チェンジマネジメントとは?組織の変革を成功に導くメソッド

従来、企業組織のマネジメントは、
「石にかじりついてでも業績目標(売上・利益等)を必達する」
「そのために組織を編成、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を配分し遂行を管理・指導する」
ことを軸に構築されてきました。

企業によってマネジメントスタイルに多少の違いはあるものの、この考え方は今後も大きくは変わらないでしょう。
一方で企業を取り巻く内外環境の目まぐるしい変化によって、従来型のマネジメントだけでは立ち行かなくなってきたのも確かです。
競合との厳しい競争に打ち勝ち、生き残るためにも、企業は変化をチャンスとして俊敏に対応しなければいけません。
そこで注目されるのが、「チェンジマネジメント」です。
この記事では、チェンジマネジメントの定義と必要性、実施にむけた8ステップについて解説します。

チェンジマネジメントとは

チェンジマネジメントの定義

チェンジマネジメントとは、企業の変革を成功に導くために、組織に変化を受け入れやすくするためのマネジメント手法です。

ただし、「変わること」そのものが目的ではありません。変革はあくまで、会社のあるべき姿(経営ビジョン)実現の手段です(これを戦略の構築・実行と呼びます)。

よく知られているマネジメントは、売り上げや利益といった業績目標達成のための手法として知られています。たとえば個人別売上グラフを壁に貼り、上司が部下を叱咤する…もマネジメントの一種です。

従来型マネジメントでは、売上・利益予算策定とその達成が重視されます。全社予算を事業部別・支店別さらには個人別に落とし込み、ビシビシ追い込むわけです。

同時に重視されるのが業績の落とし込みに最も適した組織編成です。社長⇒事業本部⇒事業部⇒支店⇒営業部⇒個人といった具合に縦割りの組織を組んで、社長の指示が現場まで伝わる軍隊型がある意味理想なわけです。その脇で人事部・財務部・経営管理部といったスタッフが、経営資源(ヒト・モノ・カネ)をコントロール、ポジションパワーを発揮するのです。

従来型マネジメントは、あくまで既存の経営資源を活用して、最大限に成果を出すことを目的とした手法です。そのために環境変化には弱いという側面を持ちます。

対してチェンジマネジメントでは、「会社はどうあるべきかを考えるビジョン創造」「ビジョンをめざした戦略の構築」を重視します。

現状にとらわれずゼロベースでビジョン・戦略を考え、既存の資源(ビジネスモデルや意思決定プロセス・組織体制)にも変革を求めるのが、チェンジマネジメントです。

チェンジマネジメントの起源

チェンジマネジメントの考え方は、一般的にアメリカが起源だとされています。
1993年にチェンジマネジメントの基礎となる、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)の基本概念が、マサチューセッツ工科大学の教授であったマイケル・ハマー氏と経営コンサルタントであったジェイムズ・チャンピー氏による著書「Reengineering the Corporation(リエンジニアリング革命)」にて発表されました。BPRは組織の変革手法として、日本でもバブル崩壊後の苦境を脱する解決策として受け入れられ、日本企業の経営課題に取り入れられてきました。

チェンジマネジメントの必要性

現代は「VUCAワールド」

VUCAとは、不安定で変わりやすく(Volatility)・不確実性に満ち(Uncertainty)・複雑な条件が絡み合い(Complexity)・明快さを欠いた(Ambiguity)、つまり「非常に読みづらい」状況を表現したワードで、ダボス会議や企業のアニュアルレポートにも頻繁に登場します。

現在の不確実なVUCAワールドのソリューションとして、期待を集めているのがチェンジマネジメントです

1990年代前半まで日本の産業は、「護送船団方式」と呼ばれる体制のもと、さまざまな規制や業界ルールと呼ばれる高い参入障壁に守られてきました。もちろん国内同業他社とは激しくしのぎを削りつつも、海外や異業種が入ってくることはまれで、市場規模もそこそこ伸びており、技術革新のスピードもゆっくり…そんな時代です。

ところがベルリンの壁を契機とするボーダーレス化とインターネットの登場で、企業を取り巻く競争環境は一変しました。成功をもたらしてきたビジネスモデルはあっという間に陳腐化し、プレーヤーも常に入れ替わる、そんな厳しい時代が到来したのです。

先が見通せない事業環境において、従来型の組織マネジメントは急激な変化に耐えられず機能不全を起こしつつあります。例えば、各部門・事業の利害を調整したうえで合意を形成するような合議型の意思決定プロセスでは、俊敏な経営判断ができず環境の変化をキャッチアップしづらい状況をまねきます。

そんな行き詰まった事態をブレークスルーする手法として注目を浴びているのが、「チェンジマネジメント」というわけです。

組織を変革するときの一番の犠牲者は社員

企業の経営層は、社内外の会議体や会合などを通じてさまざまな情報が入ってくるだけに、競争環境の変化に敏感で、危機感を抱いているトップも少なくありません。

一方現場はといえば、トップと同じ想いの社員が多いとは限りません。変革に対して被害者意識を感じる層も多いでしょう。トップと現場に温度差を放置したままでは、組織変革はうまくいきません。下手をすると、「自分たち社員は犠牲者」とする空気を現場に蔓延させてしまいます。

そこでトップと現場をつなぐのが、チェンジマネジメントの役割です。

チェンジマネジメントの手法の基本「8段階のプロセス」

リーダーシップ・マネジメントで知られるジョン・コッターは、「企業変革は正しい手法で進めるべし」と、8段階のプロセスを提唱しています。

マネジメントの必要性を持つ

市場・競合の分析を通じ、メンバーに危機意識を醸成、変革の必要性を認識させます。

連帯チームを結成する

変革を担う社員を集め、組織全体をリードするパワーを持ったチームを編成します

変革のビジョンと戦略を生み出す

あるべき姿(ビジョン)を描くと同時に、ビジョン実現に向けたベクトルを構築します。

変革のためのビジョンを社内全員に共有する

イントラ・会議…さまざまなチャネルを通じ、社員にメッセージを発信、ビジョンを共有します。

社員の自発を促進する環境づくり

自発的行動を阻害する要因(部門の壁等)を取り除く仕掛けを展開します。

短期的成果を実現する

成功体験を通じ、「やればできる」自信を社員に醸成します。

さらなる変革を推進する

小さな成功をバネに勢いづき、変革が加速度的に進みます。

新しい方法を企業文化に定着させる

変革のプロセスを伝承すると同時に、後継者を育て、変革を風土として根付かせます。

チェンジマネジメントが成功した日本企業の事例

富士フイルム

同社のチェンジマネジメントプログラム(CMP)は第2の創業にむけ、課長級1200人に意識改革を促すことを目的に実施されました。
参加者は事前に360度評価プログラムを受け、自己と一旦向き合ったうえで研修に臨みます。内外環境が大きく変わり、商品開発スピードが速くなり消費者ニーズも多様化する中で、従来目指してきた「すべてに答えられるリーダー像」が通用しなくなりつつあり、参加者たちの多くは悩んでいました

CMPを通じて、多くの参加者がリーダー像の認識を改め、新しいリーダーシップスタイル(部下と一緒に考えやる気を引き出す・チーム全体で解決する)を見出し、自信を持てるようになりました

具体的には、商品開発の迅速化につながるといった実務面での効果だけでなく、事業構造改革においても彼らのリーダーシップ発揮が期待できそうです。
(参考:「経済産業行政における 組織マネジメントに関する調査【報告書】」平成26年 経済産業省

チェンジマネジメントを阻害する!?チェンジモンスターとは

どんな組織にも、少なからず改革を妨げる抵抗勢力はいます。ボストン・コンサルティングのジーニー・ダックは著書「チェンジモンスター」の中で、改革をあの手この手で阻むメンバーを、モンスターキャラとして皮肉混じりに描いています。ここでは「チェンジモンスター」4類型を紹介します。

タコツボドン

縦割り組織のタコつぼに閉じこもり「それはうちに関係ない」「うちのやり方に口出すな」を連発します。

ウチムキング

市場や顧客に目を向けず、各部門の利害や組織間の力関係や諸事情ばかり気にかけます。

ノラクラ

のらりくらりと弁明を連発し、現状維持を図ろうとします。

カイケツゼロ

組織や事業の問題点をとうとうとまくし立てる評論家、自分で解決する気はありません。

「ビジョン創造」には、まず社員の意識を変えることが重要となりますので、チェンジマネジメントを妨げる可能性のある社員のタイプを知ることからスタートしましょう

【まとめ】組織の課題を解決するにはインターナルコミュニケーションが重要

企業が、そしてわたしたち組織人が勝ち残っていくためには、もはや組織変革は待ったなしです。もちろん、トップの強いリーダーシップも必要ですが、それ以上に大切なのが社員の巻き込みです。

改革のビジョンは経営層だけでなく、社員一人ひとりにまで落とし込まれている必要があります。タウンホールミーティングなど、経営層と社員のコミュニケーションを図る場を設け、今まで責任者以外クローズドだった年度方針発表会をイントラで公開するなどのインターナルコミュニケーション活動が組織の潜在力を引き出し、変革・課題解決につながるのです。

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株式会社ソフィア

取締役、オペレーションデザイン事業責任者、シニア コミュニケーションコンサルタント

築地 健

インターナルコミュニケーションの現状把握から戦略策定、ツール導入支援まで幅広く担当しています。昨今では、DX推進のためのチェンジマネジメント支援も行っています。国際団体IABC日本支部の代表を務めています。

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