不確実性とは何か?不確実性の時代におけるマネジメント方法

「不確実」という言葉は、起きるかどうかわからない事象=“不確かな事象”の意図で使われる言葉です。今後起きる可能性のある危険性やリスクを意味して使われる場合もあります。

リーマンショック以降、不確実性の高まりが世界的に注目されてきましたが、従来人々を取り巻く状況は不確実であることが多いものです。

経済状況の不安定さや、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行など、予期せぬ変化や新たな課題は時代ごとに存在しています。

不確実性の高い事象がもたらす社会へのインパクトは非常に大きく、企業組織においても不確実性への対策は必須といえます。

この記事では不確実性とは何か、不確実な時代における 組織のあり方とはどんなものかを解説していきます。

不確実性とはなにか

そもそも、不確実性とはどのような意味を持っているのでしょうか。

不確実性という言葉の意味や不確実性の時代が始まった背景、そして不確実な未来を捉えることの難しさについて考えてみましょう。

不確実性という言葉の意味

不確実性という言葉には、多義的な意味が含まれています。

言葉自体の意味としては、確実性が証明されていないということ、起こるかもしれないし、起こらないかもしれないこと、確信がもてないこと、どちらに転ぶか分からないことなどが挙げられます。細かい捉え方の違いはありますが、総じて未来が分からない常態として捉えることができるでしょう。

この不確実性という用語は、日本では主に経済学の分野で使用されることが多いです。これは1978年に、経済学の巨人と証されるハーバード大学名誉教授、ジョン・ケネス・ガルブレイスの著書「The age of uncertainty」を「不確実性の時代」と訳したことに起因します。

なぜ不確実性の時代が始まったのか

では、不確実性の時代はどのように始まったのでしょうか。

ジョン・ケネス・ガルブレイスの著書「The age of uncertainty」が発売された1978年当時のアメリカ経済は、インフレと高失業率に悩まされていました。

1978年の消費者物価は+9%と大きく上昇し、同年末にはイラン革命によって石油の輸出が停止され、第2次オイルショックが発生しました。OPEC(石油輸出国機構)が原油価格を+14%も引き上げたことで、世界的なインフレに拍車がかかりました。

さらに翌1979年にはOPEC が原油価格を2倍に上げたことで、アメリカの消費者物価は+13%にもなったのです。

そのような経緯もあって、ガルブレイス氏は著書の中で「過去200年の経済学の歴史においては考えられない、“不確実性の時代が始まった”のだ」とこの時代を定義しています。

また、独立行政法人経済産業研究所により発表されている政策不確実性指数のグラフによると、2010年以降特に不確実性が増大する状況がもはや常態化していること分かります。

政策不確実性指数は、政策をめぐる不確実性や、政策との関わりで高まる経済の先行き不透明性を定量化するために作られた指標です。

リーマンショック以降は、アメリカの覇権国家としての後退と中国の台頭により覇権移行の時代として捉えることができます。このように、これまでの国際社会のパワーバランスや安定が崩れたことが不確実性の高い時代が始まるきっかけとなりました。

不確実なことが世界規模の問題であることが理解できます。

不確実な未来を捉えることの難しさ

不確実性の高い現代において、未来を正確に捉えることは非常に難しく、そもそも未来を予想するなど無駄なことであるように感じてしまいます。

不確実な未来を捉えることの難しさがよく分かる良い例があります。

アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関であるFRB(The Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、2021年4月の段階ではアメリカのインフレは一過性のものであり、対策は必要なしと明言していました。しかし、その約半年後の11月30日の議会において「インフレは一過性のもの」といった発言を撤回し、金融政策が必要であると語ったのです。FRBの綿密な分析をもってしても未来を予測するのが難しいのですから、一企業が未来を予測することの困難さが理解できるでしょう。

また、欧州中央銀行の定義によれば、経済の世界には次のような3つの不確実性が同時に存在しています。未来の不確実性、現状が正しく測定されているのか分からないという測定の不確実性、経済の構造が正しく理解されているのか分からないという構造の不確実性です。

また、投資という面から見ても、対象国・地域の政治的、経済的な理由から資産の価値が変化するカントリーリスクも存在しています。

経済という一側面をとってもこれだけ不確実な要因が多いことが分かります。さらに、現代では不確実性は政治や金融、国際関係等あらゆる分野で顕著になっています。

たとえFRBや欧州中央銀行のようなその分野における権威も、これだけ高い不確実性のもとで未来を予測することは困難だということです。専門家や権威筋の組織でも難しいのですから、一企業、一個人がそれを把握してみせるのはほとんど不可能といえるでしょう。

しかし、「不確実だから考えても仕方ない」と思考停止するのではなく、不確実であることを前提とした上で「どのくらいの幅で物事を考えていくか」が重要です。

そのためには、時間軸(どのくらいのスパンにおいてか)と地域軸(どの地域においてか)を決めた上で予想することが必要になります。

企業の経営における不確実性

では、企業経営における不確実性とはどのようなものでしょうか。

企業という組織をマネジメントし、事業を運営していく上で、特に重要といえる2つの不確実性があることを認識しなければなりません。

環境不確実性

まず、向き合うべき要因の1つとして、環境不確実性が挙げられます。環境不確実性とは、未来における「確定し得ない不確実な事象」のことであり、未来の不確実性は将来への不安と言い換えられます。

この環境不確実性の最も大きな課題は、実際に起こってみるまで結果がどうなるか分からない点です。例えば、新型コロナウイルスの世界的流行などはその代表といえます。このような劇的な変化が訪れることは誰にも予測できなかったでしょう。経営者はこうした予測不能な未来に対する不確実性について認識しておくことが重要です。

 通信不確実性

2つ目の不確実性の要因として、通信不確実性が挙げられます。これは他人とのコミュニケーションにおいて生じる「他人への不安」と言い換えることもできます。

他人とコミュニケーションをとる上での通信不確実性には、3つの課題が存在しています。まず「他者理解の不確実性」です。コミュニケーションにおいて、一方がもう一方の思考や意向を正しく理解することはできないために生じます。

次に「伝達の不確実性」です。これは伝えるべき、または伝えたい情報がすべて相手に到達するとは限らないことを意味します。

そして最後に「成果の不確実性」です。もし仮に、上記の不確実性を乗り越えて情報の伝達や理解がなされたとしても、情報の受け取り手が想定したとおりに動いてくれるとは限らないということです。

これらの不確実性が存在するゆえに、従業員間や部下、上司間で情報の非対称性が生まれてしまいます。そのうえ、人は自身の知っている情報の範囲内で合理的な行動をとろうとする(限定合理性)ため、情報の非対称性が生ずるものの間で「正解」の解釈が異なるという問題も存在しています。

このように、他人とのコミュニケーションにおいては他者間で複合的な不確実性が発生し、その課題について正確に認識することが経営者には求められます。

不確実性の時代の企業のあり方とは

不確実性が高まる現代において、企業はどうあるべきなのでしょうか。
不確実性の時代にあるべき姿「レジリエント企業」について解説していきます。

レリジエント企業のあり方

レジリエントとは、弾力がある様子や柔軟性のある様子を表した英単語です。

すなわちレジリエント企業とは、社会の変化や危機に柔軟に対応できる企業のことを意味して使われます。

自然災害や経済的不況などの不確実な事象を受け止め、時代に即して経営のあり方を変えたり、新しい取り組みを取り入れたりすることで、以前よりも大きく成長する企業のあり方です。不確実性というリスクを反発力に変え、成長のチャンスに変えていくのです。

不確実性の時代におけるマネジメント方法

では、上記の内容を踏まえた上で、不確実性の時代におけるマネジメント方法をご紹介します。

意思決定に関与したという自覚を持たせる

まず、社員や部下には意思決定に関与したという自覚を持たせましょう。幸福や成功、ポテンシャルの関係についての研究で世界を牽引し、「Harvard Business Review」にもその研究が多く掲載されるショーン・エイカーによれば、人は自分が意思決定に積極的に関与していると思えるほど、変化を受け入れやすくなるとされています。つまり、様々な変化に素早く適応できるチームや組織を作るには、メンバーに意思決定に関与していることを自覚させるのが効果的であるということです。日々の業務やミーティングにおいて、それぞれがチームの意思決定に影響していることを意識させましょう。

共通のミッションとの繋がりを意識させる

また、共通のミッションとのつながりを意識させることも重要です。ジョージ・メイソン大学にて経営学・組織行動学を担当するビクトリア M. グレイディが2016年に行った研究によれば、掲げるミッションと深いつながりのある組織ほどパフォーマンスが高くなることが分かりました。組織内外の環境が目まぐるしく変化する時代でも、組織共通のミッションに各人が愛着を持つことでパフォーマンスの維持・向上が可能になるでしょう。そのため、リーダーには各メンバーが組織全体のミッションとのつながりを意識できるような明確な目的や細分化されたミッションを与える能力が必要です。

密なコミュニケーションで不確実性の時代を乗り切る

リーダーは自らが率先してコミュニケーションを取るのはもちろん、チーム内で円滑なコミュニケーションが取れるような場づくりや環境づくりの姿勢が求められます。

不確実性の高い現代において、戦略は崩れるものであるという前提で戦略を立てることが重要です。したがって、綿密で崩れない戦略を立てようとするより、その都度起こる事態に必要な対応ができる能力が今後は重要になります。そのような組織を実現するためには、組織内での密なコミュニケーションが欠かせません。

また、不確実性の高い未来に対応するためには、日頃から経営に関わる様々なデータを取得しておき、必要なときに必要な情報やデータがすぐに手に入る体制づくりも重要です。

まとめ

ここまで、不確実な時代におけるマネジメント方法について解説しました。不確実性が高まり、将来の予測が困難になっている現代だからこそ、リーダーは正しいマネジメント方法を理解しておかなければなりません。意思決定やミッションとのつながりを意識させること、円滑なコミュニケーションが取れる場づくりなど、リーダーが行うべきことは多岐にわたります。ソフィアでは、このような経営者の不安を解消するためのプランをご用意しています。不確実性の時代に適応できる組織やチームづくりにお困りの際は、ソフィアまでご相談ください。

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