提案制度とは?提案制度を取り入れるメリット、ポイントを解説

近年、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しくなる中で、現場の社員が主体的にビジネスの創造や改善に携わることで、より変化に強い柔軟な組織作りを目指す企業が増えています。そして、そのための取り組みの一つとして、社内における『提案制度』が注目されています。

提案制度を上手く取り入れて組織力を高めた企業がある一方、制度だけは作ったけれど形骸化してしまっている企業も少なくありません。本記事では、提案制度の概要から、成功させるポイントや導入のステップ、活性化させるためのポイントについて紹介していきます。

提案制度とは

提案制度とは、従業員が会社に業務の改善などについてアイデアを提案する制度のことです。
提案制度は、100年以上続くアメリカの企業「3M」などで、昔から取り入れられて来た方法です。

この数十年の間にさまざまな技術革新が起こり、盤石と思われてきた業界が斜陽産業と化していった一方で、以前は想像もできなかった新たなビジネスがいくつも誕生しました。「10年後に同じビジネスが通用するか分からない」、「過去の経験がいつまでも通用するわけではない」という危機感を感じている企業も多いことでしょう。

かつて日本企業における提案制度といえば生産現場におけるQCサークルなど、業務改善を目的としたものが中心でした。しかし現在は、社長や経営幹部などマネジメント層では思いつかない現場独自の発想や、新入社員のユニークな視点など、社内にいるすべての叡智や情報を使って経営力を高めようとする取り組みへと変化してきているのです。

さまざまな提案制度の事例

社員からどのような提案を募集するかは、それぞれの企業や組織によって異なります。ここでは、企業や組織の事例を通して、さまざまな提案制度についてご紹介します。

新規事業提案制度

大企業を中心に多くの企業が取り入れているのが『新規事業提案制度』です。
リクルートグループの若手社員を対象とした新規事業提案制度である『Ring』は、事業の募集から一次審査、二次審査の選考過程を経て、最終審査までを毎年実施しています。組織の中で投資する事業を選考することで、さらに強い事業を創出することに成功しており、ゼクシィやスタディサプリなどの新規事業を世に輩出しています。

また、サイバーエージェントでは、新規事業育成制度として、営業利益および推定時価総額を元に事業の段階を分け、一定期間内での昇格・降格基準を設けて管理しています。同社の新規事業提案制度は社員育成に留まらず、すでに経営の意思決定に関わるようになっています。

商品、サービスなどの業務に関わる改善提案

企業だけではなく、地方公共団体でも提案制度を積極的に導入しています。
さいたま市では『カイゼンさいたマッチ』という改善事例発表会を開催しています。これは、日常業務の中で、職員ひとりひとりが知恵と工夫で改善・研究した実践事例について、アイデアやプロセスを共有することで改善意欲の向上を目的とした取り組みです。

社内制度の改善提案

人材育成や福利厚生、自己啓発など、さまざまな社内制度に対する改善提案を社員から募集している企業もあります。今後は、育児・介護や外国人採用など、多様な働き手の立場から社内制度の改善を提案できるような制度を設けることが、ダイバーシティの推進にもつながります。

例えば西武ホールディングスでは、西武グループのグループビジョンに基づいた企業風土づくりや、グループ内の横断的な連携を目的に、グループ各社から集まった社員が経営層に施策やアイデアを提案するワークショップ、「ほほえみFactory」を実施しています。ここから、新規事業や社会貢献活動の取り組み提案のほか、社内制度や職場環境に関する改善提案も生まれてきています。

業務プロセスの改善提案

少し変わった事例で、トヨタの”カイゼン”をご紹介します。
これは社員が提案した業務プロセスに関する改善提案とその効果をセットで報告すれば、報酬がもらえるというものです。報酬は500円程度ですが、改善効果は具体的な数値ではなくても良いようです。重要なのは、実際にやってみて効果があるかであり、改善案で終わらせないところにあります。
会社が改善提案をきちんと評価していることを、報酬という目に見える形で応えているところが本事例のポイントです。

その他、職場環境に関する改善提案

職場環境などの細やかな点について気付いたことを提案することも、改善提案の一つです。
社員が休憩できるスペースが欲しいという理由で、オフィス内にカフェスペースを提案した結果、いろんな部門の担当者が集まるようになり、雑談の中で他部署にも興味をもち、色々なアイデアを思いついた成功例もあります。
あまり重々しく捉えずに、『電気の消し忘れ防止の張り紙』のような小さな提案でも良しとするなど、提案のハードルを下げることも、職場や組織を良くするためには必要です。

提案制度を成功させるためのポイント

これまで多くの企業で提案制度を導入しており、成功・失敗事例の分析がされてきました。ここでは、提案制度を成功させるためのポイントについて解説します。

経営に関する情報をオープンにする

提案制度は、直接的に会社の業績を上げるだけではなく、提案プロセスを通じて社員ひとりひとりが経営に参画しているという意識をもたせることが目的でもあります。

社員の経営参画意識の向上させるためには、まずできる限り社内の経営に関する情報をオープンにする必要があります。現場の社員は自分が関わる範囲の情報は持っていますが、経営全体の状況はわからないことが多いはずです。

そこで、現場から経営層への提案のコミュニケーションだけに頼らず、経営層や現場のマネジメント層から社員へ、企業のビジョンやグランドデザインに関する情報を発信することが重要になります。そのためには、コミュニケーションが行われる場が必要となります。社内報、Web社内報、イントラポータルなどの社内コミュニケーションツール上でも構いませんし、社内SNSを活用したり対話会を実施するなどで双方向コミュニケーションの機会を設けるのも良いでしょう。

社員の問題意識・解決能力の向上をサポートする

社員が提案できる状態にするためには、提案の目的や課題が明確になっていることが重要です。また、新入社員からのアイデアには、提案ではなく単なる要望も多く、その要望がどうすれば実現できるのか?という提案に昇華するための気付きを与えることが重要となります。

日常業務や職場環境といった身近な問題点を探すところから始まり、担当者からの視点、事業部からの視点、経営者からの視点とより高い視点で問題を捉えることができるように周囲が働きかけることで、社員の問題解決力は飛躍的に向上します。
社員の視点を引き上げるには、上司やメンターのサポートが必要です。どの視点で問題を捉えているのかを客観視させ、それにはどういう解決策が考えられるかの気付きを与えるのが重要です。

若手社員のモチベーションアップにつなげる仕組みをつくる

提案制度が活性化するには、参加する社員が小さな成功体験を積むことです。
特に若手社員は、直属の上司や経営層と距離があると感じており、せっかくのアイデアも言い出せずに飲み込むことが少なくありません。
どんな小さな提案でも実際にやらせることが重要で、その効果を検証して評価させることが社員の自信につながります。小さな成功体験の積み重ねが、若手社員のモチベーションアップにつながり、さらに周囲への良い影響を生み出すことでしょう。
こういった状態を作り出すためには、若手社員が小さなことでも提案でき、それを実践と検証、評価につなげることができるような制度設計が必要です。

提案制度導入のステップ

提案制度をスムーズに取り入れるために、導入のステップを解説します。

導入の目的、求める提案のレベルを定める

導入の目的をはっきりと示すことが重要です。

提案制度の目的には、

  • 会社業績への貢献(売上拡大・経費削減)
  • 社員の経営参画意識の向上、一体感の醸成
  • 社員の問題解決力、モチベーション向上

などが挙げられます。

また、提案のレベルにも『こんな事業が有望なのでは?』という【思いつきレベル】から実現シナリオやシミュレーションを含んだ【事業プラン】まで様々あります。
提案制度を活性化させるには、求める提案レベルを低く設定し、より高い能力開発やモチベーション向上させるには、求める提案レベルを高く設定するなど、目的に応じてレベル設計する必要があります。

提案ガイドを作成し、周知する

特に制度導入当初には、社員が提案にあたってどのような心構えで望んで、具体的にどのように提案すればよいかのガイドを作成して配布します。
例えば、提案ガイドには以下の内容を分かりやすく記載しておきます。

<背景と目的>
提案制度導入に至った経緯

<期待する効果>
制度導入で期待している効果

<提案募集要領>
提案期限、提出方法、種類、評価方法、報奨などのルール
提案書の記入例

提案の評価方法(賞与に反映するか、人事考査に加点するか、表彰をするか)について事前に決めて公表する場合もありますが、参加する社員にとって「提案すること自体が目的」となってしまわないように、制度設計や伝え方に注意が必要です。制度導入の目的が達成され、会社と応募者の双方にメリットをもたらせるよう、評価方法は慎重に検討しましょう。

提案制度を活性化させるためのポイント

せっかく導入した提案制度を形骸化させないためにも、提案制度を活性化させる仕掛けが必要です。ここでは、提案制度を活性化させるためのポイントについて解説します。

提案のハードルを下げる

社員に気軽に提案してもらえるように、提案のハードルを下げることが重要です。
現場の人材は目の前の業務に追われており、上から押し付けられるような作業には消極的です。提案の記入方法が複雑で、提出までの手続きがわかりにくいとモチベーションが下がる要因になります。
提案書のフォーマットは必要最低限な項目に絞ったり、そもそも専用のフォーマットを使わずに個人進捗資料の備考欄に記載させたりする方法もあります。日常業務の延長線上に改善提案を取り込むみ、提案のハードルを下げる工夫をしましょう。

どんな提案にもフィードバックを行う

社員が提案しなくなる理由の一つとして、頭ごなしに却下されたり、良くも悪くも評価がないなど、フィードバックの問題があります。改善効果が高い提案しか評価されなければ、現場の社員は細かな改善案が出しにくくなっていきます。
提案内容に対しては必ず、採用・不採用とその理由を付けて説明し、きちんと本人にフィードバックすること重要です。次の提案につながるように、どの点が良くて、どんな視点が不足していて、そのためには何を学ぶ必要があるのかを根気強く説明していく必要があります。
上司が縦の方向からフィードバックするだけではなく、応募者と同じような立場のメンバー間で横方向のフィードバックをするなど、いろんな気付きを得られるように設計することが重要です。

提案制度の成功事例

最後に、総合エンジニアリング会社の三機工業株式会社の事例を紹介します。
同社では、長く本格的な新規事業と呼べるものが立ち上がっておらず、社内に新規事業の経験者もいない状態でした。そのような中で、いかに新しいことに挑戦し、イノベーションを起こせる人材を育むかということが課題となっていました。
難易度の高い課題に対する打開策として、一つの研修プログラムが提案されました。それが、将来、自社がビジネス誌に取り上げられたらどのような内容になるか想定して、一つの記事を作りあげるプロジェクト型研修である「未来記事」です。
新規事業を自由に企画するという研修は参加者にとって新鮮で、個々の思考や視点が混ざり合い、これまでにないアイディアや発想を生むことに成功しました。

お客様インタビューvol.9「新事業を生み出すマインドを育む 三機工業株式会社 「未来記事」研修支援」

まとめ

ビジネスを取り巻く環境が著しく変化する中では、その変化に対応できる組織しか生き残れません。
提案制度は、変化に強い組織風土を醸成し、社員の当事者意識と能力を引き出すための有効な施策です。しかし、提案制度は導入してからが重要で、形骸化させないためにも社員全員が参加できるように、日常業務に組み入れ、適切な評価を行っていく必要があります。
提案制度の導入や運用でお困りの際は、ぜひソフィアにご相談ください。

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