データドリブンの概要と成功のポイントと事例

主にマーケティング分野で使われていた「データドリブン」という言葉が、最近は経営の文脈でも使われるようになりました。2018年ごろより盛んになった企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年いっそう進んだことや、クラウドやデータ分析技術の進化によって、以前は扱いが困難だった膨大で複雑なビッグデータも分析・活用できるようになってきました。そして、経営の領域においても、これまで蓄積してきたデータを企業活動に生かそうという動きが広がっています。本記事ではこのデータドリブンについて概説するとともに、実施する際の成功のポイント、実際にデータドリブンに成功した企業事例を解説します。

データドリブンとは?

データドリブン(Data Driven)は、もともとは計算機科学分野から生まれた言葉です。収集したデータを分析してアクションを起こす際、ひとつのデータ分析で終了することなく得られた結果をもとにさらにデータ分析を重ね、そのデータから次のアクションを起こすことを指します。

データドリブンの定義

データドリブンとは、「収集したデータを分析して意思決定や企画立案に役立てるための方法論」と定義されています。ビジネスにおいてはデータを頻繁に扱うマーケティング分野で「データドリブンマーケティング」という概念で扱われてきましたが、やがて経営分野においてもデータドリブンが注目されるようになりました。
経営でもデータの分析と活用はとても重要です。データを利用することで意思決定に根拠が生まれるため、重要な場面で選択を誤るリスクが低減します。また、データの活用によって他者の説得を有利に進めることができ、施策実施後には効果測定を行うことも可能です。
そして最近はこのデータドリブンが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の分野でも注目されるようになってきました。

データドリブンが注目される背景

日本でも企業のDX(デジタルフォーメーション)推進が徐々に進み始め、DX推進によるビジネスのゴールを達成するために欠かせない手段として「データドリブン経営」が注目を集めています。
デジタル技術の普及により、企業はユーザーや顧客の情報をより細部まで獲得できるようになりました。これは、年齢や性別などのデモグラフィックなデータだけでなく、嗜好や価値観などのサイコグラフィックなものまで含みます。さらに分析手法も高度になり、仮説の検証やエビデンスの提示だけでなく、新たな発見をする目的でもデータ分析が行われるようになり、データドリブンが注目されるようになったわけです。

データドリブンを構成する要素

データドリブンは、以下に挙げる5つの要素によって構成されます。

データ活用の目的設定・計画

まずは着実に、「売上増加」「ブランド力向上」「リピーター率の向上」など、目的を設定した上でデータ活用を始めましょう。膨大なデータをとにかく集めることで、本当に価値のある偶然性の高い発見が浮かび上がることが理想ですが、そこに至るためには、計画的にデータを取得することにより、基準となる傾向値や、会社の目指す指標に関連する要素(売上であれば、顧客数*顧客単価、それに影響を与える時期や時系列など)を網羅的に把握しなければなりません。

データを収集する

意思決定や企画に必要な自社内のデータを、データサーバーを利用して一箇所に蓄積します。データは業務管理システムやIoTツール、Webサーバなどから取得し、膨大な容量になることからビッグデータとしてクラウド上に保存されます。もしデータが分散していて収集が困難な場合は、データ管理ツールを導入することで収集・蓄積がスムーズに進むでしょう。

集めるべきデータがない場合は、データ取得をするためのツール導入から始めます。売上であればPOS、顧客であればCRM、Webあればアクセス解析など、データの種類によってツールは多種多様に存在します。自社で取得したいデータに合わせてツールを検討してみてください。

データを見える化する

ここでの見える化とは、収集・蓄積したデータが何を示すものなのかを客観的に把握できるようにするという意味です。データの可視化を行っておくことで、加工や分析の効率が向上すると共に、組織内での問題と解決策の共通認識を生むことに繋がります。BIツールやDMPなどを導入すると見える化が円滑に進みます。共通の意思決定基盤として、組織内の誰もがアクセスできるデータプラットフォームを設けましょう。

データを分析する

収集したビッグデータは量的かつ構造的な理由から以前は分析が困難でしたが、デジタル技術の進化によって高度なアルゴリズムを用いて分析ができるようになりました。分析されたビッグデータは、数字で示される定量的な結果や、図やグラフといった視覚化しやすい結果として加工されます。

データを活用する

分析したデータをもとに意思決定を行い、プランを策定、実行し、さらにそこから得られた結果を活用して改善を繰り返します。これらのステップはいわゆる「PDCA」サイクルと同様です。

データドリブンを成功させるポイント

データドリブンは単なるデータの一時的な活用ではありません。連続性を持って取り組み、データを活用した経営を組織に根付かせることが鍵となります。ここからは、データドリブンを成功させるポイントを3つに分けて解説します。

データドリブンによるメリットを浸透させること

まずは、データドリブン経営の重要性やメリットは最初にしっかりと全社に共有し、浸透させ、納得感を得ることが不可欠です。これまで部署単位で管理していたデータを経営で活用するとなると、データを見られることに不都合を感じる社員もいるため、合意なしに実行すれば現場の反発を招きかねません。データの扱いについては、その目的や管理体制について企業に説明責任があることを理解しておいてください。
データを根拠として発言をしたり課題を発見したり意思決定ができたりするようになることは、企業が事業の競争力を高められるようになるだけでなく、ひとりひとりの社員にとってもビジネスパーソンとしての大きな成長につながります。データドリブンを行うことで、企業や社員がデータをもとにアクションを起こす体質に生まれ変わっていくのです。これは組織文化や組織風土の変革につながるものであり、企業と社員の双方に大きなメリットをもたらします。

データに強い人材を確保すること

データドリブンにとって必要不可欠な人材は、「データアナリスト」や「データサイエンティスト」といったいわば「データの専門家」です。データアナリストとは、仮説検証といった「現状分析」を重視し、課題解決の手段を発見する「データ分析の専門家」を指します。一方でデータサイエンティストは、ビッグデータを分析してその結果をもとに「ビジネス視点での改善策を立案する専門家」であり、データアナリストに経営視点を加えて提言のできる人材を指します。
自社にとってどちらの人材が適しているかを見極めた上で確保しましょう(両方という手もあります)。なお、これらの職種でなくとも「データ分析に強い人材」を社内で育成するという選択肢もあります。

適切なツールを導入すること

データを見える化するために、DMP、BIツールの導入を検討してみてください。DMP(Data Management Platform)とは、ビッグデータを一元管理、分析し、アクションプランを実現するためのプラットフォームサービスです。またBI(Business Intelligence)もビッグデータを集めて抽出・加工できるツールです。どちらもたくさんのツールが登場しているので、比較検討してみましょう。

データドリブンを成功させた企業事例

最後に、データドリブンを成功させた企業事例を2つ取り上げて、その内容について紹介します。

USJ

「USJ」ことユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営元である合同会社ユー・エス・ジェイがデータドリブンを活用したマーケティングを行っています。USJは当初、非常に伝統的なマーケティング手法により良い結果を出していました。具体的には、Webのような全量データではなく来場者を匿名でサンプリングして状況を把握し、リテンションよりマス・マーケティング、改善ではなく一発逆転と、ITを活用したデータドリブンとは真逆なマーケティングを行っていたそうです。しかし、当時台頭し始めていた“EC(インターネット販売)”分野出身の担当者は、そんな同社において長期的な視点でさらに効果的なマーケティングを実現すべく、「データドリブン」の考え方を浸透させ、先導してビジネス全体をひとつひとつ変革していきました。
「パークを訪れる顧客の全数データを手に入れる」ことが第一の目的となります。テーマパークにおけるマーケティングの難しいところは、WEBであれば顧客の属性を100%取得できるところ、当日、窓口でチケットを購入する来場者をはじめ、オフラインでのみ完結する利用者が多かったことです。それでもWEB予約の改善に取り組んだ結果、ECサイトでのチケット販売が占める割合は3年間で3倍に。また「スマートゲート」の導入をきっかけに、入場の導線でデータを確保しマーケティングに活用することができました。このとき、「データドリブン」であることと、「データファースト(顧客セカンド)」とをはき違えないということがポイントでした。まずは顧客体験が向上し、その過程でデータが得られる、という姿勢を重視しながら、その後もパーク内での行動の可視化のため、センサーやビーコン、GPSを活用したサービスなどを展開していきました。
データドリブンマーケティングが経営層に受け入れられず、担当者が丸二日をかけて徹底的にヒアリングを行った結果、それ自体が啓蒙の役割を果たした、という副次的効果もありました。データドリブンを実現するために、さまざまな事業部門の協力は必要不可欠であったため、オペレーション部・飲食事業部・物販事業部などの決裁権者に対して部署ごとにデータ活用のメリットがあることを丁寧に説明して回り、納得してもらっています。

 JTB

旅行会社として有名なJTBは、DMPを活用してデータから顧客の渡航目的や購買動機を発見し、そこで得た知見をもとに各種施策を実行するデータドリブンマーケティングを行っています。なお、同社ではデータドリブンを行うために専門部署である戦略組織「Data Science Central」を立ち上げています。
データドリブンの連続性を確保するために「3ヶ月毎に成果を出していく」というスタイルをとり、「統合データ基盤」「顧客分析」「マーケティングアクション」とチームを3つに分けて役割を分担しました。統合データ基盤チームがIDの統合を行い、顧客分析チームが得られたデータを分析し、そこでの知見をマーケティングアクションチームに渡して施策を打ち、その結果が統合データ基盤チームに戻ってくるという流れです。
また、顧客分析チームは統計解析を扱う「量的分析チーム」と、お客様の文脈を読み解く「質的分析チーム」に分かれています。統計解析だけでなく、データから経営目線・顧客目線でニーズや課題を考えられるチーム編成となっており、これがデータドリブンを成功させたポイントといえるでしょう。

まとめ

データドリブン経営の推進の鍵は連続性を持って組織内でデータを活用すること。そのためには、「データに基づいて経営する」「データに基づいて社員が発言し、課題を発見し、行動する」という企業風土の実現が必要です。しかし、現状ではそれができている企業は多くはありません。ソフィアでは企業風土改革を支援しています。データドリブンを実現したい企業様もお気軽にお問い合わせください。

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