人材育成

​​OJTとは?意味や目的、メリット・デメリットからZ世代・リモート時代の効果的な進め方まで【2025年最新版】

目次

かつての日本企業において、人材育成の代名詞であった「OJT(On-the-Job Training)」。先輩の背中を見て技術を盗み、阿吽の呼吸で業務を遂行するスタイルは、長らく日本の現場力を支える源泉でした。しかし、終身雇用の崩壊、ジョブ型雇用への移行、そしてリモートワークの普及といったビジネス環境の激変に伴い、従来の「放置型」や「経験則頼み」のOJTは、もはや機能不全に陥りつつあります。

あなたの職場でも、「指導員の教え方にバラつきがある」「Z世代の若手にどのように指導すれば響くのかわからない」「テレワークでOJTが進まない」といった課題に直面していないでしょうか。多くの人事担当者や現場のマネージャーが、まさにこうした新たな壁にぶつかっています。

本記事では、OJTの基本定義や歴史的背景といった基礎知識から、OFF-JTとの使い分け、メリット・デメリットを体系的に整理します。さらに、弊社ソフィアが実施した「インターナルコミュニケーション実態調査2024」の最新エビデンスに基づき、多くの企業が陥っている「1on1の形骸化」や「戦略共感の欠如」といった課題を解決するための、対話と教育を融合させた「次世代型OJT」の具体的実践論を、徹底解説いたします。

OJTとは?:定義と歴史的背景

OJTの定義と基本概念

OJTは「On the Job Training」を略した用語で、実務を行いながら知識・スキルを身に付ける人材育成の手法です。在籍する従業員の育成が必要な新入社員などの人材に対し、実務上で伴走しながら指導を行います。

ここで押さえておきたいのは、OJTは単なる「現場任せ」や「放置」とは明確に異なるという点です。OJTは、意図的・計画的・継続的に実施される教育訓練であり、職場の上司や先輩がトレーナー(指導役)となり、トレーニー(受講者)に対して具体的な業務遂行能力を伝授するプロセスを指します。

OJTが適用される範囲は極めて広く、営業職における顧客訪問への同行から、製造現場での機械操作、ITエンジニアのコーディング指導、事務職における経理処理や電話対応に至るまで、あらゆる業界・職種で導入されています。

実務を通して業務を学ぶため、口頭での指導や座学などとは違い、より実践的な形で能力向上と経験を積めるのがポイントです。

特に重要なのは、インプットとアウトプットのサイクルです。伴走しながら指導やコーチングでインプットし、現場や実機でアウトプットするというかなり効率的・教育的なアプローチだと言えるでしょう。

OJTの意味と歴史的ルーツ

現代のOJTの源流は、第一次世界大戦中のアメリカにまで遡ります。

OJTとはそもそも、アメリカの造船所で現場監督を務めていたチャールズ・R・アレンが、1917年に提唱した「4段階職業指導法」がベースになっています。「4段階職業指導法」には以下の4つのステップがあります。

  1. Show(やってみせる):トレーナーが手本を示し、全体像とゴールを共有する。
  2. Tell(教える・説明する):手順やコツ、そして「なぜその作業が必要か」という目的を言語化して伝える。
  3.  Do(やらせてみる):トレーナーのサポートの下、実際にトレーニーに作業を行わせる。
  4.  Check(指導する・評価する):出来栄えを確認し、フィードバックを行う。

OJTも上記の4つのステップを基本としており、形は変わっているものの、実践的にかつ効率的に物事を教えるという点は受け継がれています。「4段階職業指導法」こそがOJTの始まりであり、1940〜1945年の第二次世界大戦中のアメリカで運営された企業内訓練プログラム「TWI研修」(Training Within Industry for supervisors)にも派生しています。

「TWI研修」は日本にも1950年(昭和25)に導入され、1955年から始まる高度経済成長期の中で体系化し、日本独自のOJTの基本形が作られました。現代でも、まずは先輩がお手本を見せてから説明し、実際に後輩にやらせてみて修正点を指導する流れは定番の指導法です。部活でのスポーツ・音楽・美術から始まり、ビジネス上の指導に至るまで、OJTに通ずる指導法は広く根付いていると言えるのではないでしょうか。

このプロセスは、単なる作業手順の伝達にとどまりません。

OJTする側であるトレーナーが保有する技術や技能を、OJTされる側であるラーナーが見様見真似でやってみて学習する流れです。これにより、マニュアル化しにくい暗黙知や、組織特有の文化・価値観も同時に継承されていくのです。

ビジネスにおいて研修でOJTを行う目的

多くの日本企業において、OJTは人材育成の柱として機能しています。厚生労働省の調査等でも、約6割以上の事業所が計画的なOJTを実施しているとされています。では、なぜ企業はこれほどまでにOJTを重視するのでしょうか。主な目的として、以下の4つが挙げられます。

  1. 企業に必要な能力を持つ人材の育成(早期戦力化)
  2. 従業員の定着率の向上(リテンション)
  3. 社内コミュニケーションの活性化
  4. 不安の解消・動機付け(心理的安全性の醸成)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

企業に必要な能力を持つ人材の育成

「企業に必要な能力を持つ人材の育成」の目的は、業界・職種ごとに必要な能力を、計画性を持って可能な限り短期間で習得することにあります。

一般的なビジネススキルであれば外部研修でも代替可能ですが、自社独自のシステム操作、特定の顧客への対応ノウハウ、製造ライン固有のクセなどは、現場でしか学べません。

OJTでは、従業員に習得してほしい能力に応じた適任の指導者を振り分け、マンツーマンの指導によって効率的に人材育成を行います。たとえば社内業務であれば、電話対応・PCの操作法などそれぞれの適任者に育成を任せることになるでしょう。

ここで重要なのは、指導者の選定です。OJT担当者はあくまでもプロデューサー的な立ち位置であり、自分よりも技術の高い指導者に任せることで、効率的で質の高い指導を担保します。

従業員の定着率の向上

「従業員の定着率の向上」は、OJTを通して知識・技術スキルを高めてもらうことによる、従業員の職場への定着率の向上を目的としています。

入社直後の社員は、「自分はこの組織でやっていけるだろうか」という不安(リアリティ・ショック)を抱えています。OJTを通じて実務をこなし、小さな成功体験を積むことで、自己効力感(Self-Efficacy)が高まります。

従業員が短期間で実務能力を身に付けることにより活躍できる場が増え、仕事へのやりがいを感じられるようになるでしょう。その結果、自信も付いてくるためモチベーションにつながり、今の仕事を続ける原動力が生まれやすくなります。

社内コミュニケーションの活性化

「社内コミュニケーションの活性化」は、OJTの特性を活かして従業員同士のコミュニケーションを活性化させる目的のことです。OJTは指導者と指導される側がマンツーマンで行うため、1対1の密な関係性を作りやすい側面があります。

業務を通じた対話は、単なる仲良しクラブ的な交流ではなく、仕事の文脈(コンテキスト)を共有する深い関係性を構築します。

さらに、OJTは固定化された指導者がいるわけではなく、必要に応じて指導者が入れ替わりながら、部署・チーム全体で個々の従業員を育成する仕組みです。これは、職場や組織にある一定の「共通言語」を生み出します。平たく言うと、ツーカーな言説が生まれコミュニケーションコストが劇的に下がるのです。したがって、社内や職場全体での一体感と効率性を高め、コミュニケーションが乗数的に活性化されます。

不安の解消・動機付け

「不安の解消」は、OJTを行う中で部下が抱く小さな疑問・心配事などを上司と共有し、不安を解消することを指します。とくに、新入社員・中途入社の従業員は新しい職場環境に不安を抱いているものですが、すぐに不安を解消できる社内環境が整えられていれば、より効率的に知識・スキルの習得ができるでしょう。

この精神的なサポート機能は、現代において特に重要視されています。

従業員が不安を抱える問題を放っておくと、人間関係の悪化に波及し、「知ってはいるがやりたくない」という関係性の問題になり解決が困難になります。

ここまで4つの目的を見てきましたが、OJTは個々の従業員の知識・スキルの習得のみを目的としていないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。業務内容・社内の人間関係・組織風土を包括的に学ぶことで、企業にとって総合的に必要な人材に成長してもらうことが、最大の目的だと言えるでしょう。

OJTとOFF-JTの違い:それぞれの特徴と使い分け

人材育成を成功させるためには、OJTと対をなす「OFF-JT(Off The Job Training)」との違いを理解し、適切に組み合わせる(ブレンディッド・ラーニング)ことが不可欠です。では、それぞれの特徴にはどのような違いがあるのでしょうか。

OJT(職場内訓練)の特徴

OJTは、先ほど解説したように育成を担当する指導者が部下・後輩などに対し、業務を実践しながら必要な知識・スキルを指導する人材育成の手法です。指導者が育成の対象者と実務を通して伴走することで、業務の具体的な流れを教えつつ、個別の知識・スキルを習得するための実践的な指導を行います。現場の従業員が指導者を担当するため、通常の業務を進めながら指導できることがポイントです。

OFF-JT(職場外訓練)の特徴

一方、OFF-JTはOJTとは異なり、実務の現場を離れて行う人材育成の手法を指します。通常の業務を行いながら実践的な指導を行うのではなく、座学のような形で指導するのが基本です。外部から専門の研修講師を呼んだり、上司・先輩が講師となってレクチャーする場合もあります。OFF-JT中は通常の業務を遂行することはできず、別途時間と場所を確保しなければなりません。

OFF-JTは、ビジネスの基礎理論、ロジカルシンキング、コンプライアンス、マネジメント理論など、体系的かつ汎用的な知識をインプットするのに適しています。

OJTとOFF-JTの比較表

項目 OJT(職場内訓練)  OFF-JT(職場外訓練)
場所 実際の職場(デスク、現場) 研修室、外部会場、オンライン
内容 実務に直結する個別・具体的スキル 体系的・汎用的な理論、知識
講師 直属の上司、先輩社員 社内専門家、外部講師
コスト 低い(人件費のみ) 高い(講師料、会場費など)
メリット 即戦力化、個別指導、低コスト 知識の体系化、均質な教育、集中できる
デメリット 指導のバラつき、体系化が困難 実務への応用が必要、コスト・時間

OJTとOFF-JTの相互補完

OJT・OFF-JTは人材育成の手法として一長一短があるため、高い効果を発揮するためには運用の工夫が必要でしょう。OJTの実践的な指導だけでは細かな理屈を理解することはできません。それと同様にOFF-JTの座学的な学びだけでは現実的な業務遂行能力は磨かれません。双方の欠けている部分を補うように、OJT・OFF-JTを適宜使い分けることが、より効果的に人材育成を行うために大切です。

また、OFF-JTは、仕事場の日常業務から離れ、事実や経験を俯瞰的に見つめる機会を提供します。視点を変えれば、この距離を置くことで振り返りやリフレクションが容易になり、実務経験をより広い視野で理解し、抽象化することができるとも言えるでしょう。

企業によるOJTの過去と現在地:なぜ今、変革が必要なのか

ここまで、OJTの定義やOFF-JTとの違いについて整理してきました。では、日本企業においてOJTはどのように変化してきたのでしょうか。かつて日本企業の強みであったOJTですが、現代においてはその有効性に疑問符がつく場面も増えています。

企業成長を支えていたOJT

高度経済成長期においては、OJTは一定の効果を発揮しており、さまざまな業界・産業にとって必要な人材育成の手法でした。企業の成長・繁栄の支えになっており、日本が世界的な経済大国になった要因の1つと言っても過言ではないでしょう。

当時は、業務内容が比較的定型的であり、「先輩のやり方を真似る」ことが正解に直結していました。終身雇用制度の下、長期的な視点での師弟関係が成立していたのです。

バブル崩壊後の劣化と形骸化

しかし1990年代に入ると、OJTは人材育成の手法として劣化が始まります。とくにダメ押しとなったのがバブル崩壊による景気の悪化で、リストラの増加・非正規社員の増加・過熱する成果主義・人材の流動化などが重なり、OJTによる人材育成の意義が薄れていきました。また、OFF-JTに関しても中途半端に実施される状況が増え、もはや形骸化されたある種の社内儀式として残っているケースも増えていきます。

余裕を失った現場では、「見て覚えろ」という名の放置(OJN:On the Job Neglect)が横行し、指導の質が著しく低下しました。

テクノロジーの進化とOJTの限界

現代の企業でもOJTは行われていますが、果たして高度経済成長期のような効果を発揮しているかは疑問が残ります。それどころか、1990年代〜2000年代よりも意味をなしていないとすら考えられ、その大きな理由としては、テクノロジーの進歩・普及により、ビジネス形態が大きく変わったことが挙げられます。

一言で言うと、OJTする側の過去の経験や技術を活かせる業務は、すでに機械やテクノロジーによって変化しているため、教えることができない部分が増えてきているということです。

かつての「正解」が、AIや自動化ツールによって瞬時に代替される現在、先輩の経験則が必ずしも役に立たないケースが増えています。

変化が激しい現代において、従業員に求められるのはこれまで必要とされていた「注意深さ・ミスをしないこと」「責任感・まじめさ」ではなく、「問題発見能力」「的確な予測」「革新性」といった先を見通す力と創造性です。現行のOJTは、現代の企業・ビジネス全体の状況に合わせた指導内容にアップデートしなければ効果を発揮できないでしょう。AIの登場など、テクノロジーによって不要になる業務が増える昨今、人間が注力すべき仕事は移り変わっており、過去の指導法を続けるだけでは適切な人材育成にならないことを心得る必要があるのではないでしょうか。

OJTとリスキリング:DX時代の新たな学び

DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、OJTも「リスキリング(学び直し)」の文脈で再定義される必要があります。

テクノロジーとの共存

テクノロジーの進化・普及が急速に進む昨今、とくにデジタル技術の領域においては、これまでになかったツール・システムが登場しています。近年で言えば、その代表的なものとしてAIが挙げられるでしょう。その進化の速度は驚異的で、黎明期である現在でも一定のクオリティで文章・画像・音声・簡単なプログラミングなどをAIで行うことができます。将来的には、コンテンツ(音楽・映画など)・マーケティング・研究開発・会計など、さまざまな領域でAIが高度な知的作業を行うとの予測が立てられています。

全社員が学び続ける必要性

AIをはじめとするテクノロジー技術は日進月歩、それ以上に秒進日歩レベルで進化を続けており、企業で働く従業員は日々変化する情報をキャッチアップする必要があります。これからの時代は社内の役職によって学ぶ範囲や段階が決まるのではなく、年齢・職位・社歴を問わず同じラインで学ぶ姿勢を持たなければなりません。新時代のOJTはリスキリングの文脈を取り入れ、新入社員だけでなく中堅・ベテランの従業員も必要に応じ、OJTもしくはそれに等しい学習環境で学び続ける必要があるでしょう。

暗黙知の形式知化とDX

自社の技術や技能が、顧客や市場に現在でも価値を提供しているのであれば、可視化し、構造化を進め、デジタル技術と掛け算することで競争優位を保持できます。そうでなければ従業員が時代に取り残され、人材の質が低下し、ひいては企業として生き残ることが困難になってしまうことは明らかです。別の角度から言えば、高度な技術や技能を保持している人材こそ、リスキリングによってデジタル技術を身に付けるべきではないでしょうか。

手段の目的化:OJTにおける最大の落とし穴

ここまでOJTの歴史やリスキリングとの関係について見てきました。では、実際に多くの企業でOJTがうまくいかない原因はどこにあるのでしょうか。その最たるものとして、「OJTをやること自体が目的化している」という現象があります。

OJTの目的は、そもそもの課題や必要に迫られた業務が先にあり、それらに対して必要なアクションを起こせる人材を育てることです。必要な内容が育成方針に盛り込まれており、OJTが機能していれば運用法として適切ですが、中にはOJTを行うこと自体が目的化しているケースも多々あります。

目的を見失ったOJTの末路

OJTの手段の目的化は、人材育成によってスキル・能力を向上させ、企業にとって必要な人材に成長してもらうゴールを見失っている状態です。OJTの育成計画も練られておらず、マニュアルや手引きがしっかりと構造化されていないため、ただ実務を通して形式的に学ぶだけという効果的ではない育成を行っていると言えます。

これはトレーナーにとってもトレーニーにとっても不幸な状態であり、単なる「時間の浪費」になりかねません。

定期的な見直しのサイクル

このようなOJTの手段の目的化を起こさないためには、OJT自体を見直す機会を設けることが大切です。1年・1年半など一定の期間の育成が終わったら、OJT育成担当者・管理職・携わった人全員が集まり、次年度のOJTに向けて育成計画自体を見直すことで、手段の目的化を防止できるでしょう。また、見直しを定期的に繰り返すことにより、OJTそのものの質も向上させていくことができます。

企業がOJTを実施する5つのメリット

ここまで、OJTの定義や歴史、そして陥りがちな落とし穴について見てきました。では、OJTを適切に実施することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。主要なものは以下の5点です。

1. 従業員一人ひとりに合わせた指導(個別最適化)

2. 指導者側のコミュニケーションスキルアップ(共育)

3. 即効性のある人財育成(即戦力化)

4. 教育コストを投資に変えることができる(コスト効率)

5. 社内コミュニケーションの活性化(組織風土の醸成)

従業員一人ひとりに合わせた指導

OJTの大きなメリットの1つが、個々の従業員の知識やスキルレベル・性格・その他の個性などのタイプを考慮し、成長速度に合わせた育成を行うことができる点です。マンツーマン指導が基本のOJTであれば、集合研修の欠点をカバーすることができます。

個々の従業員の苦手な箇所を重点的に指導でき、細かな不安の解消や即座にフィードバックも行えるため、より質の高い研修として機能させることが可能です。また、それぞれの従業員のタイプを考慮し、指導方針・内容を変更するなど、柔軟なカスタマイズができることも集合研修との違いでしょう。

指導者側のコミュニケーションスキルアップ

OJTを実施することによる副次効果として、指導者側へのポジティブな影響も挙げられます。中堅・ベテランであっても、OJTを通して知識・スキルをアウトプットし、より深く理解しながら記憶に定着させることができるためです。

自分以外の他人に、何かを教えるもしくは伝えるということは、自分が実行している業務や仕事の進め方を一旦、自分の中で整理し、構造化するという論理的に自分の仕事を客観視するプロセスを踏むことになります。

また整理された内容を、相手の状態に合わせて伝えるというコミュニケーションも必要です。しかし、整理されていないもの、構造化されていないものは、いくら言葉巧みに話してもほとんど伝わりません。

OJTにおいては、指導が必要な従業員に教えることで知識・スキルを再認識し、役職者としても上司としても能力を向上させることができます。これは、自身の業務効率や仕事の質の向上につながるでしょう。

人を育てることができるリーダーは、自分の業務や仕事を自分自身で客観視し、整理し構造化されていることが前提であり、さらにそれを伝えるコミュニケーションスキルが重要であることを押さえておくべきでしょう。

即効性のある人財育成

OJTの大きなメリットとして、即戦力になる従業員を育成できる点もあります。実務を通して指導を受けるため、従業員はより実践的な知識・スキルを身に付けながら、OJT終了後に地続きで業務を担当することができます。

一方、集合研修では大まかな業務の流れ・作業内容について学ぶケースが多いので、いざ実務を担当すると戸惑う従業員も多いものです。OJTであれば、学びの段階からすでに実務に慣れることができ、学習と実践の間にギャップを感じることなく即実務を遂行できます。

教育コストを投資に変えることができる

OJTは企業内の従業員が現場における育成を担当します。人財開発部などは、外部に研修を依頼したり、セミナーやEラーニングを提供したりします。

しかし、研修やセミナーなどで活用される一般的な教育メソッドを、そのまま現場に活かすことはできません。また、現場側は実践の中で学ぶため、構造化や俯瞰をしにくいという側面があります。その結果、人財開発が提供する一般熟練と現場のOJTが実現する個別熟練は、常にちぐはぐな状況で社員に提供されています。換言すれば、これが研修やセミナー、OJTが能力や成果に転移していない根本的な原因なのです。

現場の課題や必要スキルを軸に据え、OJTと連携としてOFF-JTやSDを行うことで、低コストでかつ効率的に人材育成を行うことができます。また、OJTは実務の中で指導を行うため、業務を圧迫する時間的コスト・人的コストを抑えて実施できるのもメリットでしょう。

企業がOJTを実施するデメリットと対策

OJTには多くのメリットがある反面、運用方法を誤ると組織にとってマイナスとなるリスクも孕んでいます。では、具体的にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

指導者によって研修の質が変わる(指導のバラつき)

OJTのデメリットとして、指導者が必ずしも高い実務能力・指導能力を持っているわけではない点が挙げられます。指導者になった上司・先輩の知識・スキルによって育成の質やスピードが変わり、OJT後の従業員の成長にもバラつきが生じてしまう可能性があります。

この問題は、いわゆる「上司ガチャ」「配属ガチャ」として若手社員の離職理由にもなっています。

指導者による研修の質の差を小さくするためには、企業が指導者をサポートすることが必要です。具体的には、OJT指導者への研修を実施し、あらかじめ指導法について教育するなどの仕組みを用意しておくことが重要でしょう。また、OJT自体をマニュアル化しておくことや、OJTの結果に対して指導者を人事評価する評価基準を設けるなど、指導者のモチベーションを高める施策も有効です。

指導者側の負担になる場合がある(業務過多)

指導者となる上司・先輩は、通常の業務と並行させてOJTに取り組みます。そのため、OJTが負担となって本業務に支障が出たり、キャパシティーオーバーになって心身を壊してしまったりする可能性も考えられます。

OJTは、スキルや技能を教えるという中で、教える側と教わる側で時には、厳しいフィードバックや失敗などのプレッシャーの強い状況もあるでしょう。そこに人間関係という土台がなければ、人間関係など早々に壊れ、伝わることも伝わりません。また、自分の業務と並行しながら実行するため、指導者の精神的なプレッシャーは少なくありません。

指導者側の負担を軽減させるには、しっかりとしたフォロー体制を用意することが大切です。たとえば、OJTを担当している間は本業務の量や担当の配分を軽減する、メンタルケアなどを行うといった対策が必要でしょう。また、OJT自体を当該の担当だけに任せるのではなく、管理職などは、教える側と教わる側の関係性に着目することが求められます。関係性に亀裂が入ってしまった際には、第三者が介入することで問題が容易に解決できる場合が多いものです。しかし、この微細な人間関係のプロセスを見て見ぬふりをすれば、後々大きな問題になることは間違いないでしょう。

若手から見るOJTの現在地:配属ガチャとZ世代の価値観

ここまで企業側の視点からOJTのメリット・デメリットを見てきました。では、立場を変えてみれば、現場のリアルな声にはどのような課題が見えてくるのでしょうか。

OJTする側の視点:リソース不足と業務の複雑化

OJTの指導者側における最大の悩みは、OJTに時間的なリソースを割くことが難しいことです。多くの企業では常時ギリギリの人員で業務を回しているのが現実であり、新入社員が入社した場合でも、既存の従業員が仕事を教える役割を担うことが困難な状態となっています。

また、ビジネスの業務自体が複雑化していることも影響しています。近年では、ルーティン化された定型業務だけでなく、状況に合わせて調整・企画を立ち上げる必要のある非定型業務も増加しており、OJTの指導者側の実施難易度が高まっていることも実態としてあります。OJTの指導者も、つい最近始めたばかりの業務を素人同然の新人に指導することは難しく、ましてや業務を体系的に教えることは不可能に近いと言えるでしょう。

まとめると、OJTの仕組み自体が現代ビジネスに適合しているとは言えず、何らかのアレンジが必要な状況です。OJTの指導者の時間的な制約や、複雑な業務をどのように指導すれば指導される側の従業員に伝えられるかが大きな課題となっています。

OJTされる側の視点:「配属ガチャ」への恐怖

OJTで指導される側にとって悩みとなっているのが「配属ガチャ」問題です。「配属ガチャ」とは、企業・組織において、どのような部門・部署に配属されるかを表現した言葉です。良い部門・部署に配属されればアタリとなり、逆の場合はハズレと言われます。

とくに新卒社員にとっては、最初に働いた職場環境の影響は大きなものとなります。最初の段階で関わる上司・先輩の仕事観は仕事の姿勢にも反映されますし、仕事の内容はその後のキャリアにも関係してきます。OJTにおいても同じことが言え、上司・先輩の指導能力によって成長速度が変わります。OJTがそもそも機能していない職場では、必要なことを教えてもらえないまま複雑な業務を担当させられるといった事態にもなりかねません。

上記のような、「配属ガチャ」においてハズレの職場を引いた場合、新卒社員は思っていた職場とのギャップに戸惑ったり、ストレスを感じてモチベーションの低下につながる可能性もあります。つまり、どこに配属されるかという運の要素こそが、OJTにおいて指導される側の最大の懸念事項だと言えるでしょう。

Z世代に響くOJT指導法:意味と貢献の重視

Z世代(1990年代中盤〜2010年代初頭生まれ)は、「意味」や「納得感」を重視する傾向があります。「黙ってやれ」「見て覚えろ」という指導は、彼らには不合理で非効率に映ります。

彼らへの指導においては、以下のポイントが重要です。

1. 「Why(なぜ)」を語る:単に手順を教えるだけでなく、「なぜこの作業が必要なのか」「これが最終的に誰の役に立つのか」という目的と貢献の文脈を明確に伝えます。

2. 即時フィードバック:SNSネイティブである彼らは、反応がないことに不安を感じます。「今の対応はここが良かった」「次はこうしよう」とこまめにフィードバックすることで、承認欲求を満たしつつ成長を促します。

3. タイムパフォーマンス(タイパ)の意識:無駄な拘束時間を嫌うため、指導は要点を絞り、効率的に行う姿勢を見せることが信頼につながります。

OJTを機能させるには「学び方を学ぶ」ことが重要

ここまで、OJTを取り巻くさまざまな課題を見てきました。では、複雑化する業務に対応するために、具体的にはどのようなパラダイムシフトが必要なのでしょうか。

OJTの指導者側に時間がなく、さらに状況に合わせて業務内容の調整・企画を立ち上げる非定型業務が増えた現状において、OJTを機能させるには「学び方を学ぶ」姿勢を持つことが重要です。

これまで行われていたOJTは、個々の従業員や企業が溜めてきた経験・ナレッジをマニュアル化し、形式的に新人に伝える方式が取られてきました。変化が緩やかであり、現代社会ほどビジネスが複雑ではなかったため、それが効果的とされていたのです。

しかし、非定型業務が増えた現代の業務においては、これまで溜めた経験・ナレッジ・暗黙知などが活きる業務ばかりとは限りません。そのため、OJTの指導者が新人に教えながらも「学び方を学ぶ」ことが必要になります。新人への指導を通して、指導者側の上司・先輩従業員自身が、新たな技術・仕組みを吸収するための土台を作り学び続けなければ、現代のビジネスに対応することはできません。何よりも、OJTの指導者が「学び方を学ぶ」ことで、OJTも旧来の指導法から刷新されていきます。

噛み砕いて言えば、この学び方とは「学習とはどういう構造なのか」「振り返りやリフレクションはなぜ必要なのか」「他者へのフィードバックとは何なのか」ということです。それらを学ぶことにより、指導者から指導される側に知識・スキルを一方的に教える場から、双方向にフィードバックが飛び交う場に変化させ、現代のビジネスで機能するOJTにアップデートできるということです。これからの時代のOJTのキーワードの1つは、「学び方を学ぶ」ことだと言えるでしょう。

OJTを機能させるための学習起点の仕組みとコミュニケーション

問いかけ次第で学びの広さや深さが変わる

OJTを行う上で大前提になるのが、OJTの指導者が「指導を受ける側の従業員こそが学びの主体である」と理解することです。なぜなら、上司・先輩の立場であるOJTの指導者は、対象の従業員が実務を通して学ぶ中で気づいた疑問や教訓に寄り添いながら、学びの質を高めることが必要であるためです。

新入社員などのOJTを指導される側の従業員は、経験を重ねるごとに知識・スキルといった実務能力を高めていくものです。しかし、視野・視座といった物事を俯瞰で見る力については、経験豊富な上司・先輩と同じ水準にすぐに達することは困難です。そこで重要になるのが、OJTの指導者である上司・先輩が新入社員に対し、視野・視座を広げることにつながる深い学びを促せるよう、適切な問いかけを行うことです。

深い学びは、OJTを指導される側の従業員だけでは得ることができません。したがって、OJTの指導者が実務を振り返る中で問いかけ、従業員が自身で気づけるようにサポートする必要があります。

PDCAからPDSAの時代へ

これまでのビジネスでは、業務管理・品質管理における改善方法として、PDCAサイクルを用いるケースが多くありました。OJTにおいても同様で、最初に指導・教育のプランを立て、実務を通して経験・学びを得てもらい、OJT指導者による評価と反省を行い、次の実務に取り掛かるサイクルを行ってきたのではないでしょうか。

ですが、このPDCAサイクルは現代のビジネスには適切とは言えません。今後求められてくるのは、PDSAサイクルです。PDCAが、Plan(計画)、Do(実施)、Check(評価)、Act(改善)のサイクルであることに対し、PDSAはPlan(計画)、Do(実施)、Study(学ぶ)、Act(改善)のサイクルです。これまでのマニュアル・手順書通りに業務を進める上で大切だったCheck(評価)が、業務の手法が変化する現代の業務進行に合わせてStudy(学ぶ)へと変化しました。変化の激しい現代のビジネスでは、合っているかどうかを測定するCheck(評価)よりも、変化に対応するための学びの姿勢、Study(学ぶ)が重要視されるようになったのです。

また、テクノロジーの進歩・普及によって業務上でやれることが増え、さらに部署間・異業種間での連携も増えたことにより、業務が複雑かつ非連続性のある内容に変化したことも、PDSAサイクルが求められる理由の一つです。このような仕事の進め方においては、状況・ケースごとに対応する必要があり、PDCAによる管理・改善の手法では賄いきれなくなってきた現実があるためです。

OJTにおいても、PDCAからPDSAに変更することが重要です。従来のPlan(計画)、Do(実施)、Act(改善)の要素は残しつつ、Check(評価)をStudy(学ぶ)に置き換え、実務を終えるごとに振り返り、その時々で教訓を得ながら次の業務に活かすサイクルを取り入れることが必要になるでしょう。

【弊社調査】インターナルコミュニケーションとOJTの深い関係

OJTは単なる「業務指導」にとどまらず、組織内コミュニケーション(インターナルコミュニケーション)の質を決定づける重要な要素です。弊社ソフィアの調査(「インターナルコミュニケーション実態調査2024」)では、多くの企業が抱えるコミュニケーションの課題が浮き彫りになりました。

1on1のパラドックス:最も実施されているが、最も効果がない?

弊社ソフィアの調査によると、社内コミュニケーション促進の取り組みとして、「1on1ミーティング」が上位にランクインしました。しかし同時に、「促進に効果的でない取り組み」としても1on1が上位に挙げられるという、矛盾(パラドックス)が生じています。

これは、多くの企業で1on1が「手段の目的化」に陥り、形骸化していることを示唆しています。「何を話せばいいかわからない」「上司が一方的に話して終わる」といった質の低い1on1は、かえって部下のエンゲージメントを下げる要因になります。OJTにおける指導も同様で、形式的な面談ではなく、本質的な「対話」が必要です。

「戦略共感」の欠如:社員のわずか1割しか共感していない

また、同調査では「会社の戦略に対して共感している」と回答した社員はわずか1割程度にとどまりました。

これは、経営層のビジョンや戦略が現場レベルまで浸透していない「組織内のズレ」を示しています。逆に言えば、OJTはこのズレを解消する重要な機会でもあります。目の前の業務(点)が、会社の戦略(線)とどうつながっているのかをトレーナーが語ることで、新人の業務に対する「意味づけ」と「納得感」を高めることができるのです。

対話・教育・ツールの「三本柱」

弊社ソフィアの調査では、組織課題を解決するためには「対話」「教育」「ツール」の三本柱をバランスよく強化する必要があることが示唆されています。

OJTにおいても、トレーナーとの「対話」、体系的な「教育」プログラム、そしてマニュアルやチャットなどの「ツール」を適切に組み合わせることが成功の鍵となります。

必要なのはOJTをアップデートすること

ここまで、これからのOJTでは「学び方を学ぶ」ことが重要であるとご紹介してきました。では、その具体的な取り組み方にはどのようなものがあるのでしょうか。

OJTする側される側の垣根を越えて一緒に学習を楽しむ

OJTを実施する際の古い考え方として、指導者と指導される側を分けて考えてしまうことが挙げられます。先ほどお伝えした通り、現代のビジネスは変化が激しく、リスキリングが注目されるように、誰しもが新しい技術・仕組みを受け入れなければなりません。中堅・ベテランの従業員であろうと常に学ぶ立場にあり、OJTにおいてもその点は変わりません。OJTの指導者も指導される側の従業員と共に学ぶ側であると意識しておく必要があります。新入社員などと同じく、未経験の業務に携わることもあり、上司・先輩という立場が意味をなさない場合もあるでしょう。

とはいえ、OJTの指導者の方が基本的には上司・先輩であるため業務で経験を積んでおり、指導される側の従業員よりも学び方についての知識・知恵があるものです。OJTの指導者は、自身も学ぶ側である意識を持ちながら学び方の知識・知恵を活かし、新入社員などOJTを指導される側の従業員が経験を深い学びに変えるために必要な学習のサポートをすることが大切になります。

OJT担当者の持っている仕事を一緒にやる

OJTに限らず、人が何かを学ぶ時は、まずは習得が容易な物事から取り組むのがセオリーです。しかし、仕事に関しては、簡単な定型業務やすぐに覚えられるルーティン作業などを学んだところで、複雑な業務・非定型業務などに対応する知識・スキルを身に付けることはできません。仕事で実務能力を向上させるには実践第一であり、高いレベルの仕事を行うには、高いレベルの実践的訓練で鍛える必要があります。

そこで重要になるのが、OJTの指導者である上司・先輩が携わっている業務を一緒に行ってみることです。もちろん、簡単な業務も並行して実践しますが、複雑でより上位工程の業務に取り組むことで、ビジネスで必要な筋力・思考力を実践レベルで鍛えていくのです。

たとえば、上司と一緒にアイデア出しと企画書をまとめる業務を行ってみる、営業に同行するのであれば、取引先とのやり取りについて具体的に共有し、現場で発言を行ってみるなどです。OJT中は、まだ知識・スキルが身に付いていない従業員が挑戦・テストできる場でもあります。この状況をより大きな成長に活かさない手はありません。

こういった試みは、従来のマニュアル・手順書を教えるだけだったOJTの枠を越えるものであり、現代のビジネスに合わせたOJTのアップデートだと言えるでしょう。

一緒にやりながら「思考のプロセス」を共有する

上司・先輩や新人・部下がOJTを通して業務を共にする場合、一緒に業務を進めながら思考のプロセスを共有することも大切です。これまでのOJTでは、業務の作業手順や機器の操作を上司・先輩からコピーするように学ぶことが重要でした。しかし、現代のビジネスの現場は業務が複雑化しており、身体性によって進められる物理的な業務ではなく、思考力によって進められる非定型業務が主流になっています。

具体的には、先輩が以前作成した企画書・プレゼン資料を見ただけでは、どういった思考プロセスで資料を構成し、なぜそのゴール設定をしたのか、過去のどんな業務を参考にしたのかなど一見しただけではわからない要素が多く、新人が同じようなものを作成することは難しいでしょう。

そのため、OJTの指導者は指導される側の従業員に対し、自身の仕事への考え方を細かく伝えていくことが重要になります。しかし、言語で伝えることには限界がありますし、間違った方向で伝わる可能性もあります。自分の中では感覚としてつかめていることでも、言葉にするには難しいといったケースもあるでしょう。そのような場合は、5W1Hやロジックツリーなどの思考のフレームワークを使うようにし、紙・PDF・アプリなどで共有すると伝わりやすくなります。

OJT担当者だけでなく多様な人と組む

OJTから学びを得ているからといって、他の学び方を捨てる必要はありません。むしろ、積極的に他の学び方を取り入れることで相乗効果が生まれ、知識・スキルの定着が期待できます。実務を通して学ぶOJT以外にも、座学的な学習を行うOFF-JTや、社内外のセミナーや書籍から学ぶSD、最近では社外のビジネス系のオンラインサロンに加入して学びを得ている人も多くいます。

OJTに限定したとしても、その学び方に決まりがあるわけではありません。OJTを実施する中でさまざまな役職者・従業員と組むことにより、幅広い経験を積むこともできるでしょう。それは必ずしも上司・先輩である必要はなく、再雇用された従業員から組織の中での立ち回り方を学んだり、子育てなどの理由で時短勤務をする人から効率的な業務遂行について学ぶことも可能です。多様な視点・角度から学びを得ることで、OJTで指導される従業員が大きく成長することができます。

これまでのOJTは、必要な業務に応じて適切な従業員を指導者にするやり方をしていましたが、この「必要な業務」というのが曲者で、決まった業務の決まった範囲のみを実践することに終始しがちです。しかし、従業員として成長につながる種は、必ずしも目の前の業務だけにあるとは限りません。とくに現代のビジネスにおいては、多様な視点・創造性などが重要になってくるため、多様な人と組んで経験を積むことで、従業員の引き出しを増やすことが大切になります。

OJTで期待する効果が得られない原因と「経験学習サイクル」

期待する効果が得られない原因

OJTの効果は、2日間で期待以上の効果を得られる場合もあれば、半年続けても思ったような効果が得られない場合もあります。ここではOJTで期待する効果が得られない場合の原因について解説します。

まず挙げられるのが、動機付けができていないことです。動機付けが適切に行われていないとモチベーションが上がらず、目的の知識・スキルを身に着けることも困難になります。形式的にOJTを行うのではなく、OJTのゴールを指導者と指導される側の従業員に理解してもらうことで、動機付けを行うことができます。

また、指導者のスキル不足もOJTがうまくいかない原因になります。業務上の能力と指導者としての能力は異なるため、優秀な社員でも教えることに適性がないことはよくあることです。対策として、指導者が指導のスキルを学べる場を設けることも有効でしょう。

続いて、振り返りを実施していないことも原因の一つです。実務を通して知識やスキルを学ぶOJTですが、ただ業務を体験するだけでは十分な効果は得られないでしょう。経験した実務の結果にフィードバックを行い、課題から改善を行うことで、知識やスキルが身についていきます。

OJTを成功に導くポイント「経験学習サイクル」

経験学習サイクルのベースになっているのは、アメリカの教育理論家であるデイビット・A・コルブが提唱した経験学習モデルです。経験学習モデルの理論をシンプルに表現すると、自ら実際に経験することで学び、成長していくプロセスを指しています。このプロセスをステップに分け、実用的に取り組めるようにしたものが、経験学習サイクルです。

  1. 具体的経験(Concrete Experience):実際にやってみる。
  2. 内省的観察(Reflective Observation):振り返る、気づく。
  3. 抽象的概念化(Abstract Conceptualization):教訓を引き出し、法則化する。
  4. 能動的実験(Active Experimentation):次の機会に応用する。

実践を通じて学ぶのは当たり前だと感じるかもしれませんが、経験を糧にするには適切な段階があり、それを説いたのが経験学習モデルであり経験学習サイクルです。経験学習サイクルはさまざまな場面で活用でき、ビジネスにおいても通常の業務だけでなく、研修などの学びの場にも取り入れることができます。

経験学習サイクルについては別の記事で詳しく解説していますので、より詳細に知りたい方は併せてご覧ください。

OJTマニュアルと計画書の作成ステップ

OJTの効果を高め、指導のバラつきを防ぐためには、体系化されたマニュアルと計画書が不可欠です。

OJT計画書(育成計画書)の作り方

計画なきOJTは失敗します。以下の手順で作成しましょう。

ゴールの設定:OJT終了時(例:3ヶ月後、1年後)に「どのような状態になっていればよいか」を具体的に定義します。

  1. 現状の把握:トレーニーの現在のスキルレベル、経験、特性を把握します。
  2. ステップへの分解:ゴールに至るプロセスを月単位、週単位の小さな目標(マイルストーン)に分解します。
  3.  指導内容と担当者の決定:誰が、何を、いつ教えるかを明確にします。
  4.  評価方法の決定:習得度をどのように測定するか(テスト、実技チェック、面談など)を決めます。

OJTマニュアルの必須項目

マニュアルには「指導者用」と「学習者用」の2種類があると効果的です。

指導者用マニュアル:指導のポイント、フィードバックの方法、評価基準、よくあるつまずきポイントと対処法。

学習者用マニュアル:業務フロー、システム操作手順、トラブルシューティング、用語集。

マニュアル作成のコツは、最初から完璧を目指さず、運用しながら随時更新していく「アジャイル型」で進めることです。

まとめ

OJTは従業員の実務能力を向上させる研修として有効な手段です。しかし、従来行われてきたOJTを続けるだけでは、現代のビジネス環境に適合する人材育成を行うことは難しくなってきています。そこで、OJTの流れの中にあるPDCAをPDSAに変更し、さらに経験学習のサイクルを取り入れることで、変化に対応できる従業員を育成する新時代のOJTにアップデートしていく必要があります。

また、OJTを指導する側の能力が指導結果を左右していることも、押さえておく必要があります。従業員として能力が高いからと言って、必ずしも指導者の資質があるとは限らないため、指導スキルを学べる場を別途用意することも必要になってくるでしょう。

OJTを適切に機能させることができれば、確かにスピーディーに従業員の実務能力を向上させることができます。しかし、万能の人材育成の手法ではないため、OFF-JTやSD、あるいは外部のオンラインサロンなどで学ぶことも必要です。要するに、OJTはあくまでも人材育成の1つの手段であるため、多角的に従業員が成長できる環境づくりをしていくことが大切だと言えるでしょう。

弊社ソフィアの調査で明らかになった「1on1のパラドックス」や「戦略共感の欠如」といった課題は、逆に言えば、これからのOJTが取り組むべき「伸びしろ」でもあります。対話を通じた信頼構築、教育によるスキルの標準化、そしてツールによる効率化を組み合わせ、組織全体で人を育てる文化を醸成していきましょう。 きる環境作りをしていきましょう。

​​OJTとは?意味や目的、メリットや効果的に進める方法についてよくある質問
  • OJTトレーナーに向いているのはどのような社員ですか?
  • 業務能力が高いだけでなく、コミュニケーション能力が高く、相手の立場に立って物事を考えられる社員が適任です。また、自身の業務を言語化して説明できる論理的思考力も重要です。必ずしもエース級の社員である必要はなく、若手社員(入社35年目)を抜擢することで、トレーナー自身の成長(屋根瓦方式)を促すことも効果的です。 

  • OJTがうまくいかない主な原因は何ですか?
  • 主な原因として「指導者のスキル不足・バラつき」「指導時間の不足(業務過多)」「計画の形骸化(計画書がない、更新されていない)」「目的の共有不足(なぜやるのかが不明確)」が挙げられます。特に、現場任せにして人事部が関与しない「放置」の状態が失敗の最大の要因です。 

  • テレワーク(リモートワーク)環境下でOJTを成功させるコツは?
  • 対面よりも意図的かつ高頻度なコミュニケーションが必要です。具体的には、画面共有機能を活用して実際の作業を見せる、チャットツールで気軽に質問できる環境を作る、始業・終業時の短時間のミーティング(チェックイン・チェックアウト)を行うなどの工夫が求められます。また、文面だけでは伝わりにくいニュアンスを補うため、ビデオ通話を積極的に活用しましょう。 

  • Z世代の社員にOJTを行う際の注意点は?
  • 「見て覚えろ」は通用しないと考え、作業の「目的」と「意味」を論理的に説明することが重要です。また、彼らはフィードバックを求めているため、こまめに「できている点」と「改善点」を伝えます。効率(タイパ)を重視するため、無駄な作業だと思わせないよう、業務の全体像と現在のタスクのつながりを明確に示すことがモチベーション維持の鍵となります。 

  • OJT期間はどのくらいが一般的ですか?
  • 業務の難易度や職種によりますが、新入社員の場合は一般的に3ヶ月1年程度です。最初の3ヶ月で基本業務を習得し、半年で応用、1年で独り立ちというステップを踏む企業が多いです。期間終了後もフォローアップ面談を行うなど、継続的な支援が推奨されます。 

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。