企業理念を浸透させるには?段階ごとの具体的な取り組み事例を解説

企業理念の浸透には、いくつかのハードルが存在します。そして企業がどの段階に属しているかを見極めて適切な取り組みをしていくことが求められます。そこで本記事では、企業理念を社内に浸透させるための具体的な取り組みの内容について解説します。

企業理念の構成要素

企業理念とはいったいどのような概念なのでしょうか。

企業理念とは

企業理念とは、企業がもっとも重要視する価値観や考え方です。「どうしてこの企業は存在するのか」「どうしてこの企業は経営をし、事業を営むのか」という理由や方向づけを行うだけでなく、従業員の行動規範や社内風土の形成にもかかわってきます。

企業理念について理解するために、企業理念という概念がなかった時代を振り返ってみましょう。

20世紀初頭、産業の中心はものづくりでした。いかに効率よく生産できるかが重視される世の中で生まれたのが、アメリカの経営学者フレデリック・テイラー氏が提唱する「科学的管理法」です。

科学的管理法は、管理を徹底することで生産性を高め、従業員が行う作業を機械のように標準化することを目指すものです。具体的には、ノルマとなる仕事量を設定し、作業手順を業務マニュアル化、誰でも同じ作業ができる組織体制を作り上げるというやり方で、当時多くの企業がこれを取り入れました。
科学的管理法は、企業の業績をあげる上では有用な取り組みでしたが、一方で従業員の離職率の高さが問題になっていました。

そこに目をつけたのがアメリカの産業社会学者エルトン・メイヨー氏です。
作業者のモチベーションを高めることや、業務に対するやりがいといった人間的な感情を持たせることこそが、生産性を高める上で重要であることを、ウェスタン・エレクトリック社の「ホーソン実験」で証明して見せたのです。

冒頭で説明したような「どうしてこの企業は存在するのか」「どうしてこの企業は経営をし、事業を営むのか」といった意味づけと、従業員が働く動機とが一致していることが、企業経営において重要であることが、ホーソン実験の結果からも見て取れます。

また、渋沢栄一氏の著書「論語と算盤」で語られているように、企業は利益や事業の拡大(算盤)だけを目的にするのではなく、社会的な役割や存在意義(論語)も両立していく必要があります。そのためにも企業は、企業理念において存在意義を明確に掲げ、社内への浸透を通じて理念を企業活動に反映し、企業活動を通じで理念を体現し続けるべきなのです。

企業理念と経営理念の違い

企業理念と経営理念に明確な違いはなく、同義で使っている企業も多く存在します。あえて区別するのであれば、企業理念は企業ができた経緯を説明していたり、企業の存在意義や、あり方を表すものです。企業によっては企業理念を「ミッション」「ビジョン」「バリュー」と呼ぶこともあります。

一方で経営理念は、「自身の行動を正当化するためのひとつの枠組み」です。たとえば「顧客満足度の向上」が経営理念であれば、そのために企業はあらゆる手段で努力するといったようなことです。また経営理念は、企業理念と異なり、環境や社会の要求、影響を受けて変化するものであり、最近ではSDGsやMDGsやESG、といった社会環境への対応に関する国際的な目標や基準も経営理念に影響しています。

企業理念浸透でぶつかる4つのハードル

経営陣が企業理念について理解していても、策定した経営理念をただ社員に伝えただけでは社内に浸透しません。浸透していない企業理念は、たちまち形骸化し無意味なものとなります。企業理念は作ることが目的ではなく、社内に定着させることがゴールである点に注意しましょう。ここでは、企業理念を浸透する際に乗り越えるべき4つのハードルについて解説します。

策定のハードル

ベンチャー企業や創業したばかりの企業は、会社の存在意義が脆弱な状態であり、事業拡大する中で次第に明確な意味づけがされていきます。会社の存在意義が明確になり、企業理念を策定できるまでの修練プロセスが「策定のハードル」です。一方で、大企業や歴史のある企業においては、創業者の想いや積み重ねてきた歴史が企業理念や経営理念、ミッション・ビジョン・バリューにつながるため、策定のハードルはないといえます。
企業理念を策定するにあたっては、何のために策定するのか、企業理念の影響範囲はどういうところにあるのか、ということを理解しておく必要があります。
組織内で何かを始めようとするときにはずと言っていいほど、内部の反発や対立に行く手を阻まれます。人は基本的に現状を維持した方が楽だと感じ、変化を避ける傾向にあるためです。そのことを念頭に置きながら、社員の共感を得られる企業理念を策定することができるかどうかが重要です。

共有・共感のハードル

企業理念を社員に共有する際には、社員が共感できるようなストーリーが必要です。これは、心理的な経験をデザインしていくプロセスとも言い換えられます。社員がその企業理念を「いいな」と感じることができ、企業理念にそった行動を起こすきっかけとなるようなコミュニケーション施策から始めましょう。
決してやってはならないのが、理念の浸透に向けて、いきなり「社員教育」から始めることです。上層部が策定した企業理念がある日突然降ってきて、「これに従え」と押し付けられるのでは、社員は抵抗感を持ちます。社内の反発や対立につながってしまうこともあるでしょう。

行動のハードル

企業理念を社員の行動、そして体験に反映させ、社内に浸透させるためには、具体的な目標管理やマネジメントを行う必要もあります。ここで重要なのは、行動だけでなく、行動から「体験」へとつなげることです。
私たちが何らかの行動を起すのは、「その行動を起こすことで良いことがある」と考えたときです。日常生活での行動を例に挙げると、ある化粧品を購入する行動を起こすきっかけとなるのは、「この化粧品を使うとこんなに良いことがある」ということがイメージできるような広告・宣伝や口コミです。そして、行動起こしてから、その化粧品を使い続けようと思うきっかけとなるのは、「その化粧品を使っているとき、調子が良いと感じた」「肌が綺麗だと誰かに褒められた」などの体験です。この体験までが伴わないと、本当に化粧品の価値を感じてもらうことはできないでしょう。
企業活動においては、企業理念に基づいて社員にどのような行動を喚起したいのか、行動したことによって社員がどのような体験をするのかといった点までデザインした上で、コミュニケーション施策をしていく必要があります。

習慣化のハードル

浸透の最終段階が「習慣化」です。社内の誰もが意識することなく自然と企業理念に即して行動できるような仕組みつくることが必要です。そのために、これまでの浸透活動の結果を振り返り、PDCAのサイクルを継続して回していきます。

「行動のハードル」について解説した内容にも通じることですが、企業理念が浸透することで、従業員は企業理念に沿った行動をすることに価値を感じ、同じ価値観の中で仕事ができるようになります。どういったことをすれば会社に貢献でき、評価されるかがわかるようになると、自然と組織の居心地がよくなり、個人が発揮できるパフォーマンスも上がります。習慣化のハードルを越えることができれば、人材の流動化が激しくなっている現代であっても、自社の企業理念に合った従業員は残り続け、新たな人材を採用する際の基準も明確になるでしょう。

企業理念浸透のための取り組み事例2選

最後に、ソフィアで行った企業理念を浸透させるための企業の取り組みを2つご紹介します。

共有・共感のハードルの克服事例~グループ従業員数15,000名の大手建設会社

同社では設立120年を機に、現場発の問題解決やサービス改善の流れを作り出すため に制定した、グループ理念と行動指針の浸透の取り組みを開始しました。しかし同社は元来強いトップダウン型の企業風土であったため、社員の中で企業理念や行動指針は他人事であり、事業とは切り離された存在で、認知・理解度が向上しませんでした。
そこで同社では、企業理念・行動指針の浸透度調査を実施しました。行動指針を実践している社員にインタビューを実施、エピソード集を作成し、顔写真とエピソードを掲載したポスターを作成、全事業所にポスター5,000枚を配布・掲示。ポスターをシリーズ化して展開することでストーリーを「自分事」化し、企業理念の共有・共感を獲得しました。

行動・習慣化のハードルを超える事例~株式会社ニチレイフーズ

ニチレイフーズでは、「ハミダス(とらわれず、明るく)」を従業員のモットーに掲げ、「もっと思いやりを持って」「もっとチャレンジして」「もっと楽しく」仕事をしようと従業員同士が常に心がけています。社内に「ハミダス推進グループ」という部門を設け、社員を巻き込んだ地域社会貢献活動や社内でのコミュニケーション活性化施策を打ち出し、行動だけでなく「体験」までをうまくデザインしています。社員がハミダス活動をすることで自分たちが快い、もっと体現したいとうまく思わせている点が企業理念を浸透させる取り組みを成功させているポイントです。

適切な施策を実施して、企業理念浸透を目指そう

企業理念を浸透させるためには、自社が今どのハードルでつまずいているのかどうかを把握し、何をすべきかを整理することが重要です。

もし自社がどこでうまくいっていないのかわからない場合や、各段階で具体的にどのような取り組みを行えばいいのかわからない場合は、ソフィアまでお気軽にお問い合わせください。

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