Power Platformとは?サービス内容やできることを紹介

近年、業務効率化やDX推進の流れの中で、ITの専門知識がなくても誰でも簡単にアプリ開発やデータ分析ができるローコードツールとして注目されているのが、Microsoftの「Power Platform」です。コードを書けなくても業務に役立つアプリや自動化フローを作成できるため、個人やチームの生産性向上に大きく貢献します。本記事では、Power Platformの基本情報や構成サービスの概要を解説し、具体的に何ができるのか、さらに導入メリットや効果的な活用方法までをご紹介します。

Power Platformとは?

Microsoft Power Platformとは、Microsoft社が提供するローコード・ノーコード開発プラットフォームです。ローコード開発とは、プログラミングの知識やスキルがなくてもドラッグ&ドロップなど直感的な操作でアプリケーションやワークフロー、データ分析用のダッシュボードなどを作成できる手法を指します。専門の開発者でなくとも扱えるこのプラットフォームは、業務効率化や生産性向上を目指す企業にとって強力な武器となり、IT部門だけでなく現場の担当者にも利用が広がっています。

以前は社内システムの開発といえば情報システム部門の専門エンジニアのみが担うものでした。しかし現在では、市民開発(シチズンデベロッパー)の流れにより、非エンジニアの社員でも自分たちで業務アプリを作れる時代になりました。例えば2000年代にはウェブサイト作成が一部の専門会社の仕事でしたが、その後登場したホームページ作成ツールにより多少学べば誰でもサイト構築できるようになったのと同様に、Power Platformによって一般社員が自作で業務システムを構築することが可能になってきています。重要なのは、「難しそうだから無理」と諦めずに小さくても挑戦してみることです。技術は日々進化し、必要なものが誰にでも使いこなせる形で提供されるようになっています。

Power Power Platformのような仕組みは、デジタルの民主化と言い換えることができます。高度な技術者やスキルがなくても、現場のアイディアや改善が、誰でもデジタル化する事を可能にします。
企業には、再現性や品質の担保が求められ、AIが自由に推論して処理してはいけない業務も多く存在します。こうした業務には、AIエージェント機能を適切に組み合わせて活用することが、今後の標準的な手法となるでしょう。

Power Platformの基本構成要素

Power Platformは、業務改善に役立つ複数のサービスから構成されています。現在利用できる主なサービスは5つあり、いずれも単体で強力な機能を持ちながら、組み合わせることでさらに高度な活用が可能です。以下にPower Platformを支える主要サービスとその特徴を紹介します。

Power BI

Power BI(パワー・ビーアイ)は、さまざまなデータを収集・統合し、グラフやダッシュボードで視覚的に可視化できるビジネス分析ツールです。高度なスキルがなくてもExcelに近い感覚で操作でき、大量のデータから迅速にレポートを作成・共有できます。社内外に点在するデータソースとも連携可能なため、組織内のデータを一元管理しリアルタイムに分析することができます。日々の業績データを見える化し、その動きや相関関係を把握することで、異常値の早期発見や意思決定の迅速化につなげられるでしょう。また、適切なデータ設計と観察を行えば、反復的な分析作業を自動化し、AIに任せる領域を広げることも可能です。

企業内におけるERPのようないわゆる経営データ以外に、大企業では管理会計データや部門内KGI/KPIが存在します。
このようなデータは、誰もが同じ事実を共有できるようにし、情報の不公平をなくす役割を果たします。そして データを足場にコミュニケーションすることが重要です。
また、技術的にはMicorosoftファミリーにあるデータのすべて可視化が可能です。

Power Apps

Power Apps(パワー・アップス)は、プログラミング知識がなくても業務効率化に役立つカスタムアプリを開発できるサービスです。現場のニーズに合わせた実用的なアプリを短期間で作成・共有できるのが特徴です。Power Appsには「キャンバスアプリ」「モデル駆動型アプリ」「(旧)ポータル」の3種類があり、用途に応じて使い分けられます。例えばキャンバスアプリなら、Excel感覚の操作で画面設計ができるため、現場社員自身が直感的に操作可能なツールを作成できます。会社全体の基幹システムを一から構築するのは難しくても、各部署の定型業務向けツールであれば内製化しやすいでしょう。業務フローを整理してアプリ化することで、手作業のムダを省き、結果的に現場の作業負荷を大幅に削減できます。
また、業務フローやアプリ開発以外には、今までかなりUIに制限があったSharePoinOnlineの画面設計やちょっとしたギミックなども、このアプリを活用することで、非常にユーザーを使いやすく、視認性を高めることができます。

Power Automate

Power Automate(パワー・オートメイト)は、日々発生する定型業務を自動化できるワークフロー作成サービスです。例えば「特定のメールを受信したら自動で別のサービスにデータを転記する」「添付ファイルを所定の場所に保存する」など、あらかじめ定めた条件に沿って一連の処理を自動で実行できます。クラウド上のサービス同士を連携するクラウドフローと、PC上の操作を自動化するデスクトップフローの2種類があり、用途によって使い分けができます。前者は500種類以上のコネクタを備え他クラウドサービスやAPIと連携でき、後者は旧来の独自アプリやレガシーシステム上の操作まで自動化できる柔軟性があります。
Power Automateによりルーティンワークの大半を自動化できれば、人的ミスの削減や業務時間の大幅短縮が期待でき、社員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

このツールは、Power Platformを活用する方々にとっては一番簡単にツールといえます。Power Appsより遥かに簡単に自動化できるツールで、数年前に流行ったRPAと一緒になります。
Micorosoft365では日々の資料にやり取りや、情報加工業務のルーティンを探し出し・可視化・並べることができれば、正確にPower Automateが実装してくれます。
PCやアカウントなど変更するときに自動化が切れていることがあるので、勝手やってくれるとはいいつつ、時々確認しましょう。

Power Virtual Agents

Power Virtual Agents(パワー・バーチャル・エージェンツ)は、プログラミング不要でチャットボットを作成できるサービスです。FAQ対応や社内問合せ対応のチャットボットを簡単に構築でき、例えばMicrosoft Teams内に組み込んで社員からの問い合わせに自動応答させることが可能です。AIによる自然言語処理が組み込まれており、利用されるほど対話精度が向上していく自己学習能力も備えています。高度なコーディングなしにチャットボットを導入できるため、顧客対応の効率化や社内ヘルプデスク業務の負担軽減に役立ちます。

Power Pages

Power Pages(パワー・ページズ)は、2022年に新たに加わったWebサイト構築用のサービスです。従来のPower Appsポータル機能が独立強化されたもので、社外公開向けのWebサイトやフォームをローコードで作成できます。コーディングの知識がなくてもテンプレートやドラッグ&ドロップ操作でサイトを構築でき、必要に応じてページごとのアクセス権設定も可能です。Power Automateなど他サービスと連携することで、入力データを受けて自動通知を送る等、Webサイトに高度な機能を持たせることもできます。Power Platformの一部として社内向けだけでなく限定的に社外ユーザー向けアプリケーションを提供したい場合、このPower Pagesが威力を発揮します。

Copilot(AI支援機能)

Copilotは、2023年に発表されたPower Platformの最新AI支援機能です。Power Virtual Agentsが進化してこのCopilot機能が組み込まれ、生成AIを活用した高度な会話型AIの構築とカスタマイズがより簡単になりました。専門知識がなくてもテキストで要件を指示すればAIがフローやアプリを提案してくれるなど、各サービスに賢いアシスタントが追加されたイメージです。
例えばCopilotを用いてチャットボットを作成すれば、従来以上に自然な対話が可能になり、社内外の問い合わせ対応を一層効率化できます。Power Automateとの組み合わせで複雑な自動化フローもAI補助によりスピーディーに構築できるため、Power Platform全体の利便性と生産性が飛躍的に向上しています。

現在のMicrosoft Power Platformは、Power BI、Power Apps、Power Pages、Power Automate、Microsoft Copilot Studioという5つの製品に加えてAI Builder アドインがあります。
AI技術が乱立し、各社で試験的な活用が進む中、社内情報やコミュニケーション分野でのAI活用もまずは実証的な取り組みを通じて効果を検証することが重要です。

Power Platformが使われている理由

Power Platformがこれほど注目・活用されている背景には、ビジネス環境の変化と課題があります。以下のポイントが、多くの企業でPower Platform採用が進む理由と言えるでしょう。

労働力の効率化へのニーズ

業務のデジタル化・効率化が求められる中、限られた人員で生産性を最大化する必要があります。誰もがスマートフォンやクラウドサービスを活用する現代、反復的な作業は極力自動化し、人的リソースを有効活用することが企業の命題です。Power Platformは省力化や自動化を容易にするツールとしてこのニーズにマッチしており、ルーティンワーク削減による労働力不足の補完にも貢献しています。
一言いえば、既存業務の自動化は、単純に生産性を上げることを可能にします。

人材不足・スキル不足の解消

深刻なIT人材不足も、Power Platformが支持される理由の一つです。専門の開発者が足りなくても、現場部門の社員自らがアプリや自動化フローを作れるため、外部リソースに頼らず内製化を進められます。また高度なプログラミング教育を受けていない社員でも短期間の学習で扱えるため、既存社員のスキル再教育(リスキリング)にもつながります。このように、社内の人的資源を最大限に活用できる点が評価されています。

技術やツールは、ユーザーがスキル不要でも活用できるように試行錯誤し、ツールをより使いやすくアップデートしています。
このスキル不足は、テクニカルなスキルではなく、自身の業務を客観的に言語化し、データ化して整理することです。つまり業務を「分ける」「並べる」だけです。

重要なスキルといえば ロジカルシンキングやクリティカルシンキングになります。
これは理系や文系という事ではなく、ビジネスとしての基礎になります。自身の業務からしっかり距離を置き可視化する事、中核的な業務を整理すれば、自動化する必要もなく、いらない業務も見えてきます。

リモートワークの定着

コロナ禍を経てリモートワークが定着し、場所に縛られない業務環境が当たり前となりました。クラウドベースで場所を問わず利用できるPower Platformは、在宅勤務中でも安心して使える開発・実行環境を提供します。紙や対面が前提だった業務をデジタル化してオンラインで完結できるようにするツールとして、リモート時代にPower Platformは非常に有効です。実際、多くの企業がテレワーク推進と並行して業務アプリの内製に着手しています。

共働きが当たり前となった現代では、リモート勤務の提供は従業員への付加価値となります。特に、ハイブリッドワークの環境整備は、働き方の多様化を支える重要な視点です。

システムのクラウド化

近年、社内システムをオンプレミスからクラウドサービスへ移行する流れが加速しています。Power Platform自体も完全クラウドサービスとして提供されており、自社でサーバーを用意したりソフトウェアをインストールしたりする必要がありません。そのため導入のハードルが低く、必要なときにすぐ使い始められる手軽さがあります。またクラウド上で常に最新機能が提供されセキュリティも自動でアップデートされるため、安心して利用できる点も企業にとって大きな魅力です。

上記の環境変化に対応できるツールを活用しないのは、不確実な今において大きな機会損失となります。
スモールスタートが可能な領域でもあることから、まずは小さく始めることでリスクを最小限にすることが可能です。

Power Platformでできること

Power Platformを活用すると、短期間かつ低コストで業務に役立つ様々なソリューションを生み出せます。直感的なWeb上の操作で開発でき、社内外の様々なデータソースやサービスと連携可能なため、効率的な業務フローを実現しやすいのも利点です。ここでは、部門別の具体的な活用事例をいくつか紹介します。

営業部門での活用例

ある企業の営業チームでは、これまで訪問記録や案件進捗管理をExcelで行っており、最新情報の共有に手間がかかっていました。そこで営業担当者自身がPower Platformを使い、スマートフォンから訪問内容をすぐ入力・共有できるアプリを作成しました。このアプリによりデータ更新がリアルタイムで反映され、上司やチームメンバーとの情報共有もスムーズになり、結果として案件の抜け漏れ防止や報告業務の効率化に繋がっています。

実際の折衝や交渉そのものはAIには代替できませんが、営業の面談内容を音声で記録し、AIで要約するのは今や一般的な手法です。そのため営業担当者は、顧客との交渉に集中しながら同時にメモを取る必要はありません。

経理部門での活用例

とある経理部門では、社員の経費精算を紙の申請書で処理しており、記入ミスや承認作業の煩雑さが課題でした。Power Platformを活用し、担当者がスマホから経費申請できるアプリを開発。領収書の写真をアップロードするだけで申請が完了し、承認フローもPower Automateで自動化されました。その結果、申請漏れやミスが減り、経理担当者と申請者双方の負担が軽減されています。

抜けや漏れ、ミスが生じやすい業務は人よりデジタルの方が優秀です。数学を学習する上で「そろばん」が有用であっても、実務でそろばんを使って経営管理をしている方はいないでしょう。ほとんどがエクセルなど表計算や専用のシステムではないしょうか?
実務を学習するときは、デジタル技術は学びにくいかもしれません。しかし、熟練の経理担当者こそ、デジタルツールを積極的に活用することが求められています。

現場(製造・サービス部門)での活用例

製造現場では、設備点検の記録を紙に記入し後でシステムに入力するという二度手間が発生していました。現場スタッフがPower Platformを使ってタブレットから直接点検結果を入力できるアプリを作成したところ、紙への記録と後日の転記作業が不要になりました。データが即座にクラウドへ保存・共有されるため、管理者はリアルタイムで設備の状態を把握でき、点検業務全体の効率と正確性が向上しています。

なお、Power Platformにはいくつか制約や注意点もあります。例えば作成したアプリは基本的に自社内で利用するものであり、外部の不特定多数に公開することはできません(社外利用する場合は対象ユーザー分のライセンス付与など追加対応が必要)。さらに、高度に凝ったUIデザインやアニメーションの実装は標準機能だけでは難しいケースもあります。こうした限界はありますが、通常の業務改善には十分な機能を備えており、現場の担当者がエンジニアを介さず自分たちで業務改善に取り組める範囲としては非常に有用なプラットフォームです。

建設現場の事務業務効率化も重要視されています。36協定改正で労働時間管理が厳格化され、現場事務の負担が課題となっています。現場ごとの状況が異なるため、統一システムの構築が難しい場合は、現場特性に合わせたカスタマイズ型の対応が有効です。業務フローに即した効率化が図れ、導入や習熟のコストも抑えられます。
現在、どのような現場事務業務で特に負担を感じられているでしょうか?具体的な業務内容がわかれば、より具体的な簡易ツールのご提案ができるかもしれません。

Power Platformの導入メリット

Power Platformを導入することで得られるメリットは数多くあります。ここでは特に代表的な3つの利点を挙げます。これらは企業の抱える様々な課題に対する直接的な解決策となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる原動力にもなります。

業務効率化の実現

手作業の自動化により、大幅な時間短縮と人的ミス削減が可能になります。例えばこれまで人が手入力していた定型作業をPower Automateで自動化すれば、24時間体制で正確に処理できるようになります。作業ミスが減り業務の精度も向上するため、社員一人ひとりの生産性が高まり、結果的に組織全体の効率化につながります。

コスト削減

外部の開発会社にシステム構築を依頼する必要がなくなるため、開発費用を大幅に削減できます。自社の内部リソースだけでアプリ開発・運用を完結できるため、ランニングコストも抑えられます。また、各部署で似た課題がある場合、一部門が作成した優秀なアプリを他部門でも共有・再利用するといったことも容易です。その結果、重複開発を避けることでコストパフォーマンスが一層高まります。社内に内製化の文化が根付けば、今後の新規ニーズにも迅速かつ低コストで対応できるでしょう。

柔軟性・拡張性の向上

ユーザー自身が必要に応じて自由にアプリやフローを作成・改良できるため、ビジネスニーズの変化に合わせて素早くシステムをカスタマイズできます。例えば現場からのフィードバックをすぐアプリに反映して機能追加する、といった敏捷性は従来の外注開発にはない強みです。さらに必要に応じて他のツールや外部データソースと連携し、機能を拡張することも可能です。Power PlatformはMicrosoft 365やDynamics 365、さらにはサードパーティのサービスともコネクタ経由で統合できるため、既存システム資産を活かしながら新しい仕組みを柔軟に組み込めます。

Power Platform で解決できる問題

Power Platformは企業が抱える様々な業務課題の解決策となり得ます。特に以下のような分野で、導入効果が発揮されています。

情報共有の効率化

定期連絡や報告の自動配信により、情報共有を効率化できます。例えば日次・週次の進捗レポートや業界ニュースを決まった時間にTeamsへ自動投稿するフローを作成すれば、最新情報を確実にチーム全体で共有できます。担当者が逐一メール送信する必要がなくなり、情報伝達ミスも防げます。

部門間の連携強化

部門間や外部パートナーとの情報共有を円滑に行えるようになります。ITの専門知識がない社員でも扱えるツールのため、各部門の現場メンバーが主体的に利用でき、属人的になりがちな情報も共有プラットフォーム上に集約可能です。例えばPower Appsで部門共通の情報入力フォームを作成しPower BIで可視化すれば、部門を超えたデータの見える化・フィードバックが容易になります。リアルタイムで意見交換やデータ閲覧ができる環境により、従来サイロ化していた部署同士のコラボレーションが活性化します。

データの分断化解消

組織内に点在し分断されていたデータを統合し、有効活用できるようになります。Power AppsとPower BIを組み合わせれば、複数部署・複数システムにまたがるデータを一元管理しリアルタイム分析することが可能です。これにより「部門AはAのデータ、部門BはBのデータでバラバラ管理」という状態から脱却し、全社横断で整合性の取れたデータに基づく迅速な意思決定が期待できます。

データの分断解消と部門間連携を強化するには、ツールの導入だけでなく、社内での情報共有ルールを見直す必要があります。
Power Platformによって、技術的に可能であっても情報共有やセキュリティに関する社内慣習が障壁になることもあります。
現在の世界トレンドは、情報透明性にあります。限りなくすべての情報に対して誰でもアクセスできる状況にするだけ、一気に生産性を上げることが可能になります。

タスク管理の自動化

Teamsなどと連携することでタスク管理フローを自動化できます。例えばPower Automateを使って、チームの共有タスクが登録された際に自動で担当メンバーへ通知し、期限が近づいたらリマインドメッセージを送信する、といった運用が簡単に実現できます。これによって担当者のタスク漏れを防ぎ、プロジェクト進行管理の手間を減らすことができます。

会議スケジュール調整の省力化

会議の日時調整もPower Platformで効率化可能です。Power Automateでチームメンバーの空き時間を自動チェックし最適な会議日時を提案・設定するフローを組めば、何往復もメールで日程調整をする必要がなくなります。さらに会議のリマインドやフォローアップ連絡を自動化することもできるため、スケジュール管理が円滑になり会議運営の抜け漏れ防止に役立ちます。

デジタル技術や便利なツールが次々と開発されていますが、導入の際には 使う人問題が付きまといます。しかし、現在では、使う人のスキルの問題もどんどん解決しています。
むしろ重要なのは、デジタル技術や便利なツールを活用できない組織のルールや因習です。実際、課題の多くは技術そのものではなく、社内の仕組みや文化に起因しています。 この要因をしっかり想定して進めていく必要があります。

Power Platformの導入と運用のポイント

ここまで見てきたように、Power Platformは自社で自由に業務改善ツールを生み出せる魅力的な基盤です。ただし、全社的に活用するには計画的な導入と適切な運用管理が重要です。以下では、導入時のステップと、運用フェーズでのガバナンス(管理)上のポイントを解説します。

導入ステップの例

  1. 目的の明確化とニーズの洗い出し

  2. まずはPower Platformを使って何を実現したいかを明確にします。現場の課題や非効率な業務プロセスを洗い出し、優先度の高い改善ニーズを整理しましょう。

  3. 環境準備とライセンス整備

  4. 次に、自社テナントでPower Platformを利用するための環境を準備します。Microsoft 365管理者がPower Platform管理センターから環境(Environment)を作成し、必要に応じてセキュリティグループやデータポリシーを設定します。また利用する各サービス(Power AppsやPower BIなど)のライセンスを確認・割り当てておきます。

  5. スモールスタート(小規模導入)

  6. いきなり全社展開せず、まずは特定部署や限定的な業務プロセスでパイロット導入するのがおすすめです。身近な業務を題材に簡単なアプリやフローを作成し、効果を検証します。例えば一つのチームで経費申請アプリを試作・運用してみて、現場からのフィードバックを集めましょう。

  7. ユーザー教育と定着化

  8. パイロット導入で得た知見を踏まえ、利用範囲を広げていきます。この段階では一般ユーザー(市民開発者)への教育・トレーニングが重要です。操作マニュアルの整備や勉強会の開催、社内コミュニティ(相談できるチャネル)を用意するなどして、現場メンバーが安心してPower Platformを使い始められるよう支援します。伴走型でサポートしながら成功事例を各部署に展開し、徐々に利用者を増やしていきます。

  9. 全社展開とガバナンス強化

  10. 最終的に全社規模での活用へと移行します。同時に、ガバナンス(統制)の仕組みを強化していきます。不要なアプリやフローが乱立しないよう管理プロセスを整備し、運用ルールを社内ポリシーとして定着させます。定期的なレビューを行い、Power Platform活用状況をモニタリングしながら、より良い使い方を促進します。

ユーザー管理・セキュリティのポイント

  • 管理者の配置と環境ガバナンス
    Power Platform管理センターで全体を管轄するシステム管理者を明確に定めます。管理者は環境ごとのリソースを監視し、不適切または不要なアプリが無秩序に増えないようチェックします。必要に応じてアプリやフローの命名規則、ライフサイクル(一定期間未使用なら削除など)を設定しましょう。
  • データセキュリティ対策
    DLP(データ損失防止)ポリシーを活用して、企業データの流出リスクを低減します。例えば社外サービスへのデータ接続を禁止・制限するルールを設定し、機密情報が含まれるデータは扱えるユーザーや接続先を制御します。また、環境ごとに権限ロールを適切に割り当て、誰がどのアプリにアクセス・編集できるかを明確にします。
  • 外部ユーザーの取り扱い
    プラットフォーム上のリソースを外部の協力会社や顧客と共有する場合は、ゲストユーザー管理に留意します。プロジェクト期間中のみ外部ユーザーにライセンスを付与し、終了後は速やかにゲストアクセスを解除するなど、アクセス権の管理を徹底しましょう。
  • 部門横断の情報共有と再利用
    部署ごとに開発が進むと、似たようなアプリが重複して作られてしまう可能性があります。これを防ぐため、社内ポータルなどで各部門のPower Platform活用事例を共有し、優れたアプリは他部署でも再利用する仕組みを作ります。部門間で定期的に成果物を発表し合う場を設けたり、社内ハッカソンを開催したりするのも有効です。部門連携の方法として、こうしたコミュニケーション施策により横展開を促せば、全社的な効率向上と統制の両立が図れます。
  • 運用ルールの明文化と周知
    「誰でも自由に使える」とは言え、企業システムとしてのルール整備は必要です。例えば「本番環境とは別に開発・テスト用の環境を設ける」「重要な業務プロセスを自動化する場合はIT部門の承認を得る」といったガイドラインを策定しましょう。これらルールを社員に周知徹底し、問い合わせ窓口を用意しておくことで、現場ユーザーも安心して活用できます。

Power Platform を使ったリスキリング

Power Platformは、業務に直結したスキルを学びながら実際の課題を解決できるため、リスキリングに最適なツールです。従来の研修や座学だけでは身につかない実践的なスキルも、業務を通じて自然に習得できます。また、伴走型の支援を活用することで、導入から運用までをサポートし、学びをより深めながら成果を上げることが可能です。

研修や座学ではリスキリングされない

Power Platformを含むMicrosoft 365のツールは、実践的な技術が必要不可欠なアプリケーションなのにもかかわらず、座学だけで習得しようとすることは、スポーツ理論の本を読んだだけで試合に勝とうとするようなものです。のこぎりの構造や使い方を座学で学んでも、実際に木を切らなければ上達しないのと同じで、知識をインプットするだけでは、何も生み出せません。
さらに、現場の業務は練習用の簡単な課題ではなく、複雑でリアルタイムな問題解決が求められる場です。そのため、座学で知識を詰め込んだところで、実際の業務で活かせなければ無意味です。

研修や座学とツールを学ぶ人は少なく、習得にも時間がかかり非効率です。デジタル技術に従事する専門家であれば誰もが知るように、技術的な知識を座学で学びながら実際の実務も一緒に実施することが一番効率的です。
逆に言えば、具体的な問題となる実務を設定して、必要な技術を学ぶという方が良い場合もあります。

リアルな実際の業務で使いながら学ぶ

Power Platformを習得するには、自分の業務を可視化し、それをITツールで形にする必要があります。しかし、これを机上の空論で学んでも、いざ実務で使おうとすると、手が動かないのが現実です。
例えば、「Excelの関数を座学で学んだのに、実際のデータを前にしたら何をすればいいのか分からない」という経験がある人は多いでしょう。Power Platformも同じで、実務で試行錯誤を重ねながら学ばない限り、真に活用できるスキルにはなりません。また、現場ではすぐに講師や先生に頼ることはできません。結局、実際に手を動かし、YouTubeやウェブ記事を見ながら試し、何度も失敗を繰り返すことで、ようやくスキルが身についていくのです。

つまり、「研修を受けたから大丈夫」ではなく、「業務の中で手を動かし続けたから使える」状態にならなければ意味がないのです。
Power Platformも、そのほかツールもそうですが、ツールの「癖」のようなものがあります。つまり「癖」があるので、使いこなすには「コツ」がいります。この「コツ」をつかむのは、リアルな実務で実施する必要があります。

また、ご自身が実際にやっている業務をデジタル化する事が一番の教材といえるでしょう。なぜならば、実際にやっているからです。
自身の遂行している業務をデジタル化する際に、ツールに併せる必要に迫られます。その際には、可視化は避けて通れません。
このプロセス自体が、本質的にリスキリングではないでしょうか。

伴走型支援

Power Platformの習得を支援するには、単なる研修やツールの提供だけでは不十分です。「教えたから使用できる」ではなく、実際の業務でどう活かせるのかを一緒に考え、試行錯誤する環境が不可欠です。

例えば、研修だけで終わってしまうと、実際の業務で活用しようとしたときに「どう組み込めばいいのか分からない」となり、結局使わずに終わります。だからこそ、業務に直結する形での実践的な支援が必要なのです。また、最も重要なのは、実際の業務でPower Platformを使いながら学ぶ際に、適切なタイミングでアドバイスやフィードバックを受けることです。これがなければ、単に試行錯誤を繰り返すだけで、間違ったやり方のまま挫折してしまいます。

つまり、「学んだこと」と「実際に使うこと」の間に物理的・時間的なギャップがあると、身につかないということです。このギャップを埋めるために、業務と直結した実践の場を用意し、手を動かしながら習得していくことが不可欠なのです。

まとめ

Power Platformは、業務効率化や生産性向上を目指す企業や個人にとって非常に強力なプラットフォームです。ローコード・ノーコードによって誰でも簡単にアプリやワークフローを作成でき、Power Apps・Power Automate・Power BI・Power Virtual Agents(Copilot Studioに統合)・Power Pagesといったサービス群を活用することで、幅広い業務課題を解決できます。また、データの統合管理や自動化を通じて日々の業務負担の軽減やコスト削減にも寄与します。クラウドベースの柔軟性と拡張性により、場所やデバイスを問わず活用できる点も魅力です。

一方で、全社導入して真の効果を上げるには適切な設定と現場での活用調整が欠かせません。IT部門によるガバナンスと現場部門の自律的な取り組みを両立させることで、安心・安全にPower Platformを活用することができます。これからの時代、DXを推進するうえでPower Platformは欠かせない基盤と言えるでしょう。ぜひPower Platformを積極的に活用し、現場の課題解決や未来志向の新しい働き方の実現に繋げてください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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