
2025.01.23
理念とは?経営における重要性と刷新するメリット、浸透方法も解説!

目次
理念とは、その組織や団体が共通して持つ思想を指します。理念をもつことで、組織全体が一体となり成長へ向かうことができます。理念あればこそ、組織の一員は、自分が全体の中で、何をすべきか?がわかり、日々の業務において、どういう創意工夫を加えていけばいいか?も見えてきます。理念なしには、どんな組織も、一歩も進めません。もちろん理念ばかりを掲げても追随するメンバーがいなければ意味はありません。
理念が浸透している組織では、細かなことを社員にいちいち指示しなくても、社員は自発的に動いていくようになります。理念なき組織では、社員は途方に暮れるでしょう。企業経営である以上、利益を出すことは、当然の前提ですが、それ以上に、何の為、自分たちはそもそも、この組織に集まっているのか?を、はっきりさせておくことこそ、新入社員の採用する時の、目安にもなり、その理念が貫かれている限り、離職が急激に高くなるという事も起きにくくなります。
社員の給与水準や福利厚生はあくまでも、二次的な話題であり、この仕事ができるから、この組織にいるんだという根幹の部分がしっかりしていれば、利益率をどう上げるかや事業をどう展開していくかは、自然と答えが出てくるものです。
本記事では企業経営にとっての理念の定義やメリット、そして浸透させる時のメリットとデメリットまで紹介していきます。
理念とは?
企業の理念は、その組織が追求する基本的な価値観や信念を示すものであり、全ての活動や意思決定の基盤となります。しかし、理念の存在だけでは十分ではありません。ここでは、経営理念と企業理念、パーパスとの違いについて解説します。
理念とは
理念とは、姿勢や考え方や価値観など、目に見えない形而上のものです。経営理念であれば、経営に対する原則や意思決定の基軸や姿勢になります。経営哲学という言葉で言い換えることもできます。主に、目に見えない抽象的な経営という行為が根本的にどのような在り方をしていれば理想的なのかを、わかりやすく言語化したものと言えるでしょう。
しかし、実際は言語化され、社員同士の会話の中に表出される実体のないものです。つまり、パーパス、経営哲学、ビジョンなど、組織と人をつなぐ形而上の概念として、扱われています。
経営理念と企業理念の違い
経営理念と企業理念は、企業の方向性を示す重要な指針です。これらの理念が明確であることで、社員の意識統一や組織の一体感が生まれます。では、経営理念と企業理念の違いはどのような部分にあるのでしょうか。
企業理念
企業理念とは、企業がその存在意義や使命を明確にし、長期的な目標や価値観を表す基本的な考え方です。国家で言えば憲法にあたるものが企業理念であり、大抵は創業者の言葉であったり、古くからの社是であったりします。
企業理念は、細かな事を規定せず、大まかにその組織が何を目指しているのか?を短い言葉で述べたものです。
具体的には、「社会に貢献する」とか、「誠実の仕事をする」とか、「組織の和を尊ぶ」などが挙げられるでしょう。その企業がどんな製品を創るのか?も明記されない場合が多く、企業理念はある種の心構えと考えれば良いでしょう。
企業が創り出す製品は、時代によって変わっていきます。いつまでも同じ製品を創り続けていける時代は、すでに終わっています。だからこそ企業理念では、出来るだけ具体的な言葉を避け、抽象的に本当に大事なモノだけを指し示す言葉が使われます。
企業理念は、通常、経営理念よりも上位の概念とされています。これは、企業理念が企業全体の長期的な方向性や基本的な価値観を定義するのに対し、経営理念はそれを実現するための具体的な方針や戦略を示します。
経営理念とは
経営理念とは、企業のトップである経営者が重視する価値観や信念に基づいて策定される比較的短期間の基本方針です。経営理念はある時点における企業の全ての活動や意思決定の基盤となり、社員の行動指針ともなります。これにより、企業全体が今のこの瞬間にどこに向かおうとしているかがわかります。
経営理念は、現時点での企業の使命やビジョンを明確にし、経営者の思いを具現化したものです。経営理念には、企業が何を重視し、どのような価値を提供するかが具体的に、明記されており、これによりブランドイメージや社会的な信頼を築く基盤となります。経営理念には、その時点での主力商品が掲げられ、その商品やサービスに提供によって社会にどんな働きかけをしたいかが、語られます。例えば「服から常識を変えよう」とか「新しいコンセプトの車」と言ったものが挙げられます。
また、経営理念は時代の流れや社会情勢に応じて変化することがあります。経営者の視点や市場動向が反映されるため、新しいリーダーが就任したり社会の急激な変化が起きたりすると経営理念が見直されることも珍しくありません。ある会社では、経営理念をミッション、ビジョン、バリューの3つで表現したり、最近では、パーパスで経営理念を表現する会社も増えています。この変化への対応により、企業は常に現代のニーズに対応し、柔軟に対応できる体制を維持することができます。
理念とパーパスとの違い
パーパスとは英語で「purpose」と書き、「目的」や「意図」を意味します。ビジネスの文脈で使用される場合、企業が掲げる目的や運営の意図を指し、一言で言えば「社会におけるその企業の存在意義」と言えます。パーパスは、企業が社会に貢献するための方向性を示します。例えば、環境保護、技術的革新による社会課題の解決、、地域社会への貢献などがパーパスに含まれることがあります。
パーパスと経営理念の主な違いは、焦点がどこにあるかです。パーパスは企業の社会的な役割や存在意義に重きを置き、社会全体に対する貢献や影響を考慮したものです。一方、経営理念は企業の内部に焦点を当て、経営者が抱くビジョンを実現するための具体的な行動指針を示します。
パーパスは、多国籍企業が環境や周辺に対して、存在するという視点で作成され始めました。しかし、日本企業はそもそも「三方良し」という概念で、企業や法人が存在するという価値観がそもそもある為、海外企業をマネしなくても企業理念や経営理念が、環境や社会を包括した内容になっているケースが少なくありません。
理念がなくても事業がうまくいく?
結論から言ってしまえば、事業はうまくいくことはないでしょう。
企業の運営において、「経営理念」や「企業理念」が重要とされることは一般的な認識です。経営理念は、企業の価値観や信念を明確にし、社員全員が一丸となって目標に向かって進むための指針を示します。多くの企業は、理念を掲げ、それを組織全体に浸透させることに注力していますが、理念が社員の行動や意思決定を導き、企業の一貫性やブランド価値の向上に寄与するためといえるでしょう。
しかし、理念が必ずしも全ての企業で浸透しているわけではありません。日本広報学会の調査によると、理念が「全く知られていない」という企業が33%存在し、「言葉の存在を知っているが、言葉を覚えている」にとどまる企業が42.6%もあることがわかります。このデータは、多くの企業が理念を掲げているものの、それが社員に十分に理解され、実行されていない現実を示しています。
それでは、理念がなくても事業はうまくいくのでしょうか?確かに、一部の企業は理念が明確でなくても成功を収めています。これは、強力な製品やサービス、優れたマーケティング戦略、独自の市場ポジションなど、他の要素が成功の要因となっているからです。また、小規模なスタートアップやニッチ市場に特化した企業などでは、明確な理念よりも柔軟性や迅速な意思決定が優先されることもあります。
しかし、その競争優位は環境変化や競合他社の状況変化から、長く成功を収めることはできません。新しい事業の創造や改善を進める上で、何を足場にするのか?、寄って立ち理念がない企業や組織は、事業をピボットすることはおろか、方向性すら明示することはできないかもしれません。つまり、事業が順調に成長していく段階において理念はもしかしたら理念は忘れらる事があるかもしれません。しかし、事業が行き詰まり、再展開が必要なタイミングにおいては、理念が重要な役割を発揮することは間違いないでしょう。
人を求心し、人を動かすのが理念
理念と言っても、「経営理念」「創業理念」では意味合いは多少違いますし、企業毎に上下の関係の違いもあります。また、「哲学」「ビジョン」「パーパス」「行動指針」など、細分化して表記されている会社もありますし、統合している会社もあります。一般的な解釈は違いがあるため、詳しく知りたい方は下記のリンクをご参照ください。
各企業においては、一般的解釈と自社との整合性を取ることは、重要であるものの、何よりも、「経営理念」「ビジョン」「パーパス」等々が実態として、社員や顧客や社会に対して求心力があるのかどうかであり、つまり人や組織を動かしているのかどうかの方がより重要です。逆に言えば、整理されていても、求心力をもたない理念は無価値であるとも言えます。「経営理念」「創業理念」「哲学」「ビジョン」「パーパス」「行動指針」などを総称して理念として捉えた時に、理念は組織にどのように作用しているのかをご紹介していきます。
企業が理念をもつメリットとは?
企業が理念をもつメリットは社員ひとりひとりが仕事に対して高い意識を持てるようになることです。また理念は企業の目指す方向性や価値観を明確にし、それに基づいて業務に取り組むことを可能にします。社員は自らの役割をより意識し、長期的な視野で業務にあたることができるため、周囲の状況に左右されず、一貫して企業の理念に沿った行動が取れるようになります。ここでは、企業が理念をもつメリットについて具体的に解説していきます。
社員ひとりひとりが仕事に対して高い意識を持てる
理念があることは、社員ひとりひとりが仕事に対して高い意識を持つ助けとなるでしょう。念は企業の核となる価値観や方向性を示し、これに基づいて社員は自らの行動や判断を行います。理念が明確であれば、社員は組織全体の目標や価値観を理解しやすくなるため、日々の業務においても自らの役割や責任を強く意識することができます。
理念が浸透していれば、社員は自分の仕事が企業の大局にどう寄与しているかを理解しやすくなります。この理解はモチベーションを向上させ、業務効率化やパフォーマンスの向上につながることが期待できます。さらに、理念が社内で共有されれば、社員同士や部門間の連携や協力も促進され、組織全体の一体感が生まれるでしょう。
企業の衰退期・再展開期に必要な理念
理念や価値観が共有されてなくとも、業績が向上されている会社は、業界や産業自体が伸びているケースがほとんどです。要するにビジネスモデル自体が成長性の高い分野や競争優位性があるということです。仕組みで儲かっており未来も成長できる確信に満ちているため、社員のモチベーションも高いでしょう。
しかし、そのような企業は競合が増えて業界や産業の勝ちパターンが明確になれば、競争の激化や価格圧力により、成長率が下がっていきます。衰退期から再展開期に転換する必要があるわけです。この段階でビジネスを再展開するためには、今まで創り上げてきたビジネスモデルや組織を変化させ、再編するだけの上位の理念や価値観の力を借りる必要があります。これがなければ正当性に欠け、大きな変革の機運も生まれず、大胆な組織編制や戦略変更は望めないでしょう。
逆に正当性さえあれば、組織編制や戦略変更はやり易くなります。ここで言う「正当性」とは難しい事ではなく、企業を経営していく上で、明らかに業績改善に結びついたり、社内の雰囲気を活き活きとしたものにしたり、企業のイメージが、外的に良くなっていくような事を指します。
「誰が見てもよい事なのに、なぜかその実行に踏み出せない」言い変えれば、「正当性はあるのに、勇気がない」といった状況で、大きな力を発揮するものこそ理念です。理念が正当性を支えている限り、抜本的な改革でも、部分な改革でも、変革コストに大きな差はありません。正しい改革の場合は、その速度は速くなります。速度が速くなるという事は、コストが下がるという事であり、大事なことは抜本的か、部分的かという事ではなく、スピーディーな速度感で、理念を実行していけるかどうかです。
ここで注意が必要なのは、変革計画や抵抗勢力への配慮ばかりを気にする計画づくりに時間をかけることは、コストパフォーマンスに欠けるということです。むしろ、理念を下支えにした、社内への説得や社内コミュニケーションに時間をかける方が結果として圧倒的にコスパが良いものとなります。
ブルシットジョブを削減する。
ブルシットジョブとは、デヴィッド・グレーバーというアメリカの社会学者が提唱した概念です。グレーバーによると多くの企業で、行われている繰り返しの多い仕事や単調な仕事は、ブルシットジョブに分類されます。特に現代では単調な仕事はDX導入によって無くす事が可能であり、グレーバーはブルシットジョブが社会から最終的には無くなることを提言しています。
実はブルシットジョブは肉体労働とは限りません。経理のようなコンピューターにほぼ全て任せられるような仕事もブルシットジョブに含めることができます。詰まるところ、いずれは「企業においてそもそも経理部は必要なのか?」という議論が出てくるはずです。
ところが、デジタルトランスフォーメーション時代において、ブルシットジョブは、それが本当に必要なのかどうかという議論にはならず、ブルシットジョブをデジタル化し、効率化を図っていることが現状です。ビジネストランスフォーメーションや本質的なデジタルトランスフォーメーションを展開するには、ブルシットジョブを廃止する事も含め、大胆な改革が本来必要なはずです。
この時、ビジネスや組織運営全体を改革する為の理念や解釈変更が必要になります。それにも関わらず、特に組織運営では高度にサイロ化効率化した分業組織は管理間接業務が肥大化しており、その業務従事者は、ブルシットジョブであっても、これを必要なのだという意識をもって業務にあたっています。これが組織変革の抵抗勢力の原因です。
この状態で改革を進めようとしたところで、この抵抗勢力と改革推進との間で良し悪しを規定し、敵と味方を創る図にしかなり得ません。これは古くからある組織変革の手法ではありながらも、成功している事例は多くありません。
良し悪しではなく、まずは理念や価値観から自身のビジネスや業務を再解釈する必要性があり、自社におけるブルシットジョブを明確にし、廃止していくことがスタートになります。
ただ、理念や価値観が脆弱な企業であれば、社内闘争的組織変革を選択するほかないでしょう。もしくは、場合によっては理念やパーパスを再構築する方法もあります。
長期的な目線で業務に当たれる
理念が明確に定められていれば、組織全体が共有する長期的な目標や将来像を明確にイメージすることができます。これにより、企業は将来の方向性を見据えた戦略的な意思決定が可能になります。たとえば、1年後、5年後、10年後といった長期的な時間枠で企業がどのように成長し、どのような社会的貢献を果たすかを見据えることができるでしょう。
理念が長期目標としての指針となるため、迅速な判断が求められる場面であっても方向性を失わず、組織全体が一致して行動することができます。
理念が明確に設定されていれば、一時的なトレンドや状況に左右されることなく、持続可能な成長と発展を目指すことができ、結果として、企業は競争力の強化や市場での地位確立に向けて、戦略的かつ長期的な取り組みを行うことができるのです。
周囲の状況からの影響を受けにくくなる
理念が明確に定められていれば、企業や個人は日々起こりうる社会的な流行や他人の言動に左右されることなく、自己の方向性や価値観を保つことができます。これにより、流行や一時的な状況が情報として客観的に捉えられ、適切に解釈されるようになるでしょう。
理念が明確であれば、変わらなければならないポイントや変えてはいけない原則が明確になります。これは判断の基準となり、企業や個人が迷いや混乱することなく行動する為の助けとなります。例えば、市場の変化や競争の激化といった外部の状況にも、経営理念が提供する方向性があり、それに基づいて戦略を立てることが可能となります。
いかなる組織も、外部の変化に多かれ少なかれ、影響を受けます。これは自然なことで、企業が社会のニーズに合わせて、製品を出していかなければならないので、市場動向や流行変化には、むしろ敏感であるべきです。ただし理念は、そのような市場や流行とは直接関係がなく、言わばどんな状況に企業が置かれても、そこだけは変わらないという基盤のようなものです。
個人においても組織においてでも、基盤が変化しないという事は良い事です。もちろんこの場合、基盤が良いものであることが前提です。どんなに日々の状況に応じて、言動が移り変わろうとも、その人の基盤が常に「優しさ」である場合、周囲の人は、安心して共に業務することができるでしょう。
企業の場合でも、市場がどれほど変化しても、顧客第一という基盤が不変であれば、信頼を失うことはありません。理念とは企業の基盤であり、この基盤あればこそ信頼も生まれます。その信頼は顧客や世間からの信頼だけではなく、従業員からの信頼であることも忘れてはいけません。
企業の認知度を高めることができる
理念を活用することで、企業は自らの存在意義や価値を明確に社内外に伝えることができます。これにより、企業の認知度を向上させることが可能です。
成長する企業は、単に商品やサービスを提供するだけでなく、その企業が追求する価値観や社会的な意義までもが貢献性の高いものを持っています。理念が明確であれば、それを通じて企業がどのような目的を持ち、どのように社会に貢献しているのかが明確になります。このような企業は、消費者や投資家、社会全体とのつながりを強化し、信頼を築くことができます。
また、理念が共有されることで、社員やパートナー企業、地域社会との関係も強化されるでしょう。企業が自らの理念に基づいて行動する姿勢は、企業の持続可能性や社会的責任を証明するものとなります。これにより、企業の認知度は単なるブランドの知名度以上の意味を持ち、社会的な信頼と共に成長していくことが期待されます。
同じ価値観の人材を集めることができる
企業が自らの理念を明確に公開することで、その理念に共感し賛同する人材を集めることが可能です。価値観や信念が一致する人材は、企業の目標達成や文化に貢献しやすく、組織内での円滑なコラボレーションを促進してくれるでしょう。
高い能力を持つ人材であっても、価値観や考え方に相違がある場合、業務の効率性やチームのモチベーションに悪影響を及ぼすことがあります。しかし、理念が明確であれば、その理念に共感する人材が自然と集まり、企業文化を支える基盤が形成されます。これにより、採用や育成のプロセスにおいても、理念を基準にした選択が行われ、結果として組織全体の一体感と成果が向上します。
人材を採用する時には、新卒であれ中途採用であれ、まず企業の理念と合うかどうかが採用基準となります。どれほど能力があり、優秀な人財でも、その企業の理念と合わなければ、長く在籍することは難しいでしょう。しかも、優秀な離職したという印象が社内に残る事も悪影響です。「人材採用においては、まずは理念から」これが鉄則です。しかし、理念を基準にして人財採用を行っている企業はそれほど多くはないため、理念を人事や労務の部署に徹底させることは重要でしょう。
理念はカルトを生みだすのか?
ビジョナリーカンパニーの中でも、8つの生存の法則の中で「カルトのような文化」という内容があります。理念や哲学を社員に共有する施策の中で、企画担当者が必ず悩む問題です。簡単に言えば、企業や組織が、社員に対して、理念や哲学といういわゆる形而上の概念を、社員に浸透共有するという行為は、果たして良いのか?という問いが浮かぶということです。
カルトと言われると、場合によってはネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、元々の英語の意味は、「熱狂の対象」や「崇拝の対象」という意味であり、広い意味では教義を指す言葉でした。現代では、有名な世界の大企業の多くが、社員に無償労働を要求するような環境でありながら、社員たちはまるでカルトの信者のように、会社や経営者について行く理由があります。それは、企業の理念に共感し、その理念に魅了されたからです。彼らは自分自身をその理念に捧げる覚悟を持ちました。世界の大企業の創業期には、このような美談が数多く存在します。日本の大企業の黎明期にも、無名の社長の理念に共感した若者たちがいくつかの物語を作りました。彼らにとって、自分にしかできない活動を行うことは、自己実現のためのものであり、ある種の選ばれた存在としての意識が彼らに潜在的な力を引き出すことで思いもよらない結果を生み出すことがあります。これこそが、国境を超えた魅力的な職場であると言えるでしょう。
企業内で理念の共有が行われない場合、魅力的でワクワク感のある職場ではなくなることは明白です。理念や哲学こそが企業にとって必要不可欠であり、経営者は情熱を持ってそれらを社員に伝える必要があります。それこそが、経営者の真の価値を示すものです。また、企業においては、業績や成果が得られない場合は、熱狂は冷笑に変わり、教義は強要に変化します。日本企業は、現在の、ワクワクするような、熱狂するような対象を創ることがむしろ必要かもしれません。
逆に社内の「暗黙の了解」や「暗黙のルール」という同調圧力の方が、より一般的には忌み嫌うカルト化した組織です。パーパス策定はトレンドだと捉えずに、今から自社の理念を再考する事は決して遅くはありません。
理念がカルト化する事には、上記のような危険もあります。しかし、一般的には言って、日本企業にはむしろ、社員を惹きつけ一体にさせる理念がないことの方が問題です。危険性を承知しながらも、思い切ってカルト化しそうなほどのワクワク感や一体感、所属感を醸し出すような理念を考え出すことも一つの手です。
理念の実態的な効用とは何か?
一般的に表されている経営理念やビジョンなど、事業運営における上位概念はどのようなものなのでしょうか。上位概念の多様で柔軟な機能を理解することで、諸々の事業や組織の事象を客観的にとらえることができようになります。ここでは、理念などの上位概念が集団や組織、もしくは事業にどのように機能しているのかを解説していきたいと思います。
理念がないと未来が創造できない
企業が持つビジョンや中長期経営計画において、未来を見据えた具体的な数値や時間があると、社員や関係者に共感や納得を与えることができます。また、ビジョンの上にある上位概念には、まだ実現していないことが含まれることがあります。それを明示することで、自社が未来に向けてどのような成長を目指しているかを明確にすることが可能です。これによって、社員や組織が未来に向けた志向を高めることができ、共有された目標や未来が、組織や集団の存在理由として規定されることにつながります。このような要素は、経営における成果や結果に直接影響する内容とも言えるでしょう。
理念がないと意思決定はできない
理念は、企業や国家において共有される考え方や価値観のことを指します。国家であれば「●●主義」という考え方にあたり、MVVの中のvaluesというように位置付けられる内容です。企業や社員がどのような行動を取るべきか、どのような価値観を持つべきかという基準として機能し、現場での行動や言動に影響を与えます。
組織や社員は、社会における公器としての役割を持つ場合もあります。そのため、組織や社員の考え方や倫理観は、一般社会の価値観と乖離してはならず、地域や宗教などの折り合いをつけていかなければなりません。上位概念や理念は、経営や現場での意思決定に影響を与えると同時に、組織の学習や文化形成にも大きな影響を与えます。
価値観は、地域や土地の影響を強く受けており、日本企業は、日本文化や日本人の影響を強く影響しています。パーパスの策定支援の際に、既に企業理念や哲学が、社会を中心においている企業が多いです。日本には「三方良し」by近江商人、「企業は社会の公器」松下幸之助であり、日本には創業100年を越える長寿企業が世界で最も多く存在し、世界の稀に見る長期持続可能な企業を創出する国であり、日本文化にも、人間は自然の一部に過ぎないというモチーフが、あちこちにあります。
価値観は、社員に「自分達にしかに成しえない」という当事者意識を生み出します。企業業績とは別の次元で意思決定や行動を誘引するため、自分ゴト化します。ブラックなベンチャーのやりがい搾取など問題は、この理念の悪用から生み出させるものです。従って、成果や結果、学習がついてこない場合は、悪用と言われても仕方ありません。
理念がないと事業を説明できない
理念は、企業が事業を行うにあたり、自社の強みや市場範囲、存在価値を示すものです。これにより、何をやっているかを明確にすることができ、社員や投資家が合理的な判断をしやすくなります。また、事業としての理念は人事制度や組織構造にも影響を与え、ビジネスモデルや業務フロー、人財などにも関連します。理念をパーパスに刷新する際に、固有技術を持つ会社などは、市場における固有技術をパーパスとして打ち出し、市場での存在意義を明確にしている企業も多くあります。
たとえば、メーカーであれば、成長を可能とする自社特有の事業活動の領域である「食」や「○○技術」を示すことで、絶対的な差別性を産み出しています。これにより、投資や人材、技術、情報などを効果的に集約することができます。理念において、事業およびコアコンピテンシーを踏まえた上で、どのような人に、どのような評価や賃金、処遇をするかという根本的な考え方にも影響を与えています。
これは、実に分かりやすく明瞭であるるものの、コアとなる領域や技術が市場変化した場合は、脆い場合があります。つまり、組織は明瞭な理念を基に、柔軟かつ早い組織運営しながら、連続的に変化することで、市場に遅れずについて行くことができます。
理念そのものは長期的なモノであり、そう簡単に変えるものではありません。一方で、商品開発やシステム変更などは、市場動向や消費者ニーズに併せて、どんどん変わっていくべきものでもあります。その変化を根底から支え、変化そのものを可能にする土台こそ理念です。理念という土台がなければ、商品やサービスの提供を変化させてはいけないことには注意を払っておくべきです。
理念がないと関係性を創れない
経営哲学や行動審など、多く明記されることが多い内容です。組織運営における組織内の関係性についても大きな影響を与えます。組織内外の関係性において、多くの日本企業が「家族主義」などのコンセプトを掲げていますが、事業運営において「仲間意識」や「家族主義」は、経済的観点と人間性精神性との間にジレンマを引き起こすことがあります。このジレンマに対応するために、多くの企業が安全弁として採用しているのです。最近では人と人の関係性や風土カルチャーそのものが、サービスやイノベーションを産み出す根源であり、組織が創り出すものに価値があると考える組織も増えています。関係性の理念を、社員一人ひとりの能力や集団組織における基礎として、最重要な位置づけをする会社も増えています。多くの企業が「多様性」や「ダイバシティ&インクルージョン」など掲げていますが、現場社員はチンプンカンプンだったりする可能性があります。組織の人との関係性がどうあるべきかという命題を、バズワードで誤魔化すはやめましょう。
理念がないと正当性がない
理念は、組織に所属する個人が自己正当化するためにも重要であり、組織が団結する上での正当性を担保するためにも役立ちます。また経営者やマネジメント層にとっては、問題解決の前提条件としても重要です。しかし、上位概念や理念は抽象的な内容が多いため、個人によって解釈が異なり、組織内外での対立が生じることがあります。そのため、経営側はこの多義性や異なる解釈の可能性にも配慮する必要があります。理念は組織や事業の大前提であるがゆえに、理念に批判的視点に立つことをタブーとして暗示しています。従って理念が前提であれば、多くの事情運営が正当化されてしまうことが多々あります。個人の解釈や多義性はあるものの、対話などを通じて、共通認識を深めることが重要です。
拠り所や土台の無い組織や集団は、事実上存在できない
どのような組織や集団も拠り所となる価値観や哲学がなければ、群衆にしかなり得ません。群衆とはバラバラな個人が集まっているだけの存在で、企業を創ることもできなければ、共同体を創る事もできません。
企業や地域に代表される共同体には、宗教や道徳や倫理と言ったような構成員を規定する形而上の価値観が必要であり、必ず存在しています。
勿論、時代と共に宗教や神話の解釈の仕方は変わっていきます。数百年前と同じ生き方をしているキリスト教信者も仏教徒もいないでしょう。ただし、変わっていくからと言って、その宗教や神話が必要ないという事にはなりません。
これと同じで、形而上の理念は不変ではあってても、変わりつつあるという、ある種矛盾した役割を果たさざるを得ません。
日本企業に100年企業が多いという事は、企業の理念が不変でも、時代の状況に併せて変化していた証拠と言えるのではないでしょうか。
ここ最近、上場企業を中心に、MVVやパーパスの刷新が行われているのは、いわば企業の形而上の理念の解釈を変化させているという事です。これは非常に自然なことであり、不変の部分があるからこそ、変化する事ができるのです。
解釈が変化することは、大いに重要なことで、解釈を固定化し、強要やそれ以外を認めないような理念の運用はかえって危険です。
理念の浸透は何故難しいのか
経営における理念には、企業全体における意思決定に統一性をもたらし、組織として人と人とをつなぐことができるというメリットがあります。しかし、理念が権力やパワーの源泉となったり、理念に対する解釈の幅や抽象性が日々の業務からかけ離れていったりするという問題点もあります。ここでは、理念の特徴と問題点を挙げ、浸透における困難に関して説明していきます。
理念におけるパワーと権力の問題
経営における理念は、組織の方向性を示す重要な役割を果たしています。反面、その方向性が絶対的であると信じてしまうと、理念以外の視野や視点を排除することになり、組織の成長を妨げることもあります。また、理念は上位概念であるがゆえに権力の側面を持つケースもあり、それが権力やパワーの乱用につながる危険性もあります。例えば、社会通念に逸脱した行動にもかかわらず、理念を基に自己の過ちを正当化する組織や社員の事案も多くあります。彼らは「組織の為・・」と言いますが、ほとんどが自分の為です。
経営における理念は解釈の多様性など柔軟性を持ってとらえることが必要で、固定的な解釈に陥るのは非常に危険です。新しい解釈や視点を受け入れ、古い解釈を改めることも必要となります。理念を固定化しない事が、企業経営にとって重要と言えるでしょう。
また、異なる人財や社外から期待を取り入れることで、より多様性のある理念の解釈が生まれることもあります。ただし、こうした柔軟性や多様性を実現するためには、コミュニケーションが欠かせません。異なる意見を尊重し、議論を通じて合意を形成することで、より良い理念を作り上げることができます。
最終的に理念は企業の存続と社員の幸福の為にあるのであって、理念の名の基に、会社の利益を損ねたり、社員の私生活を圧迫したりといった事があってはなりません。
理念と実践をつなぐことが困難
経営理念は、企業が目指す方向性を示すものであり、具体的な実務とは異なる抽象的な概念です。しかし、実務においては経営理念に則って行動する必要があるため、ギャップが生じます。理念と実務の間に生じるギャップを埋めるためには、コミュニケーションが欠かせません。
たとえば、「働き方改革による残業時間の削減が必要」な場合、その対応策が経営理念と矛盾している際には、社員は企業の理念に疑問を持ちやる気を失うことがあります。経営陣は理念と実務の間に生じる矛盾を解決するために、社員に適切な解釈を添え、コミュニケーションを取る必要があります。また、経営理念と実務のバランスをとるために、経営陣は常に理念を見直し、実務に適切に落とし込んでいくことも重要です。
20世紀の後半に主にドイツで「解釈学」という学問が生まれました。解釈学は元々は聖書を読むときに、様々な解釈が生じた場合、その解釈の違いをどうとらえるべきか?という問題意識で始まった学問です。解釈学のユニークなところは、聖書研究においても、他のテキスト研究においても、解釈が時代と共に変わっていくことを肯定している点にあります。
解釈学が出てくる以前は、聖書の解釈や様々な文献の解釈はできるだけ1つでなければならないと考えられていました。一旦1つの解釈が採用されるとそれが「正統」とみなされ、他の解釈が許されなくなります。これは、一見一貫したゆるぎない解釈を保証するようでいて、時代の流れについていけず、人々の支持も得られないという負の側面を持つようになりました。これを省みて、登場したものが解釈学であり、そこでは柔軟な解釈、驚きを与える解釈が許され、多くの人の支持を得る場合には、その新しい解釈が次世代の「正統」として、受け入れられていくようになったのです。
「正統」は変化するものであり、解釈は流動的であっていいと見切ったところに、解釈学の意義があると言えます。これをビジネスにも応用していきましょう。
ちなみに、解釈学の代表的な研究者であるドイツのガダマーは、解釈の変化を「地平の交代」という言葉で表現しています。
理念によって起こる思考停止
理念や信念が強すぎると、新しいアイデアや異なる視点を受け入れることが難しくなり、組織や個人の成長を阻害する可能性があります。これは、理念があまりにも固定化し、変化や進化を拒絶する結果として現れます。
理念や信念は、組織や個人が方向性を持ち、行動の基盤となる重要な指針です。しかし、これらが柔軟性を失い、状況に応じた適切な対応や新たなアイデアを排除することがあると、成長や革新の機会を逃すことにつながります。特に急速に変化する市場や技術の進展に対応するためには、オープンで柔軟な思考が不可欠です。
理念の捉え方は常にアップデートを続けている
企業において、経営理念の捉え方は常にアップデートされ続けています。業歴が長い会社や企業規模が大きくなった会社では、経営理念や企業理念が形骸化している場合があります。しかし、ビジネスにおいて経営理念は必要不可欠です。なぜならば、経営理念は組織と個人を結びつける役割を果たしているからです。
経営理念は組織の中心にあり、明確なトップやマネジメントからのメッセージであり、個人の処遇の背景にもなっています。さらに、経営理念は風土や文化の形成にも大きな意味を持っています。そのため、時代と共に経営理念の捉え方はアップデートされ続け、組織と人を結びつける重要な役割を果たしているのです。
良いアップデートか悪いアップデートはわからないことが問題
理念の捉え方は、個人や職場の活動や外部環境に基づいてアップデートされ続けますが、その適切性を確認せずにいると、組織風土やブランドに悪影響を与える可能性があります。組織の価値観や文化は、解釈や言説によって影響を受け、業務にも影響を与えます。したがって、コミュニケーションを通じて、適切なとらえ方をしているかどうかを確認する必要があるでしょう。
理念への解釈が変化するという事は、理念に多義性を持たせるという事です。1つの解釈で縛らず、且つて受け入れられていた解釈でも時代に合わなくなったり、利益を出せなくなったりしてしまったら、その解釈を「訂正」して、新しい相応しい解釈をコミュニケーションの中から紡ぎ出す必要があります。
日本の哲学者である東浩紀は、「訂正する力」という言葉で、一つの解釈にしがみつく愚かさと危険性を論じています。東によると、彼自身、かつての著書を、復刻する時ほぼどのページにも、東自身の訂正の赤ペンが入るそうです。同じ著者なのだから、復刻する時も当時と意見が変わっていないはずだというのが一般的な見解でしょう。
しかし、東によると時代も自分もどんどん変わっていくのだから、むしろかつての自分を絶えず訂正し、より良い自分にしていくことが望ましいとしています。つまらない個人的な一貫性や普遍性にこだわることなく、勇気をもって昔の自分を訂正し続けようという東からのメッセージです。
理念における体験と解釈から生まれる学習
経営理念は企業活動や結果に基づいた見直しや振り返りを行うための指針であり、共感することで社員や組織の学習につながります。しかし、単純な数字や事象に固執してしまうと、経営理念から乖離してしまうことがあります。そのため、経営理念に基づいた学習を行うことが重要であり、数字や事象をどのように解釈するかという根本的な考え方で振り返ることが必要です。
たとえば、前年より数字が上がったことは良いように見えますが、経営理念やビジョン、パーパスに照らし合わせるとどうなのかを考えてみましょう。理念においてはどうか?ビジョンにおいてはどうか?パーパスにおいてはどうか?など事象や結果をどのように解釈するかという根本的な考え方で振り返ることが重要なのです。
たとえ利益が上がっても、それが自社の理念と反する形の利益だった場合、喜んでいいかどうかには疑問があります。逆に短期的に損が出ていても、理念と合って入れば、継続して良いとされるでしょう。企業は勿論、利益を出し存続していくためのモノではありますが、そこには上位概念の理念がある事を忘れてはなりません。
また、上位概念の解釈を現場で確認することで、社員の意識を高め、学習の基盤を築くことができます。経営理念を浸透させることは、企業の長期的な発展にとって重要な要素の一つであり、経営者にとっても常に意識しなければならない要素です。
企業理念を浸透させるには?
では、企業理念を浸透させるにはどうしたらよいのでしょうか。企業理念を浸透させるには、人事や評価制度、新入社員の教育プロセスに理念を組み込み、さらには社内での積極的な情報発信を行うことが重要です。これにより、組織全体が理念に共感し、実践する文化が醸成され、理念が組織の一部として根付くことが期待されるでしょう。
特に近年では、SNS発達により、社内に対しても社外に対しても、理念を発信することがより容易になってきています。理念は一度理解したらそれでもう終わりという事ではありません。伝統的に日本企業で、毎朝理念を復唱したり、社員全員に見えるところに理念を置いていたりしたのも、理解ではなく体得をさせるためでした。SNSではもっとやり易くなるわけですから、YouTubeやX、インスタグラムなどを通じて理念を内外に絶えずアピールしておくことは有益でしょう。
新人の教育
新人の教育は、企業理念の浸透を促進する重要なステップです。新人研修で経営理念に焦点を当てることは、彼らが企業の考え方や文化を理解し、求められる働き方や行動を早期に学ぶことを可能にします。この教育が効果的に行われると、新入社員は組織に適応しやすくなり、自身の役割や目標に対する理解が深まります。
人事や評価制度におとしこむ
人事や評価制度に経営理念を組み込むことは、組織全体で理念を実践し、浸透させるための重要な手段です。社員が日常業務で経営理念に沿った思考や行動を取れるようにするためには、まず、評価基準や行動指針に明確に理念を反映させるとよいでしょう。これにより、社員は理念を実践することが評価の基準となり、自然と理念を日常業務に取り入れる意識が高まります。
社内発信を行う
社内発信を行うことは、経営理念の浸透と共有を促進する重要な手段です。社内SNSや社報などのメディアを活用することで、企業の成長フェーズや課題を含む内容を効果的に伝えることができます。これにより、経営理念が抱える意味や重要性を社員に明確に伝えることが可能です。
また、社内発信は全体朝礼などの集中的な場ではなく、社員が自由なタイミングで閲覧できる利点があります。これにより、個々の興味や関心に応じて情報を消化し、理解を深める機会が生まれることが期待されます。さらに、経営理念に基づいた具体的な行動や取り組みを実践している社員を紹介することで、理念を具体的な行動に結びつけ、他の社員にも浸透させやすくする効果があります。
理念とミッション、ビジョンやバリューの違いを押さえよう
「理念」、「ミッション」、「ビジョン」、そして「バリュー」これらのビジネス用語はしばしば混同されがちですが、それぞれが異なる意味を持っています。ここでは、それぞれの違いをわかりやすく解説していきます。
ミッションとは
ミッション(Mission)は、企業や組織が抱える社会的使命や存在意義を具体的に示したものです。企業のミッションは、その業界や社会において果たすべき役割や責任を明確に定義し、行動方針を示す重要な要素です。例えば、企業がどんな価値を提供し、どんな問題を解決することを目指しているのか、その目標をミッションが表現します。
ミッションは、従業員やステークホルダーに対して企業の方向性を明確に伝える役割も果たします。組織全体がミッションに共感し、それを実現するために行動することで、組織の一体感が生まれ、成果の向上につながることが期待されます。また、外部からの評価や社会的責任の観点からも、ミッションが達成されているかどうかが判断される基準となります。
ビジョンとは?
ビジョン(Vision)とは、企業が将来的に達成したい理想的な状態や目標を具体化したものです。ビジョンは、企業が経営をしていく中でどのような業績やパフォーマンスを達成しようとするかを示し、これは企業の経営戦略を表現するものでもあります。具体的な数字や目標が入ることが多く、例えば売上目標や市場シェアの拡大、技術革新のリーダーシップなどが挙げられます。
ビジョンは時間の経過とともに変化することがあり、企業が進化する中で新たな目標や方向性を示すこともあります。時代の変化や市場の要求に応じて、ビジョンを柔軟に調整し、組織全体が向かうべき方向を明確に定めることが重要です。
バリューとは
バリュー(Value)とは、企業が社会や顧客に対して提供する価値のことを指します。これは単なる製品やサービスの性能や特徴だけでなく、企業やその従業員が持つべき姿勢や価値観も含みます。企業のバリューは、そのミッションやビジョンを実現するために不可欠な要素であり、顧客や社会との関係を築く上で重要な役割を果たすでしょう。
バリューは企業やブランドの独自性を表す要素でもあります。競争の激しい市場で差別化を図る際に、企業がどのような価値を提供し、その価値観をどのように体現しているかが重要になります。例えば、品質へのこだわり、社会的責任の果たし方、お客様に対する誠実なサービスなど、企業のバリューが明確であれば、消費者はその企業を信頼し、支持する傾向があります。
まとめ
理念は企業の方向性を示すものであり、社員に浸透し、共感することで、組織の行動や判断基準になります。また、理念経営に基づいた行動や学習が、組織の成長につながるでしょう。理念の実態的な機能として、問題解決や戦略の決定、社員のモチベーション向上などが挙げられます。経営理念の浸透によって、社員が一体となって目標に向かって行動することができ、企業の強さや競争力を高めることができます。
関連事例
理念と経営の関係とは?その関係と理念の実態的な機能についてよくある質問
- 経営理念とは何ですか?
経営理念とは、企業が何のために存在し、何を大切にするのかを明確に示したものです。いわば、企業の「魂」や「指針」のようなもので、企業の行動や意思決定の根底を支える重要な役割を果たします。
- 企業理念と経営理念は同じですか?
企業理念と経営理念は、どちらも企業の考え方や目標を示す言葉としてよく使われますが、厳密には異なる意味を持ちます。
企業理念
定義: 企業が社会に対して存在意義を表明するもので、企業の「存在理由」や「目指す姿」を具体的に表したものです。
特徴:
長期的な視点で、企業が社会に対してどのような貢献をしたいのかを示します。
企業の価値観や哲学が根底にあり、変えることは容易ではありません。
社内外に対して、企業のアイデンティティを明確に示す役割を果たします。
例: 「私たちは、人々の生活を豊かにする革新的な製品・サービスを提供し、持続可能な社会の実現に貢献します。」
経営理念
定義: 経営者が、企業をどのように経営していくかという「考え方」や「方針」を具体的に表したものです。
特徴:
経営者が持つビジョンや価値観に基づいており、経営方針や戦略と密接に結びついています。
経営者が変われば、経営理念も変化する可能性があります。
企業理念を実現するための具体的な行動指針を示します。
例: 「顧客満足度を第一に考え、常に新しい価値を創造し続ける」
- 経営理念は3つありますか?
経営理念は企業や組織によって異なりますが、一般的には以下の3つの要素が含まれることが多いです。MVVという分け方です。
1. ビジョン: 企業が将来的に目指す姿や目標を示します。どのような存在になりたいのか、どのような影響を社会に与えたいのかを明確にすることが重要です。
2. ミッション: 企業の存在意義や目的を表します。何のために事業を行っているのか、顧客や社会に対してどのような価値を提供するのかを示します。
3. バリュー(価値観): 組織が大切にする価値観や行動指針を示します。企業文化や従業員の行動に影響を与える重要な要素です。
企業がステークホルダーを求心する理念やMMVVなどを総称した概念は、抽象的な内容です。方や、コミュニケーションする必要性もある為、体系化や構造化をしています。つまり、コミュニケーションする為に体系化していることが多く、正しい理念体系というテンプレートはありません

株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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