アジリティの意味とは?組織のアジリティを高めるための2つのアプローチ!

昨今、ビジネスを取り巻く環境は激しい変化を見せています。そのような中で「アジリティ」という言葉が、組織に必要な要素として重視されるようになりました。
この記事では、「アジリティ」の意味を解説しながら、組織のアジリティを高めるメリットや、高いアジリティを発揮する組織を作るための方法に迫ります。

アジリティの意味とは?

アジリティとは、変化に柔軟かつ迅速に対応する能力のことを指します。単に速いだけではなく、的確な動きを選んで素早く行動するというニュアンスが含まれた言葉です。

アジリティ(Agility)の意味

「アジリティ(Agility)」という言葉には、「機敏さ」「素早さ」「敏しょう性」などの意味があります。従来は、サッカーやバスケットボールなどのスポーツでよく使われていた用語ですが、最近はビジネスの文脈で頻繁に耳にするようになりました。

なぜアジリティが注目されている?

なぜビジネスシーンでアジリティという言葉が使われるようになったのでしょうか。その背景には、ビジネスのスピードが飛躍的に上がっている昨今の状況があります。企業が生き残るためには、事業環境の変化に素早く適応することが求められているのです。
現代のビジネス環境を表現する際によく用いられるのが、「VUCA(ブーカ)」という言葉です。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から作られた言葉です。
たとえば、2020年に世界を一変させた新型コロナウイルス感染症の流行が、VUCAの良い例です。誰もが体験したことのなく、先が見えない状況の中、第1波においては世界各地で大きな混乱が起こりました。しかし、第5波、第6波と繰り返す中で、人々も組織も学習し、状況に応じて素早い対応策をとれるようになってきています。このように、アジリティは学習によって身に付けることが可能なのです。

アジリティは単なる速度ではない

アジリティは、単に「速度(速さ)」を表す言葉ではありません。
「速度」を表す英単語には他にも、「Speed(スピード)」や「Quickness(クイックネス)」という言葉がありますが、アジリティはこれらの単語とは異なります。アジリティは、速さだけではなく「状況に応じた適切な判断を素早く下し、行動できる」という意味を持つ言葉なのです。
世界のビジネスパーソンに読まれている物語『チーズはどこに消えた(スペンサー ジョンソン 著)』には、変化に対する有効な考え方が説かれています。
同著では、小人やネズミが小さな変化に気づき、受け入れることで状況を好転させていきます。物語が示唆するのは、変化に気づくことの重要さです。やがて訪れる大きな変化に対応するためには、いつか変化が起こると思って、目の前の小さな変化に気づいていくことが重要だということが描写されているのです。
人はしばしば、自分の置かれている状況を守るために、「今のままでいたい」と考えます。その結果、変化から目を逸らし、対応が遅れて適応できなくなってしまう。これはアジリティの低い状態です。アジリティの高い状態とは、状況の変化を素早く察知し、的確な判断によって行動を変えることで、変化に適応していくことができる状態のことを指します。

ビジネスにおけるアジリティとは?

では、ビジネスにおいてのアジリティとは具体的にどのようなものなのでしょうか。
「ビジネス・アジリティ」という言葉の定義は団体や個人によって異なりますが、多くの場合は、組織の文化、リーダーシップ、戦略、ガバナンスにおける俊敏性を指します。社内外の環境(商業、法律、技術、社会、道徳、政治など)に存在する機会や脅威に迅速かつ効果的に対応できるビジネスのことを、アジャイルビジネスと呼ぶこともあります。
「アジャイル」とは、アジリティという名詞のもととなった形容詞で、「俊敏な」「機敏な」などの意味を持ちます。最近ではIT分野において「アジャイル開発」が一般的になってきました。これは、あらかじめ全体の計画を立てて開発を進める「ウォーターフォール型」とは異なり、パーツや機能ごとに計画・設計・実装・テストのサイクルを繰り返し、状況の変化に柔軟に対応しながらシステムやアプリケーションの全体を作り上げていく開発手法です。
IT分野における開発プロジェクト単位であれば、組織サイズも比較的小さく、アジリティが高い状態を保ちやすいかもしれません。しかしこれが企業単位になるとどうでしょうか。グローバル規模の複雑な組織、バリューチェーン、それを取り巻くサプライチェーン、ファイナンス……。影響し合っている範囲が広ければ広いほど、アジリティを高く保つのは困難です。
実際に大企業は、規模の小さいベンチャー企業と比べ、変化への対応スピードが遅いケースが目立ちます。とくに、規模の大きさを生かしてビジネスが最適化され、それが業務効率やサービス品質、価格競争力といったビジネス上の優位点に直結している場合、身動きが取りにくくなるということがしばしばあります。なぜなら、敏捷性を確保するためにはこれまでのやり方を変えることが必要で、そのためには一時的に非効率を受けいれなければならい場合があるからです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行で明らかになったように、大規模なビジネスにもアジリティは必要です。では、組織が具体的にどのような状態であれば、アジリティが高いと言えるのでしょうか。

アジリティが高い状態とは?

組織のアジリティが高い状態とは、どのような状態なのでしょうか。そして、大規模な組織であっても、アジリティを高めることはできるのでしょうか。
このような疑問に答えるため、以下では「アジリティが高い状態」の具体的な特徴を整理してみましょう。また、アジリティが高まらないケースについても触れていきます。

アジリティが高い組織

アジリティが高く、変化に対応できている組織には以下の3点の特徴があると、私たちは考えています。

  • 判断の材料となるデータ(特に1次情報)が共有されている

    1点目は、組織内にあるさまざまな情報やデータがタイムリーに共有されていることです。昨今多くの企業が、デジタルツールを活用し、組織内の情報に従業員がスムーズにアクセスできる仕組みを確立しています。しかし、それぞれのデータの取得方法や活用方法が共有されていなければ、そのデータを使って状況の変化を察知し、的確な判断につなげることはできません。また、データを共有する際の過程において、チェリーピッキングや確証バイアスが起こり、正確に1次情報が共有されないケースもあります。アジリティの高い企業では、単にデータを共有するだけでなく、そのデータの取得方法や活用方法についての社内教育も行き届いています。そして、データを使ってそれぞれの現場が状況を判断し、周囲と連携しながら自律的に行動する文化が定着しているのです。

  • 複数のシナリオが用意されている

    2点目は、先の見えない事業環境に対して経営層があらかじめ複数のシナリオを描き、柔軟に意思決定をしていることです。緊急時の対応を前もって定めていくBCP(事業継続計画)のように、いくつかのシナリオを用意しておくことで、いざという時に備えることができます。今後の事業計画を描く際に、過去の経験をもとに一つの成功パターンしか想定していなければ、まったく異なる事業環境に置かれた際には適切に対処することができません。そして、状況が変わった時点で新しいシナリオを考え始めるのでは、実際のアクションまでに時間がかかってしまいます。一方、未来に関して考えられる複数のシナリオが用意されていれば、状況が変化した際にはその中から近いものを選んで、微修正しながらすばやく意思決定することができるのです。

  • 多方向のコミュニケーションが活発である

    3点目は、社内のコミュニケーションが活発であることです。経営の意思決定を素早く社員に広げるためには、組織構造に沿ってトップダウンでコミュニケーションを取ることも必要です。また、状況の変化を素早く察知して経営の意思決定に反映するためには、現場からトップへと、ボトムアップ的にやりとりすることも大切です。そして、それぞれの複雑な問題を解決したり、これまでにない状況に適応したりするためには、部門間・個人間のフラットなネットワークにおけるコミュニケーションも重要でしょう。

ここに挙げた3点の特徴を組織に備えるためには、時に効率の良さと相反する判断をすることも必要かもしれません。しかし多少の冗長性や非効率を受け入れることで、組織としてのアジリティが飛躍的に高くなることも考えられるのです。

アジリティの向上を阻害する要因

組織のアジリティ向上に取り組んでも、上手く行かないケースは多々あります。組織のアジリティ向上を阻害する要因は、多くの場合、変化に対する恐怖心です。過去の仕組みに縛られてしまう、いわゆる組織の経路依存性や、過去の成功体験にしがみつきたくなる個人の心情が、組織が変化する上でのネックとなります。
変化を恐れず、状況に柔軟に対応できるアジャイルな組織を作るカギは、インターナルコミュニケーションを活性化させることです。まずは企業のトップが、組織のアジリティを高めることの必要性について、企業の理念やビジョンに関連付けながら明確なメッセージを打ち出すことが重要です。その上で、多方向のコミュニケーションを活性化させるようなツールや仕組みを導入・活用し、アジリティの向上につながる多方向のコミュニケーションを促しましょう。
「アジャイルな組織になることが、従業員を含むあらゆるステークホルダーのメリットにつながる」という考え方を理解・納得することで、従業員が組織のアジリティ向上の取り組みに対して前向きになれることが期待できます。

日本企業のアジリティが低いと言われる要因

海外との比較においては、往々にして「日本の企業はアジリティが低い」と言われます。その要因として考えられるのは、高度経済成長期の慣習に固執し続ける経路依存性の高い組織構造やルールや意思決定プロセスです。組織内の複雑な組織構造とサイロ化により、1次情報が上手く共有化されておらず、意思決定の遅滞を招きます。さらにこの問題を放置もしくはミスリードすることによる解決行動がアジリティを低くしているのです。
ITを活用してさまざまな情報やデータを組織内でフラットに共有することで、先入観や忖度を排し、エビデンスを元にした提案や意思決定ができるように、組織を変えていくことは可能です。ただし、単にデータを共有しただけでは解決にはなりません。なぜなら、これまで各部門が独占的に利用していた情報が共有されることが、新たな部門間対立などトラブルの火種となるリスクもあるからです。組織のアジリティ向上に向けて組織風土の変革を目指すのであれば、情報共有の仕組みを変えるとともに、その背景にある狙いや目指す姿について、各現場と丁寧なコミュニケーションを取っていくことが重要です。情報共有の仕組みを変え、各現場と上手くコミュニケーションを取ることができれば、意思決定のスピードと確度は飛躍的に向上します。

アジリティを高めるための2つのアプローチ

では、組織のアジリティが高くない場合は、どのように高めていったら良いのでしょうか。具体的な手法を見ていきましょう。

権限を委譲し、個人の裁量を拡大する

アジリティの高い組織を作っていくためには、状況の変化に対してそれぞれの現場が自律的に判断し、最適な行動をとれるよう、規制力となるものをできるだけ排除することが大切です。そのために有効なのは、権限移譲を行って、現場で働く個人の裁量を高めることです。
裁量を上げるにあたっては、各々が正確な判断を下せるように、最新の変化をとらえた情報やデータをシェアすることが必要です。そのためにはITを活用し、社員が必要な時に必要な情報にスムーズにアクセスできるポータルサイトや、自分がよくアクセスする情報をまとめておけるダッシュボードなど、情報のプラットフォームを構築することをお勧めします。
ただし、現場の裁量拡大や情報のオープン化には経営リスクも伴います。どのような状態を目指すために、組織の規制力をどの程度弱めていくのか、あらかじめ組織内で話し合いを行って、シナリオを描いておく必要があります。また、権限委譲を行う際は、その狙いや現場への期待を、経営層や管理職から現場の社員に対してしっかりと伝え、あらたな権限を持つ現場の社員が自らの責任を自覚できるようにすることが必要です。個人の裁量拡大にも、丁寧なインターナルコミュニケーションが欠かせないのです。

組織の理念・ビジョンを明確化し、共有・浸透する

リーマン・ショックでも、今回の新型コロナウイルスでも、中小企業をはじめとする多くの企業がビジネスモデルを根幹から変えたり、企業ごと売却してビジネスを手放したりしています。先の見通せない状況では、いわゆる「黒字リストラ」も増加します。有事の際には、重大な決断をすぐに下さなくてはならないことがあるのです。だからこそ、組織として守るべきものは何なのか、どこまでの範囲なら組織を変えていいのか、あらかじめ意識を統一しておくと良いでしょう。
組織としての意思決定の方向性を揃えるためには、経営理念やビジョンを明確化することが大切です。組織の方針が明確化されていて、それが一人ひとりの社員に浸透していれば、たとえ個人の裁量を増やしても、間違った方向に進んだり、無秩序な状態になったりすることを防ぐことができ、組織の変革に向けた推進力を高めることができます。そのためにも、組織のインターナルコミュニケーションが活発な状態であることが重要です。組織のアジリティ向上のためには、インターナルコミュニケーションが良好な状態であるかどうかを常に意識しましょう。

まとめ

組織のアジリティとは、事業環境の変化に素早く対応できる能力です。アジリティの高い組織を作っていくためには、組織の規制力となるものを排除して個人の裁量を高めること、そして、組織の方向性を明確にすることで変革への推進力を高めることが重要です。組織のアジリティを高めて、変化に対応できる組織作りをしたいという場合は、どうぞソフィアまでご相談ください

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