インターナルコミュニケーション

インターナルコミュニケーションとは?目的・施策・成功事例を徹底解説【2025年最新版】

目次

企業を取り巻く環境が激変する中、「インターナルコミュニケーション(社内広報)」の重要性がかつてないほど高まっています。テレワークの普及や人材の流動化が進む現代において、単なる情報伝達にとどまらず、組織のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長を支える経営戦略として注目されています。しかし、多くの企業が「施策がマンネリ化している」「効果が見えにくい」といった課題を抱えているのも事実ではないでしょうか。

この記事では、インターナルコミュニケーションの基礎的な定義から、人的資本経営との関連性、弊社ソフィアが実施した2024年の最新実態調査に基づくトレンド、そして具体的な施策やツール比較までを体系的に解説します。組織の「熱量」を高め、ビジネスの成果につなげるためのヒントとしてご活用ください。

インターナルコミュニケーション(社内広報)とは

まずは、インターナルコミュニケーションの定義や目的など基本的な点を解説します。多くの企業で取り入れられつつある活動ですが、広報というと対外的なものをイメージしやすく、よくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、現代のビジネス環境における定義とその本質について深掘りしていきましょう。

インターナルコミュニケーション(社内広報)の定義

インターナルコミュニケーションとは、社内やグループ会社内など、同一の組織内における広報活動のことです。「社内広報」や「インナーコミュニケーション」とも呼ばれ、社内報や社内セミナー、対話集会などを通して、社内におけるコミュニケーションを活性化する活動全般を指します。

こうした活動は、組織の価値観や文化に対する社員の知識・理解を深めることにつながります。会社のビジョンを外部に向けて主体的に発信することのできる社員を育成し、組織全体を良い方向へと導く取り組みとして、インターナルコミュニケーションが用いられます。

社内広報とインターナルコミュニケーションの違い

両者は同義として扱われることも多いですが、厳密には情報の「方向性」と「目的」に違いがあります。

項目|社内広報 (Internal PR)|インターナルコミュニケーション (Internal Communication) 主な方向性|トップダウン(経営→社員)|双方向・多方向(経営⇔社員、社員⇔社員、部署⇔部署) 主な目的|情報の正確な伝達、周知徹底|相互理解、対話、行動変容、エンゲージメント向上 重視する点|「伝える」こと(Information)|「伝わる・つながる」こと(Engagement) 主な手段|社内報、通達、掲示板|1on1、SNS、ワークショップ、タウンホールミーティング

換言すれば、現代の組織においては、単に情報を伝えるだけでなく、対話を通じて納得感を醸成し、社員の主体的な行動を引き出す「インターナルコミュニケーション」の視点が不可欠となっているのです。

インターナルコミュニケーションの目的

インターナルコミュニケーションの目的は大きく3つに分けることができます。そのうちの2つは役員と社員との相互理解に関わっています。たとえば、企業理念や経営ビジョンなどは一般的に経営陣が中心となって決定されますが、すべての社員に落とし込まれており、日々の業務に反映できているかというと、必ずしもそうではないでしょう。

1つ目の目的として、「上から下(トップダウン)」のコミュニケーションを活性化させることで、そのような課題に対応することができます。

一方で、現場の要望を経営陣に知ってもらい環境改善につなげたいと考える社員もいるでしょう。そうした状況で、現場からトップに声が伝わりやすくなるように「下から上(ボトムアップ)」のコミュニケーションを機能させることが、インターナルコミュニケーションの2つ目の目的です。

3つ目は、部門間・社員間での連携強化です。会社が大きくなればなるほど、別の部署でどのような取り組みが行われているのかが見えにくくなります。

小規模な会社でも、社員ごとに携わっている業務が異なれば、同僚が何をしているのか、正確に説明はできないものです。社内の情報発信が活性化していると、会社全体の動きを理解しやすくなるメリットがあります。また、個々の情報発信力が高くなると成功事例や失敗事例を全社的に共有することができ、業務の効率化につながる可能性もあります。他部署の社員どうしで意見交換が行われ、思いがけない新事業の企画が生まれることもあるかもしれません。

このように、インターナルコミュニケーションはさまざまなレベルでの社内コミュニケーションの活性化を目的としています。

1. トップダウン(理念・戦略の浸透)

1つ目の目的として、「上から下(トップダウン)」のコミュニケーションを活性化させることで、そのような課題に対応することができます。経営層が描くビジョンや戦略を、現場の社員が自分の業務と結びつけて理解できるレベルまで翻訳して伝える機能です。経営陣の言葉がそのまま現場に届くことは稀であり、間に立つミドルマネジメントや広報部門が、現場のコンテキストに合わせて「翻訳」することで、初めて戦略は実行可能なタスクへと変換されます。

2. ボトムアップ(現場の声の活用)

一方で、現場の要望を経営陣に知ってもらい環境改善につなげたいと考える社員もいらっしゃるでしょう。そうした状況で、現場からトップに声が伝わりやすくなるように「下から上(ボトムアップ)」のコミュニケーションを機能させることが、インターナルコミュニケーションの2つ目の目的です。これにより、経営陣は現場のリアルな課題や、イノベーションの種となるアイデアを吸い上げることが可能になります。特に変化の激しいVUCA時代においては、現場の些細な違和感や気づきが、企業の危機回避や新規事業のヒントになることが多々あります。

3. 水平連携(部門間シナジーの創出)

3つ目は、部門間・社員間での連携強化です。会社が大きくなればなるほど、別の部署でどのような取り組みが行われているのかが見えにくくなります。小規模な会社でも、社員ごとに携わっている業務が異なれば、同僚が何をしているのか、正確に説明できないものです。

社内の情報発信が活性化していると、会社全体の動きを理解しやすくなるメリットがあります。また、個々の情報発信力が高くなると成功事例や失敗事例を全社的に共有することができ、業務の効率化につながる可能性もあります。他部署の社員どうしで意見交換が行われ、思いがけない新事業の企画が生まれることもあるかもしれません。

このように、インターナルコミュニケーションはさまざまなレベルでの社内コミュニケーションの活性化を目的としています。

ここまで、インターナルコミュニケーションの定義と3つの目的についてご説明してきました。では、なぜ今、これほどまでにインターナルコミュニケーションが重要視されているのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきましょう。

インターナルコミュニケーションはなぜ重要になったのか?

インターナルコミュニケーションは、昨今多くの企業で重要視されています。なぜ、かつてなく重要性が高まっているのか、その理由はどこにあるのでしょうか。4つの要素に切り分けて、要素ごとに詳しく見ていきましょう。

注意すべきは、既存事業の社員が劣位に立たされ、経営と距離がうまれてしまうと、既存事業の収益性が低下し、新規事業に必要な財務基盤が壊れてしまう可能性があります。既存の高収益な事業をより収益性を高めながら、挑戦的な新規事業に攻めていくというメッセージは、それぞれの立場の従業員に正確に伝えることは実はかなり難しいことです。

なぜならば、個別にターゲットを定義し、継続的なコミュニケーションを通じて、人材要件や期待する仕事の詳細を明確に伝えなければなりません。さらに、コミュニケーションテクノロジーを駆使するだけでなく、事業全体のバランスの難しさを理解し、相手、内容、場所などの詳細を考慮し、設計した上で伝えることがもっとも重要だからです。

しかしながら、現実世界をいくら追い求めようとしても、限界があることを認識しなければなりません。情報伝達はAIやデジタルに任せて、むしろ、新たな視点を変え、現実を創り出すことや現実世界への発信に焦点を当てることが求めらています。

現在のインターナルコミュニケーションは、パーソナライズされたメッセージや表現方法、伝える媒体、場所など事業の複雑性に伴って、詳細かつ複雑になっており、且つ人間を媒介とするコミュニケーションは、新たな視点を変え、現実を創り出すこと変化するでしょう。

事業変化と複雑性

現代のビジネス界では、「両利きの経営」と呼ばれる考え方が普及し、その重要性が高く評価されています。この経営手法では、新規事業の推進を担う人材と既存事業の継続に貢献する人材の両方に期待をかけます。

多様化する働き方との関係

近年、企業においては、リモートワークが一般化し、フレックスタイム制が普及してきています。これによりワークライフバランスを追求し、個人の好きな場所や時間で自由な働き方が可能になり、企業と社員の関係性に変化が生じています。

従来の企業においては、同じ場所に出社し、一体感を持って働くことが重要視されていました。しかし、多様な働き方が認められるようになる中で、社内コミュニケーションにおいては、ツールの活用が必要不可欠になってきています。では、ツールの導入により、以前より円滑なコミュニケーションが可能となったでしょうか?生産性は向上したでしょうか?柔軟な働き方や雇用関係を得るためにツールを導入することで、生産性やコミュニケーションの欠如が発生することは理想的な状況ではありません。

現在のビジネスにおいて、人と人のコミュニケーションを円滑に行うことが生産性の向上につながり、多くの企業が、必要なツールやシステムを適切に活用しています。これらの状況下でのコミュニケーションスタイルは、過去とは異なるものであるため、求められるスキルやコミュニケーション方法を検討する必要があります。

日本社会は、もうかつての阿吽の呼吸や以心伝心を取り戻すことはできないでしょう。しかし、強い中心や仕組みを構築するのではなく、各人が根底でつなぐような概念が保証されれば、個々の集団が自由に動いているはずなのに、おのずと抑制が効くという創造的なプラットフォームになりうる可能性があります。そして、各人が根底でつなぐような概念というものは、企業哲学や理念、ビジョンにあたります。精巧な制度や指標を構築するのではなく、今一度自社がどんな価値を生み出しているのかを再検討し、そしてどんな哲学で経営しているかを問い直す方が早道だと思われます。

人財の仕事観/キャリア観の変化

長年、日本は米欧中など諸外国とは異なる終身雇用制度を維持してきましたが、現在ではこの制度も変化し、転職が常態化しています。今日では、世界の諸外国を含め、40歳前後までに転職を繰り返すことで、キャリアを形成し、自分の市場価値と収入を向上させることが一般的になりました。

転職活動は、職歴や実績がなければ雇用されず、また給与も上がりません。これからは、若年層が早いうちから転職を始め、年々専門性や自己の競争力を高めていくことが必要になってくるでしょう。

企業側から言えば、退職するまで所属社員が増えるほど、社内コミュニケーションのコストは増加する傾向にあります。また、国際関係、ジェンダー、雇用関係などの一般的な価値観が変化しており、企業や組織自体が、独自の言説や隠れた意味を持つハイコンテクストなコミュニケーションでは通用しなくなってきています。そのため、現状においてはローコンテキストなコミュニケーションや、論理的な説明が求められるようになってきているのです。

人的資本経営とインターナルコミュニケーション

2020年代に入り、企業の競争力の源泉を「人材」に見出し、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営(Human Capital Management)」が世界的な潮流となっています。経済産業省による「人材版伊藤レポート」や、人的資本の情報開示に関する国際規格「ISO 30414」の普及により、企業は社内外に対して、組織文化や従業員エンゲージメントの状態を可視化・開示することが求められるようになりました。

インターナルコミュニケーションは、この人的資本経営を実践するための「OS(基本ソフト)」のような役割を果たします。従業員エンゲージメントの向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、コンプライアンス意識の醸成など、人的資本の価値を高めるあらゆる施策の根底には、健全なコミュニケーションが存在するためです。投資家や求職者などのステークホルダーも、企業の「内側の強さ」を評価基準として重視し始めています。

ここまで、インターナルコミュニケーションが重要になった背景をご説明してきました。では、インターナルコミュニケーションを活性化させることで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきましょう。

インターナルコミュニケーション活性化のメリット

インターナルコミュニケーションを戦略的に活性化させることで、企業はどのような具体的メリットを享受できるのでしょうか。単なる「仲良しクラブ」を作るのではなく、経営課題を解決するための機能として期待される効果を解説します。

インターナルコミュニケーションは重要な触媒

中途採用が活発化するということは、組織内における人の入れ替わりが激しくなるということです。企業は、自社の求める人材を効率良く獲得・維持するために、これまで以上に情報発信に時間やコストを費やすようになっています。

以前は、大企業のキャリアであれば、ゼネラリストが重宝されていました。しかし、現在では、現場で必要とされる技術や知識が複雑化しているため、専門性を持った人材が求められています。さらに、縦に深い専門性を持つスペシャリストであるI型やT型ではなく、 自身が専門性と幅広い知識を持ちながら、他の分野の人材ともつながり仕事を進められるH型やN型と呼ばれる人材が求められています。

スキルのある人材を奪い合うような状態が続くなかだからこそ、企業は自社の価値観や考え方を、丁寧に発信するようになったのです。自社に合った人材を獲得するための触媒として、インターナルコミュニケーションは重要な役割を担っているのです。

生産性の向上_いかに早く正確に伝わるか

インターナルコミュニケーションを強化することは、生産性の向上につながります。情報共有が進むことで、個々の業務進捗の把握に役立ち、迅速かつ適切な対応がとりやすくなるほか、社内の風通しが良くなると他部署との連携体制が築きやすくなります。部署をまたいだプロジェクトの進捗管理などもスムーズになるでしょう。

また、インターナルコミュニケーションによって、判断の拠り所となる大きな方向性が明確になると「どこまでは変えていいのか、どこからは変えてはいけないのか」を従業員単位で判断できるようになります。組織のアジリティが高まり、スピーディーに判断を下すことができる、強い組織を目指せるでしょう。

社内外の情報マネジメント_組織内の共通言語や共通認識を増やす

情報を適切に扱い、社内外をマネジメントできるようになるのも、インターナルコミュニケーションのメリットです。日々変化する経営状況や外部環境を社員に正しく知らせたり、メディアによる報道の真偽を社内に向けて発信したりなど、インターナルコミュニケーションによって情報面からのマネジメントが適切に行えるようになります。これにより、素早い意思決定につながるでしょう。

さらに昨今、組織や事業が複雑化し、従業員やパートナーの職務も多様化しています。社内外の情報を可視化してスムーズに共有できるようにすることは、部門間・社員間のコンフリクト減少につながり、組織内の共通言語や共通認識を増やすことになります。

最近では、コミュニケーションツールをデジタル空間上に集約し、マルチデバイスでアクセスできるようにした「デジタルワークプレイス」が広がってきています。社内ポータルサイトやイントラネット、社内SNS、動画等、デジタルワークプレイスによってインターナルコミュニケーションを活性化すると、このメリットを享受しやすくなります。

組織風土の醸成_関係性を産み、関係性は規範と風土を産む

インターナルコミュニケーションには、組織風土を醸成するという役割もあります。ただし、理念やビジョンを単に掲げるだけでは、風土が作られるレベルにまで達しません。企業の理念や変革のビジョンを実現していくためには、まずは社員の理解度を向上させ、そこから行動変容へと結び付くようなコミュニケーションの設計を慎重に行わなくてはなりません。

まずは理念やビジョンを、社員が理解・共感できるような言葉に噛み砕いて「社内報」などのメディアを活用し浸透を促しましょう。これらを1人ひとりの社員に繰り返し印象付けることで、組織風土は醸成されるのだと意識することが大切です。単なる掲示ではなく、理解と共感を通じたコミュニケーションこそが、関係性を産み、関係性は規範と風土を産むのです。

ガバナンスやセキュリティなどに対する意識の向上

近年、コンプライアンスの遵守は非常に重要な問題となっています。また、機密情報や最先端の技術などを扱う企業にとってはセキュリティ対策も避けては通れません。こうした観点からも、インターナルコミュニケーションは有効です。

実務に直結させて理解するのが難しいコンプライアンスや、日常業務の中であまり意識することのないセキュリティですが、具体的な事例や注意点を発信することで、身近なこととして捉えやすくなります。コンプライアンスやセキュリティに対する意識が、社内にいまいち浸透していないという課題がある場合、定期的に社内報などでPRしてみるとよいでしょう。

ただし、意識改革に取り組む際に経営者のみが先走ってしまうと、従業員の気持ちが取り残されてしまい、モチベーション低下につながってしまうこともあります。従業員自らが重要性を感じて前向きに意識向上できるように、研修や対話などの施策や、社内メディアなど、工夫を凝らしながら多角的に取り組むことが重要です。

離職率の低減/動機付け 心が動けば体も動く

インターナルコミュニケーションが活性化するほど、離職率が低くなる傾向があると言われています。インターナルコミュニケーションによって、タテ・ヨコ・ナナメの意見交換が活発になった企業では、従業員の不満が解決されやすく、良好な職場環境が実現されます。経営陣と従業員との考え方のずれや部署間での認識の相違を解消できれば、従業員の満足度を向上させることにもつながります。

このような理想的な状態に持っていくために重要なのは、組織が目指す方向について、従業員一人ひとりに共感してもらうことです。従業員は、共感して初めて、積極的にビジョンを実践します。各々がビジョンを実践するようになれば、組織には協働意識が芽生え、満足度の高い環境が完成します。

コミュニケーションスキル向上

インターナルコミュニケーションは、ビジョンの浸透だけでなく、従業員同士、また上司・部下間の信頼関係構築を促進することに役立ちます。心地いい組織文化が生まれることで、コミュニケーションが活発化していくでしょう。

経営層や管理職は、企業のビジョンに関するメッセージを効果的に発信するようになり、現場の従業員は、建設的なフィードバックや活発な意見交換を行うようになります。企業と社員の相互理解が深まれば、組織としてのコミュニケーションスキルが継続的に高まることが期待できます。

ここまで、インターナルコミュニケーション活性化のメリットについてご説明してきました。では、実際の現場ではどのような課題が起きているのでしょうか。次のセクションでは、最新の調査結果から見えてきた実態をご紹介します。

2024年インターナルコミュニケーション実態調査から見る課題

インターナルコミュニケーションの重要性が叫ばれる一方で、現場ではどのような課題が起きているのでしょうか。弊社ソフィアが2024年に実施した「インターナルコミュニケーション実態調査」(対象:従業員数1,000人以上の企業勤務者496名)の結果から、興味深い実態が浮き彫りになりました。

社員に戦略が響かない:共感はわずか「1割」の現実

弊社ソフィアの調査によると、自社の経営目標や戦略に対して「共感している」と回答した社員は、わずか約1割にとどまることが判明しました。多くの企業が経営ビジョンや中期経営計画を社内報やイントラネットで発信していますが、それが社員の「自分ごと」になっていない現状があります。

この「共感の欠如」は、社員が日々の業務の意味を見出せず、組織全体のパフォーマンス低下や離職につながる深刻なリスク要因です。言い換えれば、情報は伝達(Transmit)されているが、伝わって(Communicate)いない状態と言えるでしょう。

1on1ミーティングのパラドックス:実施率1位だが効果に疑問?

パーソル総合研究所2025年調査 によれば、社内コミュニケーション促進の施策として最も多く実施されているのは「1on1ミーティング」でした。しかし同時に、「促進に効果的でないと感じる取り組み」としても1on1が上位に挙げられるという、矛盾した結果(パラドックス)が出ています。

これは、1on1が「制度」として導入されたものの、上司側のスキル不足や目的の曖昧さにより、単なる業務進捗確認の場となっていたり、部下にとって心理的負担の場となっていたりする可能性を示唆しています。形だけの対話の場を設けるだけでは、コミュニケーションは活性化しないことがデータからも裏付けられています。

コミュニケーション課題の構造:縦も横も「分断」

課題を感じる対象として、最も多かったのが「部門間」(58%)、次いで「部門内_上司と部下」(51%)でした。組織の縦割りによる「サイロ化」が進み、隣の部署が何をしているかわからないという横の分断と、上司と部下の心理的距離が開いている縦の分断が同時に進行しています。これにより、組織全体のシナジーが生まれにくい状況に陥っています。

この調査結果は、これからのインターナルコミュニケーションには、単なる「ツール導入」や「制度設計」だけでなく、「対話(Dialogue)の質」「教育(Education)」「適切なツール(Tools)」という3つの柱をバランスよく強化する必要があることを示しています。

ここまで、調査から見えてきた課題についてご説明してきました。では、このような不確実な時代において、インターナルコミュニケーションはどのような役割を果たすのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきましょう。

不確実な時代に必要不可欠なインターナルコミュニケーション(社内広報)

従来型の組織において、経営資源を動かすことができるのは組織の中で上位の階層にいるメンバーのみでした。下位の階層にいるメンバーが変化を察知した場合には、それを組織のラインに沿って報告・上申し、対応に必要な資源を得るための承認を得る必要がありました。また、トップから指示を出して現場を動かす際も、組織の階層ごとに順次、指示を下ろしていく必要がありました。しかし、いずれもアクションまでのリードタイムが長すぎるため、アジャイルな(機敏な)対応とは言えません。

昨今のビジネスは、不確実な状況に置かれています。日本では、長らく正社員の終身雇用制が一般的なものでしたが、近年では転職する人の割合が増え、雇用形態も多様化しています。そのような中で、社会にはさまざまな脅威があり、先の見通しが立たないような外的要因に企業は常時振り回されるようになっています。

この不確実な時代を乗り切るために、アジリティの高い経営を実現することが求められます。仕事に必要な情報がすべての社員にオープンに共有されており、権限委譲によって個人の裁量が高い、フラットな組織を作ることが理想的です。

さらに、現代のような不確実性の高い状況において、企業はジョブ型の人事制度を取り入れ、スキル重視の採用を行うように変化しています。今後もこの傾向は加速していくと考えられています。そのため、組織のアジリティだけでなく、コミュニケーション能力、生産性の向上などにもつながるインターナルコミュニケーションは、日本企業にとってますます重要なものになると考えられます。

ここまで、不確実な時代におけるインターナルコミュニケーションの重要性についてご説明してきました。では、具体的にはどのような施策があるのでしょうか。次のセクションで詳しくご紹介します。

インターナルコミュニケーション(社内広報)企業での一般的な施策

インターナルコミュニケーションの活動は具体的にどのようなものなのか、その例を見ていきましょう。現代の施策は、デジタルとアナログを適切に組み合わせ、社員の属性や行動様式に合わせてチャネルを最適化することが鍵となります。

対話集会(タウンホールミーティング)

対話集会は、タウンホールミーティングとも呼ばれ、経営陣と社員とが情報を共有する場として設けられます。外資系企業ではインターナルコミュニケーションの一環として以前からさかんに取り組まれています。年度目標の確認や業績結果の共有などに使われることが多く、テレビ会議などを利用して全社員が参加するケースもあります。経営陣から社員に対する情報発信の機会としての役割を果たすのが一般的ですが、質疑応答やグループ討論の場を設けることで、双方向の意見交換が行われるとなお良いでしょう。

社内報

社内報とは、企業や組織が社内向けに発行する情報誌やニュースレターのことを指します。社内報は、従業員や役員、関連会社など、企業内にいる人々に向けた情報発信の手段として利用されます。社内報は多くの人に閲覧されるものであるため、見た目の美しさが重要だと思われがちです。しかし、その役割や目的、対象者に合致している内容であれば、デザインが美しくなくても、ターゲット層にしっかりと伝えることができます。近年では、速報性と双方向性を重視した「Web社内報」や、スマホアプリで閲覧できる形式への移行も進んでいます。

社内ポータル・イントラネット

社内ポータルやイントラネットとは、企業内部で利用される、社員向けのWebサイトのことです。社内で使用する情報や知識を共有する場所であり、社員が必要な情報やドキュメントにアクセスすることができます。また、チャットやメールなどのコミュニケーションツールを通じて連絡を取り合うことも可能です。一般的には、社員の業務に必要な情報や規則、福利厚生制度、社内イベントの情報などが掲載されています。また、グループウェアとしても機能し、スケジュール管理やタスク管理、プロジェクト管理などの業務支援機能が備わっていることもあります。

ビデオコミュニケーション(YouTube、社内放送)

動画を利用した情報発信では、勉強用コンテンツとして社内向けの放送やYouTubeを利用する企業が増えています。たとえば、対外に向けて今後発表される新たなサービス内容や業務に関わる最近の法令改正など、全社員に周知しておくべき事柄を動画にして配信するケースもあります。文字よりも情報量が多く、経営者の「温度感」や「人柄」を伝えやすい点がメリットです。

SNS(Facebook、Instagram、ChatWork、Slack、Teams等)

企業によっては、SNSをコミュニケーションツールとして日常的に利用しています。FacebookやInstagramなどは対外向けの広告として利用されることの多い情報発信ツールですが、新サービスなどの自社情報にキャッチアップできるよう社員にもフォローを勧めるケースがあります。また、ChatWorkやSlack、Microsoft Teamsなどのチャットツールも社内でのコミュニケーションのために使われています。ビジネス向けに開発されたチャットツールはプロジェクト単位でのスケジュール共有などに優れ、スピード感のある情報伝達ができるようになります。

社員参加型イベント、社内表彰

社員参加型のイベントや社内表彰の制度も、インターナルコミュニケーションとして有益です。イベントでは上司や部下の仕事以外の顔を知ったり、普段の業務では関わりのない社員とのリレーションを築いたりすることができるため、社内におけるタテヨコのつながりを深めるのに優れています。社内表彰は、目標を達成した社員をねぎらうために毎年1〜2度程度行われることが多くみられます。企業の経営理念やビジョンへの参画意識を高めることができるだけでなく、表彰者は社長との食事会など特別なイベントに参加できるような場合もあり、日常とは異なる交流の場が設けられます。

現場訪問

経営陣が現場を訪問することで、士気の高揚や課題発見につながります。同時に現場の社員とランチ会が行われたり意見交換会が開かれたりすることもあり、問題提起などの機会となっています。トップが現場の空気を直接肌で感じることは、経営判断の精度を高める上でも重要です。

GoodJobカード、サンクスカード(ピアボーナス)

素晴らしい活躍をした社員を称える「GoodJobカード」や、お世話になった同僚に感謝の気持ちを届ける「サンクスカード」などを取り入れる制度です。日頃はなかなか直接伝えることのできない気持ちを形に表すことで、人間関係を円滑にし、より良い職場環境を築く目的があります。最近では、これに少額の成果給を付与する「ピアボーナス(Uniposなど)」として運用する企業も増えています。称賛を可視化することで、心理的安全性の高い組織風土を作ることができます

日報

日報もインターナルコミュニケーションの一種です。部下が日々どのような仕事に取り組み、どのような成果を出しているのかを上司が知る手段として、また、現場の状況を本部の社員が知る手段として利用されています。最近では、日報をチーム全体で共有し、相互にコメントし合うことでナレッジシェアやメンタルケアにつなげる運用も見られます。

満足度調査、アンケート(パルスサーベイ)

多くの企業が、定期的に満足度調査やアンケートを行っています。直接は言いにくい業務上の不満や問題を無記名のアンケートに記載することで、本部に届けることができ、働きやすい環境の構築につながります。近年では、半年に一度の大規模調査だけでなく、月次や週次で簡易的な質問を行う「パルスサーベイ」により、リアルタイムで組織のコンディションを把握し、迅速に対策を打つ手法も一般的になっています。

ここまで、インターナルコミュニケーションの具体的な施策についてご説明してきました。では、これらの施策を支援するツールにはどのようなものがあるのでしょうか。次のセクションで詳しくご紹介します。

【2025年版】インターナルコミュニケーションツール比較と選び方

インターナルコミュニケーションを活性化させるためには、自社の課題に適したツールの選定が不可欠です。目的や組織の規模、風土によって最適なツールは異なります。ここでは、主要なツールをカテゴリー別に比較・解説します。

Web社内報・情報共有ツール

経営理念の浸透や、フロー情報として流れてしまいがちな「想い」を蓄積するのに適しています。

TUNAG(ツナグ):制度設計から運用までノーコードでカスタマイズ可能。称賛文化の醸成や日報、社内報など多機能で、現場のスマホ利用にも強いのが特徴です。1,300社以上の導入実績があり、店舗や工場などデスクレスワーカーが多い企業でも高い定着率を誇ります。

ourly(アワリー):「読まれる」ことに特化したUIと、どの部署が読んでいるかを可視化する分析機能が強みです。単なる情報発信ではなく、組織改善に直結させる運用が可能で、伴走支援も手厚い点が評価されています。

NotePM(ノートピーエム):マニュアルやナレッジ共有に特化した社内Wikiツールです。強力な検索機能を持ち、情報の属人化を防ぐのに適しています。フロー情報ではなく、ストック情報を整理したい企業に向いています。

ビジネスチャット・コラボレーションツール

日常的な業務連絡や、スピード感を重視したコミュニケーションに必須です。

Slack:外部連携(API)が豊富で、IT・開発系企業でのシェアが高いツールです。オープンなチャンネルでの雑談や、スタンプによる気軽なリアクション機能が、フラットな文化醸成に寄与します。

Microsoft Teams:Microsoft 365との連携が強力です。Web会議、ファイル共有、チャットが一元化されており、セキュリティ要件の厳しい大企業での導入が進んでいます。OutlookやSharePointとのシームレスな連携が強みです。

LINE WORKS:一般的なLINEと同じ操作感で使えるため、ITリテラシーに自信がない現場や店舗スタッフでも導入障壁が低いのが最大の特徴です。既読確認機能があり、安否確認などにも活用できます。

ピアボーナス・称賛ツール

感謝を可視化し、ポジティブなフィードバック文化を作ります。

Unipos(ユニポス):「貢献に対する称賛」と「少額のインセンティブ」を従業員同士で送り合うツールです。心理的安全性の向上や、数字に表れにくい「縁の下の力持ち」の貢献を可視化するのに非常に効果的です。

選定のポイント

ツール導入自体を目的にせず、「経営理念を浸透させたいのか(社内報系)」「業務効率を上げたいのか(チャット系)」「風土を変えたいのか(称賛系)」という目的を明確にし、既存ツールとの併用や統合も視野に入れて選定することが重要です。

ここまで、インターナルコミュニケーションツールについてご説明してきました。では、実際に成功した企業の事例にはどのようなものがあるのでしょうか。次のセクションでご紹介します。

インターナルコミュニケーションの充実を成功させた事例

以下では、インターナルコミュニケーションの具体的な事例をご紹介します。どちらも、インターナルコミュニケーションによって、組織の運営をより充実させられたという事例です。

株式会社ニチレイフーズの事例

株式会社ニチレイフーズは、「ハミダス(とらわれず、明るく)」を従業員のモットーに掲げ、社内外のさまざまな活動に結びつけています。このモットーをより推進するために、ソフィアは2017年、SharePoint Onlineでの「ハミダスWebサイト」の構築を支援しました。相互にコミュニケーションが取れるWebサイトです。社内で好評となり、現在では数多くのコンテンツが掲載され、ハミダス活動の活発な情報発信と交流の場となっています。将来的には、ニチレイフーズのポータルサイトのような位置づけに持っていくこと、ひいては、社外コミュニケーションの舞台にもなるようにサイトを改善していくことも視野に入れています。

エコラボ合同会社の事例

2019年に創立50周年を迎えた、グローバル企業のエコラボ。この50周年を記念するさまざまな施策の企画・実施を、ワンストップで支援しました。コンセプトは、「未来志向」「社員参加」「つながる」です。これらのコンセプトに基づき、50周年ロゴの制作、SharePoint OnlineやTeamsといったデジタルアプリケーションを使った社内コミュニケーションの促進、一つのラグビーボールをチームからチームへ全部門全拠点をパスしてつなぐ「One Team」を表現したビデオ制作などを実施しました。さらに、社員の成長ストーリーや、未来に向けたエコラボジャパンの想いをまとめた記念誌(デジタルブック)の作成なども実施しています。社員からはポジティブなコメントが多数聞かれました。

その他大手企業の最新事例(2024年)

株式会社リクルート(新規事業提案制度 Ring):入社1年目から参加できる新規事業提案制度「Ring」を通じて、部署や年次を超えた対話と協働を促進しています。提案プロセス自体が、経営陣からのフィードバックを受ける貴重な機会となっており、ボトムアップ型のイノベーション創出と、挑戦を称える風土醸成に成功しています。

トヨタ自動車株式会社(社内SNS+翻訳センター):グローバル拠点間での言葉の壁を解消するため、翻訳センターを設置し社内SNSと連携させました。これにより、日本と海外の社員同士がリアルタイムでやり取りできるようになり、国境を越えたスムーズな意思決定とナレッジ共有を実現しています。

ここまで、成功事例についてご紹介してきました。では、インターナルコミュニケーションの効果をどのように測定すればよいのでしょうか。次のセクションで詳しく解説します。

人的資本経営時代のKPI設定と効果測定

インターナルコミュニケーションの効果は「見えにくい」とされがちですが、人的資本経営の開示項目(ISO 30414など)に基づき、定量的な指標(KPI)を設定し、PDCAを回すことが求められています。効果測定なき施策は、投資対効果を説明できず、継続的な予算確保も難しくなります。

測定すべきKPIの例

単に「社内報の閲覧数」だけでなく、行動変容や組織の状態を表す指標を設定します。

1. アウトプット指標(活動量)

閲覧率、読了率、滞在時間 タウンホールミーティングの参加率、質問数社内SNSのアクティブユーザー数(MAU/DAU)、投稿数、リアクション数

2. アウトカム指標(成果・状態)

エンゲージメントスコア:パルスサーベイ等で測定する「会社への愛着」「貢献意欲」。最も重要な指標の一つです。

eNPS(Employee Net Promoter Score):「親しい友人に自社への入社を勧めるか」という推奨度。組織のロイヤリティを測ります。

理念浸透度:「経営ビジョンを自分の言葉で説明できるか」等のアンケート結果。

離職率:特に若手やハイパフォーマーの定着率。

3. ISO 30414(人的資本開示)に関連する指標

組織文化:エンゲージメント、定着率。

リーダーシップ:リーダーへの信頼度、リーダーシップ開発への参加率。

ダイバーシティ:多様な人材の登用状況、インクルージョンに関する意識調査結果。

弊社ソフィアの調査でも、効果測定を定期的に行っている企業ほど、施策の改善サイクルが回っており、コミュニケーション施策への満足度が高い傾向にあります。まずは測定可能な「小さな指標」から設定し、経営層へのレポートに盛り込むことから始めましょう。

まとめ

インターナルコミュニケーションを活性化するためには、前述した方法のようにさまざまな取り組みが考えられます。まずは何を目的とするのかを考え、その目的に応じた方法を選択しましょう。すでにインターナルコミュニケーションを実践している企業も、あらためて目的を明確にすることで社内のコミュニケーションをさらに活性化させることができるでしょう。

特に2025年以降は、人的資本経営の観点から「対話の質」と「戦略への共感」がより重視されます。ツールを入れることがゴールではなく、それを使って「どのような関係性を築き、どのような組織風土(カルチャー)を作りたいか」という設計図を描くことが、担当者に求められる最大の役割です。経営と現場、そして社員同士をつなぐ架け橋として、インターナルコミュニケーションの可能性は無限に広がっています。

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よくある質問
  • インターナルコミュニケーションと社内広報の違いは何ですか?
  • 「社内広報」は主に経営層から社員への一方通行(トップダウン)の情報伝達を指すことが多いのに対し、「インターナルコミュニケーション」は、社員同士の横のつながりや、現場から経営層への意見吸い上げ(ボトムアップ)を含む、双方向・多方向のコミュニケーション全般を指します。近年は、組織の活性化やエンゲージメント向上を目的とした後者の重要性が高まっています。

  • 施策がマンネリ化して社員に見てもらえません。どうすれば良いですか?
  • 「自分ごと化」できるコンテンツへの転換が必要です。経営情報をそのまま流すのではなく、「その戦略が現場の業務にどう関係するのか」を噛み砕いたり、現場で活躍する社員にスポットを当てたりする企画が有効です。また、動画やポッドキャストなど、媒体を変えてみるのも一つの手です。弊社ソフィアの調査でも、社員が共感できるコンテンツ作りが課題となっている企業が多いことがわかっています。

  • インターナルコミュニケーションの効果測定はどのように行えば良いですか?
  • 目的(KGI)に合わせてKPIを設定します。例えば「理念浸透」が目的であればアンケートによる理解度調査、「活性化」であれば社内SNSの投稿数やイベント参加率、「定着」であれば離職率やエンゲージメントスコアなどを指標にします。これらを定期的に測定し、経年変化を追うことが重要です。

  • 1on1ミーティングを実施していますが、効果が感じられません。
  • 弊社ソフィアの調査でも、1on1は実施率が高い一方で「効果がない」と感じる割合も高い施策です。原因の多くは、上司側のスキル不足や、目的が「業務管理」に偏っていることにあります。管理職向けの傾聴トレーニング(教育)や、対話のテーマ設定の支援を行うことで、質を向上させる必要があります。単なる「面談」ではなく「対話」の場にすることが重要です。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。