
2020.02.20
インターナルコミュニケーション(社内広報)とは?

目次
「インターナルコミュニケーション」は、企業が社内に向けて行う広報活動を意味します。インターナルコミュニケーションとは具体的にどのようなものなのでしょうか。多くの企業で取り入れられつつある活動ですが、広報と言うと対外的なものをイメージしやすく、あまりよくわかっていないという人もいるかもしれません。この記事では、インターナルコミュニケーションの目的や方法を見ていきましょう。
インターナルコミュニケーション(社内広報)とは
まずは、インターナルコミュニケーションの定義や目的など基本的な点を解説します。
インターナルコミュニケーション(社内広報)の定義
インターナルコミュニケーションとは、社内やグループ会社内など、同一の組織内における広報活動のことです。「社内広報」や「インナーコミュニケーション」とも呼ばれ、社内報や社内セミナー、対話集会などを通して、社内におけるコミュニケーションを活性化する活動全般を指します。
こうした活動は、組織の価値観や文化に対する社員の知識・理解を深めることにつながります。会社のビジョンを外部に向けて主体的に発信することのできる社員を育成し、組織全体を良い方向へと導く取り組みとして、インターナルコミュニケーションが行われます。
インターナルコミュニケーションの目的
インターナルコミュニケーションの目的は大きく3つにわけることができ、そのうちの2つは役員と社員との相互理解に関わっています。たとえば、企業理念や経営ビジョンなどは一般的に経営陣が中心となって決定されますが、すべての社員に落とし込まれており、日々の業務に落とし込めているかというと、必ずしもそうではないでしょう。1つ目の目的として、「上から下(トップダウン)」のコミュニケーションを活性化させることで、そのような課題に対応することができます。
一方で、現場の要望を経営陣に知ってもらい環境改善につなげたいと考える社員もいるでしょう。そうした状況で、現場からトップに声が伝わりやすくなるように「下から上(ボトムアップ)」のコミュニケーションを機能させることが、インターナルコミュニケーションの2つ目の目的です。
3つ目は、部門間・社員間での連携強化です。会社が大きくなればなるほど、別の部署でどのような取り組みが行われているのかが見えにくくなります。小規模な会社でも、社員ごとに携わっている業務が異なれば、同僚が何をしているのか、正確に説明はできないものです。社内の情報発信が活性化していると、会社全体の動きを理解しやすくなるメリットがあります。また、個々の情報発信力が高くなると成功事例や失敗事例を全社的に共有することができ、業務の効率化につながる可能性もあります。他部署の社員どうしで意見交換が行われ、思いがけない新事業の企画が生まれることもあるかもしれません。
このように、インターナルコミュニケーションはさまざまなレベルでの社内コミュニケーションの活性化を目的としています。
インターナルコミュニケーションのメリット
では、インターナルコミュニケーションを行うメリットを具体的に見ていきましょう。
生産性の向上
インターナルコミュニケーションを強化することは、生産性の向上につながります。情報共有が進むことで、個々の業務進捗の把握に役立ち、迅速かつ適切な対応がとりやすくなるほか、部署をまたいだプロジェクトの進捗管理などもスムーズになるからです。また、社内の風通しが良くなると他部署との連携体制が築きやすくなります。
社内外の情報マネジメント
社内外の情報を適切にマネジメントできるようになるというのも、インターナルコミュニケーションのメリットです。特に大きな組織を持つ企業にとって、日々変化する経営状況や外部環境を正しく社員に知らせることは重要です。また、メディアによる報道の真偽を社内に向けて発信する必要に迫られるといったケースにも効果的です。インターナルコミュニケーションに力を入れることで、様々な情報のマネジメントが容易になるのです。
組織や事業が複雑化し、社員やパートナーの職務も専門性と多様性が必要とする現在において、社内の情報や状況を可視化、共有化することは、意思決定を素早くするだけではなく、余計な部門間や社員間のコンフリクトを減らす、共通認識を生み出します。これを実現するためには、社外の状況を適切に社内に咀嚼、キュレーションする事やストリーを発信することも必要ですが、何よりも、共通のコミュケーションできる場が必要です。社内ポータルサイトやイントラネットや社内SNS、動画等々のデジタルワークプレイスが必須になります。
組織風土の醸成
インターナルコミュニケーションには、組織風土を醸成するという役割もあります。企業理念や経営スローガンなどを決めている会社は数多くありますが、その背景がわからなければ社員にはなかなか浸透しません。社内報などを活用し、くり返し発信し続けることで、企業理念が成立した背景やスローガンの意味への認知を高める効果があります。組織風土というのはこのような活動を通して培われていくのです。
コンプライアンスやセキュリティなどに対する意識の向上
近年、コンプライアンスの遵守は非常に重要な問題となっています。また、機密情報や最先端の技術などを扱う企業にとってはセキュリティ対策も避けては通れません。こうした観点からも、インターナルコミュニケーションは有益です。実務に直結させて理解するのが難しいコンプライアンスや、日常業務の中であまり意識することのないセキュリティですが、具体性のある事例や注意点を発信することで、身近なこととして捉えやすくなります。コンプライアンスやセキュリティに対する意識が社内にいまいち浸透していないという課題がある場合、定期的に社内報などでPRしてみるとよいでしょう。
離職率の低減
インターナルコミュニケーションが活性化するほど、離職率が低くなる傾向があると言われています。タテヨコの意見交換が活発な企業では、社員の不満が解決されやすく、良好な職場環境が実現につながります。インターナルコミュニケーションにより経営陣と社員との考え方のずれや部署間での認識の相違を解消できれば、社員の満足度を向上させることにもつながります。
不確実な時代に必要不可欠なインターナルコミュニケーション(社内広報)
従来型の組織ではこれらの経営資源を動かすことができるのは組織の中で上位の階層にいるメンバーのみで、下位の階層にいるメンバーが変化を察知した場合には、それを組織のラインに沿って報告・上申し、対応に必要な資源を得るための承認を得る必要がありました。また、トップから支持を出して現場を動かす際も、組織の階層ごとに順次、指示を下ろしていく必要がありました。しかし、いずれもアクションまでのリードタイムが長すぎるため、アジャイルな(機敏な)対応とは言えません。アジリティの高い経営を実現するためには、仕事に必要な情報がすべての社員にオープンに共有されており、権限移譲によって個人の裁量が高い、フラットな組織を作ることが理想的です。現在のような不確実性の高い状況においては、組織構造は、ヒエラルキー型よりも、フラット型にならざるを得ない状況とも言えます。
しかし、現場の裁量を広げるということは、個人によって判断にブレが生じるなどによって経営の一貫性がとれなくなり、事業活動に混乱が生じるリスクもあります。これを防ぐために重要なのが、「どこまでは変えていいのか、どこからは変えてはいけないのか」という基準を明確化することです。例えば、企業理念とビジョンに反しない範囲であれば個人の判断でやり方を変えてよい、など、判断の拠り所となる大きな方向性を明確にし、しっかりと社員に共有し、各個人が理解・納得するまで入念なコミュニケーションを行うことが必要です。
不確実な時代においては、「最小限の制限のみであとは個人の裁量に任せる」という組織運営を行う場合には、必然的に、ルール化されていない部分をそれぞれの社員が判断するために、関係者との対話が必要になります。大きな方向性を共有したら、コミュニケーションを活性化させるさまざまなツールや機会を活用しながら、社内の対話を深めていきましょう。リアルの対話会やビジネスチャット、社内SNSなどの活用によって、立場にかかわらず誰でも発言しやすい環境を整えることが重要です。
つまり、経営のアジリティを高めるためには、インターナルコミュニケーションの活性化が欠かせないのです。
インターナルコミュニケーション(社内広報)企業での一般的な施策
インターナルコミュニケーションの活動は具体的にどのようなものなのか、その例を見ていきましょう。
対話集会(タウンホールミーティング)
対話集会は、タウンホールミーティングとも呼ばれ、経営陣と社員とが情報を共有する場として設けられます。外資系企業ではインターナルコミュニケーションの一環として以前からさかんに取り組まれています。
年度目標の確認や業績結果の共有などに使われることが多く、テレビ会議などを利用して全社員が参加するケースもあります。経営陣から社員に対する情報発信の機会としての役割を果たすのが一般的ですが、質疑応答やグループ討論の場を設けることで、双方向の意見交換が行われるとなお良いでしょう。
メディアコミュニケーション(Web社内報、ブログ)
最近では、Webメディアを利用したインターナルコミュニケーションも主流です。たとえば、紙面だけでなくWebでも社内報を配信し、時流に応じた特集や社員へのインタビュー、イラストを使った情報発信など、多様なコンテンツにアクセスできるようにする企業もあります。
また、月に1回程度の発行頻度である社内報とは別に、社内向けのブログをより高い頻度で更新するケースもあります。ブログでは最近開催されたイベントや社内で話題のトピックなどが取り上げられることが多く、社員にとって親しみの湧きやすい内容となっています。
ビデオコミュニケーション(youtube、社内放送)
動画を利用した情報発信では、勉強用コンテンツとして社内向けの放送やyoutubeを利用する企業が増えています。たとえば、対外に向けて今後発表される新たなサービス内容や業務に関わる最近の法令改正など、全社員に周知しておくべき事柄を動画にして配信するケースもあります。
SNS(Facebook、Instagram、ChatWork、Slack等)
企業によっては、SNSをコミュニケーションツールとして日常的に利用しています。FacebookやInstagramなどは対外向けの広告として利用されることの多い情報発信ツールですが、新サービスなどの自社情報にキャッチアップできるよう社員にもフォローを勧めるケースがあります。
また、ChatWorkやSlackなどのチャットツールも社内でのコミュニケーションのために使われています。ビジネス向けに開発されたチャットツールはプロジェクト単位でのスケジュール共有などに優れ、スピード感のある情報伝達ができるようになります。
社員参加型イベント、社内表彰
社員参加型のイベントや社内表彰の制度も、インターナルコミュニケーションとして有益です。イベントでは上司や部下の仕事以外の顔を知ったり、普段の業務では関わりのない社員とのリレーションを築いたりすることができるため、社内におけるタテヨコのつながりを深めるのに優れています。
社内表彰は、目標を達成した社員をねぎらうために毎年1~2度程度行われることが多いようです。企業の経営理念やビジョンへの参画意識を高めることができるだけでなく、表彰者は社長との食事会など特別なイベントに参加できるような場合もあり、日常とは異なる交流の場が設けられます。
現場訪問
経営陣が現場を訪問することで、士気の高揚や課題発見につながります。同時に現場の社員とランチ会が行われたり意見交換会が開かれたりすることもあり、問題提起などの機会となることが多いです。
GoodJobカード、サンクスカード
素晴らしい活躍をした社員を称える「GoodJobカード」や、お世話になった同僚に感謝の気持ちを届ける「サンクスカード」などを取り入れる制度です。日頃はなかなか直接伝えることのできない気持ちを形に表すことで、人間関係を円滑にし、より良い職場環境を築く目的があります。
日報
日報もインターナルコミュニケーションの一種です。部下が日々どのような仕事に取り組みどのような成果を出しているのかを上司が知る手段として、また、現場の状況を本部の社員が知る手段として利用されています。
満足度調査、アンケート
多くの企業が、定期的に満足度調査やアンケートを行っています。直接は言いにくい業務上の不満や問題を無記名のアンケートに記載することで、本部に届けることができ、働きやすい環境の構築につながります。
【まとめ】目的に応じて方法を選ぶのが大切!
インターナルコミュニケーションを活性化するためには、前述した方法のように様々な取り組みが考えられます。まずは何を目的とするのかを考え、その目的に応じた方法を選択しましょう。すでにインターナルコミュニケーションを実践している企業も、あらためて目的を明確にすることで社内のコミュニケーションをさらに活性化させることができるでしょう。
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