One on Oneミーティングが形骸化するのはなぜ?人材育成につなげる3つのポイントを押さえよう

組織力の向上や人材育成の面で近年注目されているOne on One(1on1・ワンオンワン)ミーティング。Googleやヤフーなど、風通しが良く社員の挑戦を推奨する社風が評判の大手企業が取り入れていることで話題となり、日本でも耳にする機会が多くなりました。
正しく行えば組織や人材育成に高い効果を上げる手法であるということは、組織開発やヒューマンリソースの領域に関心をお持ちの方なら、すでにご存知だと思います。
しかし、会社として制度だけ導入してみたものの、上司・部下ともに疲弊する一方でなかなか効果が見えてこない、という声もよく耳にします。
実はOne on Oneミーティングを正しく行うためには、コーチングのスキル・知識が不可欠なのです。そこをよく理解せずに形だけ真似て実践すると、上司・部下間の関係性をゆがめてしまったり、部下(さらには上司)の育成面でかえって有害になってしまったりするケースも出てきます。

そこで、この記事ではOne on Oneミーティングの導入・実施にあたり「働く人の体験(エクスペリエンス)を重視した組織マネジメント」を支援する私たちソフィアの視点で伝えられる、One on Oneミーティングを成功に導くポイントをご紹介します。

なぜ今、One on Oneミーティングが注目されているのか?

One on Oneミーティングは従来行われてきたような、業績評価を主目的とする期末面談などとは根本的に性格が異なります。
おもな特徴としては、

  • 「部下が主役」というスタンス
  • 原則として上司と1対1で面談(場合によりほかの上職と行うケースもある)
  • 一般的には週1回〜月1回ほどの頻度で定期開催される
  • 部下にとっては業務上の課題や悩みを、上司と共有する場になる

などが挙げられます。
組織力を強化していくためには「よりパーソナライズされた人材育成が必要」であるという認識は皆さんすでに持たれていることかと思いますが、ここではなぜパーソナライズされた人材育成が必要なのかをあらためて確認していきましょう。

各社員が置かれた状況を把握するため

企業とは多くの人々が役割を分担してそれぞれの業務を遂行し、それにより大きな目標を達成することを目指す組織です。割り当てられた役割が違うがゆえに、各人が置かれた状況は一人ひとり異なります。
そうしたなかで、社員個々の指向や特性、自分がやりたいことと、会社が求めていることが一致しない場合は、双方にとって望ましくない状態となります。社員の不安や不満が続けば、退職という結果も招きかねません。

部下の置かれた状況と心理状態を把握し、それぞれに寄り添った人材開発を行うには、単に知識やノウハウを伝授するティーチングだけでは不十分です。対話を通じて部下自身に潜在している能力を気付かせ、学びを促して目標を再設定させる「コーチングのスキル」がOne on Oneミーティングを実施する上司には必要になります

コーチングは必ずしも部下の人材開発のみを目的に行われるとは限りません。部分と全体の最適化を図って組織力を向上させるために、上司自身やエグゼクティブ層が外部コーチにコーチングを受け、組織自体でOne on Oneミーティングを経験学習することもあります。

上司と部下、双方向の関係性を構築するため

VUCAの時代、企業の上層部や上司が必ずしも正解を持っているとは限りません。また仮に正解を持っていたとしても、それをただ押し付けるだけでは部下のモチベーションを維持できず、組織のダイナミズムにつながりません。
そのためOne on Oneミーティングを行う際は、組織の指示や意図を一方的に説明したり、上司や組織が「期待する正解」を対象者(部下)が気づくよう仕向けたりしないよう、注意が必要です。代わりに上司は部下の日常の悩みや不安、職場や仕事に対する思いなどを傾聴する姿勢を示し、まず双方向のコミュニケーションができる関係性作りを目指しましょう
たとえば、個人が思い描く将来像はときに会社のそれとは一致しません。中長期的に実現したい仕事上の目標と会社の目指している方向性が合わなければ、働く側のモチベーションは低下していき、企業内に遠心力が生じてしまいます。組織として成果を上げていくためには、部下がどんな領域に興味・関心を持っており、また現状をどのようにとらえ、どんなつまずきや戸惑いがあるか、などについて把握する必要があります。そのうえで、目指したい未来像の認識合わせをして、個人と会社の方向性をどう重ねていくか、部下自身が考えていけるよう導くことが大事です。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

One on Oneミーティングを実施するにはコーチングのスキルが必要

コーチングはティーチングと異なり、さまざまな質問をすることによって相手に気付きを与えたり、考えを整理できるようサポートしたりするコミュニケーション方法です。あらかじめ用意された答えを教え導くのではなく、相手のなかから答えを引き出してモチベーションを上げ、行動を促します。

そのため、One on Oneミーティングに取り組む上司は「教えてやる」というような高圧的なスタンスをとるのではなく、「部下のどんな話を聴くべきか」について理解した上で、部下がどのような思いで日々仕事をしているのかを把握する必要があります。
制度として上司と部下が定期的に話す機会を設けても、上司側がOne on Oneミーティングの意義を理解せず一方的に話していては、効果がありません。
そこで、One on Oneミーティングに必要なコーチングのスキルについて、次の章で例をあげて解説します。

One on Oneミーティングでコーチングを実施する際のよくある2つの誤解

One on Oneにいざ取り組んでみたものの、思うように成果が出ないケースもの多くは、 One on Oneミーティングにおけるコーチングの在り方に原因があります。
ここでは、コーチングを実施する際によく生じる誤解と、それに対処するための方法を紹介します。

誤解その1:ただ話を聞いて教わることがコーチングだと思っている

One on Oneミーティングとはどのような場であるべきなのか、上司側に明確なイメージがないと、ただ部下の話を聞いて終わる、あるいは上司のアドバイスを部下が聞くだけ、という内容になってしまいます。傾聴することがコーチングだ、という誤解は適切なOne on Oneミーティングを妨げます。
部下(One on Oneミーティングの対象者)も認識していないことを、一緒に光を当てて発見するのがコーチングです。「なぜそう思うのか?」と聞き続けるWHY?ではなく、WHAT?を使って相手が何を考えているか探し出すことに重点を置き、どのような話を引き出せば相手の現状がよく把握できるのかを意識しましょう。

誤解その2:質問して話を引き出すことがコーチングだと思っている

コーチングする側が相手の話を引き出すために「とにかく質問すればいい」という温度感では、期待する効果は得られません。先述のように、「なぜそう思うのか」という質問を繰り返すと部下は問い詰められていると感じ、ミーティングというより取り調べのような雰囲気になってしまいます。

業務においては「報告・連絡・相談」のコミュニケーションが必要な上司と部下という関係上、返ってくる答えに対しともすれば指示やアドバイスをしてしまいがちですが、One on Oneミーティングは対話の場です。「君はこうすべきだ」というような導きではなく、「私はこう思った」という伝え方で相手の自発的な気付き、内面に潜む自身の答えを引き出すことを目指しましょう

One on Oneミーティングが形骸化する原因と人材育成につなげるためのポイント

前述したような誤解は、One on Oneミーティングに慣れないうちは上司・部下の双方でしばしば生じます。この章では、うまく進めるためのアドバイスを交えつつ、One on Oneミーティングが形骸化する3つのケースを解説します。

部下との話がはずまない、話はしているが効果につながっている気がしないケース

One on Oneミーティングに際して上司が何も準備せず、「最近どうだ?」というような調子で語りかけても、話題は続かず、話が深掘りされることもありません。結果として、状況を報告して終わり、特に話すこともなく世間話に終始するなどの内容に留まり、求める効果にはつながらなくなってしまいます。

考えられる原因

「話がはずまない」原因は、明らかに上司の準備不足です。コーチングスキルが足りないと「そもそも何を聞けばよいのか」がわからず、必要な情報が部下から引き出せないため、気付きの機会も与えられません。
また、組織の心理的安全性が確保されていない場合では、部下の心理として「こんな話をしたら評価に影響しないか」「上司や会社に不満分子と思われないか」という障壁が発生し、表層的な話で終わってしまいます。

成果につなげるためのポイント

こうしたケースでは、人事が上司に対して対話のスキル向上の機会を提供することが必要です。特に、これまで対話の機会や習慣が少なかった企業では、突然「部下の本音を引き出せ」と言われても誰もがすぐにできるものではありません。コーチングはファシリテーションの要素も含む、コミュニケーションの技術であるため、適切な研修等を通して習得することで上司のスキルは向上します。
さらに、上司は「なんでも話し合える雰囲気を作る」ことを目指して自らも部下に対して自己開示し、組織における心理的安全性を築くことが重要です。黙っていた方が得策、という風潮をなくして「進んで話すことが改善につながる」という風土の形成を目指していきましょう

部下にどうしたいのか尋ねても意見が出てこないケース

「君はどうしたいのか?」「問題がどこにあると考えているのか?」と質問を重ねても、答えがわからない、なかなか返ってこない、ということもよくあります。この状態が続くとOne on Oneミーティングの場は沈滞し、互いにただひたすら「うーん」と悩むだけになってしまいます。

考えられる原因

この場合、そもそもコーチングが有効に機能しない場面においてOne on Oneミーティングを用いていることが考えられます。
たとえば、知識や経験が足りない新入社員に対し、相手の内面に潜む答えを引き出そうとしても限界があるのです。

成果につなげるためのポイント

コーチングは相手から答えを引き出すため、「相手のなかに答えがある」と考えることが前提となります。記憶や知識、経験のなかからいまだ形になっていないものに光を当て、上司の質問をきっかけに答えを浮かび上がらせるプロセスであるため、そのストックが不足していては答えが出てきません。
そのような場合は、One on Oneミーティングに先立って、通常の研修やOJTで部下の知識・経験を高めることが有効です。人材開発・育成の目的を明確にして、それに適した手法を適切に選んでいきましょう

時間がないなどの理由で定期的な面談が実施できない/制度はあるが機能していないケース

制度としてOne on Oneミーティングを導入したのに、「通常の業務が忙しくそれどころではない」「意義は理解しているが実施する時間がない」というケースもあります。実際に企業の中でこのような状態に陥った上司が「One on Oneミーティングやるやる詐欺」などと揶揄されているのを耳にしたこともあります。

考えられる原因

これは企業自体の業務プロセスや組織風土、制度の浸透に向けたコミュニケーションに原因があります。制度の導入だけを進め、その目的や意義が全社的に浸透していなかったり、上司がOne on Oneミーティングを進める環境や状況を用意するための仕組みができていなかったりすると、制度は必然的に形骸化し、「いつか時間ができたら」と先延ばしになってしまいます。

成果につなげるためのポイント

時間がなくて実施できないという理由付けがまかり通ってしまうのは、上司自身の資質だけでなく、企業側の体制づくりや組織風土上の問題でもあります。仕事の進め方や割り振りに問題があり、上司が会社の期待する役割をまっとうできていないということです。成果につなげるには、

  • 人材育成に関するビジョンや方針の浸透、人材育成を大切にする組織風土の醸成に向けた丁寧なコミュニケーションを行う
  • 現実的に人材育成に割く時間がない場合は業務プロセスの最適化に取り組む
  • より現場の状況に即した制度設計を行う

といった現実的な取り組みが必要です。上司や部署、部門によって理解度が異なるとコンフリクトのもとになるので、全社的な活動として取り組んでいきましょう。

まとめ

意義のあるOne on Oneミーティングを実施するには、相応の時間と手間がかかります。
One on Oneミーティングは、人材開発・組織開発の一環として行われるべきものであり、他の施策とも連動するので、一朝一夕に効果が目に見えるものではありません。
また、ハラスメント等の懸念から必要以上にお互いのプライベートに踏み込むことを避ける最近の組織においては、導入当初は当事者の本音として「部下の話を聴いて成長を促す?そんな暇ない……」「あまり仲良くもない部下/上司とそんなに対話したくない……」というような意見は必ず出てきます

One on Oneミーティングやコーチングは、技術や知識を伝えるティーチングと異なる、コミュニケーションスキルの1つです。特別に時間を設けて実施しなくても、日々のコミュニケーションのやり方を変えれば、ある程度の効果は期待できます。企業や組織ごとで風土や置かれた状況が異なりますので、自社に適したOne on Oneミーティングのあり方を設計することが大切です。
制度を設計・導入する人事担当部門がやるべきことは、実施する当事者のスキルアップの機会提供と、上司と部下が対話する組織文化・風土の醸成に向けたコミュニケーション施策の展開と言えるでしょう。

組織の課題解決に向けたインターナルコミュニケーション最適化を支援しているソフィアでは、数多くの実績に裏付けられたノウハウを蓄積しています。貴社にあった導入の仕方をともに考え、提案する用意がありますので、どうぞお気軽にご相談ください。

株式会社ソフィア

コミュニケーションコンサルタント

宇佐美 草太

組織風土や企業理念浸透などの視点からコミュニケーション調査を設計・分析し、改善施策をご提案します。また、ITツール活用支援や業務フロー改善など、業務プロセス最適化のご支援も行っています。

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