組織における「意識改革」の重要性とは?意識改革のメリット、成功させるためのポイントを解説

企業における課題を解決したり、組織力を向上させようとしたりする際に「社員の意識を変える」ことを目標にする場合があります。たとえば、業績や生産性、コンプライアンスなど、企業が直面しているさまざまな経営課題の背景に「企業の目指す方向に社員の意識が向いていない」という要因がある場合は、社員の意識が変わることが課題の解決につながるでしょう。しかし意識とは本来目に見えないものであるばかりか、そもそも科学的な意味合いでは解明すらされていないものです。
本記事ではそもそも意識とは、そして意識改革とはどのようなものか、なぜ意識改革を行うのか、さらに、意識改革を行った際のメリットや成功のポイントについて解説します。

意識改革とは

企業における意識改革には、個人の行う意識改革と企業の行う意識改革の2種類が存在します。

個人の行う意識改革は、個人が企業の中で仕事を行う上での考え方や態度を変化させるという意味です。対して企業の行う意識改革は、企業が目標を達成するために企業としての考え方や価値観を変容させることです。

後者に関していえば、いくら経営側が意識を変えたとしてしても、社員が変わらなければ企業の意識が変わったとは言えず、目標を達成することもできません。つまり企業の意識改革を実現するには、経営側が社員に働き掛けて個人の意識改革を促す必要があるのです。

なお、「意識」とは脳科学でも心理学でもほぼ解明されていない概念ですが、意識改革の文脈における意識は、「物事に対する認識」とほぼ同義です。

組織における意識改革の目的と効果

企業組織が意識改革に取り組むときには、以下の例のように何らかの経営課題の解決といった目的があります。

<企業が意識改革に取り組む目的の例>

  • 会社としてビジョンや目標を達成するため
  • 収益拡大やコストカットのため
  •  働き方を見直すため
  • 従業員の生産性を向上させるため
  • 業務効率を図るため

しかし、ここで企業が変えようとしている「意識」とは形のあるものではありません。それではなぜ企業は目に見えない「意識」を改革しようと考えるのでしょうか。
企業は、目的の達成に向けてさまざまな施策(インプット)を実施し、その結果(アウトプット)を確認した際に思うような成果が見られなければ、その背後にある社員の意識(スループット)に問題があると推察します。そこで意識改革の必要性が認識されるのです。

問題は、経営が意識改革を働きかけようとしている社員(従業員)自身は、往々にして意識を改革する必要性など感じていないということです。意識改革に取り組む際に経営者のみが先走ってしまうと、従業員の気持ちが取り残されてしまい、モチベーション低下につながってしまうこともあります

例えば、従業員の意識改革につなげるために、経営が従業員の行動を管理・制限するような施策を打ち出すことがあります。具体的には、売上向上や生産性向上に向けたノルマの設定や、コストカットやセキュリティ管理などに向けたさまざまなルールの制定、働き方改革に向けた勤務時間管理の厳格化などです。こういった施策を打つことで、表面上は成果が出たように見えるかもしれません。しかし、納得感がないまま従業員が経営の指示に従うことは「面従腹背」の状態を生み出しやすく、本来の意味での意識改革は達成されません。一時的には効果があがっても、長期的には停滞するでしょう。

企業が意識改革に取り組む際は、現状における従業員の行動や感情に着目し、従業員が意識改革の必要性を認識できるようなコミュニケーションを行うことが必要です。従業員自らが「これが大切だ」「これをやるべきだ」と感じて、目の前にある仕事や課題に対する認識を変えたのであれば、その効果は長期的に持続し、企業は意識改革の目的(経営課題の解決)を達成することができます。

次に、意識改革を成功させるためのステップを具体的に見ていきましょう。

意識改革を成功させるために

意識改革を成功させるためには、企業は何に気をつけるべきなのでしょうか。緊急時の意識改革と、継続的な意識改革とに分類して解説します。

緊急時に意識改革を行う場合

緊急時は多くの場合、経営者も社員も危機状況に対する認識が一致しており、問題や課題をあらためて説明する必要がありません。たとえば災害発生時や、企業不祥事が報道された際などがわかりやすい例です。

緊急時は、「危機に対応しなければならない」「この状況から脱しなければならない」という点において経営と社員の意識が統一されているため、企業が意識改革を行うタイミングとして適しています。しかし、危機が去ったら社員の意識が元に戻ってしまう恐れもあり、本質的な意識改革とは言えない点に注意してください

緊急時に意識改革を行う場合のステップを解説します。

  1. 現状の把握や課題の整理
    ゴールとなる「企業にとっての理想的な状態」を明らかにするために、現状把握を行います。ここでは、現時点で自社の解決すべき事柄、直面している問題を洗い出します。
  2. 組織としての具体的な施策と目標を決める
    ゴールを設定したら、そこに到達するための具体的な施策と目標を決めます。漠然とした目標設定は避け、モニタリング可能な数値目標を設定しましょう。
  3. 意識改革の目的と施策を従業員へ明示する
    会社一丸となって意識改革を行うために、意識改革に取り組む背景や施策の内容を従業員に明示します。ここで拙速に、従業員に何らかの行動を強制したり制限したりすると従業員のモチベーションが低下するため要注意です。従業員が納得して自分事として取り組めるよう、丁寧なコミュニケーションをこころがけましょう。
  4. 経営層やマネジメント層が率先して意識改革を実施、従業員のフォローをする
    まずは手本となるべく、経営層やマネジメント層が率先してゴールに向けて求められる行動をとっていきます。従業員に対する施策は、まず管理職向け、次いで一般社員向けという順に実施していきます。具体的な施策として、社内メディアを通じた経営からの情報発信や、上司から部下へのコミュニケーションの他、研修や意見交換会などの対面イベントなども活用しましょう。
  5. モニタリングしつつ、PDCAを回し、意識改革を組織に浸透させる
    「2」の段階で決定した目標数値をモニタリングし、結果に応じて施策の改善を重ねていきます。ゴールに向けて求められる行動を繰り返すことで習慣化し、最初は意識的だった行動を無意識にとれるよう定着させていきます。

 

継続的に意識改革を行う場合

本質的な意識改革は、継続的に行う必要があります。緊急事態の対応と継続的に実施する意識改革とは質が異なります。現在のようなVUCA(先行きが不透明で先々の予測が困難)の時代の中で従業員に働きかけを行い、企業全体として意識改革を成功させるためには、従業員に対する十分な「動機付け」が必要です。

緊急事態の際は、危機への対応が必要ということが明確になっているため、意識改革の必要性を従業員が理解しやすい状況です。しかしそうでない場合には、従業員が自ら意識改革の必要性を認識できるようなストーリーやナラティブが必要です。「ナラティブ(narrative)」は「ストーリー(story)」と似ていますが、ストーリーは企業主語の物語を意味している一方、ナラティブは社員主語の物語であるという点で異なります。

また、「(意識改革を行った先の)未来はこうあるべきだ」と問題解決的に提唱するのではなく、「このような形の未来もありえるのではないか」という推測を提示し、問いを創造する「スペキュラティブデザイン」の方法論も有効です。組織の中で当たり前の前提となっている考え方や価値観に対して問いを立てるということは、これまでとは別の視点を取り入れることにつながります。また、肯定と否定とに分かれて議論をするディベートや、1つのテーマについてさまざまな視点から考える「シックスハット法」なども、それまでの前提に対して問いを立てることにつながり、意識改革のきっかけとして有効な方法です。

継続的な意識改革に取り組む上では、インターナルコミュニケーションの手法も必要となります。特に大規模組織では、組織に浸透させたいキーワードを多用したり、意識改革を目的とした集合研修を実施する等で一見取り組みの効果が出ているように見える場合がありますが、実際には従業員が納得感のないままそれらのキーワードや研修を受け入れていて、内心では抵抗を感じている場合もあります。その場合、研修中や上司の前では求められる行動を取るものの、通常業務に戻ればすぐに従来の行動パターンに戻ってしまいます。

研修や対話などの施策とあわせて、社員の動機づけにつながるストーリーやナラティブに基づくコミュニケーション施策を、社内メディアや対面イベントなどさまざまなチャネルで同時並行的に行うことが重要です。そのうえで、緊急時の意識改革の「5」と同様に、行動の定着に向けた習慣化を図ります。

まとめ

企業が意識改革に取り組む際にもっとも重要なのは、従業員の感情や気持ちです。企業の目指すゴールのみが強調されて従業員の感情や気持ちが置き去りになってしまうと、従業員にとって企業の意識改革は「経営が押し付けてくること」と認識され、そのゴールを自分事として考えることができなくなります。その結果、従業員が意識改革の必要性を感じられないだけでなく、働く上でのモチベーション低下にもつながる場合があります。企業の意識改革を進める際には、きちんと従業員の声に耳を傾け、従業員の感情や気持ちを反映した施策が実施できる社内体制が作れているかどうかを確認するようにしてみてください。

意識改革は、企業が課題を解決し、目標を達成し、生産性や業務効率を高めていくために必要なプロセスです。意識改革に取り組む際には、社員が意識改革のゴールに納得し、自分事と感じられるよう、「なぜいま意識改革が必要なのか」その理由や背景をはっきりと伝えるとともに、長い時間をかけて取り組んでいきましょう

意識改革についてよくわかっていなかったので理解してから実践したい、意識改革を行いたいが具体的に何から始めていいかわからない、意識改革を計画したものの実施時に失敗したことがあるなど、意識改革について不明点や困りごとがありましたら、ソフィアまでお気軽にご相談ください。

よくある質問
  • 意識改革の重要性とは何ですか?
  • 個人の行う意識改革は、個人が企業の中で仕事を行う上での考え方や態度を変化させるという意味です。対して企業の行う意識改革は、企業が目標を達成するために企業としての考え方や価値観を変容させることです。企業の意識改革を実現するには、経営側が社員に働き掛けて個人の意識改革を促す必要があります。

  • 意識改革の効果とは何ですか?
  • 企業が意識改革に取り組む際は、現状における従業員の行動や感情に着目し、従業員が意識改革の必要性を認識できるようなコミュニケーションを行うことが必要です。従業員自らが「これが大切だ」「これをやるべきだ」と感じて、目の前にある仕事や課題に対する認識を変えたのであれば、その効果は長期的に持続し、企業は意識改革の目的(経営課題の解決)を達成することができます

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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