レジリエント企業になるための方法は?特徴や構成要素を解説!
最終更新日:2026.07.07
目次
自然災害、地政学リスク、サイバー攻撃、サプライチェーン寸断、働き方の多様化。企業を取り巻く不確実性が高まる今、求められているのは単に危機を耐える組織ではなく、変化を学習と成長に変えられるレジリエント企業です。
本記事では、特徴、構成要素、実践ステップをインターナルコミュニケーションを軸に実装ポイントまで解説します。レジリエンス関連の国際標準には事業継続のISO 22301や組織レジリエンスのISO 22316があり、企業実務でも人材・健康・情報共有・リスク管理を横断して扱う流れが強まっています。
レジリエント企業とは
レジリエントな企業の定義
レジリエントな企業とは、事業環境の変化に対して迅速かつ柔軟に対応し、リスクを反発力に変えて成長を遂げる企業のことを言います。企業経営は、自然災害や不況などさまざまな外部要因にさらされています。社会全体の経済的なダウントレンドは、どの企業も避けては通れません。しかし、そうした危機を柔軟に受け止め、時代に即して経営のあり方を変えたり、新しい仕組みを取り入れたりすることで、以前よりも大きく成長する企業があります。これが、レジリエントな企業です。
長引くコロナ禍による社会の変容が証明したように、世の中は不確実です。たとえば、現在はグローバルなIT企業として世の中を支配しているように見えるGAFA(Google、Apple、Facebook 現Meta、Amazon)であっても、10年後、20年後にどうなっているかはわかりません。盤石に見える企業であっても、社会に大きな変化があれば立ち行かなくなる可能性があります。だからこそ、企業にはレジリエンスが必要なのです。
いまレジリエント企業が注目される理由は、危機が「たまに起こる例外」ではなく、経営の前提になったからだと考えられます。自然災害や感染症だけでなく、サプライチェーンの寸断、サイバーリスク、価値観の多様化、人的資本への要請など、企業は同時多発的な変化にさらされています。レジリエンスの国際標準では、事業継続を扱うISO 22301と、組織レジリエンスを扱うISO 22316が位置づけられており、平時から準備し、混乱時に対応し、回復後に学習する一連の仕組みが重視されています。
つまり、レジリエント企業とは「危機に耐える会社」ではありません。正確には、重要機能を維持しながら、変化の中で学び、やり方を更新し続けられる会社です。冗長性、回復力、柔軟性、情報共有、学習の速さをどう両立するかが、競争力そのものになっていると言えるでしょう。
レジリエント企業の特徴
レジリエントな企業には、共通する特徴がいくつかあります。
データや情報のフラットな共有
まずは、経営や各事業に関わるさまざまなデータや情報が、組織の上層部のみではなく組織全体に対してフラットに共有されているということです。企業がレジリエントであるためには、緊急時などにおいて、必要な人やチームが求める情報やデータに容易にアクセスできることが必要です。たとえ組織内にデータがあっても、それぞれが別々に管理されていて簡単にアクセスできないのでは役に立ちません。あらゆる情報が決められた場所に集約され、きちんと管理される仕組みがあることが重要なのです。
また、緊急対応のためには、情報へのアクセスだけでなく、必要な権限も確保されていることが必要です。通常の業務ではさまざまな承認フローやルールがあっても構いませんが、緊急対応のために構成されたチームには、そうした決まりを超えて行動できる権限を与えることで、情報を活かして柔軟かつ敏捷に対応できる体制を整えましょう。
情報共有は、単にツールを導入すれば実現するものではありません。知識管理の研究でも、知識共有の重要性が理解されていても、実務では個人・組織・技術面の阻害要因によって共有が機能せず、協力不足や重要知識の喪失が起こることが示されています。だからこそ、フォルダ構成やチャネル設計だけでなく、誰が・いつ・何を・どの粒度で共有するかまで運用設計する必要があるのです。
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高いコミュニケーションスキル
レジリエントな企業には、高いコミュニケーションスキルがあるということも共通しています。データや資料、世の中の情勢などから理解・分析した事柄について、内外のステークホルダーに説明し、それを元にディスカッションできる能力が求められるからです。
また、コミュニケーションのプラットフォームも確立されています。リモートワーク等を活用している会社であっても、社員やチームメイト同士が状況に応じて簡単にコミュニケーションをとれる環境が整っていることで、変更が必要なときや問題が生じたときにも共有がしやすく、さまざまな状況にスピーディに対応できるようになるからです。
コミュニケーションのためのスキルやプラットフォームが備わっていることは、社員同士やチーム間のつながり形成にも役立ちます。社員間・チーム間のつながりによって意見の交換などが容易になるうえ、生み出した理論やスキルが部署間の壁を超えて共有されやすくなり、会社としてのリソースの効果的な活用を可能にします。
実際、企業の最新のサステナビリティ開示でも、社員意識調査、労使協議、社員相談窓口、社内イントラネット、社内報といった複数のコミュニケーション手段を継続的に運用している例が見られます。レジリエント企業では、コミュニケーションを「風土」ではなく「仕組み」として実装しているのです。
理念やビジョンの浸透
企業の理念やビジョンが組織全体に浸透しているというのも、レジリエントな企業の特徴の1つです。企業の理念やビジョンは、経営や各現場が意思決定を行う際の判断基準にもなります。そして、判断基準として機能するためには、理念やビジョンが組織全体に浸透し、共通の理解が形成されていることが必要です。判断の拠り所となる理念やビジョンが存在しなかったり、文言だけがあって全員の共通認識が形成されていなかったりすると、意思決定の軸がぶれたり、予期せぬ方向に進んでしまったりすることがあります。
世の中が大きく変わっている状況下で、組織が意思決定したことを全員が納得して遂行するためにも、組織全体に理念やビジョンが広く認識されていることが、レジリエントな企業としての条件だと言えるでしょう。
レジリエンスが高い企業ほど、理念は「掲げるもの」ではなく「判断の基準」として使われています。ユニ・チャームの開示でも、ステークホルダーとの適切な協働と、素直かつ積極的な対話を通じた持続的成長が、企業価値創出の前提として示されています。理念浸透とは、緊急時に上意下達を強めることではなく、分散した現場判断が同じ方向を向く状態をつくることなのです。
心理的安全性の担保
レジリエント企業では、「問題が起きないこと」よりも、「問題が小さいうちに出てくること」が重視されます。そのためには、現場が違和感や失敗、懸念を早い段階で言えることが不可欠です。ソフトウェア開発チームを対象とした研究では、自律性が心理的安全性を高め、心理的安全性がチームの振り返りやパフォーマンスにプラスに働くことが示されています。また、規範の明確さも、パフォーマンスや満足度に強く関係していました。
人事部門の役割は、心理的安全性を「優しさ」と誤解させないことです。必要なのは、何を言ってもよい無秩序ではなく、異論・懸念・改善提案が不利益にならない対話ルールの設計です。ライン長研修、1on1、会議運営ルール、振り返りの型などに落として初めて、心理的安全性は組織能力になります。
平時の改善と有事の対応の連動
レジリエント企業は、有事だけに強いわけではありません。平時からの改善活動、情報共有、人材育成、健康管理、リスクマネジメントがつながっているからこそ、危機時にも機能します。ユニ・チャームの事例でも、OODA-Loopによる自律人材育成と、安全衛生委員会による定期協議・効果測定・改善の循環が一体で設計されています。
「緊急時にだけ特別なことをする」のではなく、「平時に回している仕組みを緊急時にも使える」ことが重要です。BCPや危機対応マニュアルは必要ですが、それだけでは足りません。日常のマネジメントと非常時の対応とが切れている組織は、実際の混乱時に動けなくなりやすいからです。
レジリエント企業のメリット
第一に、意思決定の質と速さが上がることです。情報が集まり、現場が声を上げやすく、判断基準が共有されている組織では、異変に対する初動が早くなります。供給網の研究でも、企業の大きさだけでなく、ネットワーク上の位置や冗長性がリスクの大きさを左右し、単純な代替策や冗長化が影響緩和につながることが示されています。
第二に、イノベーションが生まれやすくなることです。変化に適応する組織は、失敗をゼロにするより、失敗から学ぶ回路を持っています。心理的安全性とチームの振り返りがパフォーマンス向上に結びつくという知見は、危機対応だけでなく、新規事業や業務改善にもそのまま当てはまります。
第三に、離職・疲弊・属人化のリスクを下げられることです。情報が閉じ、判断が一部の人に集中し、ミスを言い出せない職場では、平時でも組織は脆くなります。逆に、対話・健康・安全衛生・相談窓口・学習の仕組みが整っている組織は、危機時だけでなく日常運営でも安定します。
レジリエントな企業経営の構成要素
では、レジリエントな企業を構成している要素には、どのようなものがあるでしょうか。
自律型の人材
レジリエントな企業になるために必要な要素の1つが、自律型の人材です。レジリエントな企業では、常に指示された業務を指示された通りに続けるのではなく、状況に応じて自ら適切に判断し、行動できる人材が必要です。常にやり方が決まっているわけではないため、自分で考えることのできる能力を備えていることが重要なのです。
また、判断する際には個人の感情を基準とするのではなく、必要なデータや情報を集め、それらを的確に分析して論理的に議論し、企業の理念やビジョンに沿って適切に判断できる能力が必要です。思考力があり柔軟性の高い人材が集まることで、迅速で適切な対応にもつながり、世の中に思わぬ変化があっても対応できる下地がつくられます。
自律人材は、放任で育つわけではありません。ユニ・チャームは、OODA-Loopを通じて、観察・状況判断・意思決定・行動を繰り返しながら、やり方自体を見直す人材育成を進めています。人事施策としては、研修よりも先に、現場に判断材料と権限が届く環境を整えることが重要です。
社員同士、会社と社員の間の信頼関係
個々の社員が自律的に考え、行動できるだけでなく、会社と社員、社員同士の間に信頼関係が成立していることも、レジリエントな企業になるためには大切です。困難な状況や何らかの脅威が生じたときに、同僚やチームメイトが助けてくれるという安心感や、会社が最終的な支えになってくれるという信頼があることで、社員はより積極的に動くことができます。
また、働く環境や周りの人々を信頼できることで、モチベーションが向上したり、仕事に対する自信につながったりもします。人と人、組織と人とのつながりが、レジリエントな会社を支える重要な構成要素なのです。
信頼関係は、曖昧な仲の良さではありません。相談窓口、労使協議、社員意識調査、定例の対話機会など、組織が意図的に設計した対話の場によって下支えされます。ステークホルダーとの対話をコーポレート・ガバナンスの前提に置く企業姿勢は、社内の信頼形成にも直結します。
多様なキャラクター・ストレングス
キャラクター・ストレングス(character strength)とは、ポジティブ心理学において研究成果を元に規定された、「知恵・知識」「勇気」「人間性」「正義」「節度」「超越性」の6カテゴリにおける24種類の普遍的な「強み」のことを指します。
レジリエントな企業になるためには、従業員がこのキャラクター・ストレングスにおいて多様な強みを持っていることが大切です。もちろん、必ずしも1人ですべての強みを持っていなければいけないわけではありません。チームメイトがそれぞれの強みや弱みを補完し合うことで、仕事を進めていけるような状況を生み出せたらよいと言えるでしょう。
キャラクター・ストレングスは、場所や環境を問わずに発現される人間の本質的な強みを表しているため、この指標において多様な人材がいることで、組織はよりレジリエントになるのです。
レジリエンス研究では、現在取り得る行動の幅と、将来にわたってその幅を維持・拡張できることが重要だと論じられています。企業に置き換えると、多様な視点、多様な経験、多様な専門性を持つことは、単なるD&I施策ではなく、将来の選択肢を増やす経営基盤だと言えます。
業務継続の仕組み
事業継続マネジメントの国際標準であるISO 22301は、混乱からの保護、発生確率の低減、準備、対応、回復までを継続的に改善する管理の考え方を示しています。レジリエント企業は、属人的な頑張りではなく、継続を可能にする仕組みを持つ企業でもあります。
人事部門に引き寄せて言えば、業務継続の仕組みとは、代替要員の育成、意思決定の代行ルール、情報アクセス権限、緊急時の連絡設計、健康・安全衛生体制、振り返りの設計までを含みます。レジリエンスは総務・リスク部門だけのテーマではなく、人的資本の課題でもあるのです。
レジリエント企業になるために人事が設計すべきこと
ここまで、レジリエントな企業の特徴や要素について解説してきました。では、レジリエントな企業になるためには、どうすればいいのでしょうか。
ネックとなるソフト面の変革
データを収集し統合するプラットフォームを構築して情報を可視化したり、意思疎通を迅速化するためのコミュニケーションツールを導入したりすることは、それほど難しいことではありません。企業としての意思決定が必要で、費用もかかりますが、それさえクリアできれば組織のハード面は変えることが可能です。
実際にネックとなるのは、人材育成や企業風土といったソフト面でしょう。ソフト面は時間をかけて醸成されていく部分も多く、お金さえかければ変えられるものではないからです。変化に対応するスピード感や、前例のないことに取り組む柔軟性というのは、組織の風土などソフト面が大きく関わってきます。
だからこそ、組織のレジリエンスを高めるために、これらのソフト面に着目し、変革していく必要があります。組織レジリエンス向上に向けて組織のどのような面をどのように変えていくのか、経営側が明確に打ち出した上で、ハード面とソフト面双方の変革に向けた具体的な施策を検討しましょう。
人事部門がまず着手したいのは、管理職の行動変容です。具体的には、会議で異論を歓迎する、失敗共有を責めない、判断基準を言語化する、部下の観察と支援を習慣化する、といった日常行動を研修と評価制度に組み込みます。制度・育成・コミュニケーションを一気通貫で設計することが、ソフト面改革の要点です。
経営の非効率を受け入れる姿勢
レジリエントな企業になるためには、組織の冗長性や多様性が必要です。ビジネスに冗長性や多様性を取り入れるということは、ある意味で経営を非効率にする面もありますが、これを受け入れなければなりません。
これまで、企業が売上と利益を増大させるためには、経営効率の向上に向けて改善策を繰り返し、バリューチェーンを最適化していくことが王道でした。また、企業風土にマッチした同一性の高い人材が、語られない文脈や暗黙の了解事項も理解した上で、ハイコンテクストなコミュニケーション(阿吽の呼吸)で仕事を進めることが、スピード感のあるビジネスの秘訣でもありました。
しかし、効率化に向けて業務の定型化や分業を進め、バリューチェーンを最適化することで短期的には成果が上がるかもしれませんが、同時に組織の硬直化も招きます。効率化を求めれば求めるほど、その過程で余力を失い、レジリエントな企業とは反対の方向に傾いてしまうのです。企業のレジリエンスを高めるためには、スケジュールや在庫や人員にバッファを持たせたり、仕入れ先や生産ラインを複数化したりするなど、組織の冗長性が必要です。
また、多様なアイデアや能力をビジネスに取り入れるためには、多様なバックグラウンドを持った人材も必要です。組織に冗長性を持たせるためにはコストがかかり、多様な人材で仕事を進めるためにはローコンテクストなコミュニケーションが必要なため、コミュニケーションコストもかさみます。つまり、レジリエンスの向上のためには、効率を犠牲にしなければならない面があるのです。
レジリエンスと業績というコンフリクトを完全に解消することは困難です。しかし、テクノロジーを活用することで、ある程度の両立は可能であると考えられます。企業のレジリエンスを高めるためには、経営層が一時的な非効率を受け入れる覚悟を持ちつつ、現状の組織構造や風土を見直し、レジリエンスと業績の両立に向けて組織を改革していかなければならないのです。
この論点は研究でも裏づけられています。レジリエンスは、冗長性や代替性、回復時間の設計と深く関係し、供給網の柔軟性を高めることは不足リスクの低減に効く一方で、複雑性や運営コストの上昇も招きます。言い換えれば、レジリエンスは「効率化の敵」ではなく、短期効率と長期継続性のバランスを取り直す営みなのです。
インターナルコミュニケーションによる組織の柔軟性向上
先の見えない不確実な社会で適切な意思決定をし、たとえうまくいかなくても状況に応じて進む方向を微修正したり方向転換したりするためには、組織のインターナルコミュニケーションも重要です。
企業の役割が利益の追求から社会課題の解決へと変化してきている昨今においては、企業が経営の意思決定を行う際にも、環境や人権、地域社会や未来世代など各方面への配慮が必要です。こういった制約の中で適切な意思決定を行うためには、社内外のさまざまな関係者の声に耳を傾け、最善の選択肢について議論する必要があります。権限移譲によって各現場が自律的に判断・行動することと、幅広いインターナルコミュニケーションを通じて熟慮すること、この2種類のアプローチが組織のレジリエンスを高めるために必要です。
そのためにも、経営陣は一つの選択肢のみに沿って組織を効率化していくのではなく、多様な選択肢を持って、時には立ち止まって話し合い、方向転換をしながら進んでいくことができる柔軟な組織をつくっていく必要があります。これを下支えするのが、インターナルコミュニケーションなのです。
ここは、本記事でもっとも強くお伝えしたい論点です。インターナルコミュニケーションは、社内報やイントラの運営だけではありません。重要なのは、経営の意図、現場の懸念、部門間の知見、失敗からの学びが、意思決定に使える形で循環する状態をつくることです。知識共有研究が示すように、共有の阻害要因を放置すると、協力が弱まり、蓄積された知見が個人に閉じたままになります。
弊社ソフィアの調査では、インターナルコミュニケーションにおける課題と対策、コーポレート部門からの情報発信、社内コミュニケーション媒体の活用状況を調査しています。
管理職への心理的安全性と対話技術の実装
レジリエント企業づくりは、制度だけでは進みません。日々の会議、1on1、プロジェクトレビュー、トラブル対応で、管理職がどのような問いを投げ、どのように反応するかが決定的です。自律性、役割の明確さ、心理的安全性がチームパフォーマンスに関係することを踏まえると、管理職研修では「伝える力」だけでなく、聞く力、問い直す力、異論を扱う力を重点化するべきです。
具体的には、会議で最初に結論を固定しない、少数意見を先に拾う、振り返りで個人よりプロセスを点検する、緊急時ほど判断基準を明文化する、という運用が有効です。こうした対話の技術は、平時の部門運営にも、有事の初動対応にも効きます。
現場が動ける権限設計と判断基準の整備
どれだけ「自律」や「対話」を掲げても、現場に判断余地がなければ、組織は動きません。現場が動けるようにするには、権限委譲と同時に、何を優先するかを明確にする必要があります。安全、人命、顧客影響、ブランド毀損、法令順守、復旧目標など、優先順位が共有されている組織ほど、混乱時でも判断がぶれにくくなります。
人事部門としては、評価制度や等級制度も見直し対象です。前例踏襲だけが評価される制度では、レジリエンスは育ちません。変化への適応、再学習、部門横断協働、ナレッジ共有、危機時の貢献が正当に評価される仕組みが必要です。
レジリエント企業づくりの進め方
最初に行うべきは、現状把握です。情報共有、会議運営、部門間連携、エスカレーション、管理職行動、危機時の代替体制などを棚卸しし、ボトルネックを特定します。ここでは、人事サーベイだけでなく、インタビューや会議観察も有効です。
次に、優先課題を絞ることが必要です。レジリエンスは範囲が広いため、一度にすべてを変えようとすると失敗しやすくなります。経営課題に近いもの、たとえば「部門横断の情報共有」「管理職の対話」「BCPと人材育成の接続」のように、影響が大きいテーマから着手するのが現実的です。
そのうえで、施策を仕組みに落とし込むことが重要です。研修だけで終わらせず、会議ルール、1on1ガイド、イントラ設計、社内報の編集方針、評価項目、昇格要件、ナレッジ共有の運用まで連動させます。レジリエンスはイベントではなく、日々のオペレーションで育つからです。
最後に、効果測定を入れます。社内コミュニケーションの到達度、理解度、対話機会、心理的安全性、エスカレーション速度、部門間連携満足度、離職傾向、復旧対応の振り返りなどを定点で見ていくことで、レジリエンスは「よい文化」ではなく「改善できる経営指標」になります。
レジリエント企業の事例から学べること
ユニ・チャームの開示から読み取れるのは、レジリエンスを単独テーマで扱っていない点です。OODA-Loopによる自律人材育成、D&I、社員の健康、安全衛生、リスクマネジメント、社内イントラネットや社内報など、複数の仕組みを束ねて「変化対応力」をつくっています。これは、多くの企業が陥りがちな「BCPは総務」「育成は人事」「情報発信は広報」という縦割りを越える示唆です。
事例から学ぶポイントは三つあります。第一に、レジリエンスは人材施策だけでも、危機管理施策だけでも不十分だということ。第二に、現場が判断できるようにするには、理念・情報・権限の三点セットが必要だということ。第三に、インターナルコミュニケーションは周辺施策ではなく、実装基盤だということです。
まとめ
不確実性の高い世の中で他社との競争に打ち勝ち、中長期的に生き残るためには、変化への適応力が高く柔軟性のあるレジリエントな企業にならなければなりません。そして、レジリエントな企業を築くためには、自分で考えることができ、多様性のある人材が必要です。
ただし、いま求められているレジリエンスは、根性論でも精神論でもありません。情報共有、心理的安全性、理念浸透、自律型人材、D&I、健康・安全衛生、リスクマネジメント、そしてインターナルコミュニケーションを、平時から仕組みとしてつなぎ込むことが重要です。研究でも、柔軟性や冗長性、知識共有、心理的安全性が、組織の継続性やパフォーマンスと関係することが示されています。
世の中の変化や顧客のニーズに対応するため、レジリエントな企業づくりを進めたいとお考えなら、まずは自社の情報共有、対話、管理職行動、権限設計の現状を可視化するところから始めてみてください。組織のレジリエンス向上を、インターナルコミュニケーションと人材育成の両面から設計したい場合は、ぜひソフィアまでご相談ください。現状診断から施策設計、運用改善まで、一気通貫でご支援できます。





