組織改革の課題や問題点は?成功へのステップを解説

外部環境の急激な変化の中で、社内制度や社内体制の改革の岐路に立たされている企業は多くあります。時代の変化に合わせて改革を成し遂げなければ、企業が生き残っていくことは困難でしょう。

組織改革と似た言葉に、組織変革があります。それぞれの言葉の違いをビジネスシーン使い分けていることはほとんどないかと思いますが、組織改革は組織変革に比べてより緊急性が高く、かつ課題の重要性・正当性が高いものです

本記事では、組織改革の課題や問題点に触れつつ、組織改革を成功させるステップを解説していきます。

組織改革とは

組織改革とは、組織が時代やビジネスシーンの変化に対応しさらなる成長をすべく、構造や価値観、運用を変えることを指します。

組織改革が必要となる背景

前述したように、組織改革は緊急性が高く、課題の重要性や正当性が高いものに対して行われます。

例えば、現在でいうところの新型コロナウイルスの影響による経営不振など、企業の生き残りがかかっているような危機的な状況の場合、早急な組織改革なくして企業の存続は困難だといえます。

組織改革を阻む問題と課題

組織改革においては、経営層と現場社員との間で大きな意識のギャップが生まれます。組織には、改革の推進力が大きいほど大きな抑止力が働くためといえます。
このギャップを埋めるには、組織改革を行うべき正当な理由や組織改革を行うことで享受できるメリットを、現場社員が納得感を得られるように伝え続けていく必要があります

組織改革をする際、もっとも危惧すべきことは「パニック」です。組織や会社は個人の集合体で成り立っています。会社が沈み行く船だと思われてしまえば、我先に助かろうと個人のエゴが噴出することは自明の理です。具体的にはリストラ時の優秀な幹部の離職などが挙げられます。

パニックが起きると「損切りをしよう」という意識が生まれるため、社員の離職や顧客離れを引き起こします。そのため、組織改革においては、社内だけでなく社外やステークホルダーともコミュニケーションをとりながら、改革遂行時の混乱をコントロールすることになります。

組織改革成功のためのステップ

組織改革を行う際に参考になるのが、デービッド・ナドラー氏とマイケル・タッシュマン氏による「組織行動の整合性モデル」です。このモデルは、「組織がうまく立ち行かないのは、組織を構成する要素(Component)が整合していないためである。したがって、組織の効果性(Effectiveness)を取り戻すためには構成要素間の新しい整合性を構築しなくてはならない」というものです。そして、現状の古い構成関係から将来の新しい構成関係へと移行するプロセスを組織改革と呼びます。

さらに、変革を行う意義や変革のプロセスを社員に伝え、理解を深めていく「インターナルコミュニケーション」を同時に行う必要もあります。インターナルコミュニケーションなくしては、社員に「意味もわからずただやらされている」感が生じ、面従腹背の状態に陥って組織改革が失敗に終わるためです。

この構成関係を移行するためのステップを解説していきます。

組織改革のためのチームを編成する

組織改革をリードできるパワフルでスキルフルなチームを編成します。このチームが組織改革の担い手となります。組織改革推進チームには、改革を主導するために必要なスキルだけでなく、人脈や周囲からの評判・求心力、改革を自由にできる権限が与えられている人材が望ましいでしょう。既存社員の反発や抵抗が予想される組織改革において、既存社員が正当性を認めやすい人選をすることで、スムーズなコミュニケーションを取りながら、推進していくことができます。

課題の洗い出し、分析

はじめに、なぜ組織改革を行わなければならないのかという課題の洗い出しと分析が必要です。これは現在の組織の健康診断という意味合いだけでなく、改革を行う際にボトムやミドル層に納得感を持ってもらうための説明材料にもなります。

特に必要もないのに組織改革を行おうとする経営者は少ないと思いますが、社員や社外のステークホルダーに説明ができるだけのストーリーづくりは必要ですし、課題を解決できたと実感できる状態まで持っていかなければ組織改革を行う意味がありません。

「なにかがうまくいっていない(から組織を改革する必要があるのではないか)」という漠然とした不安だけで動くのは危険です。その場合は、組織改革の専門家に相談し、協力を仰ぎましょう。

ビジョンと戦略を立てる

組織改革を導くためにビジョンを策定し、そのビジョンを実現するための戦略を立案します。ここでのビジョンとは、「組織が将来あるべき姿」であり、「なぜ組織の構成員が、そのあるべき姿を築くことに努めるべきなのか」まで内包している必要があります。

なお、ビジョンは、常に目に見えやすいもの、社内外にとって実現が待ち望まれるもの、実現可能であること、方向が示されているもの、柔軟性に優れているもの、伝えやすいものが含まれているとベターです。

また、戦略面においては、一度に大きな改革を実行するのではなく、短期間で成果の出る改革しやすいものから進めていきましょう。もともと組織改革は難易度が高いものであり、大きな改革を推進するためには莫大な時間を要します。小さな成功事例を積み重ねながら成果を共有して士気を高め、納得感を得て次の改革へ進めていくのが望ましいステップだといえます。

社内にビジョンと戦略の共有を行う

策定したビジョンと戦略は、あらゆるチャネルを通じて全社、または社外に伝えるためのコミュニケーションを図りましょう。

またこれは一度きりでなく、間断なく、改革の最中に頓挫してしまわないよう、継続してメッセージを発信することが重要です。これらのビジョンと戦略を体現する人材として、組織改革推進チームが主体となってロールモデルとなり、周囲の社員が期待する行動をとることも必要となってきます。まさに「全社一丸」の状態を作るべき状態といえる段階です。

計画を実行する

あらかじめ策定した戦略に基づいて、計画を実行します。繰り返しとなりますが、短期的な成功を生むものから進めていくことが大事です。はじめから大きな成功を期待すると取り組みを五里霧中の状態に導き、社員の不安を招きます。

改革の実況中継をする

組織改革は「実況中継」を入れて、今組織がどういう状態であり、これからどうしていくのかを社内外に明示しましょう。明示することで、目に見えない改革の不自由さによる閉塞感を薄め、前に進んでいることを関係者に示すことができます。

また、成果が出たものはすぐに「速報」を入れることで初期段階から組織改革に弾みがかかり、良い流れを作ることができます

継続的な改善ができるように落とし込む

組織改革が成功したら、その変化を組織内に定着させる必要があります。組織の構造や運用面に反映させて、組織の内外へ徐々に馴染ませるようにしていきます。
なにかしらの変化をもたらすと、元に戻そうという抵抗力が働くため、事後のステップまでしっかりと行うことが重要です。でなければ、組織改革以前に洗い出した課題が再発することとなるでしょう。

また、組織改革は一度で終わりではなく、何度も数を重ねて継続して行うべきものです。そのため、常日頃から組織改革の必要性や組織として目指すべきビジョンを繰り返し周知します。そして、変革を行ったメンバーに対しては成果を適切に評価し報酬を与えることで、士気を高めていきましょう。これらのサイクルが社員のモチベーションを高め、組織の活性化にもつながります。

ここまで説明したとおり、組織改革では実行部隊や経営トップがフォーカスされがちですが、それはあくまでテクニカルな側面です。結果として組織改革を成しえるには、社員一人ひとりの力をいかにして統合していくかに終始していることがおわかりでしょう。

まとめ

組織改革というと大掛かりなプロジェクトを膨大な時間をかけて行うイメージがありますが、実際は短期的な施策の連続となります。未来を見据えてこれらに取り組み、ひとつひとつの成果を実感し、逆戻りしないように組織へ定着させながら次の施策へ進めていくサイクルが組織改革です。
非常に難易度の高い取り組みですが、企業が生き残っていくには欠かせないものです。もしお困りの場合や何から手をつけていいかわからない場合は、ソフィアまでお気軽にご相談ください。

よくある質問
  • 組織改革とは何ですか?
  • 組織が時代やビジネスシーンの変化に対応しさらなる成長をすべく、構造や価値観、運用を変えることを指します。

  • 組織改革成功のためのステップは何ですか?
  • ・組織改革のためのチームを編成する
    ・課題の洗い出し、分析
    ・ビジョンと戦略を立てる
    ・社内にビジョンと戦略の共有を行う
    ・計画を実行する
    ・改革の実況中継をする
    ・継続的な改善ができるように落とし込む

  • 組織改革の問題点は何ですか?
  • 組織改革をする際、もっとも危惧すべきことは「パニック」です。組織や会社は個人の集合体で成り立っています。会社が沈み行く船だと思われてしまえば、優秀な幹部の離職などが挙げられます。

株式会社ソフィア

フィールド・リサーチ&コンサルティング事業責任者、シニア・コンサルタント

森口 静香

先が見えない、課題が曖昧でどうすればよいかわからないプロジェクトの伴走をすることが多いです。議論をその場で図解したり、時にはグラレコや動画を使って、みなさんの共通認識をつくることを得意としています。

株式会社ソフィア

フィールド・リサーチ&コンサルティング事業責任者、シニア・コンサルタント

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