今やDX(デジタルトランスフォーメーション)はすべての企業が直面する課題です。
経済産業省のレポート「DXレポート〜ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開〜」によると、企業が革新的なシステム刷新を行うことができなければ、2025年から2030年までの間に毎年12兆円もの経済損失が生じるとされています。
しかしながら、DX実現に向けてうまく動くことができていない企業が未だ多く存在するのが現状です。
DXはさまざまな観点から推進に向けた準備を行う必要がありますが、今回はDXを推進するための組織づくりに焦点を当てて解説していきます。

DX推進には専門の部門が必要?

DX(デジタルトランスフォーメーション)という大きな変革を推進するためには、大企業になればなるほど、先導的な役割を担う部門があったほうが動きやすくなるでしょう。
ここではDX推進に取り組む日本企業の組織体制について紹介します。

DXを推進する組織体制

IT専門調査会社であるIDC Japanが2018年に行った調査によると、DXを推進する国内企業は、DX専門の「第2のIT部門」を設置してリーダー組織とするケースがもっとも多くなっています。
また、第2のIT部門を設置した企業の多くは、同時に「チーフデジタルオフィサー(Chief Digital Officer: CDO)を設置していることも特徴です。

DXを推進する組織編成

今回は参考として3つの型を例示します。

・IT部門拡張型
その名のとおり、すでに存在するIT部門を拡張してDX部門を設ける型です。
もともとITのスペシャリストで組織された部門ということもあり、デジタル化に際してのツールやサービス、システム開発を検討・導入する際に力を発揮します。
一方で、IT部門は保守やメンテナンスを専門とする部署であるため、提案力に欠けるというデメリットも存在します。伝統的に、事業部門の仕事を理解している人間を現場からIT部門に、あるいはIT部門の部門から現場に派遣するなどのジョブローテーションを取り入れてきました。あるいは外部の知見を取り入れ、現場とITの二者の橋渡しを行うことなどが必要です。

・事業部門拡張型
こちらは自社の事業部門を拡張した型です。
自社のプロダクトやサービス、テクノロジーに深く携わってきた人材がDXを主導し、IT部門が後方支援を担います。より現場目線での変革を得意なフィールドとします。
なお、この体制をとる場合、IT部門との連携を密に行う必要があります。IT部門との折衝を先導するメンバーがいると円滑に進めることができるでしょう。

・専門組織設置型
DXを推進してイノベーションを起こすべく、各部署のみならず、テクノロジーベンダーやコンサルティングファームなど外からも人材を選りすぐって専門組織を立ち上げる場合もあります。さまざまな部門で活躍した人材を集めることで、イノベーティブなアイディアが創出されやすくなります。
異なる部署の人材が一堂に会することになるため、最初はチームの組織力が弱い状態です。
チームビルティングに長けたマネジメントの担当者も加えて部門をまとめる必要があります。

DXは推進の実行プロセスに応じて、さまざまな人材を必要とします。
推進計画を立案する際に、自社のどのような人材をいつアサインすべきか検討をつけておくと、実際の運用時にスムーズとなるでしょう。

DXを推進する組織に求められる3つの要素

DXを推進する組織には、どのようなことが求められるのでしょうか。
大きく3つに分けて解説します。

ビジネスモデル・経営戦略への実装力

DXによって自社事業の形が大きく変わった場合、ビジネスモデルや経営戦略にも軌道修正が必要です。
DX部門にはこの設計と実装を行うことが求められます。
デジタルトランスフォーメーションは、成功している企業が世界でも5%ほどしかないという調査結果から、企業を創業・継続させることと同程度に難易度が高いと言われており、DX
部門は複雑な全社横断改革を担うことになるでしょう。

人材育成と活用

DXの過程で、新たなツールやシステムを導入することが多々あるはずです。
その際に現場が新しい環境での業務にいち早く慣れるよう、全社をあげてITリテラシーの向上に取り組む必要があり、DX部門にはその育成を行うことが求められます。
また、DXにはフェーズの段階ごとに必要な人材を必要に応じてアサインすることが求められます。自社の人材を有効活用できるようコーポレート部門と協働しながら動くようにしてください。

バックキャスティングから考えるイノベーション創出力

イノベーションを創出するためには、過去や現状を分析して未来を予測するフォアキャスティングよりも、未来のあるべき姿を想像してそこから逆算的に今何をすべきかを考えるバックキャスティングとしての考え方が求められます。
フォアキャスティングは現在を起点として未来を予測するために、遠い目標を定めにくいというデメリットがあります。
一方でバックキャスティングは、想像できる未来を起点として道筋をプロットするため、長期ビジョンを策定しやすいです。
過去の成功体験に縛られて革新的な未来を描けないという事態に陥ることを防ぐため、重要な視点といえます。

DX推進の企業事例

ここからは、日本企業におけるDX推進の組織づくりについて、実際の企業事例を3社紹介します。

住友商事

住友商事株式会社は、住友商事グループ全体におけるICTやデジタル技術活用の重要性が高まっていることを機に、DXの推進をいち早く開始した日本企業です。
同社では2016年にDXを推進していくことを目的とした全社横断組織「IoT & AIワーキンググループ」を発足し、18年からは専任組織としてデジタル事業本部内に「DXセンター」を設置しました。
このDXセンターが主体となって、デジタル技術の活用による既存事業のバリューアップ、新たなサービスの創出、さらに業界横断のビジネスモデル変革に向けて取り組んでおり、これまで工場の稼働状況見える化、物流・倉庫事業の高度化、ホワイトカラーの生産性向上などに取り組んできましたが、DX推進の専任組織であるこのDXセンター設置を機に、各営業部門・地域組織との連携をより一層強化していく考えを示しています。

花王

花王株式会社では、グループのDXを推進するために先端技術戦略室(SIT)を発足しました。同社では、長年にわたって蓄積したデータを活用するためにDXの実現が不可避となっていましたが、当時は牽引できる部署がなかったため、先陣を切ってDXを推進する「ファーストペンギン」としてSITを立ち上げたといいます。SITは、従業員が意欲的に取り組める仕事や、社会に対して価値を生み出せる仕事になることを主軸に置き、それらを先導できるシステムづくりを目指しました。あくまでも主体は従業員であるとし、従業員が受け入れやすいシステム構築を目指したことが特徴です。

NEC

日本電気株式会社(NEC)もDXの推進に取り組む日本企業の一社ですが、同社ではDX事業を別会社にしたり、別組織として場所を隔離したりして推進する、いわば「出島」は不要だとしています。
同社ではDX専任組織として「Digital Business Office」を設置しましたが、これはDXを推進し、全社組織をシフトしていけるような体制として「デジタル人材」を組織の中に据えるという型であり、これまで挙げた2社のように切り出していないことが特徴です。

まとめ

今回は、DXというテーマの中で、「組織づくり」に主眼を置いて解説しました。実際にDXを推進する際は、こうした専門部署を設けることに加えて、その部署が主導して社内の各部署やパートナー企業と連携しつつ、様々な施策を推し進めていくこととなります。
これまでも様々な目的で日本企業は組織変革を行ってきました。組織変革の成果を出すには、変革した新組織が上手く社内外の関係者と連携して動けることが最も重要です。DXにおいてもその点は同様であることを忘れないようにしてください。

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