組織変革

組織文化とは?組織風土との違いや醸成手順を独自調査から解説

企業組織についての話題でよく聞く「組織文化(原著では”Informal Organization=非公式組織”として定義)」という言葉。経営学用語のひとつですが、組織文化とはどのようなもので、なぜ企業にとって重要なのでしょうか。また、良い組織文化は企業にとって大きなメリットをもたらすと言われますが、そのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では、この組織文化について概説し、組織文化の重要性や、実際に良い組織文化を作るためのポイントについて解説します。

組織文化の意味と定義

組織文化とは、組織の構成員間で共有された考え方に基づく、組織全体の行動原理や思考様式です。組織文化は、企業の成長につながるものであることが重要であり、成長を阻害するような組織文化は変えていく必要があります。

組織文化や人材は企業の差別化ポイントになりやすい部分です。そのため企業価値の向上を目指して組織の構造改革を行う際には、部署を統合したり人事異動などで役員を変えたりといった施策とあわせて、組織文化の変革も図るのが一般的です。

組織文化について考える上では、1977年にナドラーとタッシュマンが提唱し、1980年に学術誌 Organizational Dynamics に発表したコングルーエンス・モデル(後に1997年の著書 Competing by Design でさらに体系化)とは、組織の「組織文化」に加えて「実行課題(戦略を実行するうえでのカギ)」「組織の体制や構造(仕事上の仕組みや手順などを含む広い概念)」「人材(どういう知識・経験・スキルを持った人材がいるのか)」がフィットしている(=アライメントがとれている)と組織は機能し、成果を生み出すことが可能であるというモデルです。

これらの4つのうち、どれかが欠けたりバランスを崩したりしても組織は機能しません。これらの整合性をとることにおいて、組織文化が重要な役割を果たしているのです。

さらに近年では、組織文化は単なる抽象的なスローガンではなく、日常業務における判断の拠り所として機能することが求められています。たとえば、新規事業への投資判断や顧客対応のトラブルシューティングにおいて、従業員が「自社らしい選択は何か」を迷わず決定できる状態こそが、組織文化が真に浸透している証左と言えるでしょう。現場レベルで一貫した行動が取れる基盤を構築することは、変化の激しいビジネス環境において組織のレジリエンス(回復力・柔軟性)を担保する最重要項目となっています。

組織文化と組織風土の違い

組織文化に類似しているとされる概念として「組織風土」があります。これらの違いに関して明確な定義はありませんが、一般的に組織文化は計画的に介入していくものであり、意図的にデザインが可能なものです。

一方、意図的ではなく自然に醸成されたもの、いつのまにか定着してしまった組織の習慣を組織風土と呼びます。

組織文化と組織風土、そして類似する「社風」という概念の違いを構造的に整理すると、以下のようになります。企業が組織変革を試みる際、これらを混同していると施策の焦点がぼやけてしまうため、明確に区別することが推奨されます。

【組織文化】

  • 形成プロセスと要因:経営理念やビジョンに基づき、経営層が意図的・計画的に形成する。
  • 変化のしやすさと介入可能性:外部環境や戦略の変化に合わせて変革が可能(デザイン可能)。
  • 組織への現れ方と特徴:企業全体の行動基準や意思決定の枠組み、公式なルールとして機能する。

【組織風土】

  • 形成プロセスと要因:長い時間をかけて歴史や社内コミュニケーションの蓄積から自然発生的に形成される。
  • 変化のしやすさと介入可能性:無意識の習慣として根付くため、意図的に変化させることは極めて難しい。
  • 組織への現れ方と特徴:「意見の言いやすさ」や「人間関係の距離感」など、職場の空気感として現れる。

【社風】

  • 形成プロセスと要因:組織文化や風土が交わった結果として生じる、従業員や外部からの主観的な印象。
  • 変化のしやすさと介入可能性:組織文化の変革や採用ブランディングの強化によって、外部からの見え方は変わりうる。
  • 組織への現れ方と特徴:「アットホーム」「実力主義」など、企業の特色やブランドイメージとして語られる。

平たく言うと、組織風土は人間でいえば「性格」や「癖」のようなものであり、日々の業務やコミュニケーションの蓄積によって作られます。そのため、「ミスを隠蔽する」「他部署の業務には無関心である」といったネガティブな組織風土が一度定着してしまうと、それを覆すには多大な労力が必要になります。

対して組織文化は、経営層が「私たちはこうあるべきだ」という明確な意志を持って作り上げるルールや価値観の集合体です。市場環境の変化や新たな事業戦略の策定に伴い、意図的にアップデートしていくべき対象といえるでしょう。組織の課題を解決するためには、変えにくい「風土」を直接どうにかしようとするのではなく、変えることができる「文化」の仕組み(評価制度、行動指針、コミュニケーションの設計)に介入し、中長期的に風土が変わっていくのを待つというアプローチが有効です。

エドガー・シャインが提唱する組織文化の3層構造

組織文化をより深く理解し、人事部門が効果的な変革アプローチを設計するためには、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエドガー・シャイン名誉教授が提唱した「組織文化の3層モデル」を知ることが非常に有用です。シャインは、組織文化を以下の3つの階層(レベル)で捉えるべきだと主張しました。

【第1層(表層):アーティファクト(人工物)】

  • 概要と具体例:組織内で視覚的・聴覚的に確認できるすべての要素。オフィスレイアウト、服装(ドレスコード)、社内報、朝礼などの儀式、コミュニケーションツールなど。
  • 観察と変革の難易度:観察は非常に容易だが、その背後にある真意の解釈は難しく、ここだけを変えても文化変革には至らない。

【第2層(中層):標榜された価値観・信条】

  • 概要と具体例:企業が公式に掲げているミッション、ビジョン、バリュー(MVV)、行動指針、経営理念など。
  • 観察と変革の難易度:社内文書等で明文化されており確認しやすいが、実態の行動と乖離しているケースが散見される。

【第3層(深層):基本的仮定(無意識の前提)】

  • 概要と具体例:構成員が「当たり前」と見なして無意識のうちに共有している信念や前提。「失敗は悪である」「上層部には逆らわない」など。
  • 観察と変革の難易度:完全に無意識化されているため観察が困難であり、この層を変革することが真の組織文化変革となる。

組織文化を変革しようとする際、多くの企業は「アーティファクト(第1層)」や「標榜された価値観(第2層)」だけを変えようとします。たとえば、コミュニケーションを活性化させるためにオフィスをフリーアドレス化し、新しい行動指針のポスターを壁に掲げたとしても、実態は何も変化しないというケースは少なくありません。これは、深層にある「他者の仕事に干渉してはならない」といった第3層の「基本的仮定」が変わっていないためです。

真の組織文化変革は、構成員の無意識の前提を問い直し、新たな価値観と整合させることで初めて達成されます。行動と背後にある前提のズレを認識し、対話を通じて新しい「当たり前」を再構築するプロセスが求められます。

 

競合価値観フレームワークによる組織文化の種類

組織文化をもっとよく知るために、組織文化の種類についても触れていきます。

ミシガン大学のロバート・クイン、キム・キャメロンらにより開発された、組織文化の診断フレームワークである「競合価値観フレームワーク(CVF; Competing Values Framework)」では、横軸で組織が内部志向もしくは外部志向であるかを表しており、縦軸で安定性を重視する文化なのか柔軟性のある文化なのかどうかを表しています。

競合価値観フレームワーク(CVF; Competing Values Framework)

以下に、フレームワークが示す4つのタイプの組織文化について紹介していきます。ただし、これはあくまでも一例で、組織文化はこのように単純に明文化できるものばかりではありません。以下の4つのうちの1つではなく、2つ、3つに当てはまることもあります。自社の組織文化を知るためには、まず「どのような文化なのか」言語化してみることが重要です。「競合価値観フレームワーク」は、そのための切り口の一つと考えてください。

各文化タイプの特徴と、メリット・デメリットを整理すると以下のとおりです。

【家族文化(クラン文化):内部志向×柔軟性】

  • 特徴と重視される価値観:家族的な親密性や仲間意識を重んじる。組織へのコミットメントやコミュニケーションの開発に価値が置かれる。
  • メリット:チームワークが強固になり、従業員のエンゲージメントが高まりやすい。
  • デメリット:同調圧力が強くなり、個人の傑出した成果が埋もれやすくなる。属人化のリスクがある。

【イノベーション文化(アドホクラシー文化):外部志向×柔軟性】

  • 特徴と重視される価値観:変革や創造を重んじる。創造的な志向性を持っており、変革や敏捷性、機敏性に価値が置かれる。
  • メリット:新規事業の創出や市場のトレンド変化に迅速に対応できる。
  • デメリット:常に新しい挑戦が求められるため、社内の競争が激化し、従業員が疲弊しやすい。

【官僚文化(ヒエラルキー文化):内部志向×安定性】

  • 特徴と重視される価値観:組織の安定と統制を重んじる。管理的・支配的な志向性を持っており、効率や適時性、一貫性や画一性に価値が置かれる。
  • メリット:明確な指示系統と業務プロセスの標準化により、ミスのない安定した事業運営が可能。
  • デメリット:トップダウン管理が強すぎるため、現場からの自由な発想やボトムアップの変革が起きにくい。

【マーケット文化:外部志向×安定性】

  • 特徴と重視される価値観:市場競争に勝つことを重んじる。市場シェアや目標達成、収益性に価値が置かれる。
  • メリット:成果という客観的な指標に基づき評価されるため公平性が高く、個人の成長意欲が刺激される。
  • デメリット:短期的な利益追求に走りがちになり、部門間協力や中長期的な人材育成が軽視されやすい。

企業が成長フェーズを移行する際、求められる組織文化も変化します。例えば、創業期は「イノベーション文化」や「家族文化」が強くても、組織規模の拡大に伴いガバナンスを効かせるための「官僚文化」の要素が必要になる時期が必ず訪れます。現状の組織文化がどの象限に偏っているかを客観的に診断し、事業戦略に合致したポートフォリオへと意図的にリバランスしていくことが、人事・研修企画担当者の重要なミッションとなります。


人材版伊藤レポートが示す人的資本経営と組織文化

近年、企業の持続的な成長に向けて「人的資本経営」への注目が急速に高まっています。経済産業省が公表した『人材版伊藤レポート2.0』においても、経営戦略と人材戦略を連動させるための重要アクションの一つとして「企業文化への定着」が明確に位置付けられています。

人的資本経営とは、人材を管理すべき「コスト」としてではなく、価値を創造する「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値を向上させる経営手法です。この人的資本の潜在能力を最大限に活性化させるための「土壌」となるのが、他でもない組織文化です。

『人材版伊藤レポート2.0』では、持続的な企業価値の向上に資する企業文化を定着させるために、以下の具体的な取り組みが推奨されています。

  1. 企業理念、企業の存在意義(パーパス)、企業文化の定義
    自社が社会に対してどのような価値を提供するのかを再検討し、その達成に必要な行動様式を企業文化として明文化します。
  2. 社員の具体的な行動や姿勢への紐付け
    定義した文化を絵に描いた餅にしないため、採用、評価、報酬、表彰などのあらゆる人事制度と連動させます。
  3. CEO・CHROと社員の対話の場の設定
    経営トップ自らが現場の従業員と直接対話し、文化の意義を語りかけることで、双方向の共感を育みます。

しかし、この「対話」や「理念の浸透」は、実務において大きな課題を抱えがちです。弊社ソフィアが実施した「インターナルコミュニケーション実態調査2025」(従業員数1,000人以上の企業に勤める623名対象)によると、社内メディアで頻繁に語られる話題として、「経営層からのメッセージ(38%)」や「企業の戦略目標と進捗状況(26%)」といった経営・事業に関わるトップダウンの情報が上位を占めました。一方で、「新規プロジェクトや取り組みの紹介(22%)」や「従業員の成功事例と表彰(21%)」といった、よりリアルな現場の情報は比較的少なめにとどまっています。

この調査結果は、経営陣がビジョンを語るだけの一方通行のコミュニケーションに偏りがちであり、現場における実践知の共有が不足している実態を示唆しています。人的資本を真に活性化させる組織文化を醸成するには、経営層からの発信にとどまらず、現場の声を吸い上げ、日々の行動に落とし込むための「双方向の対話の設計」が不可欠です。

組織文化醸成のメリットとデメリット

良い組織文化は、企業にも良い影響をもたらします。組織文化を変えたいと感じた場合、変革後の組織文化が自社の現在直面している課題の解決や、将来的にありたい姿につながるかどうかを見極めて変革を行うことが重要です。ここでは、代表的なメリットを整理したうえで、あわせて注意すべきデメリットにも触れていきます。

組織内での団結力の向上

良い組織文化が浸透した状態においては、相乗効果で組織内での団結力向上が期待できます。高い団結力は企業の生産性や作業品質を高め、離職を防止する副次的な効果も得られるでしょう。

共通の価値観を持つことで、部門間の壁を越えた連携(クロスファンクショナルな協働)がスムーズになり、全社一丸となって目標に向かう推進力が生まれます。弊社ソフィアの調査でも、「部署間のコミュニケーションの必要性」を感じている層は75%に達しており、共通の文化基盤が部門間連携の触媒となることが期待されます。

情報伝達の迅速化・正確化(意思決定の迅速化)

組織文化は組織の重視する価値観でもあるため、良い組織文化が浸透した状態では社員が共通の価値観を判断基準として行動するようになります。行動の基準が指針として浸透することで、情報伝達が早く、正確になります。

現場レベルで予期せぬトラブルが発生した場合でも、上位陣の決裁を待つことなく、「当社の価値観に照らし合わせればこう対応すべきだ」という自律的な判断が可能となります。結果として、意思決定のスピードが飛躍的に向上し、変化の激しい市場環境における競争優位性へと直結します。

組織にフィットした人材の確保と定着

良い組織文化とは、組織文化に企業の理念が反映されており、社員がそれに理解を示し、納得している状態です。これは逆に言えば、どのような構成員を組織が必要としているかが明確な状態でもあります。組織にフィットした人材を確保できる状態ともいえ、採用において優位となります。

また、企業の理念にもとづいてオープンなコミュニケーションができる文化が定着していれば、企業が従業員に提供できる価値(EVP; Employee Value Proposition)も上がります。

価値観に共感して入社した人材は、業務へのエンゲージメントが高まりやすく、結果として早期離職を防ぎ、中長期的な人材定着率の向上に直結します。

従業員のウェルビーイングと職場評価の向上

良好な人間関係を育む組織文化は、従業員の心理的安全性とウェルビーイングを高めます。弊社ソフィアの調査では、職場に対する満足度の要因として「人間関係・上司部下関係」が54%と最多となり、「職場環境」(48%)や「待遇・報酬」(43%)を大きく上回りました。

さらに興味深いことに、業務に直接関係しない「たまたま発生した雑談や立ち話」の頻度が高い層ほど、職場を「良い職場」と評価する傾向が顕著に出ています。雑談が「ほぼ毎日」ある層の63%が職場を肯定的に評価しているのに対し、「全くない」層では32%にとどまりました。このように、非公式なコミュニケーションを許容し、円滑な人間関係を重んじる組織文化は、従業員の働きやすさや生産性に直接的な好影響を与えます。

組織文化がもたらすデメリットと注意点

良い組織文化は多くのメリットをもたらしますが、一方で、強固な文化が行き過ぎると組織に悪影響を及ぼすリスクも存在します。組織文化の変革や維持においては、以下のデメリットに十分留意する必要があります。

  • 同調圧力によるイノベーションの阻害
    組織文化によって共通の認識があるという前提のもとに、「〜すべきである」「〜でなければならない」という同調圧力が生まれる危険性があることにも注意してください。こうした同調圧力はマジョリティの枠から外れた言動を排除しようとする傾向にあり、それは組織におけるイノベーションを阻害する要因となり得ます。新しいアイデアや異論を唱えることが「カルチャーにそぐわない」として抑圧されれば、組織は環境変化に対する適応力を失います。
  • 排他性の増大とダイバーシティの欠如
    強い文化を持つ組織は、その文化に適合しない人材を無意識のうちに排除する「排他性」を持ちやすくなります。カルチャーフィットを重視しすぎるあまり、似たような思考特性を持つ人材ばかりが集まり、多様性(ダイバーシティ)が失われるリスクです。多様な視点が欠如すると、新たな市場のニーズを見落としたり、重大なコンプライアンス違反のリスクに気づけなくなる危険性があります。
  • 環境変化に対する硬直化(経路依存性)
    過去に成功をもたらした組織文化ほど、新しい環境に直面した際に足かせとなることがあります。「過去の成功体験=正しい組織文化」という認識が固まってしまうと、ビジネスモデルの転換やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といったドラスティックな変化に対する社内の抵抗が激しくなります。意図的に「異質性」を取り入れ、挑戦や失敗を許容する安全な場を担保することが重要です。

良い組織文化の醸成と構築ステップ

最後に、良質な組織文化を作るための4つのステップを解説します。

1. 企業ビジョンへの理解・共感の醸成

前提として、組織文化を形成する企業ビジョンについて、社員が深く理解し、納得し、共感していることが不可欠です。企業ビジョンに理解や共感を得られていない状態で良い企業文化を作ることはできません。まずは企業ビジョンがどの程度理解・共感を得られているかの見直しから進めていってください。

現状の理解度や共感度を可視化するためには、エンゲージメントサーベイやパルスサーベイが有効ですが、その運用には強い注意が必要です。弊社ソフィアの調査によれば、サーベイを実施している企業の約半数が「エンゲージメントスコアの数値を上げること自体が目的化している」と感じており、現場社員層で「サーベイが役に立っている」と肯定的に捉えているのはわずか35%にとどまっています。形式的な数値を追うのではなく、結果をもとに現場のリアルな課題や価値観のズレを抽出し、理解を深めるための対話に繋げることが肝要です。

2. 企業ビジョンに沿った行動の促進

企業ビジョンが理解・共感を得られている状態になったら、次に、企業ビジョンに沿った行動を促します。そのためには、企業ビジョンに沿って業務やタスクを見直すとともに、企業ビジョンを体現した行動はどのようなものなのか、上司・部下間のコミュニケーションや社内メディア等を使ったコミュニケーションを通じて具体的に示していく必要があります。

また、行動は次に解説する「体験」のフェーズを経ていないと定着しないため、行動によって得られる体験までを合わせてデザインすることが大切です。

日常業務における行動促進の場として、近年「1on1ミーティング」が注目されています。しかし弊社ソフィアの調査では、1on1の頻度は「半年に1回以上(30%)」「3カ月に1回以上(21%)」という結果が多く、一般的に望ましいとされる運用基準(月1回以上)を下回る企業が多数存在します。また、1on1が「業務遂行やキャリア形成に役立っているか」という問いに対し、「どちらでもない」が36%と最多でした。ビジョンに沿った行動を現場に促すには、現場の管理職(ミドルマネジメント)が1on1の本来の目的を理解し、部下の話を傾聴して自発的な行動を引き出すためのスキルトレーニングが不可欠です。

3. 社員の体験のデザイン

例えば企業ビジョンに沿って模範的な行動をした社員の人事評価が上がったり、全社の前で表彰されたりすれば、社員は企業ビジョンに沿った行動をとることを好ましいと捉えるようになります。すると、行動は習慣化され、周囲にもそれを伝えるようになるでしょう。これを実現するためには、組織内のルールや制度の見直しや、マネジャー層の意識改革が必要になります。

日常的な評価制度の運用に加え、社内イベントを通じた体験設計も関係性構築において非常に効果的です。弊社ソフィアの調査では、社内イベントを「実施している」企業では、職場を良いと評価する割合が58.0%と過半数を超えるのに対し、「実施していない」企業では28%にとどまります。特に「職場内対話会」や「部門横断の交流会」は、参加者の7割以上が「今後も継続すべき」と高く評価しており、チームの連携強化や会社への一体感を育む重要な体験となっています。

4. 学習のデザイン

行動によって好ましい体験を得ることは、社員が企業ビジョンに沿った行動に対して「好ましいことである」という意味づけを行うこと、すなわち学習につながります。良い組織文化を形成し、維持するためには、繰り返しこういった学習の機会を設けることが必要です。なお、学習の機会を作るにあたっても、すでに社員が企業ビジョンを理解し、共感していることが前提となります。そのような状態があって、はじめて良い組織文化の形成が可能になるのです。

組織内での学習を加速させる要素として「ナレッジ共有」があります。しかし、弊社ソフィアの調査では、ナレッジ共有における課題として「情報がいろいろな場所にあり、どこにあるのか分からない(28%)」「他の部署の情報にアクセスしづらい(23%)」といったアクセス性の課題が上位に挙がっています。学習の機会を継続的に提供するためには、属人的な口頭伝承に頼るだけでなく、社内ポータルやコラボレーションツールを整備し、全社的に知見が流通する仕組みを構築する必要があります。

組織文化変革に必要な物語とナラティブ

すでに昔の組織文化があり、その組織文化を変化させたい場合は、今までの組織文化を「変える」のではなく、「新たな流れを作る」ことが大事です。しかし新たな流れを作ろうとしても、既存の組織文化にもとづいた、いわば経路依存的な習慣や感情から、社内の抵抗が発生します。なぜなら、社員一人ひとりは、大なり小なり既存の組織文化に慣れているからです。

こういった状況で「新たな流れをつくる」ためには、変革の「ナラティブ(narrative)」を作ることが重要です。ナラティブは社員自身について語られた「物語」を意味する言葉であり、第三者について語られる「ストーリー(story)」とは異なります。

ナラティブを作るには、社員自身が「自明のものである」「正しいものである」と考えている古い組織文化を、視点を変えて客観的に眺めてみることが必要です。そのうえで、企業ビジョンをもとに、自分たちの今後あるべき姿やありたい姿について、社員自身が問いを立て、対話を重ね、今後目指すべき「新しい流れ」を自分事として語ることです。

押し付けられた「あるべき論」では人は動きません。リーダーの語る納得感や驚きのあるストーリー、社員の中にある何かしらの違和感と対話を通じた気付きなどが組織を動かします。そしてそれらは、社員一人一人に変化への期待やワクワク感を醸成するものでもあるのです。

ナラティブを生成する具体的な手法として、現場主導のワークショップや、成功・失敗体験をオープンに共有する場(ラーニングレビュー)の設置が挙げられます。従業員自身が「自分たちの仕事が社会にどう繋がっているか」「過去の失敗から何を学んだか」を自身の言葉で言語化し、語り合うプロセスを経ることで、変革は経営層からの押し付け(他人事)ではなく、「自分たちの物語」へと昇華されます。

まとめ

組織文化は抽象的な概念などではなく、企業を成功へと導く重要な要素の一つです。そして、良い組織文化を形成する前提条件として、「企業ビジョンの浸透」があることに着目してください。

企業ビジョンは策定して終わりにしている企業が散見されますが、行動レベルまで落とし込み、学習をデザインし、企業内に浸透できていることが、組織文化を良質なものへ進化させる重要な要素となります。自社が企業ビジョンを浸透させられていないと感じたら、まずはそこからテコ入れすべきです。

もし組織文化を変革したいが企業ビジョンの浸透からできていない、企業ビジョンをどうやって浸透させればいいかわからないという場合は、ソフィアまでお気軽にご相談ください。

弊社ソフィアは、延べ1,200社以上のインターナルコミュニケーション支援実績を持ち、組織課題の調査分析から戦略立案、ワークショップや社内メディアの企画運用まで、貴社の組織風土に合わせたオーダーメイドの伴走支援を提供いたします。表面的なツール導入にとどまらず、深層の意識改革まで粘り強くサポートし、人的資本を最大化する組織づくりを実現します。
は抽象的な概念などではなく、企業を成功へと導く重要な要素の一つです。そして、良い組織文化を形成する前提条件として、「企業ビジョンの浸透」があることに着目してください。
企業ビジョンは策定して終わりにしている企業が散見されますが、行動レベルまで落とし込み、学習をデザインし、企業内に浸透できていることが、組織文化を良質なものへ進化させる重要な要素となります。自社が企業ビジョンを浸透させられていないと感じたら、まずはそこからテコ入れすべきです。
もし組織文化を変革したいが企業ビジョンの浸透からできていない、企業ビジョンをどうやって浸透させればいいかわからないという場合は、ソフィアまでお気軽にご相談ください。

よくある質問
  • 組織文化と組織風土の違い
  • 組織風土は、長年の歴史や社内コミュニケーションの蓄積によって「自然発生的」に根付いた職場の空気や癖であり、容易には変わりません。一方、組織文化は経営理念や戦略に基づき「意図的」にデザイン・明文化される行動基準であり、環境変化に合わせて計画的に変革していくべき対象です。

  • 組織文化の変革に必要な期間
  • 組織の規模や変革の深さによりますが、一般的に真の組織文化変革(エドガー・シャインの3層モデルにおける『無意識の前提』レベルの変革)には数年単位の長期的な時間が必要です。表層的な制度変更だけでなく、採用、評価、教育、日々の1on1など、あらゆる人事施策と連動させながら地道に学習を繰り返す必要があります。

  • 人的資本経営で組織文化が重視される理由
  • 人的資本経営は従業員のスキルや経験を資本と捉え、企業価値向上に繋げる手法です。いくら優秀な人材を採用・育成しても、挑戦を阻むような組織文化であれば、その能力は発揮されず離職に繋がります。『人材版伊藤レポート2.0』でも指摘されている通り、経営戦略を実現するための行動様式(組織文化)が定着してはじめて、人的資本が持続的なイノベーションの源泉となります。

  • リモートワーク環境下での組織文化の維持・醸成方法
  • 対面コミュニケーションが減るリモートワーク下では、意図的なコミュニケーションの場づくりが不可欠です。弊社ソフィアの調査でも、雑談の多さや横断的な社内イベントの有無が職場評価に直結することが示されています。オンラインでの意図的な雑談タイムの導入、ミドルマネジメントによる1on1の質の向上、そして社内ポータルやWeb社内報を通じた双方向のコミュニケーション設計が重要です。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。