組織デザインとは?人材の有効活用で生産性向上 成功事例もご紹介

現代のような不確実性の高い時代において企業が生き残るには、外部環境の変化のスピードに対応できるような組織をつくることが必要になっています。そのような背景から、「組織デザイン」の重要性が非常に高まっています。
本記事では、この組織デザインについて解説するとともに、成功事例についてもご紹介します。

組織デザインとは?組織デザインの必要性

「組織デザイン」とは、事業の目的や会社の目指す方向性に最適な組織を1から構築すること、または、より高いパフォーマンスを発揮するために現状の組織の枠組みを変えることを差します。
とくに後者について具体的な例を挙げると、事業を一つの会社のように位置付ける「カンパニー制」を採用する、組織の人員配置を総入れ替えする、あるいは部門の統合や、1つの企業内での分社化(ホールディングス化など)、その他に他社と協業する場合なども含まれます。

組織の編成は組織図として外部にも公表します。
組織デザインは、組織としての中長期の戦略を明示するために使われることもあり、組織がその事業に力を入れていくという大きな経営メッセージにもなります。

組織デザインの一例として、以下のようなものがあります。

  • 機能別サービス組織
    最も一般的な企業組織の形態。製造や販売など、経営機能ごとに組織が分かれている
  • 事業部制組織
    製品やサービス、またはマーケットごとに組織が分かれ、それぞれに決裁権限を持つ。代表的なものに「商品別組織」「顧客別組織」「地域別組織」などがあり、より個々の組織の独立性を高めると「カンパニー制」となる
  • プロセス別組織
    職能や事業、エリアなどの業務遂行要素の組み合わせに応じて組織が分かれているもの。プロジェクト型組織やマトリクス型組織などもこの1種で、表向きの組織図は機能別サービス組織に見える場合もある

組織構造を決めるということは、機能別サービス組織を事業部制組織に変えるような組織全体に関わる大きな機構改革もあれば、訪問販売部隊とマーケティング部隊を一緒にして、営業本部とするような部分構造の統廃合もあります。また、情報システム部と別にDX推進部を新設する場合も含まれます。
組織デザインの目的は、事業を運営する上での企業価値向上や、コスト削減・資本政策、経営課題の解決に向けた変革などさまざまです。企業が組織デザインを行う意図は複数ある場合も少なくありません。

経営者は、組織の形を変えることで事業目標を達成できると考えるため、人事異動など相当のパワーが必要な権限を駆使して組織デザインを行います。

しかし、新たに会社を作ったり組織の枠組みを変えたりすることで、人や組織は思い通りに動くようになるのでしょうか。
さらに、事業環境が変化するスピードにあわせてスピーディーに組織を作り変えていくことはできるのでしょうか。

答えはどちらも「No」です。

組織デザインのプロセス

そもそも、組織デザインとはどのように行うものなのでしょうか。
本記事では、組織デザインの研究で代表的なJ.R.ガルブレイス氏の著書『経営戦略と組織デザイン』をもとに解説していきます。
この著書は非常に難解で複雑な内容のため、要約してご説明していきます。

組織をデザインするということは、組織を設計するということであり、分業と調整を行うことです。常に最良を目指すものであり、ベストプラクティスは存在しません。

ガルブレイスは、組織デザインのプロセスを以下の9段階に分けています。

① 戦略
② 構造
③ キーとなるプロセス
④ キーとなる人材
⑤ 役割と責任
⑥ 情報システム
⑦ 業績評価とリワード
⑧ 訓練と開発
⑨ キャリアパス

ガルブレイスは、組織設計のデザインにおいて、「①戦略」を基本的な方向性として位置付けています。「②構造」は「組織構造のタイプ」です。組織構造のタイプは、戦略上で一番重要な事項にもとづいて選択されます。しかし実際は、対外的に公表している組織図通りの単純な組織構造で運営されている企業はほとんどなく、社内横断的なプロセス(マトリクス組織)を公式あるいは非公式に設計している会社が多くなっています。

「③キーとなるプロセス」では、組織の縦と横、もしくは斜め、戦略上またはビジネスプロセス上のキーになるプロセスを洗い出します。これは例えば開発から製造の間のプロセスかもしれません。
製品別の営業組織であれば、各製品群の営業担当者同士がいかにして組織を越えて連携し、自部門および自製品を超えて顧客の利益を最大化できるかにかかっています。ここを最適化するためには、製品別組織に「クロスセル(顧客)」戦略を入れ、各製品別組織の営業部門をつなぐ営業本部を作り、顧客一社一社に対して最適なソリューションを全社的に展開するということがキーとなるかもしれません。

キーとなるプロセスが洗い出せたら、そのプロセスを誰が担うのか「④キーとなる人材」を明確にします。そしてその人材に対して「⑤役割と責任」を設定し、「⑥情報システム」の段階ではコミュニケーションプロセスを設計し、「⑦業績評価とリワード」でその戦略的な行動や成果に対する評価と報酬を決め、「⑧訓練と開発」を経て「⑨キャリアパス」の設計を行います。

上記のプロセスの中で「①戦略」「②構造」は組織の構造に関わることであり、③キーとなるプロセス〜⑧訓練と開発は、①②を実現するための調整業務にあたります。

つまり組織デザインとは組織構造を作ることであり、組織構造を作るにはそれを実現するためのさまざまな調整が必要となってきます。本来は③キーとなるプロセス〜⑧訓練と開発までが組織デザインにおいて考えるべき重要なプロセスであり、決して単に組織の仕切りを変えれば目的が達成されるようなものではありません。

しかし多くの場合は、現場の状況を深く理解しないままに、企業の上層部が組織構造や人材の配置を決めているのが現実です。上層部が考えるように、異なる部署同士を一緒にするだけで、中の人同士が協力し合うようになるのでしょうか? つまり、理論上では理解できるかもしれませんが、実務上で実践できるのでしょうか?

組織デザインの失敗の要因は「調整」

組織図を変えたり、レポートラインを変えたりしても、基本的には組織内の仕切りを変えているに過ぎず、何も変化が起こりません。だからこそガルブレイスはその後の調整のプロセスに言及しているのです。

組織デザインが失敗するのは、“組織の枠組みを変えただけ”で組織の問題が解決するものと、経営陣が思い込んでしまっているためだといえます。組織デザインを成功させるには、組織構造を決めた後の調整のプロセスが非常に重要です。

調整プロセスを軽視したことによる、組織改革の失敗例をご紹介します。
あるメーカーでは、激化する市場競争で不安を感じ、中期経営計画で開発部門を複数に分割、さらにマーケティング部門も立ち上げて人材の採用も図ったものの、芳しい成果を上げることができませんでした。これは、組織の枠組みを変えるために多大なリソースを投入した一方で、組織の変更による業務への影響や、採用した人事のスキルアップ施策を十分に考えないままに進めたことが要因と考えられます。

組織デザインの成功事例

それでは、組織デザインが成功した事例はどのようなものなのでしょうか。具体的に企業を挙げながら紹介していきます。

IBM

組織デザインに成功したのは米IBMです。同社は製品からソリューションに舵を切ったことが功を奏しました。
1990年代、機器小型化の流れでIBMの業績は急速に悪化しました。以来、同社は事業の主体をハードウェアからソフトウェアおよびサービスへと転換しています。当時は水平分業モデルの同業他社が好調であり、同社でも分社化の動きが進められました。また、同社は各国で行っていた終身雇用制度を廃止し、大規模なリストラを実施、40万人の社員を半数近くにまで削減しています。1993年にはルイス・ガースナーがCEOに就任し、官僚主義の排除、世界レベルの事業統合、不採算部門の売却、顧客志向の事業経営を行い、業界でもトップに躍り出ることになります。

IBMはガルブレイスが述べた組織デザインのプロセスをほぼなぞっています。②構造から導き出された「③キーとなるプロセス」は、「これまでの組織風土を変える」「社員の意識を変える」「社内の対立や葛藤を処理する」といったことが必要となるプロセスと定義され、「④キーとなる人財」はそれらのプロセスに配置されています。

組織デザイン成功のキーとなるプロセスは「コミュニケーション」

IBMの例からもわかるように組織デザインを成功させる鍵となる要素は「コミュニケーション」に他なりません。組織デザインに取り組むにあたっては、円滑な社内コミュニケーションを実現する組織風土の醸成が重要です。そこで、組織デザインを行う前に、組織風土改革や意識改革を行う必要があるといえます。
しかし、組織風土改革や意識改革のプロセスを経るとなると、非常に長いスパンを要することは覚悟しておかなければなりません。IBMでさえ、この変革に10年の年月をかけているのです。同社はこの自社変革から得た知見でコンサルティングビジネスも始めていることは周知の通りです。

組織デザインのポイントは、従業員の「意識」を変えることです。人を変えることとは、すなわち組織内の意識を変えることでもあります。組織内の意識とは、企業風土や企業文化です。この不確実な時代を乗り越えていくために組織デザインに取り組むためには、事前に組織のコミュニケーションの課題に取り組むことが重要なのです。

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