
2025.07.02
ディスカッションとは?目的・効果、必要な能力と進め方を徹底解説

目次
ビジネスシーンで「ディスカッション」という言葉を耳にすることは多いですが、具体的に何を指し、ディベート(討論)などとどう違うかを明確に説明できるでしょうか。ディスカッションは、会議や打ち合わせで多様な意見を出し合い、より良いアイデアや解決策を導くために欠かせないプロセスです。本記事では、ディスカッションの定義や目的、ディベートやブレインストーミングとの違い、効果的な進め方や必要な能力について解説します。大人数での話し合いを建設的に進め、ビジネスの意思決定に活かすヒントをつかんでください。
ディスカッションとは
ディスカッションの定義
ディスカッションは、ラテン語の「discutere」に由来し、「dis-」(離れて、分離して)と「quatere」(振る、揺さぶる、打つ)が組み合わさってできた言葉です。
本来の意味は「叩き壊す、分解する」で、後期ラテン語や中世ラテン語では「議論する、調査する、検討する」という意味で用いられるようになりました。
議論を通じて物事を詳しく分析し、検討するという現在の意味につながっています。
ディスカッションと似た意味で用いられる言葉に「ディベート」や「ブレインストーミング」がありますが、これらはディスカッションの手法の一つです。
実務においては、多くの場合、何らかの議題やテーマを設定し、複数の人たちが対話したり討論したり、意見交換することを総称してディスカッションと呼びます。
さまざまなディスカッション方法とそれぞれの目的
次に、さまざまなディスカッション方法とそれぞれの違いや目的についてご説明します。
アイデアを出すことが目的であればブレインストーミング、意思決定やコミュニケーションを取ることが目的であれば対話形式でのディスカッションなど、目的に応じて適切にディスカッション手法を使い分けましょう。
また、ディスカッションの形式としては、小グループに分かれて議論を行うグループディスカッションや、専門家など有識者のパネリスト同士が討論するパネルディスカッションなどもあります。
それぞれ議題の種類や目的に応じて適した形式を選ぶことが大切です。
ディスカッションとディベートの違い
先述のとおりディベートはディスカッション手法の一つですが、両者の目的や進め方には違いがあります。
ディベート(debate)は一つのテーマについて賛成・反対の立場に分かれて行う論争で、論理と証拠に基づいて第三者(審判者や聴衆)を説得することを目的とします。
相手を直接打ち負かすことではなく、客観的な判断者に対して自らの立場の妥当性を論理的に示すことが必要です。
合意形成や意思決定を目的としている場合、さまざまな視点・立場から意見を出し合うディスカッションが向いています。
一方、議題やテーマに対する論点が明確でない状態でディスカッションを行うと、多種多様な意見が出ても論点が絞り込めず、議論が散漫になり結論に至らないことがあります。
たとえば「オフィスのペーパーレス化」をテーマにディスカッションした場合、
「ペーパーレスとはどんな状態か?」
「ペーパーレスをどのように進めるか?」
「すべてをペーパーレス化するのか?」
といった多様な意見が出て収拾がつかなくなる恐れがあります。
しかし、「オフィスをペーパーレス化すべきか」をテーマに賛成と反対に分かれてディベートを行えば、双方が意見を主張するために根拠やエビデンスを調べ、テーマに内在する論点や問題点を洗い出すことにつながります。
ディベートは論点や相違点を洗い出すのに有効であり、ディスカッションはそれらを踏まえて結論に導くプロセスだといえます。
ディスカッションは合意形成を目的とした建設的な議論であり、ビジネスの会議やミーティングに適しています。
これらを使い分けることで、まずディベート形式で論点を明確化し、その後ディスカッションで合意形成を図るという段階的なアプローチも可能です。
探求的なディベートと建設的なディスカッション
厳密に分けられるものではありませんが、ディベートはあえて肯定側と否定側に立場を分けて論点・問題点の洗い出しを行う「探求的な議論」であり、ディスカッションは参加者全員で最終的な結論を目指す「建設的な議論」と考えられます。
議論の段階に応じてディベート、ブレインストーミング、ディスカッションを使い分けることで、会議の質を高めることができるでしょう。
たとえば、合意形成や意思決定の前段階ではディベートを活用して議題の論点や問題点を明確にし、その後の解決策のアイデア出しにはブレインストーミングを行い、最終的な合意形成・意思決定の段階でさまざまな視点から意見を出し合うディスカッションを実施するといった流れが効果的です。
ディスカッションとブレインストーミングの違い
ブレインストーミング(ブレスト)は、思い浮かぶアイディアを自由に多く出し合い、斬新な発想を生み出すことを目的としています。
その際、議題やテーマの前提となる言葉の定義や議題の焦点が明確であればあるほど、質・量ともに豊富なアイデアを創出することが可能です。
アイデア出しのみではなく途中で議論を挟む場合もあるためディスカッションと明確に線引きできるものではありませんが、ブレストはアイデアの量と発想の幅を重視する点に特徴があります。
なお、ブレインストーミングでは原則として他者の意見を批判・否定せず、自由な発想を尊重しながら進めます。
実務では厳密に言葉を使い分ける必要はありませんが、それぞれの手法の特徴を理解して使いこなすことで、より質の高いコミュニケーションや意思決定につなげることができます。
ディスカッションの目的・効果
ディスカッションには、複数の人の知見を合わせることで問題解決に役立つという大きなメリットがあります。ここでは、ビジネスにおけるディスカッションの主な目的・効果を整理します。
多様な意見の取り入れ
ディスカッションでは複数の人のさまざまな意見を聞くことができます。
それにより一人では気づけない視点や発想が得られます。
たとえば、業務上のトラブルの再発防止策を検討する際には、異なる部門や職種のメンバーから意見を集めれば、見落としていた原因や有効な対策が見つかるかもしれません。
また、偏った判断に陥るのを防ぎ、より客観的で妥当な結論を導くことができるでしょう。
問題の発見と解決
それぞれの参加者が問題意識を持ち寄ることで、課題の洗い出しや優先順位の決定が可能になります。
一例として売上低迷の原因を話し合う場では、各部署の視点から問題点を出し合うことで真のボトルネック(核心的課題)が浮かび上がるでしょう。
また、議論を通じて問題点を共有し、複数の視点から解決策を検討することで、効果的な問題解決につながります。
相互理解・チームの結束
関係者全員で課題を共有し、意見や質問を交わすことで、お互いの状況理解が深まります。
プロジェクト遅延の要因をチーム全員で話し合えば、各メンバーの抱える事情や制約への理解が進み、今後の協力体制を強化できるでしょう。
ディスカッションを通じてメンバー間の信頼関係が醸成され、チームの一体感や協調性が高まる効果も期待できます。
新たなアイデアの創出
経験豊富な社員や専門知識を持つ人材が参加することで、他の人が見落としていた観点や斬新な着想が生まれる場合があります。
商品開発の会議で様々な分野のメンバーが自由に意見交換を行えば、革新的なアイデアが生み出されることもあるでしょう。
ブレインストーミングやディスカッションによって、画期的なアイデアが創出されるケースも少なくありません。
ディスカッションに必要な能力とは
ディスカッションは主に「意思決定」を目的とした議論です。議論を通じて効果的に意思決定を行うためには、主に以下の3つの能力が必要です。
1. 理解力・共感力
2. 論理的思考力
3. 合意形成力
この章では、ディスカッションに必要なそれぞれの能力について解説していきます。
理解力・共感力
ディスカッションを参加者の合意形成や次のアクションにつなげるためには、相手の意見を理解し、共感する力が必要です。
さまざまな立場の参加者が意見を出し合うディスカッションの場では、当然、自分とは意見が異なる主張も出てくるでしょう。
とくに、議論のテーマに関して詳細な情報が共有されていればいるほど、合意形成は困難になり、全ての利害関係者の賛成を得られることはまれです。
建設的に合意形成を行うためには、自身の意見を主張するだけでなく、他の参加者の意見にも耳を傾け、最終的な落としどころを探る必要があります。
また、理解力・共感力は傾聴力とも言い換えられます。
相手の立場や状況、心情に寄り添い、理解・共感していることを相手に伝えましょう。
相手の話を聞いた後、相手の心情を汲み取りながら自分なりに言い換えるなどすると、こちらが話の内容を理解していることが伝わります。
こうしたやり取りは一つの意見をさまざまな視点から考えることにもつながります。
議論を深め、建設的な意思決定につなげるために、共感力は重要な役割を果たします。
論理的思考力
論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、物事を矛盾なく筋道立てて考える力を指します。
ディスカッションの中で自分の意見を主張したり相手の意見を理解したりする際に、「論点がずれていないか?」「論理構造が間違っていないか?」といったことをチェックしながら考える力も、論理的思考力です。
論理的思考力には、客観的に見て矛盾のないよう話の筋道を組み立てる力だけではなく、相手に理解してもらえるよう説明する力も含まれます。
相手が何を知っていて何を知らないのかを把握したうえで、相手が理解できる言葉で、わかりやすい順序で説明しましょう。
言葉だけでは伝わりにくい場合は、ホワイトボードや付箋、ロジックツリーや相関図など視覚的情報も活用しながら補足すると効果的です。
合意形成力
目の前の課題に対して今後どのような計画を立て、どう行動するのかを決めるためには、参加者全員の合意が必要です。
合意形成を行うためには、課題の本質と、参加者それぞれの意見・その背景や前提を把握したうえで、最善の落としどころを探す能力が求められます。この能力が、合意形成力です。
ビジネスでは時間やコストなど制約がある中で、限られた時間内に最善の合意形成を行うことが求められます。
ディスカッションにおいて目指すべきものは、実際の行動や施策に反映される合意形成です。
また、ビジネスにおいては、時間やコストなどの制限がある中で最大の成果を出すことができる、その場で最善の合意形成を行うことが求められます。
「理解力・共感力」「論理的思考力」をバランスよく活用しながら、利害関係者やチームの動機付けや納得感の醸成を図り、行動を喚起できる状態まで話し合いを進めましょう。
話し合いを進める上では、ファシリテーション能力も必要です。
議論の参加者とは別に中立性の高いファシリテーターを置くことで、議論が白熱して脱線した際に本来話し合うテーマに沿った議論に戻したり、意思決定に導いたりすることができます。
ファシリテーターは、参加者の中に生じた対立状態を整理したり、議論の状況に応じて適切な質問を投げかけたりすることで、テーマに沿った意見や情報を参加者から引き出しやすくなるよう働きかけます。こういった理由から、ファシリテーション能力も、合意形成力を強化するひとつの要素といえます。
ディスカッションを効果的に進めるポイント
ディスカッションを有意義なものにするためには、事前準備や進行の段階でいくつか押さえておきたいポイントがあります。
以下に、ビジネスの会議や討論を円滑かつ建設的に進めるための主なポイントを挙げます。
テーマと目的の明確化・共有
まず、議論を始める前に「何を議論するのか(テーマ)」「何を目指すのか(ゴール)」を明確に定め、参加者全員に共有します。
必要に応じて議題やゴールをまとめたアジェンダを事前に配布しておくとよいでしょう。
議論の方向性を共通認識にし、参加者各自が意見を整理してから臨むようにすると無関係な話題に逸れるのを防ぎ、目的に沿った討議が期待できます。
進行役(ファシリテーター)の設定
自由に意見を出すだけでは議論がまとまりにくいため、会議の進行役を決めておきます。
議長・書記・タイムキーパーなど必要に応じた役割分担を行い、とりわけ中立的な立場のファシリテーターが参加者全員の発言を促し意見を整理すると、ディスカッションが円滑に進みます。
ファシリテーターには、状況を俯瞰して場をコントロールできる人や、質問力・共感力が高く人の意見を引き出すのが上手な人が適任です。
ディスカッションにおいては、声の大きな参加者の意見に議論全体が流されて少数意見が埋もれてしまったり、結論ありきで議論が形骸化してしまったりするリスクもあります。
ファシリテーターはそうした弊害を防ぎ、全員が自由に発言できる環境を維持することが重要です。
時間配分の計画と管理
限られた時間内で結論を出すには、議論に費やせる時間を予め配分しておくことが重要です。
各アジェンダに割ける時間の目安を決めて参加者に共有し、タイムキーパーなどが進行中に時間をチェックすることで、議論が長引きすぎないように管理します。
時間管理が甘いと結論が出せずに会議が終わってしまう恐れがあるため、時間を意識しながら議論を進めましょう。
発言を促し多様な意見を引き出す
参加者全員が積極的に発言できる雰囲気(心理的安全性の高い場)づくりを心がけます。
一部の人だけが話し続ける状況は避け、発言が少ないメンバーには問いかけを行うなどして意見表明を促しましょう。
「◯◯さんはいかがですか?」といった質問で発言の機会を作ることで、多様な意見が出やすくなります。
また、互いの意見を否定せずに受け止め、様々な角度から掘り下げていくことで新たなアイデアや論点が生まれやすくなります。
結論と実行策の確認
議論の終盤では、出された意見やアイデアを整理して結論を導きます。
その際、決定事項や今後のアクションプランを明確にして全員で確認しましょう。
会議後には議事録を共有し、各自の役割や次のステップを全員が認識することで、ディスカッションの成果を実務に活かしやすくなります。
結論や方針の共有が不十分だと、せっかくの議論の内容が現場で実行されず「宝の持ち腐れ」になりかねません。
まとめ
ディスカッションとは「議論」や「討論」を指す言葉で、「意思決定」を目的として行われます。
ディスカッションを通して意思決定を行うためには、共感力や論理的思考力、合意形成力といった能力が必要です。
相手の話に耳を傾けて共感することで深い議論を促進し、自分の主張を論理的に整理することで、相手に理解してもらいやすくなります。
しかし、知識をいくら身につけてもディスカッションに必要な能力は身につきません。
知識をインプットをした上で実際に議論を行い、体感することで初めてこれらの能力が養われます。
ディスカッション力を高めるには継続的な訓練が欠かせません。社内研修でグループディスカッションの演習を行ったり、ファシリテーションなど議論の進め方を学ぶ講座を受講したりすることも効果的でしょう。
ぜひ、この記事を参考に、日々の仕事でディスカッションを実践してみてください。
関連事例
よくある質問
- ディスカッションに必要な能力は何ですか?
・理解力・共感力
・論理的思考力
・合意形成力”

株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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