これからのコミュニケーション職のあり方 世界のインターナルコミュケーション最前線④

ソフィアの池田です。海外のインターナルコミュニケーション関連記事から、世界の潮流や新しいノウハウをご紹介する当シリーズ。第4弾は、以前こちらの記事で取り上げたホワイトペーパー “The Road to Alignment” 『アライメントへの道』の共著者であるウェイン・アスランド氏とゾラ・アルティス氏がIABCのWeb会員誌 ‘Catalyst’に寄稿した“What Is the Future of Communication?”『これからのコミュニケーション職のあり方』と題した記事から、「4つの役割」を紹介します。

この1年で世界は様変わりしました。急激に変容し続ける世の中で、この先の将来、求められるコミュニケーションの機能とは何でしょうか。共著者の2人は、調査の過程で専門家のインタビューから、企業におけるコミュニケーション職(特にインターナルコミュニケーション)の役割がどのように進化していくかを示唆する4つのペルソナが浮かび上がってきた、と述べています。

その4つのペルソナとは:

  • 経営者へのアドバイザー
  • 事業戦略遂行の先導役
  • 人間らしさの伝道者
  • アジャイルな組織に向けた連携サポーター

それぞれのペルソナについて、詳しく見ていきましょう。

ペルソナ1:経営者へのアドバイザー

企業におけるコミュニケーション担当者は、CEOや経営者に信頼されるアドバイザーになる必要があると、もう長いこと言われてきました。もちろん、これはコミュニケーション部門のトップが重役の座をかけて出世するために必要なステップでもあります。キャリアアップにつながる影響力を持つためには、信頼される戦略アドバイザーになることが必要なのです。
当然ながら、組織がどのように運営されているかを理解していなければ、経営陣に効果的なアドバイスを与えることはできません。しかしながら、コミュニケーション担当者が組織のビジネス戦略や売上の源泉を理解していなかったり、さまざまなレベルでのビジネス経験を本質的に理解していないことも多いのが実情です。

ペルソナ2:事業戦略遂行の先導役

今、企業のコミュニケーション部門は、これまでの役割よりもう一歩先を行く必要があると考えられています。それは、単に組織内にコミュニケーションを作り出すだけではなく、戦略遂行の鍵を握るリーダー層を動かして効果的なコミュニケーションを実現することです。
コミュニケーション部門のトップや担当者は、企業におけるコミュニケーションを実践する立場から、戦略上のアライメント推進に責任があるリーダーを動かす役割が求められます。企業戦略の遂行に向けて効果的なコミュニケーションを組織内で実践することは容易ではありません。だからこそ、コミュニケーション部門が持つ実務家としての知見と、リーダー層が持つ組織への影響力の両方が必要であり、不可分なのです。
とはいえコミュニケーション部門がやるべきことは、リーダーのスピーチ力や文章力などコミュニケーターとしての能力向上をサポートすることではありません。そもそもリーダーは、企業の戦略を遂行する上で、自分自身の主要な役割がコミュニケーションだとは思っていません。もし、彼らの業績評価の60%が収益やオペレーションの成功に基づき、5%がコミュニケーションに基づいているとしたら、彼らがどちらを犠牲にするかは明らかでしょう。
そこでコミュニケーション部門がやるべきは、リーダーたちが戦略遂行に向けて組織の中でリーダーシップを発揮する際に、より効果的に社員を動かすことができるようサポートすることです。

ペルソナ3:人間らしさの伝道者

リーダーシップを効果的に発揮する際に有効なことの一つが、「人間らしさを感じられるコミュニケーション」の実践です。欧米の企業では、コミュニケーションの専門家がリーダーに対して常にコミュニケーションのアドバイスを行い、スピーチによるストーリーテリングでは人にフォーカスする原稿を仕立てることが常套手段です。聞く人が心を打たれるのは、その人の人間らしさに触れたときです。この「人間らしさの伝道者」としてのコミュニケーション部門の役割は、人工知能やAIを駆使したオートメーション、アルゴリズムによる変化が進む世界では特に重要になるでしょう。
2020年に世界中の多くの都市がロックダウンされた際、企業において在宅勤務が普及したことが影響して、リーダーが人々やビジネスの人間的側面に触れるようになってきたことはポジティブな変化でした。リーダーたちが弱音を吐いたり、オンライン会議の背景に家の中が見えたり、子どもたちの姿を目にすることができたのは、リーダーの人間らしさを伝えるとても貴重な機会だったのです。

COVIDは誰にもコントロールできないので、多くの人が自分の知っていることを共有し、リーダーもみんなも一緒にストーリーが展開していくことを学びました。この一年で、共感を優先するコミュニケーション戦略へ大きく転換するのを目の当たりにしました。私たちは今後も前進していく中で、この人間らしさの感覚を失わないようにしたいものです。なぜなら、この人間らしさの感覚を大切にすることで、多くの組織や人々が、より他者を思いやるように変わってきたからです。

ペルソナ4:アジャイルな組織連携サポーター

COVID-19のもう一つの意味は、アジリティへの注目が高まったことです。マッキンゼーが発表したレポートには、「組織は、誰もが可能だと思っていなかった方法で、境界を取り除き、サイロを破壊しました。意思決定とプロセスを合理化し、現場のリーダーに権限を与え、動きの遅いヒエラルキーや官僚主義的な制度を止めさせました」とあります。

このように、非常にフラットでより分散化された自律性の高い組織では、リーダーからの優れたコミュニケーションの必要性がなくなるというのは、非常に興味深い事実です。つまり、ヒエラルキー型の組織では、誰もがリーダーに指示を仰ぐため、良好なコミュニケーションが必要だと言えるでしょう。しかし、自律的な組織では、アライメントを実現するために「トップ」からの優れたコミュニケーションは基本的には必要ありません。このような高度に自律的にエンパワーされた文化では、人々はビジネスをどのように行うべきかという基本的ないくつかの規範以外には、集団としてアライメント(整合性)をとる必要はないのです。

だとすると、コミュニケーション担当者は代わりに何に焦点を当てるべきでしょうか?それは、組織内の個人をトレーニングし、育成することです。彼らが仲間との関係性を最大限に生かせるようにすること。また、チーム内の他のメンバーや周囲のメンバーとの連携を助けることです。つまりコミュニケーション職の役割は、プレスリリースやWEBサイトの記事などに掲載する完璧なメッセージを作成したり、社内外に対するコミュニケーションに関して経営者や各部門にアドバイスすることから、個人に対するトレーナーやコーチへと移行していくのです。

これからのコミュニケーション職の在り方とは?

共著者の両氏は、これから求められるコミュニケーション・プロフェッショナルは、この4つのペルソナをすべて備えている、と結論づけています。

– 経営者へのアドバイザー
組織の成功にとって本当に重要な問題について、リーダーに積極的に助言する。これは、一般的なビジネス感覚だけでなく、組織のダイナミクス、ステークホルダー、そしてより広い市場を深く理解していることを意味します。

– 事業戦略遂行の先導役
コミュニケーション職の役割は、人々のためにコミュニケーションを創り出すことよりも、他の人々がより良いコミュニケーションができるように働きかけることに焦点が移っていきます。特に、リーダーがリーダーシップを発揮できるように支援することが重要な課題となります。

– 人間らしさの伝道者
社員、顧客、その他のステークホルダー、そして社会という、人々のために自ら動きます。倫理的な判断と行動をし、口先だけでなく、正しい行動の手本となります。

– アジャイルな組織に向けた連携サポーター
変革を受け入れ、常に時代に合わせて変化していきます。旧態依然としたやり方に固執したままでは、組織の中で過去の歴史の遺物のような存在になってしまうでしょう。

そして、ワイルドカードとして、5人目のペルソナを追加します。

ワイルドカード:ビジネス推進のキーパーソン

これからのコミュニケーション職にとって重要な役割は、単にコミュニケーションを作るだけではなく、組織の基盤を強化し、勢いをつけるプログラムを実行することです。

以前の記事で紹介した「組織の乱雑さ」について考えてみましょう。実際には、ほとんどの組織には雑然としたものがあり、それが組織の運営やパフォーマンスを著しく低下させています。
コミュニケーション担当者は、自分自身が率先して整理整頓を行い、組織の他のメンバーにも同じことをするように促すことで、組織の生産性やスピード、さらには社員のエンゲージメントやアラインメントに大きな影響を与えることができるでしょう。


企業のコミュニケーション部門は、自分が働く組織の方向性を文字通り変えることができる、さまざまな可能性を持っています。ウェイン・アスランド氏とゾラ・アルティス氏は、「私たちは、ただそれに気づくだけでいいのです。実際、私たちの未来は、私たちがそうするかどうかにかかっているのです」と締めくくっています。

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