当事者意識とは?当事者意識が高いことのメリット、高める方法を解説

当事者意識とは、問題やテーマに対して、「自分が解決する/自分が行動する」という意識のことです。誰かが解決してくれる、やってくれる、という「他人ごと」ではなく、「自分ごと」として考えることは、ビジネス、業務の文脈でも重要です。
企業は、理念の体現や、事業計画の推進、個々の業務に対して、できる限り、担当する社員に当事者意識を持ってもらうことを求めています。

本記事では、この「当事者意識」というものがどのように仕事の場面で現れるのか、これが低いことでどのような問題が起こるのか、またどのようにすれば当事者意識を高めることができるのか、その方法を解説します。

当事者意識とは?

当事者意識の定義を辞書から引用します(Weblio辞書より)。

『何らかの物事やプロジェクトなどに参加している当事者である、関係者である、という意識のこと』

日本企業の多くは、組織構造上の工程分業や、管理職を中心とした階層構造などによって、複数の人間が連動して一つの仕事に取り組むことが前提になっています。

そうした中では当然、「責任を負うのは管理職、実行するのは部下」「自分たちの責任範囲は工程①であり、工程②については全く触れることがない」というような状況が発生します。

このとき、「自分の担当ではないが、工程②の改善案を思いついたので、その担当者と話してみた」「自分は責任を負う立場ではないが、この取り組みは会社にとって重要なことなので、出来る限り良い仕事となるよう工夫した」という社員がいれば“当事者意識が高い”といえるでしょう。

しかしながら、「同一賃金同一労働」など職務記述の明瞭化の動きもある中で、個々の本来の役割や、規定されている賃金を超えた働きを会社側が期待するばかりでは、労働者に対して理不尽な圧力ともなりかねません。

企業は、社員に対して高い当事者意識を持つことを期待し、自主的・自律的な行動や学習を促進する一方で、制度や仕組みの上で、社員の自主的・自律的な取り組みを柔軟に評価することが必要です。

社員は、何に対して当事者意識を持つのか

「当事者意識」を高めると一口に言っても、立場や役割、もしくは場面によっても、その対象はさまざまです。企業の中で、社員は、何に対して当事者意識を持つことが求められているのでしょうか。

① 経営・事業課題に対する当事者意識

経営上の課題、事業上の課題に当事者意識を持つということは、「経営目線」でものごとを考えることといえます。経営層はもちろんのこと、経営層と直接やり取りする各部門のマネージャーや、その部門内のチームリーダーなどは、こうした意識を持つ必要があるといえます。経営状況や市場の状況を捉えながら、「売上向上」「シェア向上」「事業の持続可能性」「社員の労働環境」など、大局的な観点で、成果を高めるための方法を考えることとなります。

また、より現場に近いシーンで、例えば小売業界の企業において、店舗スタッフ自身が、「最近のニュースを見ると、今期は需要が冷え込んでいて、来客数自体は減ることが考えられるため、客単価を高めなければならない。そこで、単価の高い商品を目立つように陳列した方がいいのではないか?」というようなことを考えたとしても、そのために必要な権限が与えられていない可能性もあります。もちろん、そうした視点を持つこと自体は称賛されるべきことで、革新に繋がる可能性も十分あるものですが、「役割分担」という点を考えると、通常店舗スタッフはおもに「顧客満足」に対する当事者意識を担うことが期待されています。次の項目で詳しく述べていきます。

② 業務目的に対する当事者意識

上記の店舗スタッフの例でいう「顧客満足」に対する当事者意識は、すなわち「業務目的」に対する意識です。顧客に商品を販売するという店舗スタッフの役割においては、さまざまな業務プロセスが存在します。それらのプロセスを遂行する際に、単に「商品を販売する」だけでなく、「顧客満足度を向上する」なども目的として意識されていれば、業務の質は変わってくるでしょう。例えば、“淡々とレジ打ちを行う”だけでなく、 “レジ打ちを素早く効率的に行う”、“次に並んでいるお客さんに積極的に声をかける”、“客数が多い時には他のスタッフにも声をかける”などの発想が生まれ、そのプロセスの改善につながるかもしれません。同時に、「購入する点数が少なければ、顧客自身が自分でレジを通した方が早いのでは?」というような、潜在的なニーズの発見も生まれることでしょう。

先に述べたマネージャー・リーダー層の「大局的な経営目線と」、店舗スタッフの例で述べた「顧客に対する現場目線」を分担し、それぞれの当事者意識のもとに改善を重ねることで、企業活動は成長していきます。

③ 社会課題に対する当事者意識

先に挙げた①、②とは少し趣が異なり、より高次な概念と言えます。すなわち、経営層、管理職層、スタッフ層、いずれの社員も関わるものです。

「企業とは、社会の公器」という言葉もありますが、ほとんどの企業は、社会の存続や発展、人々のより良い暮らしに直接的または間接的につながっています。しかしそれは、工程の切り分けが進むほど、個人には見えにくくなってしまうものです。

ドラッカーが著書の中で述べた、「三人の石切工」という有名な話があります。
(「マネジメント(下)」PF.ドラッカー ダイヤモンド社 87ぺージ)

1人の石切工は、「何をしているのか?」と問われ、「石を切って、生計を立てている」と答え、
ある1人は、自信満々に「国中で一番上手く石を切っている」と答え、
さらにまた別の1人は、目を輝かせながら、「大寺院をつくるため、石を切っている」
と答えたというものです。

生計を立てることも重要で、そのプロセスに深く習熟することももちろん重要ですが、最もモチベーション高く、また業務に様々な工夫を凝らして働くのは、3人目の石切工であることは間違いありません。
現代の組織においては、この「大寺院」にあたる社会への大きな貢献像については、企業が明確に示し、伝える必要があることでしょう。

社員の当事者意識が高いことで得られるメリット

いくつかの観点から、当事者意識とはどのようなものか、について説明してきました。では、当事者意識が高いことで得られるメリットにはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、4つの主なメリットについてご紹介します。

主体性を持った行動ができる

社員が仕事を自分ごととして捉えるようになるため、業務をやり通そうとする責任感が社員に生まれます。業務を行う理由や達成すべき目標についても理解しているため、業務を通して会社の発展に貢献しようという気持ちで、主体性を持って行動するようになるでしょう。

意思決定のスピードが上がる

社員が仕事の目的や目標を理解して自分ごととして捉えるようになると、ひとつひとつの業務を単なる「上が決めた」「やらされている」タスクではなく、目的や目標の達成に向けた一連の流れの中で自分の果たすべき役割ととらえるようになります。すると、何かの判断が必要な際などに人任せにせず自分で的確な選択をすることができたり、対処方法を自分から上司に提案したりできるようになります。「やらされていること」ではなく「自分がやるべきこと」という意識は意思決定の速さに結びつくのです。

モチベーションアップ

言われたことを機械的に取り組むより、自ら進んでやることのほうが意欲を高く持って取り組むことができるというのは自明のとおりでしょう。会社の発展を自己成長と結びつける社員も現れ、積極的に寄与しようと試みるようになります。

社員同士の相乗効果が見込める

成長意欲の高い社員同士が切磋琢磨するような組織風土が生まれれば、社員同士が相乗効果でさらなる力を発揮する組織体質へと生まれ変わります。社員同士のこうした横のつながりは、足し算の関係ではなく、掛け算の関係として増幅し、生産性や業務効率の向上、イノベーティブなアイディアの創出、その実行力へとつながるでしょう。

社員に当事者意識がないことで起こる問題

ここまで、当事者意識が高い状態でもたらされる良い点について触れてきました。一方で、社員に当事者意識がないことで生じる現場での問題とはどのようなものでしょうか。これも具体的に見ていきます。

● 受け身、指示待ち(他人任せ)

自分が会社の物事を自分ごととして捉えられていないので、社員が積極的に仕事をしたり、自分から主体的に動いたりということをしなくなります。こうした受け身で指示待ちの状態では、社員自身に得られるものがないばかりか、チーム全体の士気を下げたり、イノベーションを阻んだり、生産性や業務効率の停滞を招いたりするでしょう。

● 責任感がない、責任逃れをする

会社の動向に関心がないので、仕事にも責任があると思えなくなります。最悪の場合、嫌なら辞めてもいいと思っているかもしれません。社員の当事者意識の低さから、会社が責任を負うべき重大なインシデントが発生するリスクも大いにあります。一時期相次いだ企業不祥事などもこの類です。

● 危機感がない

たとえ会社の動向を左右する大きな仕事を任されたときでも、社員がリスクを自分ごとと捉えないため、危機感を持たなくなります。ミスだけでなく、情報漏洩などの大事故を引き起こす可能性もゼロではありません。

● 自己主張をしない

我関せずといったように、会社において自己主張をしなくなります。こうした無関心が蔓延すると社員のエンゲージメントが低下していくばかりです。消極的な社内風土が会社に広がり、発言が憚られる意識が生まれます。

● 変化を受け入れられない

当事者意識が低い人は、環境が変化することでストレスが高まることを嫌います。そのため、職場のコミュニケーションを良くしよう、業務を改善しようと積極的に振る舞う人や言動を排除しようとする同調意識が生まれます。組織は不活性な状態となり、イノベーションも起きません。

社員の当事者意識が低い原因

上で挙げたような問題や、社員の当事者意識の低さは、多くの企業で見られます。当事者意識が低い、その原因はどこにあるのでしょうか。

まず、自分の業務が会社にどのような影響を与えているかが理解できていない場合に当事者意識が低くなります。なぜその仕事に取り組むのかという目的や、その仕事によって達成したい目標が明確でないと、なんのためにその仕事をやっているのかがわからないため、「やらされている感」が生まれます。「やらされている感」は自分ごとの逆、「他人ごと」の元です。

2つ目は、自分のことで精一杯な場合です。物事を考えるときには物理的、精神的にある程度の余裕が必要ですが、そのどちらかでも欠けてしまうと、人は主体的に考えることを放棄するようになります。企業が個人にタスクを与えすぎてしまうとこのような状態に陥るリスクがあるため要注意です。

3つ目は、周囲の状況がわからない場合です。まわりがどのくらい会社にコミットしているかわからないと、自分がとるべき行動のレベル感がわからなくなり、当事者意識が育ちにくくなります。日本人はまわりを見て自分の足並みを揃える「出る杭にならない」考え方が身についているため、輪からあえて外れるような行動を恐れるためです。

4つ目は、責任を負うことをさけたい場合です。責任を負うことを避けたがる理由はその企業によって異なります。失敗を避ける(失敗を糾弾する)マネジメントが原因かもしれませんし、責任を負うリスクが大きい業務が原因かもしれません。この理由に当てはまるようであれば、その原因を見極める必要があります。

社員の当事者意識を高める方法

最後に、社員の当事者意識を高める方法を5つ解説します。

関係性の質を高める

まずは上司が部下に信頼されることが重要です。社員が責任を回避したがる原因としてマネジメントの問題があると先に述べましたが、部下が力を発揮できるようなマネジメントを上司が心掛けることが必要です。またそのためには、どのような仕事や責任を持たせるのかという点だけでなく、部下が安心して上司に相談できる信頼関係を築くなど、関係性の質を高めることも不可欠です。

会社のビジョンに基づく目標を持たせる

社員自身の目標を会社のビジョンと重ね合わせることで、社員が自分の仕事を通じて会社の発展に貢献しようと思うようになり、そこから会社の動向を自分ごとと感じるようになります。近年では報酬の多寡よりも自己成長できる環境で就業先を選ぶ若手も多く、彼らの目標管理は当事者意識を高めるために重要です。

意見交換の場を作る

タウンホールミーティングやディベート、各現場での対話会など、さまざまな社内イベントを駆使して、社内の事柄に対して社員の意見を引き出す場を作るとよいでしょう。これらはオンラインでも開催できるので、コロナ禍でも十分有用です。経営層やマネジメント層、または上司や同僚との対話を通じて自分の意見を表明できる・意見を訊いてもらえるという体験が、チームや部署、ひいては企業そのものへのコミットメントへとつながります。

目標に対する振り返りを行う

目標を設定して終わりでは、人は学習できません。会社を発展させ、自分が成長するために立てた目標に対して、定めた期間の中でどのくらいの成果を上げたかをきちんと記録し、振り返り、次へとつなげるPDCAのサイクルをまわすことが必要です。目標達成に向けた実践と、それを通した学習・成長は、すなわちチームや部署、企業そのものへの貢献でもあり、当事者意識の醸成にもつながっていきます。

適切に評価する

日本企業ではあまり行われていませんが、社員の頑張りをきちんと認める、成果を評価する、褒めるという当たり前のことをしっかりと徹底しましょう。本来は失敗から学び、成功を評価される両軸で人は育つものですが、日本では効果的に相手を褒める文化があまり根付いていません。意識して褒め、適切な評価を徹底しましょう。

まとめ

社員の当事者意識が低い企業では企業自体が危機にさらされるリスクが生まれます。同時に、社員の高い当事者意識は、企業のさらなる成長と、グローバル化や競争の激化する市場における優位性をもたらすでしょう。
社員の当事者意識を育てるためには、まずは「関係性の質」にアプローチする必要があります。もし、自社の社員の「当事者意識が低い」、社内の関係性の質を向上させるようなコミュニケーションを実現したい、と考えの際は、社内コミュニケーションの活性化を支援するソフィアまで、お気軽にご相談ください。

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