人材育成

ビジネスにおけるレジリエンスとは?意味や高めるための手法を解説!

「レジリエンス」は、変化の激しいこの時代を生き抜くために重要なスキルです。和訳すると「回復力」「弾性」にあたる言葉で、ストレスや困難を経験しても回復する強さを指します。

一言で言えば、レジリエンスとは、予期せぬ困難に直面しても、しなやかに立ち直り、前に進み続ける力のことです。本記事では、主に労務分野に特化して、なぜ今ビジネスにおいてレジリエンスが注目されているのかについての背景を探っていきます。レジリエンスの高い組織づくりこそ会社の強さの秘訣です。しかも、レジリエンスがあるということと、無駄があるということは同じことなのでしょうか?この難しい問いに対しても、本記事では光を当てていきましょう。

レジリエンスとは何か?定義と意味

レジリエンスという言葉が、日本でビジネスの文脈で使われ始めたのは、東日本大震災のころです。地震とそれに続く大津波を前にして、日本人はほとんど無力でした。次にあのような大災害が来たとき、どうやって被害を最小限に抑えるかという問題意識が日本人に共有されました。ですから、レジリエンスという言葉は主に土木分野で外来語として広まっていったという経緯があります。今では、この言葉は人口に膾炙し、土木だけではなく、政治や経済、果ては心理に至るまで、応用され使われています。

例えば、レジリエンスが高い人は、同じような困難に直面した人の中でも回復が早く、かつ柔軟に乗り越えられると言われています。

レジリエンスという言葉は、もともとは物理学の分野で使われてきました。物理的な衝撃や変形に対して、物体が抵抗する力を指して用いられていたのです。そこから派生して現在では経済学、社会学、心理学、生態学など、他分野の学問においても使われるようになりました。

たとえば生態学では、ダメージを受けても素早く回復して安定を取り戻す、生態系の持つ力を表す言葉になっています。また人間科学の分野では、ある社会システムが何らかの困難に直面した際に、変化を克服し、正常なオペレーションを取り戻す能力を表すようになりました。

なお、ビジネスの文脈で語られるレジリエンスには「個人のレジリエンス」と「組織・ビジネスのレジリエンス」の2種類があります。個人のレジリエンスにおいて重要になるのは、困難な状況を受容し、柔軟に対応しながら決断し、前向きに行動し続けることができるマインドや能力です。一方で組織のレジリエンスにおいて重視されるのは、環境の変化に柔軟に対応し、自己変革していくことができる組織文化や環境です。上記のように、本記事においては、組織のレジリエンスに焦点を置いて解説します。

ビジネスにおけるレジリエンスとは?

なぜ今「レジリエンス」がビジネスの文脈で注目を集めているのでしょうか。企業や個人を取り巻く環境の変化から解説します。

ビジネスにおいてレジリエンスが注目される背景

ビジネスにおいてレジリエンスが大きな注目を集める背景にあるのは、ビジネスを取り巻く状況が日々変化していることだと考えられています。

例えば、コロナ禍を振り返ると、行動制限による業務の停滞や、サプライチェーンの寸断、資材の不足、職場の感染対策など、企業はさまざまな困難に直面しました。他にも、自然災害や地政学リスク、破壊的イノベーションによる市場の変化など、困難な状況はいつどのような形で発生するのか予測がつきません。だからこそ、これまで以上に、ビジネスにレジリエンスを備えておく必要性が高まっているのです。

また、ビジネスの変化によって、労働環境も変化していきます。労働環境の変化によるストレスや困難に柔軟に対応しながら個々の従業員が業務を遂行し、組織全体でビジネスを前に進めていくためには、個人にとってのレジリエンスも重要です。

ビジネスにおけるレジリエンスの重要性

なぜビジネスにおいてレジリエンスが重要なのかというと、事業環境の変化に柔軟に対応し、ダメージから素早く回復しながらビジネスを存続させていくためです。
企業は絶えず市場と向き合っており、市場では何が起きるか誰にも予想ができません。新しいサービスや製品の方向も市場に出してみてわかるということが大半です。企業は市場から絶えずプレッシャーをかけられていて、それを克服するために、組織をレジリエントな状態にしておくことが必要です。

個人のレジリエンスと組織のレジリエンスについては、分けて考えるべきです。当たり前のことですが、個人のレジリエンスよりも、組織のレジリエンスの方が優位に立ちます。組織の中にレジリエンスの高い個人がいたとしても、組織全体がレジリエントでなければ、事業環境の変化に対応することは難しいでしょう。

レジリエンスを備えた組織をつくるためには、組織の構造や意思決定のプロセス、業務のプロセスといった制度や仕組みの面と、組織の風土や文化などのソフト面の両方からアプローチする必要があります。では、具体的にはどのようなポイントがあるのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

レジリエントなビジネス組織づくり

事業環境の変化やビジネスの変化に柔軟に対応できる組織を、どのように実現していくのでしょうか。ここでは、企業における主体を「現場・チーム」、「全社・経営」、そして「部門」の3つに分け、重要なポイントについて整理していきます。

現場・チームレベル

「意思決定と選択に”あそび”があること」

変化やトラブルに強い現場とは、問題解決の手段にさまざまなバリエーションがあるということです。まず大前提として、そうした現場での対応において意思決定の権限が委譲されていることです。その上で、状況に応じて様々な意思決定を行うことができるよう手順やルール、スケジュールに”あそび”を持てると、予期せぬ事態に動じず対処することができます。

これは「冗長性」とも表現できます。秒単位の生産性を追い求めてきた企業活動においてはネガティブな意味にも感じる言葉ですが、短期的な効率よりも不確実な時代における長期的なリスク管理という観点において、冗長性は徐々に重要視されるようになりました。では、冗長性が威力を発揮するような場面にはどのようなものがあるでしょうか。五つ取り出してみましょう。

1 納期にバッファを持たせる(そのための交渉ができる)

納期やプロセスを厳格に管理し、少数精鋭で年間、あるいはさらに長期間において一つのやり方を突き詰めていくというのが、従来の効率性マネジメントの基本でした。しかしこのような方法では不確実なマーケットにまったく対応できません。納期については、一定の幅を持たせ、その代わりに、当初の計画になかった改善点や新しさを付加していきましょう。

改善点も新しさもないのに納期だけ遅れれば、それはレジリエンスではなく怠惰です。顧客からの厳しい目に応えるためにも、納期に幅を持たせるためには、出来上がったサービスや製品において、それだけの時間がかかった理由を説明できなければなりません。

2 同じ業務を担える人や拠点を複数抱えておく

社員は生身の人間であり、病気にもなれば事故が起きたりもします。その社員がいなくなったときに事業全体がストップするというマネジメントでは話になりません。絶えず、全社員について「この社員がいなくなっても、バックアップできる体制」を整えていくことが重要です。
理想的には、一人の社員で複数のスキルをこなせる社員を用意しておき、非常事態に備えることです。

3 複数のマネタイズの手段がある

どんな市場にも「旬」というものがあり、流行り廃りは世の常です。市場の変化は早くなっていて、廃れるときの速度も急速です。マネタイズを一つのサービスや製品に頼っていると、それが廃れたとき目も当てられません。
レジリエントな企業ならば、そんなリスクを負わないはずです。現金が入ってくる複数の手段を絶えず確保しておきましょう。

4 チーム内で指示の変更が受け入れられる

市場の変化に併せて事業計画は変更されます。最初の計画通りに完成品ができることなどほとんどありません。計画は計画通りいかないと思って作るべきだし、変更することは最初から前提となるべきです。
変更を前提とする以上、組織内のコミュニケーションは不可欠です。市場はプライドや感情とは関係なく動いていくものです。市場に併せて企業はサービスや製品も変えていかなければなりません。

5 結果は重視するが、プロセスは信頼して任せる

元々、計画通りにいかない事業計画なわけですから、プロセスにおいては個々の社員の自主性や創意工夫に任せるべきです。経営者は現場に対して言いたいことも出てくるかもしれませんが、現場の裁量に任せることがレジリエンスです。
もし経営者の一言一句がそのまま適用されるような組織なら、予期せぬことが起きた場合、すぐに対応できなくなるわけです。

全社・経営レベル

何が起こるか分からない環境においては、「計画」という言葉の意味合いが変わることもあります。経営が掲げる事業計画においても同様で、変化に応じて計画を修正することができる、あるいは予め多産的に計画を検討しておく必要があります。

重要なのは、変更を前提に計画が共有され、かつその背景やより高次の目的・ビジョンについての理解が浸透していることです。それにより、全社レベルでのレジリエンスの根本を支えることができます。

1 中長期経営計画の策定

市場で何が起きるかわからないにせよ、やみくもに商品開発することはできません。そこには中期的・長期的な視野が必ず求められます。中期的・長期的であればこそ、内容は具体的ではなく抽象的であり、解釈の仕方に幅を持たせる言葉になるはずです。この抽象性こそがレジリエンスであると言っていいでしょう。

2 社員が主体的に考えることができるような情報の支援

企業は社会の中で、他の様々な組織や個人と関係を持ちながら存続しています。社員は社内の事だけに気を張っていればよいわけではありません。広く社会の様々なトピックにも目を向けておく必要があります。企業が社員の情報収集の手助けをすれば、社員の負担も大きく減るでしょう。従来では、社内に複数の新聞を置いて自由に読めるようにしておくことがこれに該当しましたが、現代では、社内SNSや社内報を使って、広く社会の出来事を社員に伝えることができます。

3 日々数多くの意思決定の根拠となれる理念や価値観が浸透

理念や価値観こそ、その企業が目指すものです。理念や価値観なしに業務をやっていても、社員はいつか「何のために自分が働いているのか」わからなくなっていくでしょう。ここは経営者の出番であり、自社の理念や価値観を絶えず社員に説き続け、それに則って事業計画を立てるべきです。理念も価値観も示さないのは論外です。

部門レベル

「異なる専門性の連携によってさらに多様な手法を取る」

企業全体として、単一よりも複数の事業やサービスを持っていることを指してレジリエンスが高い状態であると言えます。平たく言うと、雨傘を売っているお店は、雨が少ない異常気象においては商売になりませんが、もし日傘も売っていればなんとか売り上げが確保できます。さらに、雨傘の原理を利用してアウトドアの丈夫なテントや長持ちする防寒具を用意しておけば、さらに不測の事態にも対応できます。より複雑な状況の変化や予期せぬ事態に対して、企業が有する各部門、それぞれの専門性を自在に活かすことが求められます。

ところが多くの国内企業は、”サイロ化”とも言われるように部門間の壁は厚く、互いの状況や業務内容についてほとんど共有されていません。まして各々の部門別の目標達成のために仕事を囲い込み合い、奪い合っている状況では連携が生まれるはずがありません。

部門間の連携を促すためには、WEBアプリケーションなどを活用しながら、各部門の情報を共有しましょう。そして、部門間連携を促進するに至るような評価・目標管理の仕組みが必要です。先述の現場レベル・経営レベルの取り組みともつなげながら、部門の壁を超えたコミュニケーション(単なる”会話”ではなく、さまざまな粒度の情報のやり取り)が活性化している状況を作り出さなければなりません。

人材育成や企業風土といったソフト面の変革が必要

ここまで、組織の構造や仕組みについて見てきました。では、ソフト面についてはどのようなことが言えるでしょうか。

レジリエントな組織を作る際にネックとなるのは、人材育成や企業風土といったソフト面です。いくら仕組みや制度を整えたところで、重要な情報が特定の人や部門に独占されていたり、上意下達の指示系統を絶対として現場が受け身の姿勢になりがちだったり、ハイコンテクストなコミュニケーションが主流で人材の多様性を排除するような文化があれば、レジリエントな組織になることはできません。

情報を可視化したり意思疎通を迅速化したりするためにデジタルツールを導入するなど、ハード面を変えることは難しいことではないでしょう。しかし、企業風土は時間をかけて醸成されていく部分も多く、簡単には変わりません。人材育成のプログラムを変えても、それぞれの職場の中で行われているコミュニケーションが変わらなければ組織は変わらないのです。

変化に対応するスピード感や、前例のないことに取り組む柔軟性には、職場内でのコミュニケーションや人材育成、組織の風土といった、可視化されないソフト面が大きく関わっています。そのため、組織のレジリエンスを高めるためにこれらのソフト面に着目する必要があります。組織の目指す方向性を経営側が明確に打ち出した上で、コミュニケーションツールなどのハード面と、人材育成や職場内のコミュニケーションといったソフト面の変革に向けた施策を検討しましょう。

ソフト面での変革は、口で言うほどたやすいことではありません。長く行われてきた伝統の力は、良くも悪くも除去しにくいのが現実です。そのようなときは思い切って外部の専門家に忌憚ない助言を求めることも一案です。自分たちだけで変われないのなら、外部の人の力を借りてみましょう。

ビジネスにおけるレジリエンスとアジリティ

最後に、ビジネスにおいて今重要視されている「アジリティ」という言葉にも触れておきます。「レジリエンス」と、セットで使われることも多い「アジリティ」とは、どのような関係にあるのでしょうか。

アジリティとレジリエンスの関係性

組織のアジリティとは、状況の変化を捉えて柔軟かつ迅速な判断と行動ができることを指します。アジリティがあれば、新しいリスクや機会をいち早くキャッチし、競合他社より先に戦略を見極め、行動に移すことができます。DXが進む昨今、自社のビジネスがどのような状況にあるのかデータから把握することが容易になり、政府やさまざまな公的機関によるオープンデータからも環境の変化を察知しやすくなりました。そのため、ビジネスにおいて俊敏な意思決定ができる組織アジリティの効力は、以前より増しています。

アジリティがスピードを重視するのに対して、レジリエンスを高めるにはビジネスの冗長性も求められるため、一見この2つの用語は逆行する概念のように感じられるかもしれません。しかし、いずれも「状況の変化に素早く対応する」という意味では、目指すところは同じです。

将来の見通しがつかない現在においては、双方の優れた点を生かした「レジリエントでアジャイル」な組織を目指すのが賢明かもしれません。「柔軟で迅速な行動をとりつつ、何かが起きた時のための余力も持っていく」そんな姿勢があると安心でしょう。これまでの経験を学びや知恵に変えながら、組織の競争力を高めていきましょう。

まとめ

現状のビジネスは、組織として最適化されたバリューチェーンの枠組みで回っています。この枠組みの中で改善策を繰り返し、売上・利益を増大させてきた企業にとって、ビジネスに冗長性や多様性を持ち込むことは、非効率に思えて抵抗があるかもしれません。しかし、業績を求めるばかりでは、組織としてのレジリエンスは手に入りません。目先の業績とレジリエンスは、基本的にはコンフリクトする関係性にあるのです。レジリエンスを得るためには、経営を非効率にすべき局面もあるということです。

ならばレジリエンスなど必要ないと思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。例えば車の運転のとき、ハンドルには一定の遊びがあります。運転者の手の動きが全て車の操縦に伝われば効率的かもしれませんが、非常に危険な運転となるでしょう。ハンドルに遊びがあるからこそ、危険を避けることができるわけです。

換言すれば、レジリエンスとは、すぐに利益に直結することはありませんが、何か危険が起きそうなときにはそれを回避させてくれる保険のようなものだと考えればよいでしょう。何も起きないから保険に入るのは無駄だと思う人はいません。それと同じで、一定の冗長性は、組織を強くするために必須の要件です。レジリエンスがあればこそ、機敏な動きも可能となります。レジリエンスとアジリティは表裏一体なのです。



アジリティの向上とレジリエンスの向上のためには、いずれも組織の可変性や人材の自立性、コミュニケーション能力等が重要であり、共通する点も多々あります。デジタルツールを用いた情報の可視化や、コミュニケーションスピードの向上などは、組織のアジリティとレジリエンスのいずれにも寄与するでしょう。

レジリエンスは、変化の激しい困難な時代だからこそより一層求められています。そして、ビジネスの過渡期である現在は、「レジリエントでアジャイル」な状態を目指すことが重要です。組織づくりのヒントをお探しの場合は、どうぞソフィアまでご相談ください。

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レジリエンスについてよくある質問
  • レジリエンスとは何ですか?
  • 「個人のレジリエンス」と「組織・ビジネスのレジリエンス」の2種類があります。個人のレジリエンスにおいて重要になるのは、困難な状況を受容し、柔軟に対応しながら決断し、前向きに行動し続けることができるマインドや能力です。組織のレジリエンスにおいて重視されるのは、環境の変化に柔軟に対応し、自己変革していくことができる組織文化や環境です。

  • レジリエントなビジネス組織づくりは何ですか?
  • 現場・チームレベル 「意思決定と選択に“あそび”があること」
    全社・経営レベル 「抽象的で高次元な目的意識の浸透」
    部門レベル 「異なる専門性の連携によってさらに多様な手法を取る」

株式会社ソフィア

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ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。