視する価値観や考え方を指します。「なぜこの企業は存在しているのか」「なぜこの企業はこの事業を営んでいるのか」という理由や方向づけにかかわるものです。企業理念に基づいて行動指針が生まれるとも言えるでしょう。
また、行動指針という言葉の意味としての経緯を知ることは重要ですが、言葉の定義にとらわれず、必要性の観点で活用することが重要だと思われます。
多くの理念体系の中で、企業理念やパーパスに比べて、行動指針は抽象度が低いと言えます。つまり、より具体的ということです。その内容は具体的な行動や姿勢に対する記述が多く、解釈の幅が狭いため、わかりにくいといったことはありません。
クレドとの関係性と活用法
「クレド」とは、行動指針をさらに実務へと紐づけたものです。ただし、クレドは行動指針と同義で使われる場合もあり、行動指針を記したツールのことを指す場合もあります。ツールとしてのクレドは、業務中に携帯できるカード型のものが一般的ですが、企業理念と行動指針をあわせて記載した冊子を配布している企業もあります。
クレド(Credo)はラテン語で「志」「信条」を意味し、社員が自律的に判断するための「心のよりどころ」として機能します。ルールで縛るのではなく、価値観を共有することで行動を促す点が特徴です。
クレドを活用した企業は、リッツ・カールトンやジョンソン&ジョンソンなどが有名です。リッツ・カールトンが開発したクレドはスタッフが常備していつでも振り返れるようになっており、同社の行動指針を現場へ効果的に浸透させています。
リッツ・カールトンでは、毎朝のラインナップ(朝礼)でクレドの一節を読み上げ、自分たちの行動を振り返る習慣が定着しています。これにより、世界中のどのホテルでも均質なホスピタリティが提供されているのです。
ジョンソン&ジョンソンのクレドは「我が信条(Our Credo)」と呼ばれるもので、企業が負うべき4つの責任(顧客・社員・社会・株主)について記されています。また同社では定期的に「クレド・チャレンジ・ミーティング」が行われ、社員がこのクレドに関して議論を行い、そのときの自社の状況に応じて文言が変更されています。
この「議論し、更新し続ける」プロセスこそが、形骸化を防ぐための重要なポイントと言えるでしょう。
企業が社会的責任を果たすための指針
企業は、自社の利益や成長だけを追求していれば良いのではなく、社会的な役割や存在意義も求められます。渋沢栄一氏の著書「論語と算盤」で語られているように、企業は社会的に求められている役割(論語)と業績を上げること(算盤)を両立しながら、企業活動を行なっていく必要があるのです。
現代の企業経営において、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への対応は避けて通れません。行動指針の中に「環境への配慮」「多様性の尊重」「公正な取引」といった要素を組み込むことで、企業としての社会的責任を全うする姿勢を内外に示すことができます。これは、コンプライアンス(法令遵守)を超えた、企業の品格やインテグリティ(誠実さ)を表すものでもあります。
企業が行動指針を策定することで得られるメリットと効果
行動指針を明確に定め、それを組織全体に浸透させることは、経営戦略上どのような具体的効果をもたらすのでしょうか。ここでは、組織力強化、人材定着、ブランディングの観点から3つのメリットを深掘りしていきます。
社員が同じ価値観で行動できる(迅速な意思決定)
企業が行動指針を定めるメリットとして、最も実務的な効果は「判断基準の統一」と「意思決定のスピードアップ」です。
判断の基準となる行動指針が共有されていると、社員全員が統一された価値観で行動できるようになります。すなわち、スピード感を持った判断ができるようになり、現場の即時判断はサービスの品質そのものを向上させることにつながるでしょう。
ビジネス環境の変化が激しい現代(VUCA時代)において、すべての判断を上司や経営層に仰いでいては、ビジネスチャンスを逃してしまいます。行動指針という「共通の物差し」があれば、現場の社員は「この判断は自社の指針(例:顧客最優先)に合致しているか?」を自問自答し、自律的に行動できるようになります。
例えば、メルカリの「Go Bold(大胆にやろう)」という指針は、失敗を恐れずに挑戦することを推奨しており、これが同社の急成長を支えるイノベーションの源泉となっています。
社員の帰属意識(エンゲージメント)向上につながる
人的資本経営の観点からも、行動指針は重要な役割を果たします。
行動指針が浸透した状態では、社員が企業の行動指針に納得、共感したうえで企業に属しているため、社員の帰属意識が高まります。いわゆる、エンゲージメントやロイヤルティといったものです。帰属意識が高い状態では生産性が高まるほか、離職率低下といったメリットが得られるでしょう。
「自分たちの仕事にはどのような意味があるのか」「私たちは何を大切にして働くのか」という価値観が共有されている組織では、社員の心理的安全性が高まります。特に、リモートワークの普及により物理的なつながりが希薄になる中、行動指針による精神的なつながりは、組織の一体感を保つための「接着剤」として機能します。
弊社ソフィアの調査においても、社内コミュニケーションが活性化している組織ほど、離職率が低く、従業員エンゲージメントが高い傾向が見られます。
理念に基づいた企業文化が醸成される
行動指針は、企業の「らしさ」や「文化(カルチャー)」を形作る骨格となります。
社員一人ひとりが行動指針を体現した企業は、企業理念や経営理念に基づいた、組織のあるべき姿、理想像に近づいていきます。これは、理念に基づいた組織文化の醸成とも言えるでしょう。理念に基づいた組織文化の醸成はインナーブランディングにもつながります。また、自社に適した人材を採用する場面でも有用でしょう。
強固な企業文化は、競合他社が容易に模倣できない競争優位性(コア・コンピタンス)となります。また、採用活動においても、スキルマッチだけでなく「カルチャーマッチ」を重視することで、入社後のミスマッチを防ぎ、長期的に活躍できる人材を獲得することができます。
例えば、Googleが掲げる「10の事実」などの行動指針は、同社の革新的なカルチャーを象徴し、世界中から優秀な人材を惹きつける要因となっています。
行動指針を変える必要のある企業の状態とタイミング
行動指針は多くのメリットをもたらす点で企業にとって欠かせないものですが、企業の状態によっては、これまでの行動指針を変えなければならない場合もあります。ここからは、行動指針を変える必要がある企業の状態について解説します。
大企業病に陥っている(セクショナリズムの弊害)
行動指針を変える必要のある企業の状態として、組織の硬直化が挙げられます。
大企業病とは、規模の大きな企業で見られる非効率的な企業体質を指します。一般的に企業は、成長する過程において業容拡大や規模拡大などによって企業のガバナンス上の課題が増えていきます。それに伴って、管理業務が増えていき、各部門の業務が複雑化してしまいます。必要以上に手続きが多く細々して業務が増えている状態です。
業務が複雑化するに伴って、各現場には、行動指針よりも明確で必要性のあるガイドラインやルールが増えていきます。そうなると、現場では業務の仕組みやルールが行動を制限している状態になり、次第に行動指針が形骸化していきます。
ルールや規則などの細則の遵守に比重がおかれ、原則である行動指針が形骸化してしまっては元も子もありません。
その場合は、現状の経営課題を踏まえ、行動指針自体を刷新することも重要です。新しい行動指針に基づいて管理偏重の業務スタイルを変革削減するなど、業務のあり方やルールの見直しが必要です。
ビジネスや環境変化が速い中で、企業や社員がスピード感を持った行動をするには、細則の管理ではなく、行動指針への理解と権限委譲により、社員の行動を促すことが重要ではないでしょうか。
データで見る「部門間の壁」の深刻さ
弊社ソフィアが実施した「インターナルコミュニケーション実態調査2024」において、大企業が抱える最も深刻なコミュニケーションのボトルネックとして「部門間の壁(セクショナリズム)」が挙げられました。
組織が縦割りになり、隣の部署が何をしているか分からない、協力が得られないという状態は、イノベーションを阻害し、顧客への提供価値を低下させます。多くの大企業では、部門最適が優先され、全体最適が損なわれているのが現状です。
このような状況こそ、部門を超えた共通言語としての「新しい行動指針」が必要とされています。部門の利害を超えて「顧客のために何が最善か」を判断する基準を設けることで、組織の壁を打破するきっかけとなります。
時代に合った新しいビジネスに転換できていない
企業が過去の成功体験から抜け出せず、時代の変化に即した新しいビジネスへと転換できていない場合も、行動指針の策定が効果的です。
ビジネス(事業)は創業、成長、安定、衰退というサイクルで展開しますが、成長・安定期の成功体験にとらわれて、すでに衰退期に入っているにもかかわらず、そこから抜け出せなくなる場合があります。これを「サクセスシンドローム」や「経路依存性」などと言いますが、これを打破するためにも行動指針の見直しが効果的です。
「営業は足が命」という言説を嘲笑したCMが流行りましたが、○○神話みたいなものは、行動指針と蜜結合している場合が多くあります。過去の成功体験によってミスリードしないためにも、行動指針の問い直しが必要です。
例えば、製造業からサービス業への転換を図る際、「品質第一(不良品ゼロ)」という製造業的な指針だけでなく、「アジャイルな開発(まずは出してみる)」といったサービス業的な指針を取り入れる必要があるかもしれません。事業変革(DXなど)を成功させるためには、それを支える「人の意識と行動」の変革が不可欠です。
行動指針を策定する具体的な手順とフレームワーク
行動指針を単なる「壁に貼られた標語」にしないためには、策定プロセス自体に意味を持たせることが重要です。ここでは、社員の納得感を高め、実効性のある指針を作るための6つのステップを解説していきます。
策定プロジェクトの進め方(3つの型)
まず、誰が主体となって策定するかを決める必要があります。一般的に以下の3つのパターンがあります。
トップダウン型: 経営陣や創業者が強力なリーダーシップで決める。
メリット:スピードが速い。創業者の想いや経営戦略をダイレクトに反映できる。
デメリット:現場の実態と乖離する恐れがある。「押し付けられた」と感じられやすい。
プロジェクト型: 各部署から選抜されたメンバーで策定委員会を作る。
メリット:現場の意見を反映しつつ、効率的に進められる。バランスが良い。
デメリット:選抜メンバー以外の社員の当事者意識が薄くなる可能性がある。
ワークショップ型(ボトムアップ): 全社員や多くの社員を巻き込んで議論する。
メリット:納得感が高く、策定プロセス自体が浸透活動になる。
デメリット:時間がかかり、意見の集約が難しい。尖った指針になりにくい。
大企業においては、プロジェクト型をベースにしつつ、要所でアンケートやインタビュー、一部ワークショップを取り入れて社員の声を吸い上げる「ハイブリッド型」が推奨されます。
1. 企業理念・経営理念・ミッションと組織の行動状態を言語化・可視化する
行動指針の策定方法の第一歩は、現状の棚卸しです。
行動指針などの上位概念が、さまざまなかたちで機能することがわかりました。では、行動指針を策定するときには、具体的にどのような手順ですすめるのでしょうか。
まずは現在の企業理念・経営理念・ミッションの内容を再度チェックするところから始めていきましょう。
今、会社がどのような価値観を大事にしているのか、目指している貢献の形はどのようなものなのかヒアリングやアンケートを実施し、確認しながら、現在の社員や組織の行動の実態を細かく整理していきます。現状を正しく整理することが、このあとの指針策定のベースをつくります。
全員が共通して現状を認識できるように、具体的に言語化したり、数値で可視化したり、丁寧に分析・整理しましょう。
弊社ソフィアの調査では、現場社員と経営層の間にはしばしば「認識のギャップ(意識のズレ)」が存在します。経営層が思う「我が社の強み」と、現場が感じている「実際の行動様式」に乖離がないか、サーベイやインタビューを通じて徹底的に洗い出すことが重要です。
2. あるべき状態・目指すべき状態を言語化し、現時点との乖離を明確にする
現状を正しく可視化できたら、次は理想的な状態について精度高く言語化・可視化していくステップになります。
一般的に、理念やミッションは抽象化された言葉で示されているケースが多いので、掲げられた言葉を字面通りに受け取るのではなく、その背景にあるものを具体化しながら思考を深めます。
理念やミッションで掲げられているものを体現するためには、どのような行動が必要なのか、またどのような価値観を浸透させると、それがスムーズになるのか検討します。目指すべき状態を明確にできたら、次に現状とどのくらいの乖離があるかを把握しましょう。乖離が大きいか小さいかが、このあとの指針策定の段階でヒントになるでしょう。
また、昔から続いている文化のなかで、今後も残すべきものはなにかについても考えましょう。これを「残すべき資産(Asset)」の抽出と呼びます。変えるべきものだけでなく、創業以来の良きDNAを再定義することで、古参社員の納得感も得やすくなります。
3. 理念やミッションに反する価値観や行動(Do Not)も考える
理念やミッションのためになる行動を洗い出すことと同じくらい大事なのが、理念やミッションに反する行動を考えることです。
「クライアントや顧客に不利益になるような行動は何なのか」、「もしくは自社の目指すべき方向性に合わない行動とは」などを具体的にリストアップしていきます。
避けたい行動についてわざわざ考えるのは、とるべき行動を真逆の視点から洗い出すことができるからです。ふさわしくない行動について思考を深めることで、理想の働き方が明確に見えてきます。
例えば、「スピード」を重視するなら、「過度な承認プロセス」や「失敗を恐れて検討ばかりすること」はDo Not(やってはいけないこと)として定義されます。これを明確にすることで、コンプライアンスリスクの低減や、企業の美意識(Aesthetics)の統一にもつながります。
4. 検討した内容をまとめて整理する
続いては、ここまでのステップで考えてきたことを、振り返りながら整理するフェーズです。
まずは全体を見返しながら、考えてきた大事なことが、現状や、時代性にあわせて、本当に必要な行動かどうかを精査します。
時代によって価値観は大きく変わるものなので、違和感がないか、客観的に判断しましょう。
また、示したい指針の量が膨大である場合には、スリムにまとめていきましょう。抽象的すぎるものは、具体的にわかりやすく噛み砕き、簡潔に示すことが、行動指針を出す際のポイントです。
多すぎる指針は記憶されません。一般的には3〜7つ程度に絞ることが推奨されます。マジックナンバー「7±2」の法則などもありますが、片手で数えられる程度が最も浸透しやすいと言われています。
5. 整理した内容を標語として言語化する
行動指針の内容が定まったら、最後に、どのように打ち出すのかを考えていきます。
できるだけ簡潔な文言で行動指針を示すのが、スムーズな浸透のためには効果的です。キャッチーな標語を決めて、広めやすいようにしましょう。
ただし、キャッチーな言葉だけでは伝わらない場合もあるでしょう。その際は、1、2文で簡潔に説明を加えても良いでしょう。いずれにしても、誰の頭にも残るように、わかりやすく簡単にまとめることがポイントです。
有名企業の例として、Googleの「10の事実」やAmazonの「Leadership Principles」などは、シンプルかつ力強い言葉で表現されており、全世界の社員に共有されています。
作成した行動指針を社内に浸透させるには?
行動指針は「作って終わり」ではありません。むしろ、策定後の浸透活動こそが本番です。多くの企業が直面する「形骸化」を防ぐための、具体的かつユニークな施策をご紹介します。
行動指針と業務の意味づけをする
ここまで考えてきた行動指針を、より早い段階で、深く従業員に浸透させるには、どうしたらいいでしょうか。行動指針をより意味のあるものにするために、押さえておきたいポイントを整理します。
現在のビジネスと紐づけながら行動指針を示すと、従業員が具体的なイメージを膨らませやすく、早い段階で浸透することが期待できます。もし、現状のビジネスにうまく紐づけできない場合は、今後行われるビジネスと紐づけるようにしましょう。
また、行動指針に沿った行動がとれているか、日々の業務において定期的に振り返る習慣を作ることができると、さらに効果的です。
例えば、会議の冒頭で「今回のプロジェクトは、行動指針の〇〇に基づき〜」と宣言する、あるいは意思決定の際に「それは行動指針に合致しているか?」と問いかける文化を作ることが重要です。
ストーリーテリングを用いて伝える
ストーリーテリングとは、印象的な物語を織り交ぜることで、より効果的に相手に物事を伝える説明手法です。
ストーリーテリングで語りかけると、聞く人を強く惹きつけることができます。この手法を使って行動指針を示せば、人々に深く浸透するでしょう。感情に訴えかけることで、行動変容を促すフェーズまで、スムーズに持っていくことができます。
単なる箇条書きのルールではなく、「なぜこの指針が生まれたのか」「過去にこの指針を体現して成功した(あるいは危機を救った)エピソード」を物語として語り継ぐことで、社員の心に深く刻まれます。創業者の苦労話や、顧客からの感謝の手紙など、エモーショナルな要素を含めることが鍵です。
社内広報ツールを利用する
社内報・社内パンフレットを利用するのもおすすめです。社内報や社内パンフレットは、トップダウン型のコミュニケーションにとくに効果的なツールです。アクセスする時間や場所を問わないので、多くの人が自分のタイミングで閲覧できるのが特長です。広い範囲に向けて情報を共有できる点で、効率性に優れています。
イントラネット/社内ポータルを利用する
イントラネットとは、組織に必要な情報やツールをまとめた社内グループウェアのことです。便利なコンテンツを集めて共有することで、社内全体の生産性を向上させているシステムです。社内の多くの人が、習慣的に利用するものなので、このようなグループウェアに行動指針を掲げると、目にする頻度が増え、従業員の意識に効果的に訴えかけられるでしょう。
社内SNSを積極的に活用するのもおすすめです。社内SNSとはFacebookやInstagramなどのオープンなSNSとは違い、企業内でのやりとりに限定されたSNSです。活発に利用することで、従業員同士のコミュニケーションを促すことができます。このSNSのなかで広い範囲に発信すれば、行動指針を印象づけることが可能です。SNS上の反応から、社員の受け取り方をチェックできるのもメリットです。
情報共有の「三重苦」を解消する
弊社ソフィアの調査では、社内コミュニケーションにおいて情報が「ない・遅い・見つからない」という「三重苦」が発生していることが指摘されています。
ツールを導入するだけでなく、「フロー情報(チャットなど)」と「ストック情報(ポータルなど)」の使い分けを明確にし、行動指針に関連する良質な情報(称賛事例など)が埋もれないような設計が必要です。
対話(ダイアログ)の場を設ける
対話とは、まずお互いの立場や意見の違いを理解し、そのズレをすりあわせていく行為です。
何かしらのテーマに基づいて、それぞれの意見を述べ合います。行動指針を題材に対話を行えば、各々がその内容を強く意識するきっかけになるでしょう。反対意見を持っている人がいた場合も、対話のなかで新しい気づきにたどり着くかもしれません。組織全体で、一体感をもって行動指針を目指していく、理想的な組織の土壌が形成されていきます。
タウンホールミーティングや、少人数での座談会(車座集会)、マネージャーとメンバーの1on1ミーティングなどが有効です。
ビデオやYouTubeで配信する
ビデオ配信やYouTubeでの動画公開で、トップメッセージを配信することも効果的な手法です。
動画はテキストや口頭だけの情報発信よりも、記憶に残りやすいのが特長です。ビジュアルを駆使して説明できるので、誰にでも理解しやすいかたちでメッセージを発信できます。複雑なメッセージをわかりやすく説明できるというのはもちろん、認識の齟齬を防ぐという意味でも、動画を取り入れるのはおすすめです。
弊社ソフィアが支援した行動指針の浸透成功事例
行動指針の策定はゴールではなく、スタートです。実際に企業がどのように課題を乗り越え、指針を浸透させていったのか、具体的な事例を見てみましょう。
企業規模10,000名以上のグループ企業Aの事例:現場発のエピソード集
同社では、設立120年を機に、現場から発した問題解決やサービス改善の流れを作り出すことを目的として、新しくグループ理念と行動指針をリリースしました。しかし、本来トップダウンの気質が強い企業風土だったため新たなグループ理念と行動指針に対して社員の共感がうまく醸成できていない課題がありました。
そこでソフィアは、行動指針を進んで実践している社員に取材して行動のエピソード集を発行し、社員の顔写真とあわせてそのエピソードを掲載したポスターも作成しました。ポスター5,000枚をすべての事業所に配布・掲示すると、現場社員から次のシリーズを要望する声が挙がり、その後はポスターをシリーズ化して展開。行動指針にそった行動を称賛する流れと、体現する流れをうまく作り出すことができました。
この事例のポイントは、「上からの押し付け」ではなく「横のつながり(ピア・ツー・ピア)」を活用した点です。身近な同僚が称賛されている姿を見ることで、「自分もやってみよう」という自発的な行動意欲を引き出すことに成功しました。
企業規模10,000名以上のグループ企業Bの事例:グローバルへの多言語展開
同社では海外での売上が全体の過半数を占めており、順調な成長を続けている中、海外で働いているローカルスタッフの離職率の高さが問題になっていました。求心力を向上させるために、会社の歴史や日本におけるポジションなどをローカルスタッフに対して伝えることの必要性を認識していましたが、各国の現地駐在員に一任されており、ままならない状態でした。
ソフィアでは、長期ビジョンを策定するとともに「自社の成長を支えた価値観」や「お客様に対する想い」、「従業員に対する想い」をまとめて、行動指針を新たに策定しました。これらの内容を、社内報をはじめとした各種コミュニケーションツールを活用し、多言語でグローバル全従業員へ発信した結果、海外のナショナルスタッフから信頼と共感を得ることができるようになりました。
グローバル企業においては、言語や文化の壁を超えて価値観を共有することが非常に困難です。この事例では、翻訳の正確さだけでなく、現地の文脈に合わせた「意訳」や、ビジュアルを多用したコミュニケーションツール(動画やインフォグラフィックス)の活用が奏功しました。
実務担当者は行動指針の機能と役割を抑えることが重要
人々を求心するための行動指針だけではなく、組織の求心力を高める上位にある概念(理念など)は、絶対的であり、不変的なものであるように見えます。それは組織の一体感を醸成し変革する原動力にもなる一方で、その絶対性から大きく多様性を棄損し、組織の方向性を変えてしまうこともしばしばあります。行動指針など所管する実務担当者は、この行動指針の多様で柔軟な機能を把握し経営と理念の関係を理解することで、事業や組織におけるさまざまな事象を俯瞰して捉える必要があります。
ここでは、行動指針が、集団や組織もしくは事業にどのように機能しているのかを解説することで、自社に必要な行動指針、もしくはその解釈を種別しながらご紹介します。
未来を見据えた行動方針
未来に向けた具体的な行動指針を示すことは、組織の求心力となり、従業員やステークホルダーの共感を集め、成果を結びます。
数値や期限を明確にし、創り出すことを標榜することで、組織内での行動変容を促し、ビジネスチャンスを見出すようになります。行動指針は組織の印象も変えるため、未来を見据えた明確な目標設定が必要です。
価値観や判断を示す行動指針
組織には、そのイデオロギーや考え方を示す価値観としての行動指針があります。
これは、倫理観や社会性を含む内容で、具体的な行動レベルの目標が掲げられます。従業員は、これを基準にあらゆる物事を判断します。価値観としての行動指針は、現場の意思決定や成果に対する解釈にも影響し、受け継がれる組織風土や文化、社員の学習姿勢にも影響を与えます。
事業の運営における目標達成のための行動指針
商品・サービスの特長や強みを示す、事業としての行動指針もあります。
商品やサービスの特長や強みを示すことで、自社の存在価値を明確化することが可能です。この指針は、ビジネスモデルや業務フロー、評価などにも影響を与えます。
事業および、その事業におけるコアコンピテンシーが明確であると、人事制度も明瞭になるでしょう。明確な事業コンセプトに基づいた評価制度は、終身雇用や年功序列に代わる「ジョブ型」の採用・評価を可能にし、経営や人事にとって重要な問題を解決します。
組織内の人間関係を示す行動指針
企業は行動指針を掲げることで、組織内での人間関係が円滑になり、経済合理性を追求する企業でも安定的な組織運営ができます。
企業は経済合理性を追求する組織ですが、職場では「仲間」や「家族主義」など、人間関係が色濃く出てきます。経済合理性を追求しながらも、良好な人間関係を築かなければならないというジレンマに陥る企業も多いでしょう。
行動指針で人間の関係性について打ち出すことで、組織風土や文化に強く影響する安全弁を作ることが可能です。企業において示された行動指針は、組織風土や文化に強く影響を与えます。
問題解決の正当性としての行動指針
経営者やマネジメントにとっては、何を問題とし、何を課題とするのか?という根本的な前提が必要です。
組織や集団の中での事象を問題や課題として設定するためには、前提にある思想背景が必要です。そのうえで、解決に向けた組織を先導するための正当性も必要になります。正当性の指針となるのが行動指針です。そのため、企業は思想や価値観などの前提を揃えた上で、行動指針により正当性を示さなければなりません。
まとめ
行動指針は全社が一丸となって事業に取り組むために欠かせないものです。さらに、帰属意識を高めたり、理念に基づいた企業文化を醸成したりと、企業の持続力やブランド力を高めるためにも重要です。行動指針が定められていなかったり、「行動指針を変える必要がある企業の状態」に陥っていたりする企業は早急に対策を取る必要があります。
しかし、行動指針は作成すればそれですべてが解決するわけではありません。社内に浸透させて始めてその効果を発揮します。浸透していない行動指針はやがて形骸化してしまうでしょう。行動指針の策定は、企業を成長させるための手段の一つであり、策定することが目的ではないことを忘れないようにしましょう。
行動指針は、企業のOS(オペレーティングシステム)のようなものです。時代や環境に合わせてアップデートし、常に最新の状態に保つことで、組織は健全に機能し続けます。
弊社ソフィアでは、独自調査に基づくデータと豊富なコンサルティング実績を活用し、企業の現状に即した行動指針の策定から、ツール制作、研修、制度設計に至るまでの浸透施策を一気通貫でご支援しています。「部門間の壁」を越え、社員全員が生き生きと働ける組織づくりをお考えの際は、ぜひご相談ください。




